非上場株式を売却したとき、どれくらいの税金がかかるのか、どのように申告すればよいのか、不安を感じている方は少なくないはずです。 上場株式と違い、証券取引所に価格が表示されるわけではないため、税務上の取り扱いが複雑になりやすく、知らないまま手続きを進めると思わぬ課税リスクを抱えることもあります。
この記事では、非上場株式の譲渡所得にかかる税率・計算方法・確定申告の手順を、個人・法人・発行会社への売却という3つのケース別にわかりやすく解説します。 低額譲渡や無償譲渡をめぐる税務リスク、みなし配当課税の仕組み、相続取得株式に関する特例など、見落としがちな論点も網羅しているので、ぜひ最後までお読みください。
非上場株式の譲渡所得とは

譲渡所得の基本的な仕組み
譲渡所得とは、資産を売却・譲渡することによって生じた利益(キャピタルゲイン)に対して課税される所得のことです。 株式の場合は、売却価格から取得費用や譲渡にかかった諸経費を差し引いた差益が、課税の対象となります。
所得税法上、譲渡所得はその資産の種類によって取り扱いが異なります。 株式等の譲渡所得については、給与所得や事業所得といった他の所得とは切り離して税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。
非上場株式の場合、税法上は「一般株式等」に区分されます。 上場株式等(特定株式等)とは別の区分として扱われるため、計算や損益通算のルールが異なってくる点が重要です。
譲渡所得の計算の基本式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)
収入金額とは株式を譲渡した際に受け取った対価(売却価格)のことです。 取得費はその株式を取得したときに支払った購入代金や付随費用、譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料などが含まれます。
この計算によって算出された譲渡所得に対して、一定の税率をかけたものが納付すべき税額となります。 なお、個人が株式等を譲渡した場合の課税方式については、所得税法第37条の10および第37条の11に規定されており、非上場株式(一般株式等)は同37条の10の対象です。
上場株式との税務上の違い
非上場株式と上場株式は、どちらも「株式の譲渡所得」である点は共通しますが、税務上の取り扱いにはいくつかの重要な違いがあります。 主な相違点を整理すると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 非上場株式(一般株式等) | 上場株式(特定株式等) |
|---|---|---|
| 税法上の区分 | 一般株式等に係る譲渡所得等 | 上場株式等に係る譲渡所得等 |
| 課税方式 | 申告分離課税(確定申告必須) | 申告分離課税(特定口座で源泉徴収も可) |
| 税率 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) | 20.315%(同左) |
| 特定口座の利用 | 不可 | 可(源泉徴収あり口座で申告不要も選択可) |
| 他の株式等との損益通算 | 一般株式等の範囲内のみ可 | 上場株式等の範囲内のみ可 |
| 上場・非上場間の損益通算 | 不可 | 不可 |
| 翌年以降への損失繰越控除 | 不可 | 可(3年間) |
| 価格の把握 | 市場価格なし(算定が必要) | 市場価格あり(随時確認可) |
上場株式では証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、確定申告なしで課税関係を完結させることができます。 一方、非上場株式には特定口座の制度が適用されないため、売却益が発生した場合は原則として自分で確定申告を行わなければなりません。
また、上場株式で生じた損失は翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の譲渡益と相殺することができます。 しかし非上場株式にはこの繰越控除の制度がなく、損失が生じても他の利益と相殺できる範囲は一般株式等の中に限られます。
さらに非上場株式には市場価格が存在しないため、時価の把握や適正価格の算定に専門的な知識が必要となることも、上場株式との大きな違いのひとつです。
申告分離課税が適用される理由
非上場株式の譲渡所得に申告分離課税が適用されるのは、キャピタルゲインの課税を他の所得と切り離すことで、税負担の公平性と安定性を確保するためです。
総合課税方式では、株式売却益を給与所得などと合算して累進税率(最大45%)で課税することになります。 しかし株式の売却益は一時的にまとまった金額が発生しやすい性質を持つため、総合課税では税負担が過大になりやすく、投資意欲を損なうおそれがあります。
そこで税制上は、株式の譲渡所得を他の所得と分離し、一律20.315%の比例税率で課税する申告分離課税を採用しています。 これにより、高所得者であっても低所得者であっても、株式の売却益に対する税負担率は同一となります。
また申告分離課税とすることで、損益通算の範囲を同種の金融所得の中に限定できるという政策的な意義もあります。 非上場株式(一般株式等)の譲渡所得は、上場株式等の譲渡所得とは区分が異なるため、両者の損益を互いに通算することはできません。
なお、平成28年(2016年)1月1日以降、「一般株式等に係る譲渡所得等」と「上場株式等に係る譲渡所得等」が別々の区分として明確に整理され、両者の間での損益通算が不可となりました。 申告分離課税の制度自体はそれ以前から存在していましたが、この区分変更によって非上場株式と上場株式の税務上の分離がより明確になっています。
損益通算の可否について
損益通算とは、ある所得区分で生じた損失を他の所得と相殺して、課税対象額を減らすしくみです。 非上場株式の譲渡損益については、損益通算できる範囲が法律によって明確に限定されています。
具体的に、非上場株式(一般株式等)の譲渡損失と損益通算できるのは、以下の所得に限られます。
- 他の非上場株式等(一般株式等)の譲渡所得
- 特定公社債等以外の一般公社債等に係る利子所得および譲渡所得
反対に、以下のものとは損益通算できません。
- 上場株式等の譲渡所得・配当所得
- 給与所得・事業所得・不動産所得などの総合課税の所得
たとえば、非上場株式Aの売却で1,000万円の損失が出ても、同年に保有している上場株式Bの売却で得た500万円の利益と相殺することはできません。 また、非上場株式の損失は翌年以降への繰越控除も認められておらず、その年限りで損失が確定してしまいます。
損益通算の制約があることで、非上場株式の売却タイミングや戦略が、上場株式以上に重要になります。 複数の株式を保有している場合は、税理士に相談しながら売却計画を立てることが得策です。
非上場株式の譲渡所得にかかる税率

個人が譲渡する場合の税率(所得税・住民税・復興特別所得税の内訳)
個人が非上場株式を譲渡して利益を得た場合、その譲渡所得に対して合計20.315%の税率が課されます。 これは申告分離課税として計算され、給与所得などの他の所得には影響しません。
税率の内訳は以下のとおりです。
| 税目 | 税率 | 概要 |
|---|---|---|
| 所得税 | 15% | 国に納める税金 |
| 復興特別所得税 | 0.315% | 所得税額×2.1%(令和19年まで) |
| 住民税 | 5% | 都道府県・市区町村に納める税金 |
| 合計 | 20.315% |
復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源を確保するために設けられた税金で、令和19年(2037年)12月31日までの間に生じる所得について課されます。 計算上は「所得税額×2.1%」となりますが、株式譲渡所得の場合、所得税率15%に2.1%を乗じた0.315%が実質的に上乗せされます。
住民税の5%は、翌年度に普通徴収(自分で納付)または特別徴収(給与天引き)の形で納めます。 確定申告を行うと翌年の住民税に自動的に反映されるため、所得税の申告と住民税は連動して処理されます。
上場株式と非上場株式で税率自体に違いはありませんが、上場株式では特定口座を使うことで申告不要を選べるのに対し、非上場株式では自ら申告して納税する必要がある点に注意が必要です。
法人が譲渡する場合の税率
法人が非上場株式を譲渡した場合、個人のような分離課税は適用されません。 株式の売却益は法人の「益金」として他の収益と合算され、通常の法人税の計算対象となります。
法人に課される主な税目は以下のとおりです。
| 税目 | 概要 |
|---|---|
| 法人税 | 国に納める基本的な法人税 |
| 法人住民税 | 都道府県・市区町村に納める住民税 |
| 法人事業税 | 都道府県に納める事業税 |
| 特別法人事業税 | 国(都道府県経由)に納める付加税 |
法人税率は会社の規模や所得水準によって異なります。 資本金1億円以下の中小法人の場合、課税所得800万円以下の部分には15%の軽減税率が適用され、800万円を超える部分には23.2%の基本税率が適用されます。 法人住民税・法人事業税・特別法人事業税を含めた実効税率は、所得水準によっておおむね25%〜34%前後が目安となります。
法人の場合、株式売却益は他の事業所得と合算されるため、会社全体の利益水準によって実質的な税負担が変わります。 また、株式売却で損失が出た場合は、他の黒字部分と相殺して法人税の負担を軽減することができます。
なお、法人が個人株主に対して著しく低い価格で株式を売却した場合は、差額が寄付金や給与と認定されるリスクがあります。 取引価格の設定には適正な価格算定が欠かせません。
発行会社に売却する場合のみなし配当課税
個人が保有する非上場株式を、その株式を発行した会社(発行会社)に売却する場合は、通常の第三者への売却とは課税の仕組みが根本的に異なります。
発行会社が自社の株式を買い取ることは「自己株式の取得」にあたります。 このとき、売却代金のうち株式に対応する「資本金等の額」の部分を超えた金額は、会社の利益積立金(内部留保)の払い戻しとみなされ、税法上は「みなし配当」として扱われます。
売却代金の課税上の分解は以下のようになります。
| 売却代金の内訳 | 課税区分 | 税率・徴収方法 |
|---|---|---|
| 1株あたり資本金等の額×売却株式数に対応する部分 | 譲渡所得(申告分離課税) | 20.315% |
| 上記を超える部分(みなし配当) | 配当所得(総合課税) | 源泉徴収20.42%(住民税は源泉徴収なし)+確定申告 |
みなし配当が発生すると、1回の取引が「譲渡所得」と「配当所得」の2つに分かれて課税されるため、税負担が大幅に増す可能性があります。
たとえば、1株あたりの資本金等の額が10円、売却株式数が10,000株の場合、「資本金等の額に対応する部分」は10万円となります。 売却代金が500万円であれば、残りの490万円がみなし配当として配当所得に区分されます。
源泉徴収税率と総合課税の関係
みなし配当として扱われる部分は、発行会社が支払時に源泉徴収税率20.42%(所得税15%+復興特別所得税0.42%)を差し引いて支払います。 住民税は源泉徴収の対象とならないため、後日自分で確定申告して納付することになります。
非上場株式のみなし配当については、上場株式の配当と異なり、「申告不要制度」や「申告分離課税」を選択することができません。 そのため、確定申告で総合課税として他の所得と合算して申告することが必要となります。
総合課税を選んだ場合、みなし配当は給与所得などと合算されて累進税率が適用されます。 税率は以下のように所得の合計額に応じて変わります。
| 課税所得の合計(目安) | 所得税率 | 住民税率 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 10% | 15% |
| 195万円〜330万円以下 | 10% | 10% | 20% |
| 330万円〜695万円以下 | 20% | 10% | 30% |
| 695万円〜900万円以下 | 23% | 10% | 33% |
| 900万円〜1,800万円以下 | 33% | 10% | 43% |
| 1,800万円〜4,000万円以下 | 40% | 10% | 50% |
| 4,000万円超 | 45% | 10% | 55% |
高所得者がみなし配当を受け取ると、最大で55%の税率が適用されることになり、手取り額が大幅に目減りする可能性があります。
一方、総合課税を選択した場合は「配当控除」(5%または10%)を受けることも可能です。 所得水準や他の所得との兼ね合いを踏まえ、申告方法を慎重に判断することが大切です。
相続取得株式を発行会社に譲渡する場合の特例
相続または遺贈によって取得した非上場株式を、一定期間内に発行会社に譲渡した場合は、みなし配当課税が適用されず、全額が譲渡所得として申告分離課税の対象となる特例があります。
この特例は「租税特別措置法第9条の7」に規定されており、要件を満たせば税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
特例の主な適用要件は以下のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 取得原因 | 相続または遺贈による取得であること |
| 譲渡先 | 株式の発行会社であること |
| 譲渡期限 | 相続税の申告書の提出期限(相続開始から10か月以内)の翌日以後3年を経過する日まで(最長で相続開始から約3年10か月以内) |
| 申告手続き | 確定申告書に「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の各種課税の特例に関する明細書」を添付すること |
| 相続税の申告 | 相続税の申告書を提出していること |
この特例を活用することで、本来は総合課税(最大55%)となるはずのみなし配当部分が、申告分離課税(20.315%)の譲渡所得として扱われます。 たとえば高所得者が相続した非上場株式を発行会社に売却する場合、この特例の有無によって税負担が何百万円も変わることがあります。
ただし、確定申告時に所定の明細書を添付することが必須の手続きであり、書類の添付漏れがあると特例は適用されません。 相続後に株式の処分を検討する際は、必ず税理士に相談し、手続き漏れのないよう備えることが重要です。
非上場株式の譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算式(収入金額・取得費・譲渡費用)
非上場株式の譲渡所得は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)
それぞれの項目の意味と具体例を以下に整理します。
収入金額(譲渡対価) 株式を譲渡した際に受け取る金額のことで、売却価格そのものを指します。 現金での受け取りのほか、現物出資や代物弁済など、金銭以外で受け取った場合はその時価が収入金額となります。
取得費 その株式を取得したときにかかった費用の合計額です。 具体的には以下のようなものが含まれます。
- 株式の購入代金(取得価額)
- 購入時の仲介手数料
- 株式取得に際して支払った名義書換料
- 一定の借入金利子(取得のために直接必要なもの)
譲渡費用 株式を売却するにあたって直接かかった費用です。 以下のものが該当します。
- 売却時の仲介手数料
- 株式譲渡契約書に貼付する印紙税
- 売却のために必要となった株価算定費用・鑑定費用
取得費は領収書・契約書などの証拠書類で証明できることが理想ですが、書類が残っていない場合は後述の概算取得費(5%ルール)を使うことになります。 特に非上場株式は何十年も前に取得していたり、親から相続で引き継いだりしたケースも多く、取得費の確認が困難なことが珍しくありません。
取得費が不明な場合の概算取得費(個人のみ適用可能な5%ルール)
取得費が不明な場合、個人が株式等を譲渡するときは「収入金額の5%を概算取得費とみなして計算する」ことが認められています。 これは所得税基本通達38-16に規定されている取り扱いで、実務上「5%ルール」とも呼ばれます。
たとえば、取得費不明の非上場株式を1,000万円で売却した場合、概算取得費は1,000万円×5%=50万円となります。 この場合の譲渡所得は1,000万円-50万円=950万円となり、税額は950万円×20.315%=約192万9,900円と大きな金額になります。
実際の取得費が収入金額の5%を上回る場合は、実額を証明するほうが税負担を減らせます。 そのため、株式を取得した際の証拠書類(株式売買契約書・振込明細書・株主名簿など)は大切に保管しておくことが重要です。
なお、この5%ルールは個人にのみ適用されます。 法人が取得費不明の株式を売却する場合は、帳簿価額(簿価)を取得費として計上することになります。 法人の場合は会計上の記録が残っているケースが多いため、帳簿の確認から始めるとよいでしょう。
また相続や贈与で取得した株式の場合、取得費は被相続人や贈与者の取得価額を引き継ぐのが原則です(所得税法第60条)。 相続時に適正に申告していれば相続税評価額が記録されていますが、実際の取得原価は異なる場合があるため注意が必要です。
具体的な計算例
個人が第三者に売却するケース
前提条件
- 売却価額:500万円
- 取得費(購入代金+手数料):200万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):10万円
計算過程
譲渡所得 = 500万円 -(200万円 + 10万円)= 290万円
所得税(15%)= 290万円 × 15% = 43万5,000円 復興特別所得税(0.315%)= 290万円 × 0.315% = 9,135円 住民税(5%)= 290万円 × 5% = 14万5,000円
合計税額 = 約58万9,100円(合計税率20.315%)
この計算では、取得費と譲渡費用を合計した必要経費210万円を収入から差し引けるため、課税対象は500万円全額ではなく290万円になります。 取得費や譲渡費用を正確に把握・計上することが、適正な申告の第一歩です。
法人が売却するケース
前提条件
- 売却価額:2,000万円
- 取得費(簿価):1,200万円
- 譲渡費用:50万円
- 法人実効税率:約30%(中小法人・所得800万円超の目安)
計算過程
譲渡益 = 2,000万円 -(1,200万円 + 50万円)= 750万円
この750万円は他の法人所得と合算して課税されます。
法人税等(概算)= 750万円 × 30% = 225万円
個人と異なり、法人では株式売却損が生じた場合は他の黒字所得と相殺できるため、グループ全体の税負担を最適化しやすいメリットがあります。 一方、実効税率は個人(20.315%)より高くなる場合もあるため、売却主体を法人にするか個人にするかは事前に試算して判断することが重要です。
発行会社に売却するケース(みなし配当の計算例)
発行会社へ売却する場合は、売却代金を「みなし配当」と「譲渡所得」に分けて計算します。
前提条件
- 売却価額:1,000万円
- 1株あたりの資本金等の額:100円
- 売却株式数:5,000株
- 取得費:300万円
STEP1:資本金等に対応する部分の計算
資本金等相当額 = 100円 × 5,000株 = 50万円
STEP2:みなし配当の計算
みなし配当 = 売却価額1,000万円 - 資本金等相当額50万円 = 950万円
源泉徴収税額(20.42%)= 950万円 × 20.42% = 193万9,900円 ※住民税(10%相当)は源泉徴収されず、確定申告により別途納付
STEP3:譲渡所得の計算
譲渡所得 = 資本金等相当額50万円 - 取得費300万円 = -250万円(譲渡損失)
この例では譲渡所得部分は損失となるため、所得税・住民税は発生しません。 ただし、みなし配当950万円は総合課税として他の所得と合算されるため、他に高い所得がある方は実質的な税率が大幅に上がる可能性があります。
発行会社への売却を検討する際は、事前に税理士へのシミュレーションを依頼することを強くお勧めします。
低額・無償譲渡における税務リスク

個人から法人へ時価の2分の1未満で譲渡した場合のみなし譲渡課税
非上場株式を「家族が経営する法人に安く売りたい」「グループ会社間で低価格で移転したい」といった理由で低額譲渡を行うケースがあります。 しかし、個人が法人に対して時価の2分の1未満の価額で資産を譲渡した場合、税法上は時価で譲渡したものとみなして課税されます。 これを「みなし譲渡課税」と呼び、所得税法第59条第1項に規定されています。
具体的なイメージは以下のとおりです。
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| 非上場株式の時価 | 1,000万円 |
| 実際の売却価額 | 400万円(時価の40%) |
| 取得費 | 200万円 |
この場合、売り手の個人には400万円しか入ってきませんが、税務上は1,000万円で売却したとみなされます。
みなし譲渡所得 = 1,000万円(時価)- 200万円(取得費)= 800万円
税額 = 800万円 × 20.315% = 約162万5,000円
受け取っていない利益に対して税金が課される形となるため、資金繰りの観点から非常に重い負担になります。 「時価の2分の1未満」という基準は、経済的合理性のない取引を防ぐための判定ラインです。
一方、買い手の法人側では、時価と実際の取得価額との差額(1,000万円-400万円=600万円)が受贈益として法人の益金に算入され、法人税の課税対象となります。 売り手・買い手の双方に予想外の課税が生じる可能性があるため、低額譲渡には十分な注意が必要です。
個人間譲渡でみなし贈与とみなされるケース(相続税法7条)
個人から個人へ、著しく低い価額で非上場株式を譲渡した場合、譲渡を受けた側に「みなし贈与」として贈与税が課される可能性があります。 根拠となる法律は相続税法第7条で、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、時価との差額を贈与とみなして贈与税を課税する」と規定されています。
「著しく低い価額」については、所得税法のような「2分の1未満」といった明確な数値基準が法令上は定められておらず、取引の状況や当事者の関係性などを総合的に勘案して個別に判断されます。 そのため、価格設定には十分な注意が必要であり、不明な点は税理士に確認することをお勧めします。
具体例で確認します。
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| 非上場株式の時価 | 2,000万円 |
| 実際の売買価格 | 500万円 |
| みなし贈与とされる額 | 2,000万円 - 500万円 = 1,500万円 |
この1,500万円に対して贈与税が課されます。 贈与税は累進税率(最大55%)が適用されるため、贈与税額は最高で数百万円規模に達することもあります。
特に親子間・兄弟間・親族間での株式の移転は、「実質的な財産移転」と税務署に認定されやすい傾向があります。 事業承継の一環として親族間で非上場株式を移転する際は、事前に税理士による株価算定と税務シミュレーションを行うことが不可欠です。
なお、売り手の個人(法人でない場合)については、所得税法上のみなし譲渡課税(時価の2分の1未満の基準)は個人間取引には適用されません。 ただし、著しく低額での譲渡については、税務調査の対象となりやすいため注意が必要です。
適正価格の算定方法(DCF法・純資産法・比準方式)
低額譲渡や無償譲渡のリスクを回避するためには、非上場株式の適正な時価を事前に把握することが欠かせません。 非上場株式には公開された市場価格がないため、以下の3つのアプローチを用いて評価します。
DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法) 将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法です。 会社の収益力や将来性を株価に反映できるため、成長企業や事業会社の評価に向いています。 一方で、将来の事業計画の前提によって評価額が大きく変わるため、恣意的にならないよう客観性の確保が重要です。
純資産法(コスト・アプローチ) 会社の資産総額から負債を差し引いた純資産を基に株価を算定します。 簿価ベースの「簿価純資産法」と、資産・負債を時価で評価し直す「時価純資産法」の2種類があります。 計算が比較的シンプルで客観性が高く、中小企業のM&Aや相続税の申告でよく用いられます。 ただし、会社の将来の収益力やブランド価値(のれん)は反映されにくいという特徴があります。
比準方式(マーケット・アプローチ) 上場している類似企業や過去の類似取引と比較して株価を算定します。 相続税の計算では国税庁が定める「類似業種比準方式」が広く用いられており、同業の上場企業の株価指標(配当・利益・純資産)を参考に計算します。 客観的なデータに基づく点がメリットですが、類似企業の選定や非上場特有の流動性ディスカウントの調整が必要です。
| 算定方法 | 主な特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| DCF法 | 将来の収益力を反映 | 成長企業・M&A・事業承継 |
| 純資産法 | シンプルで客観的 | 資産保有会社・清算・相続 |
| 比準方式 | 市場データを参照 | 相続税申告・第三者取引 |
実務では複数の方法を組み合わせて算定し、合理的な価格帯を設定するのが一般的です。 非上場株式の時価算定は高度な専門知識を要するため、税理士や公認会計士への依頼を検討するとよいでしょう。
非上場株式の譲渡所得に関する確定申告
確定申告が必要なケースと申告期限
非上場株式の売却益が発生した場合、原則として翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)中に申告・納税を行う義務があります。 上場株式の特定口座(源泉徴収あり)のように自動処理される仕組みがないため、自分で手続きを進める必要があります。
確定申告が必要になる主なケースは以下のとおりです。
- 個人が非上場株式を譲渡して譲渡益が発生した場合
- 発行会社への売却でみなし配当が発生した場合
- 非上場株式の譲渡で損失が発生し、他の一般株式等の利益と損益通算したい場合
一方、以下のケースでは確定申告が不要な場合もあります。
- 給与所得者で、非上場株式の売却益が20万円以下の場合(ただし住民税の申告は必要)
- 法人が株式を売却した場合(法人税申告で処理)
申告期限は毎年3月15日(土日の場合は翌月曜日)です。 期限を過ぎると、「無申告加算税」(納税額の5〜15%)や「延滞税」が課されるリスクがあります。 特に非上場株式の売却は取引金額が大きくなりやすいため、無申告による追徴税額も高額になりがちです。
必要書類・添付書類の一覧
非上場株式の譲渡所得を申告する際には、以下の書類を用意する必要があります。
確定申告書本体
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 確定申告書B(第一表・第二表) | 所得の総括と税額の計算に使用 |
| 確定申告書第三表(分離課税用) | 申告分離課税の所得(譲渡所得等)を記載 |
| 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 | 株式ごとの取得費・売却価額・譲渡益を明細で記載 |
添付書類・証拠書類
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 株式譲渡契約書(写し) | 売却価額・売買日の証明 |
| 取得時の領収書・売買契約書 | 取得費の証明 |
| 株主名簿記載事項証明書 | 保有株式数の確認 |
| マイナンバーカード(写し)または通知カード+本人確認書類 | 本人確認・番号確認 |
| みなし配当等に関する支払通知書(該当する場合) | 発行会社から交付される源泉徴収税額の根拠書類 |
| 相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の各種課税の特例に関する明細書(特例適用の場合) | 租税特別措置法第9条の7の特例を受ける際に確定申告書へ添付が必要 |
確定申告書B第三表(分離課税用)は、一般の給与所得者にはなじみが薄い書類ですが、非上場株式の申告には必須です。 国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも入手できます。
みなし配当が発生した場合は、発行会社から「みなし配当等に関する支払通知書」が交付されます。 これは源泉徴収税額の根拠となる書類で、確定申告書への記載内容と一致させる必要があります。
書類が不足していたり記載内容に誤りがあったりすると、税務署から問い合わせを受ける可能性があります。 初めて申告する方や、みなし配当が発生するケースでは、早めに税理士へ相談することをお勧めします。
非上場株式と上場株式の損益通算の可否
平成28年(2016年)1月1日以降、株式等の譲渡所得は「一般株式等」と「上場株式等」に明確に区分され、両者の間での損益通算は認められていません。
損益通算の可否を整理すると以下のとおりです。
| 通算の組み合わせ | 損益通算の可否 |
|---|---|
| 非上場株式A(一般)の損失 ⟺ 非上場株式B(一般)の利益 | 可 |
| 非上場株式(一般)の損失 ⟺ 上場株式(特定)の利益 | 不可 |
| 上場株式(特定)の損失 ⟺ 非上場株式(一般)の利益 | 不可 |
| 非上場株式(一般)の損失 ⟺ 非上場株式の配当所得 | 不可 |
| 非上場株式(一般)の損失 ⟺ 一般公社債等の譲渡所得 | 可 |
また、非上場株式の損失は翌年以降への繰越控除ができません。 上場株式であれば損失を3年間繰り越せるのに対し、非上場株式ではその年限りで損失が切り捨てられる点は、大きなデメリットといえます。
たとえば、非上場株式の売却で300万円の損失が発生し、その年に上場株式の売却益が200万円あったとしても、相殺することはできません。 それぞれが独立した課税区分として計算されます。
複数の株式を保有している場合は、売却するタイミングや順番を戦略的に考えることが申告上重要なポイントになります。 特に年をまたぐ場合は、その年の全体の損益を把握した上で判断することが大切です。
非上場株式の譲渡所得・税金でお困りの方は、株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式の譲渡所得は、計算方法が複雑なうえ、みなし配当課税・みなし譲渡課税・みなし贈与など、知らないまま手続きを進めると思わぬ高額課税につながるリスクがあります。 「どの方法で売却すれば税負担を正確に把握できるのか」「適正な株価をどう算定すればよいのか」と悩まれている方は、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。
「非上場株式の売却を検討しているが、税金の計算の仕方がわからない」 「発行会社に株式を買い取ってもらいたいが、みなし配当課税が心配だ」 「相続で引き継いだ非上場株式をどう処分すればよいかわからない」 「親族間や法人間で株式を移転したいが、税務リスクが不安だ」 「少数株主として保有し続けているが、適正な価格で売却できるか知りたい」
株式会社繁栄が運営する少数株Laboでは、非上場株式・少数株式の譲渡・売却・承継にまつわるご相談を承っています。 税率や計算方法の確認から、みなし配当が発生するケースの対処法、適正価格の算定、確定申告の準備まで、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な対応策をご提案しています。
発行会社への売却・第三者への譲渡・相続後の株式処分など、ケースに応じたトータルサポートを一貫して提供しています。 非上場株式の譲渡所得や税金に関するお悩みは、まずはお気軽にお問い合わせください。 初回のご相談は無料で承っています。 専門家が丁寧にお話をお伺いし、最善の対応策をご提示します。
まとめ:非上場株式の譲渡所得は専門家への相談が重要
この記事では、非上場株式の譲渡所得にかかる税金について、税率・計算方法・確定申告の手続きを幅広く解説しました。 最後に、主要なポイントを整理しておきます。
税率について 個人が非上場株式を第三者に売却した場合、譲渡所得に対して一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課されます。 法人の場合は他の所得と合算して法人税等(実効税率の目安は約25〜34%)が課税されます。
発行会社への売却は別ルールに注意 発行会社に売却すると、売却代金のうち資本金等の額を超える部分がみなし配当として総合課税(最大55%)の対象となります。 ただし、相続取得株式を一定期間内に発行会社へ譲渡する場合は、確定申告書への明細書添付により、みなし配当課税を回避できる特例を活用できます。
低額・無償譲渡には税務リスクがある 個人から法人へ時価の2分の1未満で譲渡した場合はみなし譲渡課税、個人間の著しい低額譲渡はみなし贈与課税のリスクがあります。 適正な時価を把握した上で取引価格を設定することが不可欠です。
確定申告は必須・書類を早めに準備する 非上場株式の売却益は特定口座で自動処理されないため、必ず自分で確定申告を行う必要があります。 申告期限は翌年3月15日で、株式譲渡契約書・取得費の証拠書類などを事前に整えておきましょう。
非上場株式の税務は、上場株式と比べて複雑で、知識不足のまま手続きを進めると思わぬ課税リスクや申告漏れにつながる可能性があります。 発行会社への売却、親族間の株式移転、相続後の株式処分など、ケースごとに最適な対応が異なるため、早い段階で税理士や公認会計士に相談することを強くお勧めします。
適切な専門家のサポートを受けることで、正確な申告と手続きを通じて税務リスクを最小化し、安心して株式譲渡を進められます。 少しでも疑問や不安を感じたら、まずは専門家への相談を第一歩としてください。


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