親族が亡くなり、相続財産のなかに「非上場株式」が含まれていると気づいたとき、どう対処すればよいか分からず困惑する方は少なくありません。 非上場株式は、上場株式のように証券取引所で値段が決まるわけではなく、評価方法が複雑で、手続きも独特のルールが多いため、一般の方にとってはなじみの薄い財産といえます。 「そもそも相続できるのか」「相続税はいくらかかるのか」「相続したくない場合はどうすればよいのか」といった疑問を、ひとつひとつ整理しながら理解したいという方も多いでしょう。
本記事では、非上場株式の相続に関する基本知識から、相続税申告のための評価方法、具体的な手続きの流れ、相続したくない場合の選択肢、そして見落としがちな税制特例まで、幅広く解説します。 相続開始後は期限が定められた手続きが複数あるため、早めに全体像を把握しておくことが重要です。 ぜひ最後まで読み進めていただき、いざというときの備えにお役立てください。
非上場株式の相続の基本知識

非上場株式とは何か
非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社が発行する株式のことです。 日本には約178万社の法人があるといわれていますが、東京証券取引所などに上場している会社は約3,900社ほどにすぎません。 つまり、日本に存在する会社のほとんどは非上場会社であり、それらの会社が発行する株式がすべて非上場株式にあたります。
非上場株式は、中小企業のオーナー経営者が保有しているケースが大半です。 たとえば、父親が地元で製造業を営む中小企業を経営していて、その会社の株式を100%保有していた場合、父親が亡くなると、その株式が相続財産として扱われます。 こうした状況は、家族経営の会社や、創業者が株式を一括して持つ同族会社では日常的に起こり得ます。
また、非上場株式は「取引相場のない株式」とも呼ばれます。 国税庁の財産評価基本通達では、この「取引相場のない株式」について独自の評価方法が定められており、相続税の計算に際してはその方法に従う必要があります。 上場株式のように終値をそのまま使えるわけではなく、会社の規模や株主構成によって評価方式が異なる点が、非上場株式の大きな特徴です。
上場株式との違い
非上場株式を正しく理解するためには、上場株式との違いを把握しておくことが大切です。 両者の主な違いを以下の表にまとめます。
| 比較項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 市場価格 | あり(取引所で常時形成) | なし |
| 売買の容易さ | 証券口座があれば自由に売買可 | 買い手を自分で探す必要あり |
| 情報の公開 | 有価証券報告書等で開示 | 原則として非公開 |
| 譲渡制限 | 原則なし | ほとんどの会社で設定あり |
| 相続税評価方法 | 終値等を基準に算出 | 財産評価基本通達に基づく独自の計算 |
| 株主数 | 不特定多数 | 少数(創業者・親族・関係者が中心) |
市場価格が存在しない
上場株式には、証券取引所での売買を通じて常に市場価格が形成されています。 相続の場面でも、被相続人が亡くなった日の終値や、前後の一定期間の平均株価をもとに評価額を計算するため、手続きが比較的シンプルです。
一方、非上場株式には市場価格がありません。 取引所に上場されていないため、「今この株式がいくらか」を客観的に示す数値が存在しないのです。 そのため、相続税評価のためには、会社の財務データや業績をもとに複雑な計算を行い、評価額を算出しなければなりません。 市場価格がないということは、相続人が株式の価値を直感的に把握できないということでもあり、予想外に高い相続税を課されるケースも珍しくないのです。
ほとんどが譲渡制限株式である
会社法では、株式に「譲渡制限」を設けることが認められています。 譲渡制限とは、株主が株式を第三者に譲渡する際に、会社の承認を要するとする定めのことです。 主な目的は、会社にとって望ましくない第三者(たとえば競合企業や関係のない投資家)が知らないうちに株主になることを防ぐことにあります。
非上場会社の場合、その性質上、株主が創業者やその親族・役員・取引先など限られた関係者で構成されているケースが大半です。 そのため、ほとんどの非上場株式は譲渡制限株式として設計されており、自由に売買できない仕組みになっています。 この点が、相続後に株式を換金したい場合や、第三者に譲渡したい場合の障害となることがあります。
非上場株式は相続できるのか
結論からいえば、非上場株式は相続することができます。 民法第896条では、相続とは被相続人の財産に属する一切の権利義務が相続人に引き継がれることと定められています。 株式は本来的に他者への移転が想定された権利であり、特定の個人にのみ帰属する「一身専属権」(親権や国家資格など)には該当しません。 したがって、上場・非上場を問わず、株式は預貯金と同様に相続の対象となります。
譲渡制限株式でも相続に会社承認は不要
譲渡制限株式を第三者に「譲渡」する場合には、会社の承認が必要です。 しかし、相続は「譲渡」ではなく「一般承継」に分類されます。 会社法上、相続による株式の移転は譲渡制限の対象外とされており、会社の承認がなくても株式は相続人に引き継がれます(会社法第134条第4号)。
これは実務上も非常に重要なポイントです。 たとえ株式に譲渡制限が付いていても、被相続人の死亡を原因とする相続であれば、相続人は会社に対して「承認してください」と申請する手続きを踏まずに株式を取得できます。 ただし、株式を取得したことを会社に通知したうえで、株主名簿の書き換えを請求することは別途必要です。
定款の売渡請求規定がある場合は注意が必要
一般的に、相続には会社の承認が不要ですが、例外があります。 会社法第174条では、定款に定めがある場合、会社は相続その他の一般承継によって株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すよう請求できるとされています。 これを「売渡請求」と呼びます。
具体的には、会社の定款に「株式が相続によって移転した場合、会社はその相続人に対して株式の売渡しを請求できる」旨の規定が設けられていることがあります。 この場合、相続人は一旦株式を取得するものの、会社から売渡請求を受けた場合には株式を手放さなければなりません。 売渡請求は、会社が相続が発生したこと(一般承継の事実)を知った日から1年以内に行使しなければならないという制限はありますが、相続後に株式を保持できるかどうかは、その会社の定款内容によって異なるため、まず定款を確認することが重要です。
非上場株式を相続するメリット

非上場株式の相続はデメリットが注目されがちですが、適切に活用すれば相続人にとって大きなメリットをもたらすこともあります。 主なメリットを以下に解説します。
株主として会社の経営に参加できる
非上場株式を相続すると、相続人は会社の株主としての地位を取得します。 株主には、会社法上さまざまな権利が認められており、なかでも「議決権」は会社の経営方針に直接影響を与えられる重要な権利です。
株主総会では、役員の選解任、定款の変更、合併・分割などの重要事項が議決権によって決定されます。 相続によって一定割合以上の株式を取得すれば、会社の意思決定に対して実質的な影響力を持つことができます。 具体的には、以下のような権利が株主に認められています。
| 議決権割合 | 行使できる主な権利 |
|---|---|
| 1%以上(または300個以上の議決権) | 株主総会への議題提案権 |
| 3%以上 | 会計帳簿閲覧請求権、株主総会招集請求権 |
| 1/3超 | 特別決議(重要事項)の阻止権 |
| 過半数(1/2超) | 普通決議の単独可決権 |
| 2/3以上 | 特別決議の単独可決権(定款変更・合併等) |
たとえば、被相続人が同族企業の過半数株式を持っていた場合、その株式を引き継いだ相続人は事実上の経営権を握ることになります。 事業承継の観点からも、非上場株式の相続は後継者が経営権を正式に引き継ぐための手段として機能します。 会社の将来性や事業内容を理解しているご家族にとっては、相続によって経営に携わることができるのは大きなメリットといえます。
配当金を受け取れる場合がある
株主の権利のひとつに、会社が利益を上げた際に「剰余金の配当」を受け取る権利があります(会社法第105条第1項第1号)。 非上場株式を相続した場合でも、会社が配当を決議すれば、保有株式数に応じた配当金を受け取ることができます。
中小企業の場合、節税対策や内部留保の観点から配当を出さないケースも多いのは事実です。 しかし、安定した業績を持つ優良な非上場企業では、毎年一定の配当を行っている会社も存在します。 このような会社の株式を相続した場合、定期的なインカムゲイン(資産保有による収入)を得られる可能性があります。
相続の対象となる会社が過去に配当実績を持つかどうかは、確定申告書の控えや決算書などで確認することができます。 配当を見込んで相続するかどうかを判断する際は、会社の財務状況や今後の収益見通しを慎重に調べることが大切です。
売却による現金化も選択肢のひとつ
非上場株式は、相続後に売却して現金化することも理論上は可能です。 株式は原則として譲渡可能な財産であるため、譲渡制限のない株式であれば相続後に自由に第三者へ売却できます(会社法第127条)。
譲渡制限株式の場合でも、売却の選択肢は残されています。 会社に対して譲渡承認を申請し、承認が得られれば第三者への売却が可能です。 承認が得られなかった場合には、会社または会社が指定する買取人が株式を買い取らなければならないと定められており(会社法第140条)、いずれの結果になっても相続人が完全に行き詰まることはありません。
ただし、非上場株式の買い手を見つけることは容易ではなく、売却価格の交渉にも専門的な知識が必要です。 相続後に換金を検討している場合は、早い段階から弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
非上場株式を相続する際の注意点

非上場株式の相続にはメリットがある一方、見落とすと大きな損失につながる注意点もいくつかあります。 事前に把握しておくことが、適切な相続判断につながります。
相続税の負担が大きくなる可能性がある
非上場株式の相続において最も注意が必要なのが、相続税の負担が想定以上に大きくなるリスクです。 相続税は、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に課税されます。 非上場株式は市場価格がないため、評価額の計算結果が相続人の予想を大きく上回ることがあります。
たとえば、長年にわたって成長してきた中小企業のオーナーが多くの株式を保有していた場合、その株式の相続税評価額は数千万円から数億円に達することも珍しくありません。 相続税の税率は最大55%(累進課税)であるため、評価額が高い株式を相続した場合、相続税の納付資金を確保できず、自身の財産から不足分を補わなければならない事態も起こり得ます。
また、非上場株式を相続したとしても、株式自体は「現金」ではありません。 相続税は原則として現金で納付する必要があるため、株式の評価額が高くなれば高くなるほど、納税のための手元資金の確保が課題となります。 この問題への対処として、後述する「金庫株特例」や「取得費加算の特例」を活用する方法があります。
評価方法が複雑で価格の把握が難しい
非上場株式の評価は、上場株式のように終値をそのまま使えるわけではありません。 財産評価基本通達に基づく評価は、会社の規模、業種、株主の属性などによって複数の評価方式が存在し、適用する方式によって評価額が大きく変わります。
評価方式の選択を誤ると、過大な相続税を支払うことにもなりかねず、逆に過少申告となれば税務調査のリスクも生じます。 また、評価に必要な財務データや会社情報を株式発行会社から取得しなければならないため、会社側の協力が得られない場合には手続きが滞ることもあります。 非上場株式の評価は、相続税専門の税理士に依頼することが事実上の必須条件といえます。
相続後も売却が容易ではない
非上場株式は証券取引所で売買できないため、相続後に換金したいと思っても、すぐに現金化できない場合が多いです。 中小企業の株式を欲しがる第三者投資家は少なく、仮に買い手が見つかったとしても価格交渉や会社の承認手続きなどに相当の時間と労力がかかります。
さらに、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内と定められており、その期限内に株式の評価・申告・納付まで対処する必要があります。 換金できないまま高額の相続税を課税されると、他の財産を使って納税しなければならなくなるケースもあります。 相続後の売却可能性や換金性については、事前に十分な調査と計画が求められます。
議決権割合によっては経営への影響が限られる
株式を相続しても、その議決権割合が低い場合、経営への影響力はほとんど持てない可能性があります。 たとえば、相続によって取得した株式が全体の5%程度に過ぎず、他の株主が70%以上を保有しているような状況では、株主総会での決議において自分の意思が反映されることはほぼありません。
非上場会社、特に同族経営の会社では、特定の株主(後継者や経営者)が過半数を握っているケースが多く、少数株主の立場では配当や経営情報へのアクセスも制限される場合があります。 相続する前に、その会社の株主構成や議決権分布を確認し、実際にどの程度の権利を行使できるのかを見極めることが重要です。 権利行使が事実上困難な少数株式を相続しても経済的メリットが得られない場合は、後述する売却や遺産分割協議での整理を検討するとよいでしょう。
相続税申告のための非上場株式の評価方法

非上場株式の相続税評価は、財産評価基本通達に基づいて行われます。 評価方式は一種類ではなく、株主の属性や会社の規模・状態によって異なる方式が適用されます。 ここでは、評価の全体像を体系的に解説します。
評価方式の種類と選択の仕組み
非上場株式の評価方式は、大きく「原則的評価方式」と「特例的評価方式」の2種類に分かれます。 どちらの方式を使うかは、株式を取得した人の属性(同族株主か少数株主か)と会社の種類によって決まり、納税者が任意に選べるわけではありません。
| 評価方式の種類 | 具体的な方式 | 主な適用対象 |
|---|---|---|
| 原則的評価方式 | 類似業種比準方式 | 大会社(同族株主が取得した場合) |
| 原則的評価方式 | 純資産価額方式 | 小会社(同族株主が取得した場合) |
| 原則的評価方式 | 両方式の併用 | 中会社(同族株主が取得した場合) |
| 特例的評価方式 | 配当還元方式 | 少数株主が取得した場合 |
原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)
原則的評価方式は、同族株主が株式を取得した場合に適用される評価方法で、類似業種比準方式と純資産価額方式の2つが中心となります。
類似業種比準方式は、評価対象の会社と同じ業種に属する上場企業の株価を参考にして、評価会社の1株あたりの価額を算出する方法です。 具体的には、「1株あたりの配当金額」「1株あたりの利益金額」「1株あたりの純資産価額(簿価)」の3つの比準要素を上場類似業種と比較し、一定の調整を加えて計算します。 国税庁が毎年113の業種区分ごとに発表する「業種目及び業種目別株価等」が基準データとなります。
純資産価額方式は、評価対象会社の貸借対照表上の資産・負債を時価で洗い直し、その差額(時価純資産額)から一定の法人税相当額を控除した金額をもとに株価を算出する方法です。 会社の清算価値を基礎に株価を求めるイメージで、特に資産を多く保有する会社の株価が高くなりやすい傾向があります。
特例的評価方式(配当還元方式)
配当還元方式は、同族株主以外の少数株主が株式を取得した場合に適用される特例的な評価方式です。 この方式では、株式を保有することで受け取れる年間配当金額を一定の利率(10%)で割り戻して、株式の評価額を計算します。
計算式は以下のとおりです。
配当還元方式による1株の評価額=(1株あたりの年間配当金額 ÷ 10%)×(1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)
なお、1株あたりの年間配当金額が2円50銭未満の場合(無配の場合を含む)は、計算上2円50銭として扱います。 配当還元方式は、原則的評価方式と比べて評価額が大幅に低くなる傾向があり、少数株主の税負担を軽減する仕組みです。
同族株主と少数株主で評価方法が異なる
非上場株式の評価において、最初に行う判定が「相続した人が同族株主に該当するかどうか」です。 この判定結果によって、適用される評価方式が180度異なります。
同族株主とは、ある株主グループ(株主本人とその配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族などの関係者)の議決権割合が30%以上である場合に、そのグループに属する株主のことをいいます。 ただし、議決権割合が50%を超えるグループが存在する場合には、そのグループのみが同族株主となります。
少数株主とは、同族株主以外の株主のことで、会社の経営に対して実質的な支配力を持たない株主を指します。 少数株主には原則的評価方式ではなく、評価額の低い配当還元方式が適用されます。
同族株主に該当するかどうかは、相続による取得後の議決権割合で判断することがポイントです。 相続によって議決権割合が増加した結果、少数株主から同族株主に変わるケースもあるため、相続前後の株主構成の変化に注意が必要です。
会社規模による評価方法の決定(大会社・中会社の大/中/小・小会社)
同族株主が原則的評価方式を適用する場合、次のステップとして「会社規模の判定」を行います。 会社規模は「従業員数」「総資産価額(帳簿価額)」「取引金額(年間売上)」の3要素によって、以下の5区分に分類されます。
| 会社規模 | 原則の評価方法 | 斟酌率(L) |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 0.7 |
| 中会社(大) | 類似業種比準方式×0.9+純資産価額方式×0.1 | 0.6(中会社) |
| 中会社(中) | 類似業種比準方式×0.75+純資産価額方式×0.25 | 0.6(中会社) |
| 中会社(小) | 類似業種比準方式×0.6+純資産価額方式×0.4 | 0.6(中会社) |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 0.5 |
大会社は類似業種比準方式が原則で、上場企業との比較で株価を算出します。 中会社は、規模に応じた割合(Lの値)で2つの方式を組み合わせて評価します。 小会社は純資産価額方式が原則ですが、「純資産価額方式×0.5+類似業種比準方式×0.5」の計算を選択することも認められています(容認方式)。
なお、いずれの会社規模であっても、純資産価額方式による評価額のほうが低くなる場合は、純資産価額方式を選択することが可能です。 税負担を最小限に抑えるためには、両方の方式で計算を行い、有利な方式を選ぶという検討が欠かせません。
特定の評価会社に該当する場合の取り扱い
会社の状態によっては、通常の評価方式ではなく「特定の評価会社」として特別な評価が行われます。 特定の評価会社に該当する主な類型は以下のとおりです。
| 特定の評価会社の種類 | 概要 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 株式等保有特定会社 | 総資産に占める株式等の割合が50%以上 | 純資産価額方式(原則) |
| 土地保有特定会社 | 総資産に占める土地等の割合が一定以上 | 純資産価額方式(原則) |
| 比準要素数1の会社 | 直前期末・前々期末の比準3要素のうち2つがゼロ | 純資産価額方式(原則) |
| 比準要素数0の会社 | 直前期末の比準3要素がすべてゼロ | 純資産価額方式 |
| 開業後3年未満の会社 | 設立から3年未満または比準3要素がすべてゼロ | 純資産価額方式 |
| 開業前または休業中の会社 | 事業を開始していない、または休業中 | 純資産価額方式 |
| 清算中の会社 | 解散・清算手続き中 | 清算分配見込額 |
特定の評価会社は、原則として純資産価額方式によって評価されるため、類似業種比準方式よりも評価額が高くなるケースが多いです。 ただし、同族株主以外の少数株主が取得した株式については、特定の評価会社(株式等保有特定会社・土地保有特定会社・比準要素数1の会社・開業後3年未満の会社等)に該当する場合であっても、配当還元方式での評価が認められます。 自社が特定の評価会社に該当するかどうかの判断は複雑なため、税理士への相談が必須です。
非上場株式の相続手続きの流れ

非上場株式の相続には、一般的な相続手続きに加えて、株式特有のステップが存在します。 以下に、相続開始から完了までの全体の流れを解説します。
①相続人・相続財産の調査
相続手続きの第一歩は、「誰が相続人なのか」と「どのような財産があるのか」を明らかにすることです。 相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の収集が必要です。 相続人に漏れがある場合、遺産分割協議をやり直さなければならない可能性があるため、この調査は慎重かつ確実に行わなければなりません。
相続財産の調査では、不動産・預貯金・有価証券・保険契約などとともに、非上場株式の有無を確認します。 被相続人が会社を経営していた場合や、過去に会社設立・出資を行った形跡がある場合は、非上場株式が含まれている可能性を念頭に置いて調査を進めましょう。
非上場株式の存在確認方法
上場株式であれば、証券保管振替機構(ほふり)への照会や証券会社への問い合わせで保有状況を確認できます。 しかし、非上場株式はこれらの機関では管理されていないため、別の方法で存在を確認する必要があります。
非上場株式の存在を確認する主な手がかりは以下のとおりです。
- 被相続人が保管していた株券(会社によっては紙の株券を発行している場合がある)
- 会社から送付された株主総会の招集通知
- 配当金が支払われている場合は配当金支払通知書
- 確定申告書の控えにある配当収入の記載
- 法人税の申告書や会社の決算書類(被相続人が役員だった会社)
- 被相続人が保有していた印鑑や実印の使用履歴
上記を手がかりに株式発行会社を特定したら、直接その会社に連絡して保有株式数や株主としての地位を確認します。
②株式評価額の算定
相続財産としての非上場株式の評価額を算出するステップです。 前述の評価方式に基づき、相続税申告のための評価額を正確に計算することが求められます。
評価に必要な主な情報・書類は以下のとおりです。
- 株式発行会社の直前期末・前々期末の決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 発行済み株式数および資本金の額
- 配当の実績(配当金支払調書)
- 会社の業種分類(類似業種比準方式に必要)
- 従業員数・総資産価額・取引金額(会社規模判定のため)
これらの情報をもとに、会社規模の判定→評価方式の選択→株価の計算という流れで評価額を算定します。 計算が複雑であるため、相続税を専門とする税理士に依頼することが現実的です。 なお、評価額は相続税申告書に記載される数値となるため、誤りがあると税務調査の対象になるリスクがあります。
③遺産分割協議と取得者の決定
相続財産の全体像が明らかになったら、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を話し合う遺産分割協議を行います。 遺言書がある場合は、原則として遺言の内容に従いますが、相続人全員が合意すれば異なる分割方法を選ぶことも可能です。
非上場株式が含まれる相続では、株式を誰が引き継ぐかが事業承継の観点からも重大な問題となります。 会社の経営を引き継ぐ相続人が株式を取得するのが一般的ですが、株式の評価額が高い場合は、他の相続財産とのバランスを考慮した協議が必要です。
遺産分割協議が成立したら、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書を作成し、各自の印鑑証明書を添付します。 この協議書は、株主名簿の書き換えや相続税申告の際にも必要となる重要書類です。
④株主名簿の書き換え手続き
非上場株式を相続した相続人は、株式発行会社に対して株主名簿の書き換え(名義書換)を請求する必要があります。 株主名簿が書き換えられることで、正式に新しい株主として会社から認識され、株主総会の招集通知や配当金支払通知の送付先も変更されます。
必要書類一覧
株主名簿の書き換えに必要な書類は会社によって若干異なりますが、一般的には以下のものが求められます。
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 株式名義書換請求書 | 会社指定の様式がある場合はそれに従う |
| 株券 | 紙の株券が発行されている場合のみ |
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 相続関係の証明に使用 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 法定相続人の確認に使用 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の実印押印・印鑑証明書添付 |
| 相続人の印鑑証明書 | 協議書に押印したものと同一の印鑑 |
| 相続人の住民票 | 住所確認のため |
| 遺言書(ある場合) | 検認済みのもの(公正証書遺言を除く) |
会社によっては追加書類が必要なケースもあるため、事前に株式発行会社へ確認することをお勧めします。 また、会社が株式事務を信託銀行に委託している場合は、その信託銀行に対して手続きを行います。
⑤相続税の申告・納付(申告期限は10か月以内)
相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に被相続人の住所地を管轄する税務署に対して行う必要があります。 この期限は非常に厳格で、遺産分割協議が未了であっても期限は延長されません。
申告期限を守れない場合、本来適用できるはずの各種控除(配偶者控除・小規模宅地の特例など)が使えなくなる恐れがあります。 ただし、申告時点で遺産分割が確定していない場合は、法定相続分で相続したとみなして申告し、「3年以内の分割見込書」を提出することで、後日分割が確定した段階で更正請求によって特例の適用を受けることが可能です。
非上場株式が含まれる相続では、株式評価の作業に時間がかかることが多いため、相続開始後できるだけ早く専門家への相談を始めることが重要です。 申告と同時に、相続税の納付も10か月以内に完了させなければなりません。 納税資金が不足する場合は、延納(分割払い)や物納(財産での代物弁済)、あるいは後述の金庫株特例を活用した現金化を検討しましょう。
非上場株式を相続したくない場合の選択肢

非上場株式の相続は、場合によっては相続人にとって大きな負担になることがあります。 「相続したくない」「どうにかして手放したい」という方のために、主な選択肢を整理します。
遺産分割協議で他の相続人に引き継ぐ
相続人が複数いる場合、遺産分割協議によって「非上場株式は自分以外の相続人が取得する」という合意をすることができます。 遺産分割では、法定相続分にとらわれず、相続人全員の合意があればどのような分割方法でも選択可能です。
たとえば、兄が会社を引き継ぐ立場であれば兄が株式を相続し、自分は代わりに不動産や預貯金を多めに取得するといった調整が可能です。 この方法は、相続放棄と異なり、他の財産を取得しながら特定の財産(非上場株式)を回避できる点が大きなメリットです。
ただし、株式の評価額が他の財産より著しく高い場合は、公平な分割が難しくなることもあります。 遺産全体のバランスを考慮しながら、税理士や弁護士のサポートを受けて協議を進めることをお勧めします。
相続放棄をする(3か月以内・全財産の放棄となる点に注意)
非上場株式を含む遺産を一切相続したくない場合は、相続放棄という選択肢があります。 相続放棄とは、被相続人の一切の権利義務を承継しないことを家庭裁判所で申述する手続きです。 相続放棄が認められると、その相続人は「初めから相続人でなかった」とみなされます。
相続放棄をするためには、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。 この3か月という期限は、熟慮期間とも呼ばれ、正当な理由がある場合には家庭裁判所に延長を申請することも可能です。
最も重要な注意点は、相続放棄は「全財産の放棄」であるという点です。 非上場株式だけを放棄して、預貯金だけを受け取るといった選択的な放棄はできません。 遺産のなかに取得したい財産がある場合は、遺産分割協議で調整する方法を先に検討すべきでしょう。
また、相続放棄した場合、次順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹など)が突然相続人となる可能性があります。 他の親族への影響も考慮したうえで判断することが大切です。
相続後に会社や第三者へ売却する
いったん非上場株式を相続したうえで、その後に会社や第三者へ売却するという方法もあります。 この方法は、相続税の申告や名義書換を終えてから換金を目指すアプローチです。
売却先の主な候補は以下のとおりです。
- 株式発行会社(自己株式の取得):会社が自社の株式を買い取る方法。後述の金庫株特例を活用すれば税負担を軽減できる
- 他の既存株主:会社の同族株主や役員が個人として買い取るケース
- 第三者(M&Aや投資家):会社に成長性や特殊な価値がある場合に選択肢となる
会社への売却(自己株式の取得)は、会社にとっても株主構成の整理につながるため、双方にとってメリットのある方法です。 ただし、会社に買い取るための財務的な余力(分配可能額の範囲内であること)が前提であり、また課税上の問題(みなし配当)が生じる点に注意が必要です。
譲渡制限株式の場合の承認請求手続き
相続後に第三者に株式を売却したい場合、その株式が譲渡制限株式であれば、会社の承認を得るための手続きが必要です。 手続きの流れは以下のとおりです。
①譲渡承認の申請 株主(相続人)が会社(取締役会または株主総会)に対して、「○○という人物に株式を譲渡したいので承認してほしい」と書面で申請します。
②会社による承認または不承認の決定 会社は原則として2週間以内に承認または不承認の通知をしなければなりません。 期限内に通知がなければ、承認があったとみなされます。
③不承認の場合の買取請求 会社が承認しない場合、株主は「会社自身または会社が指定する買取人に株式を買い取ることを求める」旨を申請時または不承認通知後に請求できます。 この場合、会社はその請求を原則として拒否できず、会社自身か指定買取人が株式を取得することになります(会社法第140条)。 なお、会社の財務状況によっては買取りができない場合もあるため、詳細は専門家にご確認ください。
④買取価格の決定 買取価格は当事者間の協議で決まりますが、合意に至らない場合は裁判所に売買価格の決定を申立てることができます。
非上場株式の相続における税制特例

非上場株式を相続した場合、一定の条件を満たすことで税負担を大幅に軽減できる税制特例が設けられています。 この特例を知らないまま手続きを進めてしまうと、本来払わなくてよかった税金を支払うことになりかねません。 特に相続税の納税資金確保のために株式を売却したいと考えている場合は、必ず確認しておくべき制度です。
みなし配当不適用の特例(金庫株特例)
非上場株式を相続した後、その株式を発行会社に売却(自己株式の取得)する場合、通常は「みなし配当課税」が発生します。 みなし配当とは、会社が株主から自社の株式を買い取る際に支払う対価のうち、資本金等の払戻し部分を超えた金額を「配当とみなして課税する」制度です。 みなし配当は総合課税(累進税率)の対象となるため、最高で約55%もの税率が適用される可能性があります。
これでは、相続税の納税資金を確保するために株式を売却したにもかかわらず、さらに高額の所得税が課税されるという本末転倒な事態が生じます。 この問題を解決するのが、「相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例」(みなし配当不適用の特例、通称「金庫株特例」)です。
この特例を適用すると、みなし配当課税が行われず、売却益全体が「譲渡所得」として扱われます。 譲渡所得は申告分離課税(税率20.315%)であるため、総合課税と比較して税負担を大幅に軽減できます。
適用要件(相続開始から3年10か月以内・事前届出が必要)
金庫株特例を適用するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる株式 | 相続または遺贈によって取得した非上場株式であること |
| 売却先 | 株式の発行会社であること(第三者への売却は対象外) |
| 売却期限 | 相続の開始があった日の翌日から、相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から原則3年10か月以内) |
| 相続税の申告 | 相続税の申告書を提出し、納付すべき相続税額があること |
| 事前届出 | 株式を発行会社に売却する前に、「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社に提出し、発行会社が翌年1月31日までに所轄税務署へ提出すること |
特に重要なのは「事前届出」の要件です。 株式を会社に売却する「前」に届出書を発行会社に提出しなければならず、売却後に提出しても特例の適用は認められません。 また、発行会社が期限内に税務署へ届出書を提出しなかった場合も特例が適用されないため、発行会社との緊密な連携が欠かせません。 この手続きの失念は取り返しがつかないため、専門家とともに計画的に進めることが必須です。
取得費加算の特例
相続によって非上場株式を取得した人が、一定期間内にその株式を売却する場合に利用できる、もうひとつの特例が「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例)です。
通常、株式を売却した際の譲渡所得は「売却価額-取得費」で計算されます。 相続によって取得した株式の取得費は、被相続人が取得したときの金額が引き継がれるため、取得費が低い(または不明)場合は譲渡所得が大きくなり、税負担が増します。
取得費加算の特例では、相続税として支払った金額のうち、その株式に対応する部分の金額を取得費に加算して計算できます。 これによって取得費が大きくなり、結果として譲渡所得が減少し、所得税の負担を軽減することができます。
この特例の適用要件は以下のとおりです。
- 相続または遺贈によって財産を取得していること
- その取得に際して相続税が課税されていること
- 相続の開始があった日の翌日から、相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から原則3年10か月以内)に、その財産を譲渡していること
取得費加算の特例は、非上場株式に限らず、不動産など他の相続財産を売却する場合にも適用できる汎用性の高い制度です。
2つの特例は併用可能
金庫株特例(みなし配当不適用の特例)と取得費加算の特例は、要件を満たす場合に限り、同時に適用することができます。
たとえば、相続で取得した非上場株式を発行会社に売却する場合を考えてみます。
- 金庫株特例の適用により:みなし配当課税が回避され、売却益全体に20.315%の申告分離課税(譲渡所得)が適用される
- 取得費加算の特例の適用により:支払った相続税の一部が取得費に加算され、課税される譲渡所得の金額が減少する
2つの特例を組み合わせることで、税負担の軽減効果が最大化されます。 特に相続税の課税額が大きかったケースや、発行会社に売却することで相続税の納税資金を確保しようとしている場合は、この併用が非常に有効な節税策となります。
ただし、いずれの特例も適用のための要件と期限が定められており、手続きの漏れや期限切れによって適用を受けられなくなることがあります。 相続開始後はできるだけ早く、相続税専門の税理士に相談し、これらの特例の活用可能性を検討することを強くお勧めします。
非上場株式の相続でお困りの方は、株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式の相続は、放置すればするほど問題が複雑になっていきます。 評価方法の選択を誤って過大な相続税を支払ったり、税制特例の期限を過ぎて本来受けられたはずの軽減措置を失ったりするケースは少なくありません。 また、相続後に株式を手放したくても、買い手が見つからずに長期間塩漬けになってしまうケースも多くみられます。
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非上場株式の相続は、対応が早ければ早いほど選択肢が広がります。 「まだ相続が発生していないが、事前に準備しておきたい」という段階からのご相談も大歓迎です。 非上場株式や少数株式に関するお悩みは、まずはお気軽にお問い合わせください。 初回のご相談は無料で承っています。 専門家が丁寧にお話をお伺いし、お客様一人ひとりの状況に合わせた最善の対応策をご提示します。
まとめ:非上場株式の相続は専門家への早期相談が重要
本記事では、非上場株式の相続に関する基本知識から評価方法、手続きの流れ、相続したくない場合の選択肢、そして税制特例まで、幅広く解説しました。 最後に、重要ポイントを整理します。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 相続の可否 | 非上場株式は相続できる。譲渡制限があっても会社承認は不要(会社法第134条第4号) |
| 評価方法 | 同族株主は原則的評価方式、少数株主は配当還元方式 |
| 会社規模の区分 | 大会社・中会社(大/中/小)・小会社の5段階で評価方式が決まる |
| 相続手続き | 調査→評価→遺産分割協議→名義書換→申告・納付の順に進める |
| 申告期限 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 |
| 相続したくない場合 | 遺産分割協議での調整、相続放棄(3か月以内)、相続後の売却の3択 |
| 税制特例 | 金庫株特例と取得費加算の特例は併用可能(期限は相続開始から3年10か月以内) |
非上場株式の相続は、評価の複雑さ・期限の厳しさ・税制特例の活用可能性という3つの観点から、早期に専門家へ相談することが非常に重要です。 相続開始後に時間が経過すればするほど、選択肢が狭まり、対処できる対策も限られてきます。
相続人が非上場株式の存在に気づいた段階で、まずは相続税を専門とする税理士に連絡し、評価額の試算と今後の手続きについて相談することをお勧めします。 弁護士・税理士・司法書士などが連携した総合的なサポートを受けることで、スムーズな相続手続きと適切な節税対策が実現できます。 非上場株式の相続で不安を抱えているとき、一人で抱え込まず、信頼できる専門家を早めに見つけることが、最善の第一歩です。


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