非上場株式の譲渡で確定申告は不要になる?必要・不要の判断基準と税務処理を解説

「非上場株式を売ったけど、確定申告は必要なの?」 そう疑問に思っている方は、少なくないはずです。

上場株式であれば、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用することで、確定申告を省略できるケースがあります。 しかし、非上場株式の譲渡には、その仕組みが一切使えません。 原則として、利益が出た場合には確定申告が必要になります。

非上場株式の売却が発生する場面は多岐にわたります。 親族への事業承継、M&Aによる会社売却、少数株主としての株式売却など、さまざまな状況が考えられます。 いずれのケースでも、税務上の手続きを誤ると、ペナルティを課されるリスクがあります。

この記事では、非上場株式の譲渡における確定申告の要否、発生する税金の種類と計算方法、申告手続きと必要書類、そして確定申告を怠った場合のリスクまで、幅広く解説します。 みなし譲渡・みなし贈与といった税務上の落とし穴についても詳しく取り上げますので、非上場株式の売却を検討している方や、すでに譲渡を終えて申告の準備をしている方は、ぜひ最後まで読み進めてください。

目次

非上場株式の譲渡とはどういうものか

非上場株式の特徴と上場株式との違い

非上場株式とは、東京証券取引所などの公開された証券取引所に上場していない株式会社の株式のことをいいます。 日本国内には数百万社もの法人が存在しますが、上場企業はそのうちのごくわずかにすぎません。 つまり、世の中に存在する株式の大半は、非上場株式だといえます。

上場株式と非上場株式には、いくつかの大きな違いがあります。 以下の表に、主な相違点をまとめました。

項目上場株式非上場株式
取引場所証券取引所(市場)当事者間での相対取引
価格の決まり方市場の需給で随時決定当事者間の交渉または評価方法により決定
流動性高い(売りたいときに売れる)低い(買い手を自分で探す必要がある)
情報開示義務あり(有価証券報告書等)原則なし
特定口座の利用可能不可
譲渡制限基本的になし定款で設定されているケースが多い

非上場株式の最大の特徴は、市場が存在しないことによる流動性の低さです。 上場株式であれば、証券取引所を通じて不特定多数の投資家と取引できます。 しかし非上場株式の場合、売り手が自ら買い手を探し、価格も当事者間で決めなければなりません。

また、多くの非上場会社では定款に「譲渡制限」が設けられている点にも注意が必要です。 譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に取締役会や株主総会の承認を要するものをいいます。 会社の乗っ取りを防ぐ目的で設けられることが多く、承認が得られなければ株式を自由に売ることができません。 そのため、非上場株式の譲渡は、手続き面でも上場株式と比べてはるかに複雑になりやすいといえます。

税務の観点からも、上場株式と非上場株式は取り扱いが大きく異なります。 上場株式は「特定口座(源泉徴収あり)」を利用することで確定申告を不要にできますが、非上場株式にはそのような制度的な手当てがありません。 これが、非上場株式の税務処理において最も重要な違いです。

譲渡が発生するおもなケース

非上場株式の譲渡が発生する場面は、大きく分けていくつかのケースがあります。 それぞれの状況に応じて、税務上の取り扱いが異なることもあるため、自分がどのケースに当てはまるかを把握しておくことが大切です。

親族・知人・第三者への譲渡

非上場株式の譲渡でもっとも多いのが、経営者が親族や知人、あるいは従業員などの身近な相手に株式を売却するケースです。 事業承継の場面では、親から子へ、あるいは先代経営者から後継者へ、会社の株式を移転することが頻繁に行われます。 こうした場合、売買が成立しやすく手続きもスムーズに進みやすい反面、売却価格が客観的な時価から大きく外れていると、贈与税や所得税の追加課税リスクが生じる点に注意が必要です。

たとえば、実際の時価が1,000万円の株式を200万円で息子に売ったとします。 この場合、差額の800万円について「贈与があった」とみなされ、買い手(息子)に贈与税が課される可能性があります。 「安く売ってあげる」という善意が、予期せぬ税負担を生む原因になることがあるのです。

また、従業員持株会への譲渡も、この類型に含まれます。 従業員持株会への株式移転は、福利厚生の一環としての機能を持ちつつ、オーナーが株式を現金化できる手段にもなります。 ただし、持株会の設立や運営には一定の手続きが必要であり、税務上の適切な価格設定も求められます。

M&Aによる売却

近年、中小企業の事業承継や成長戦略の手段として、M&A(合併・買収)が広く活用されるようになっています。 M&Aにおける株式売却とは、会社のオーナーが保有する非上場株式を、M&A仲介会社等を通じて第三者(個人または法人)に譲渡するものです。 M&Aによる株式売却では、売却価格が数千万円から数億円規模になることも珍しくなく、税務処理の重要性が特に高いといえます。

M&A仲介会社に依頼することで、買い手探し・企業価値の算定・条件交渉・契約書の作成といったサポートを受けることができます。 一方で、仲介手数料が発生するため、売却益から手数料コストを差し引いたうえで税務計算をする必要があります。

M&Aによる売却の場合、売り手が個人であれば申告分離課税の対象となり、税率は一律20.315%です。 売却益が大きいほど、確定申告の重要性も増します。 申告漏れは税務署に発覚しやすく、ペナルティのリスクも高まるため、早い段階から税理士に相談することが強く推奨されます。

非上場株式の譲渡で確定申告は「不要」になるのか

原則として確定申告が必要な理由

結論から述べると、非上場株式の譲渡によって利益(譲渡益)が生じた場合、原則として確定申告が必要です。 金額の大小にかかわらず、また他に所得がない場合でも、申告義務が発生します。

その理由は、非上場株式の譲渡所得が「申告分離課税」の対象とされているためです。 申告分離課税とは、給与所得や事業所得などの総合課税とは別に、独立した税率と計算方法で税額を算出し、確定申告によって納税する方式をいいます。 申告分離課税では、自ら申告しない限り税額が確定しません。 つまり、自動的に課税されるしくみがなく、自主的な申告が前提となっているのです。

上場株式の場合は、後述する特定口座(源泉徴収あり)を利用することで、証券会社が税金を源泉徴収し、確定申告を省略できる制度があります。 しかし、非上場株式にはこの仕組みが適用されません。 非上場株式の取引を扱う証券口座や源泉徴収の仕組みが制度上存在しないため、すべて自己申告が必要になります。

特定口座(源泉徴収あり)が利用できない点が上場株式と異なる

上場株式の売買では、証券会社が「特定口座(源泉徴収あり)」という仕組みを提供しています。 この口座を利用すると、証券会社が譲渡益に対する税金を自動的に計算・徴収してくれるため、投資家本人は原則として確定申告をしなくてよい制度です。

しかし、非上場株式の取引はこの特定口座の対象外です。 非上場株式の売買は証券取引所を通じないため、特定口座の管理ができません。 結果として、取引によって生じた利益は本人が自ら計算し、確定申告を通じて納税する義務を負うことになります。

これは一見、不利なように見えるかもしれません。 しかし言い換えれば、確定申告の手続きさえ適切に行えば、税務上のルールに従って正しく納税できるということでもあります。 特定口座のように「自動処理」がない分、取得費・譲渡費用の計上方法や、みなし配当の取り扱いなど、細かな点に気を配る必要があります。

なお、確定申告の期限は毎年2月16日から3月15日です。 この期間に、前年1月1日から12月31日までに行った譲渡について申告します。 期限を過ぎた場合は、後述する無申告加算税や延滞税のペナルティが発生しますので、早めに準備を始めることが重要です。

確定申告が実質的に不要に近づくケースと注意点

原則として確定申告が必要な非上場株式の譲渡ですが、実務上「申告しなくてよい」に近い状況が生じることがあります。 ただし、これは「制度として不要」ではなく、あくまで「結果として納付税額がゼロになる」ケースです。

代表的なのは、譲渡損失が生じたケースです。 非上場株式を取得費よりも低い価額で売った場合、譲渡所得はマイナス(譲渡損失)になります。 この場合、課税所得が生じないため、所得税・住民税ともに納付すべき税額はゼロとなります。

ただし注意が必要なのは、非上場株式の譲渡損失は、上場株式の譲渡所得や配当所得との損益通算ができない点です。 一般株式等(非上場株式)の譲渡損失は、同じ一般株式等の譲渡所得とのみ内部通算が認められます。 上場株式・投資信託などの特定株式等の損益とは通算できないため、「上場株で儲けたから非上場株の損と相殺できる」という考え方は誤りです。

また、そもそも非上場株式を取得費と同額で譲渡した場合(利益ゼロの場合)も、課税所得は発生しません。 しかし、利益がゼロであっても、確定申告そのものが不要になるわけではない点は押さえておきたいところです。 税務上の正確な取り扱いについては、個別の状況に応じて専門家に確認されることをお勧めします。

非上場株式の譲渡で発生する税金の種類

個人が譲渡した場合の税金

所得税・復興特別所得税・住民税(計20.315%)の内訳

個人が非上場株式を譲渡して利益を得た場合、課される税金は次の3種類です。

税目税率備考
所得税15%国税
復興特別所得税0.315%所得税額×2.1%(2037年まで)
住民税(地方税)5%都道府県民税+市区町村民税
合計20.315%

この税率は、譲渡益の金額にかかわらず一律20.315%です。 給与所得のように所得が増えるほど税率が上がる累進課税ではなく、いくら利益が出ても同じ税率が適用されます。

たとえば、1億円の譲渡益が出た場合でも税率は20.315%であり、納税額は約2,032万円になる計算です。 この点は、給与所得などとは大きく異なる特徴といえます。

なお、復興特別所得税は2013年から2037年までの時限措置として設けられたものです。 所得税額に対して2.1%が上乗せされるため、所得税15%×2.1%=0.315%が加算されます。 2038年以降は廃止される予定ですが、現時点では税率に含めて計算する必要があります。

申告分離課税の仕組み

非上場株式の譲渡所得は、「申告分離課税」として扱われます。 申告分離課税とは、給与所得や事業所得などの総合課税所得とは切り離して、独自の税率で税額を計算する方式です。

具体的には、給与所得がいくら高くても、株式の譲渡所得に対しては一律20.315%が適用されます。 総合課税の場合は最高税率が45%(住民税10%を加えると55%)に達することもありますが、申告分離課税によって株式譲渡益は20.315%に抑えられます。

申告分離課税のポイントは、他の所得と合算しない点です。 たとえば、給与所得が1,000万円あっても、非上場株式の譲渡益500万円については別枠で計算されます。 申告書上も、通常の所得とは別の計算明細書と申告書第三表(分離課税用)を用いて申告します。

ただし、所得控除(基礎控除・配偶者控除・医療費控除など)の一部は、分離課税の所得からも控除できる場合があります。 計算方法が複雑になることもあるため、税理士に相談しながら進めると安心です。

法人が譲渡した場合の税金

法人税・法人住民税・法人事業税の概要

法人が非上場株式を譲渡した場合、個人の場合とは税務上の取り扱いが大きく異なります。 個人の場合は譲渡所得として独立して課税されますが、法人の場合は株式の譲渡益を他の損益と合算したうえで、法人税等として課税されます

法人に課される主な税金は以下の3種類です。

税目概要
法人税法人の所得(利益)に対して課される国税。基本税率は23.2%(中小法人の軽減税率は年800万円以下の所得に対して15%)
法人住民税法人道府県民税と法人市町村民税の総称。法人税額を基礎に計算される地方税
法人事業税事業活動に対して課される地方税。都道府県が課税

法人税・法人住民税・法人事業税を合計した実効税率は、規模や所得水準によって異なりますが、中小法人で概ね30%前後、大法人で35%前後となることが多いです。

個人(20.315%)と比べると、法人の税負担は高めになる傾向があります。 ただし、法人の場合は譲渡益を他の損失と相殺できるため、一概に「法人は不利」とはいえません。

また、個人と異なり、法人には取得費の概算計算(譲渡価額の5%とみなす方法)が適用されません。 取得費が不明な場合でも、証拠資料から合理的に推計するか、税務署に相談するしかない点に注意が必要です。

法人が節税できるタイミングの考え方(赤字年度・費用の大きい年度)

法人が非上場株式を売却する場合、譲渡のタイミングを工夫することで税負担を軽減できる可能性があります。 これは、法人税が「期中の損益を合算した利益」に対して課税されるという仕組みを活用したものです。

代表的な節税タイミングとして、以下の2つが挙げられます。

①赤字年度に譲渡する 法人が事業活動上の損失(赤字)を抱えている年度に株式を売却すると、譲渡益と赤字が相殺され、課税所得を圧縮できる可能性があります。 たとえば、事業損失が3,000万円ある年度に4,000万円の譲渡益が生じた場合、課税対象となる所得は差し引き1,000万円に縮小されます。 結果として、法人税等の実際の納付額を大幅に抑えることができます。

②修繕費・研究開発費など費用の大きい年度に譲渡する 設備の大規模修繕、研究開発投資、あるいは税制優遇のある設備投資を行う年度も、課税所得が低くなります。 このような年度に株式の売却を重ねることで、譲渡益を費用で打ち消し、全体として支払う税金を抑える効果が期待できます。

ただし、節税目的だけで根拠のない費用を計上することは許されません。 租税回避行為とみなされた場合、税務調査で否認されるリスクがあります。 実際に節税効果が生じるかどうかは法人の財務状況や事業年度によって大きく異なるため、タイミングの調整はあくまで合法的な範囲内で、税理士に個別相談のうえで判断することが不可欠です。

発行会社(自社)に譲渡した場合のみなし配当課税

みなし配当が生じる仕組みと源泉徴収税率(20.42%)

株式を発行した会社自身に株式を売却する行為(自己株式の取得)は、通常の第三者への売却とは税務上の取り扱いが大きく異なります。 この場合、受け取った対価の一部が「みなし配当」として課税される可能性があります。

みなし配当とは、会社法上の剰余金の配当ではないものの、実質的に株主への利益還元にあたるとして、税法上は配当として扱われる部分のことです。

具体的なしくみを説明します。 株主が発行法人に株式を売却して受け取る対価のうち、「その法人の資本金等の額のうち売却株式に対応する部分」を超える金額が、みなし配当とみなされます。 残りの部分(資本金等に対応する部分)は、通常の譲渡対価として譲渡所得の計算に使います。

たとえば、法人の資本金等の額のうち売却株式に対応する部分が300万円で、売却対価が1,000万円だったとします。 この場合、差額の700万円がみなし配当となり、配当所得(総合課税)として累進税率で課税されます。 残り300万円は譲渡所得として20.315%で課税されます。

みなし配当には、発行法人が源泉徴収を行う義務があります。 非上場株式のみなし配当に対する源泉徴収税率は20.42%です。 つまり、発行法人は株主に代金を支払う際に20.42%を差し引いて支払い、源泉所得税として国に納付する義務を負います。

みなし配当は総合課税であるため、他の所得(給与・事業所得など)と合算して税率が決まります。 所得が多い納税者ほど高い税率(最高45%)が適用されるため、同じ売却価額でも第三者への譲渡と比べて税負担が大幅に増えることがあります。 発行法人への売却を検討する際は、この点を十分に考慮したうえで判断する必要があります。

相続した非上場株式を発行法人に譲渡する場合の特例と期限要件

相続によって取得した非上場株式を発行法人に売却する場合、一定の要件を満たすと**「みなし配当が生じない」という税制上の特例が適用されます**。 これは、租税特別措置法第9条の7に定められた制度です。

通常であれば発行法人への売却でみなし配当が生じるところ、この特例が適用されると、受け取った対価の全額を譲渡所得として申告分離課税(20.315%)で処理できます。 みなし配当部分(総合課税)が生じないため、所得が高い納税者にとっては大幅な税負担軽減につながる可能性があります。

特例の適用を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
①相続税の納付相続または遺贈によって財産を取得した個人に、納付すべき相続税額があること
②相続財産である非上場株式その相続税の課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式を、発行法人に売却すること
③期限内の譲渡相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までの間に売却すること

期限(③)について補足すると、相続税の申告期限は原則として相続開始から10か月です。 その翌日から3年以内なので、相続開始からおよそ3年10か月が実質的なデッドラインとなります。

この期限を1日でも過ぎると特例が使えなくなりますので、相続後は早い段階で専門家に相談し、売却のタイミングを検討することが重要です。

なお、この特例と同時に、「相続財産の取得費加算の特例」(措法第39条)も適用できる場合があります。 相続時に支払った相続税の一定額を取得費に加算できるため、譲渡所得をさらに圧縮できる可能性があります。 両特例を組み合わせることで税負担が軽減される可能性もありますが、適用可否や計算方法は個別の事情によって異なるため、必ず専門家に確認してください。

非上場株式の譲渡所得の計算方法

基本の計算式(譲渡収入-取得費-譲渡費用)

非上場株式の譲渡所得は、次の計算式で算出します。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)

各要素の意味を以下に整理します。

項目内容
譲渡収入金額株式を売却して受け取った対価の合計額
取得費株式を取得したときにかかった費用(購入代金・購入手数料など)
譲渡費用株式を売却するために直接かかった費用(仲介手数料・弁護士費用など)

この計算で算出されたプラスの金額(譲渡所得)に対して、20.315%の税率が適用されます。

注意したいのは、譲渡収入全額が課税対象になるわけではないという点です。 かつて株式を取得したときの費用(取得費)と、売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた「純粋な利益部分」だけが課税されます。 適切な取得費・譲渡費用を計上することが、正確な税額計算のために不可欠です。

取得費が明らかな場合の計算例

取得費が明らかな場合は、実際にかかった金額をそのまま使って計算できます。 具体的な計算例で確認しましょう。

【設例】

  • 非上場株式の売却価格:5,000万円
  • 株式の取得費:800万円(購入代金750万円+購入時手数料50万円)
  • 譲渡費用:200万円(M&A仲介会社への成功報酬)

【計算過程】

  1. 譲渡所得 = 5,000万円 -(800万円 + 200万円)= 4,000万円
  2. 所得税(15%)= 4,000万円 × 15% = 600万円
  3. 復興特別所得税(0.315%)= 4,000万円 × 0.315% = 12.6万円
  4. 住民税(5%)= 4,000万円 × 5% = 200万円
  5. 合計税額 = 約812.6万円

この例では、取得費と譲渡費用を合計1,000万円控除することで、課税対象が5,000万円から4,000万円に縮小されました。 取得費・譲渡費用を正確に把握・計上することが、税負担の適正化につながります。

取得費として認められる主な費用は次のとおりです。

  • 株式の購入代金
  • 株式購入時の仲介手数料・司法書士費用
  • 増資時の払込金額

譲渡費用として認められる主な費用は次のとおりです。

  • M&A仲介会社への仲介手数料・成功報酬
  • 株式売却のために直接かかった弁護士費用・税理士費用
  • 株券の発行費用(売却に直接必要な場合)

なお、株式の保有期間中にかかった費用(会計顧問料など)は、原則として譲渡費用にはあたらない点に注意が必要です。

取得費が不明な場合の扱い(個人のみ:譲渡価額の5%とみなす)

非上場株式は設立時から何十年も保有しているケースも多く、取得時の書類が残っていないことも珍しくありません。 こうした場合、個人の納税者については「取得費が不明なときは、譲渡価額の5%を取得費とみなす」というルールが認められています(租税特別措置法第37条の10)。

たとえば、1億円で売却した非上場株式の取得費が不明だった場合、1億円×5%=500万円を取得費として計算します。 この場合の譲渡所得は9,500万円となり、税額は約1,929万円です。

ただし、この概算取得費(5%)の適用は、個人にのみ認められた制度です。 法人が取得費を不明とすることは原則として認められず、証拠資料から合理的に推計するか、税務署に確認が必要です。

また、実際の取得費が譲渡価額の5%を上回ることが証明できる場合は、実際の取得費を使ったほうが当然有利です。 取得費が少しでも証明できる書類がある場合は、概算取得費への頼りすぎは禁物です。

取得費の証明に使える書類としては、以下のものが挙げられます。

  • 株式の購入契約書や出資契約書
  • 株主名簿・払込証明書
  • 当時の決算書や株価評価資料
  • 会社の登記事項証明書(資本金の変遷が確認できるもの)

書類が一部しか残っていない場合でも、複数の資料を組み合わせることで取得費を合理的に推計できる場合があります。 税理士に相談しながら、できる限り実際の取得費を証明することをお勧めします。

確定申告の手続きと必要書類

申告書の種類と記載の流れ

非上場株式の譲渡所得を確定申告する際は、通常の確定申告書に加えて、複数の書類を作成・提出する必要があります。

確定申告に必要な主な書類の一覧は以下のとおりです。

書類名役割
申告書第一表収入・所得・税額の総括表
申告書第二表所得の内訳・控除の明細
申告書第三表(分離課税用)申告分離課税の所得と税額の計算
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書株式の取得費・譲渡費用・譲渡所得の計算根拠

記載の基本的な流れは、計算明細書から始め、第三表→第一表・第二表の順に転記していくことです。 計算明細書で求めた譲渡所得の金額を第三表に転記し、さらに第三表の数値を第一表・第二表に反映させます。

申告書第一表・第二表・第三表(分離課税用)の記載ポイント

【申告書第一表の記載ポイント】 第一表は確定申告書の「顔」ともいえる書類で、収入・所得・税額の全体像を記載します。 非上場株式の譲渡所得を含む場合、「収入金額等」欄の「株式等」の行に売却収入額を、「所得金額等」欄の「株式等」の行に譲渡所得の金額を記入します。 さらに「税金の計算」欄に、第三表から転記した申告分離課税の税額を加算します。

【申告書第二表の記載ポイント】 第二表では、所得の内訳と各種控除の詳細を記載します。 「所得の内訳」欄には株式の売却先・収入金額・所得金額を記入します。 医療費控除や扶養控除などの所得控除がある場合は、「所得から差し引かれる金額に関する事項」欄に記入します。

【申告書第三表(分離課税用)の記載ポイント】 第三表は申告分離課税の所得専用の計算書です。 「株式等に係る譲渡所得等」の欄に、計算明細書で算出した譲渡所得の金額を転記します。 続いて課税所得金額(譲渡所得から所得控除を差し引いた金額)を算出し、それに税率(15%)を掛けて所得税額を求めます。 所得税額に2.1%を掛けた額が復興特別所得税となるため、合算した税額を「申告税額」欄に記入します。 第三表で計算した金額を第一表・第二表に正確に転記することが、記載ミスを防ぐうえで最も重要なポイントです。

なお、国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで自動的に転記・計算が行われるため、記載ミスを大幅に減らすことができます。

添付が必要な書類一覧

確定申告書と合わせて提出(または保管)が必要な書類を以下にまとめました。

書類内容・入手方法
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書国税庁ウェブサイトからダウンロード可能
譲渡契約書(株式譲渡契約書)売買の際に当事者間で締結したもの。原本またはコピー
株式の取得費を証明する書類購入時の契約書・出資証明書・払込証明書など
源泉徴収票(みなし配当がある場合)発行法人から交付される
金融機関の口座情報(還付がある場合)振込先口座の確認のため

書類の不備があると税務署から問い合わせが来たり、申告が受け付けられなかったりすることがありますので、事前にリストアップして漏れなく準備しておくことが重要です。

譲渡契約書は、売買価格・売却日・当事者の氏名・株式の種類と数量などを確認するための重要書類です。 取引完了後は必ず保管しておきましょう。 万が一なくした場合は、先方(買い手側)に連絡してコピーを入手することをご検討ください。

確定申告をしなかった場合のペナルティ

無申告加算税の税率(2024年改正後)

納税額の規模別の税率(50万円以下15%・50万超300万以下20%・300万超30%)

確定申告が必要にもかかわらず期限内に申告しなかった場合、税務署から「無申告加算税」が課されます。 無申告加算税は、本来納めるべき税額に対して一定の割合で加算されるペナルティです。

2024年の税制改正により、無申告加算税の税率が見直されました。 改正後の税率(原則・税務調査後に申告した場合)は以下のとおりです。

納付すべき税額の区分税率(2024年改正後)
50万円以下の部分15%
50万円超~300万円以下の部分20%
300万円超の部分30%(新設)

改正前(2023年まで)は50万円超の部分が一律20%でしたが、令和6年(2024年)1月1日以降に法定申告期限が到来する国税(令和5年分の確定申告以降)から、300万円を超える部分については30%に引き上げられました。 これは、大型の申告漏れに対して従来よりも厳しいペナルティを課すことで、富裕層や大規模な無申告を抑止する狙いがあります。

たとえば、本来納めるべき税額が500万円だった場合の無申告加算税の計算は次のとおりです。

  • 50万円 × 15% = 7.5万円
  • (300万円 - 50万円)× 20% = 50万円
  • (500万円 - 300万円)× 30% = 60万円
  • 合計:117.5万円

M&Aや相続で大きな譲渡益が生じた場合、無申告加算税だけで100万円超になることも十分ありえます。 申告義務の重さを改めて認識してください。

なお、税務署の調査が入る前に自主的に申告した場合(期限後申告)は、後述するように税率が軽減されます。

自主申告で5%に軽減されるケース

税務署から調査の通知を受ける前に、自分から進んで期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率は一律5%に軽減されます

これは、自主的に申告した事実を考慮したインセンティブ的な措置です。 「申告を忘れていた」「知らなかった」という場合でも、税務調査が入る前に自主申告することで、大幅なペナルティ軽減が期待できます。

具体的に先ほどの例(本来の税額500万円)で比較すると次のようになります。

ケース無申告加算税
自主的に期限後申告した場合500万円 × 5% = 25万円
税務調査後に申告した場合(原則)117.5万円(前述)

税務署の調査が入る前と後では、ペナルティが4倍以上異なります。 「申告できていなかった」と気づいた時点で、すぐに専門家に相談して自主申告の手続きを進めることをお勧めします。

ただし、過去に無申告の前歴がある場合や、正当な理由なく期限後申告を繰り返した場合は、軽減措置が適用されないことがある点にも注意が必要です。

延滞税の仕組みと日数計算

無申告加算税とは別に、税金の納付が遅れた日数に応じて「延滞税」も課されます。 延滞税は、法定納期限(確定申告の場合は3月15日)の翌日から、実際に納付するまでの日数に基づいて計算される利息的なペナルティです。

延滞税の税率は次のとおり、期間によって異なります。 なお、税率は毎年1月1日に更新される延滞税特例基準割合をもとに決まるため、年度によって変動します。

期間令和4年〜令和7年(2022〜2025年)の税率令和8年(2026年)の税率
納期限翌日から2か月以内年2.4%年2.8%
納期限翌日から2か月超年8.7%年9.1%

最新の税率は国税庁の公式ウェブサイト(No.9205 延滞税について)で必ずご確認ください。

計算式は次のとおりです。

延滞税 = 本税額 × 延滞税率 × 延滞日数 ÷ 365

たとえば、500万円の税金を3月15日から6か月後(9月15日)に納付した場合を令和8年(2026年)の税率で試算します。

  • 2か月以内(3月16日~5月15日:61日):500万円 × 2.8% × 61日 ÷ 365 = 約2.3万円
  • 2か月超(5月16日~9月15日:123日):500万円 × 9.1% × 123日 ÷ 365 = 約15.4万円
  • 合計:約17.7万円

日数が増えるほど延滞税も膨らむため、申告・納付はできる限り早く行うことが重要です。 申告の準備が整い次第、速やかに手続きを済ませましょう。

税務署に把握される主な経路

「非上場株式の売買は市場に出回らないから、税務署にバレないだろう」と考える方もいるかもしれません。 しかし、税務署は複数の経路から非上場株式の取引情報を把握できる仕組みになっています。

主な把握経路は以下のとおりです。

経路内容
株式名義変更に伴う会社側の提出書類非上場会社が株主名簿の変更を行うと、会社が「支払調書」等を税務署に提出するケースがある
相続税・贈与税の申告書との照合相続財産や贈与財産として非上場株式が記載されていれば、その後の売却状況が照合される
買い手(法人・投資家)の税務申告法人が株式を取得した費用を経費計上している場合、税務調査で取得先(売り手)が特定される
M&A仲介会社からの情報M&A仲介会社は一定の支払調書提出義務を負う場合がある
資産運用状況の調査税務署は資産状況の変動(預金残高の急増など)を監視しており、不自然な資金移動が調査のきっかけになる

特に、相続税申告書との照合は見落とされがちですが、非常に効果的な把握手段です。 相続財産に非上場株式が含まれていた場合、その後の売却について税務署が注目することは十分ありえます。

また、発行法人へ株式を売却してみなし配当が生じた場合、法人が源泉徴収したうえで支払調書を提出するため、税務署は取引の存在を自動的に把握します。 「バレない」という前提での行動は非常に危険だと認識しておくことが大切です。

譲渡価格の設定で注意すべき「みなし譲渡」と「みなし贈与」

時価の2分の1未満で法人に譲渡した場合のみなし譲渡リスク

非上場株式を法人に売却する際、売却価格が時価の2分の1未満だった場合、所得税法上「みなし譲渡」として扱われるリスクがあります。

みなし譲渡とは、所得税法第59条に定められた規定です。 「著しく低い価額の対価(具体的には時価の2分の1未満)で法人に譲渡した場合、実際の売却価格ではなく、時価で譲渡したものとみなして譲渡所得を計算する」というものです。

たとえば、時価1,000万円の非上場株式を400万円(時価の2分の1未満)で法人に売ったとします。 売り手が受け取るのは400万円ですが、税務上は「1,000万円で売った」とみなされ、取得費200万円との差額800万円に対して課税されます。 実際の手取りは400万円なのに、税金の計算上は800万円の利益が出たとされるわけで、最悪の場合、手元に残る金額より税額が上回ることもあります。

この規定の目的は、恣意的に低い価格で法人に資産を移転させることで所得税を不当に回避する行為を防ぐことにあります。 価格交渉の結果として大幅なディスカウントを余儀なくされることがあっても、時価の2分の1を下回る価格での売却は慎重に避けるべきです。

なお、売却先が同族会社(オーナーやその親族が支配する会社)の場合は、時価の2分の1以上であっても、税務署がみなし譲渡に準じた取り扱いを行うことがあります(所得税法第157条)。 同族会社への売却では、適正な時価からの乖離が少しでもあれば税務リスクが高まるため、より慎重な価格設定が求められます。

個人間で著しく低い価額で譲渡した場合の贈与税リスク

非上場株式を個人間で売買する場合、売却価格が時価よりも著しく低いと、買い手に対して贈与税が課されるリスクがあります(相続税法第7条のみなし贈与規定)。

みなし贈与の仕組みはこうです。 時価よりも低い価格で株式を取得した買い手は、差額部分について「売り手から贈与を受けた」とみなされます。 たとえば、時価1,000万円の株式を売り手が買い手に500万円で譲渡した場合、差額500万円が贈与とみなされ、買い手に贈与税が課される可能性があります。

贈与税は最高税率が55%(直系尊属以外の贈与)と非常に高いため、このリスクを軽視することはできません。 親子間で安く株式を渡す場合や、友人・知人に便宜を図る形で低廉譲渡する場合は特に注意が必要です。

また、みなし贈与には連帯納付義務という重要なルールがあります。 買い手が贈与税を納付しない場合、売り手が代わりに贈与税を負担しなければならない可能性があります。 「自分は売った側なのに、買い手の贈与税まで払わされる」という事態が起こりえます。 売却前に贈与税リスクを十分に確認することが、売り手にとっても非常に重要です。

「著しく低い」の法的基準はなく個別判断となる点に注意

みなし贈与が課される「著しく低い価額」については、法律や通達に具体的な数値基準が明示されていません。

相続税法や所得税法には「著しく低い」という文言がありますが、何%以下なら「著しく低い」に該当するかは、個別の事情を踏まえて判断されます

過去の裁判例(大阪地方裁判所昭和53年5月11日判決)では、「時価の4分の3未満」を著しく低い価額と解するのが相当との考えが示されたことがあります。 しかしこれはあくまで個別事例の中で示された基準であり、普遍的な法的基準として確立されているわけではありません。

実務上は、財産評価基本通達に基づく評価額(類似業種比準方式・純資産方式・配当還元方式などで算定した時価)と比較して、大幅に乖離しているかどうかが判断の基準になることが多いです。

特に注意が必要なのは、評価方法によって算出される時価が大きく異なる場合です。 支配株主として評価した場合と、少数株主として評価した場合では、同じ会社の株式でも時価が数倍異なることがあります。 「自分なりに計算した時価だから問題ない」という判断は危険であり、非上場株式の売買においては必ず専門家による株価評価を行い、課税リスクを事前に確認することが不可欠です。

非上場株式の譲渡・確定申告でお困りの方は、株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式の譲渡は、確定申告の要否の判断から、税額の計算、みなし配当・みなし譲渡・みなし贈与のリスク対応まで、専門的な知識が求められる場面が数多くあります。 「自分で申告できるか不安」「譲渡価格の設定が適切かどうかわからない」「相続した株式をどう処理すればいいか迷っている」という方は、放置せず早めに専門家へご相談ください。

非上場株式の税務処理を誤ると、申告漏れによるペナルティだけでなく、みなし譲渡課税やみなし配当課税によって想定外の税負担を負うリスクがあります。 事業承継やM&Aのタイミングで問題が発覚して手遅れになるケース、相続が発生してから株式の扱いに困るケースは、決して珍しくありません。

「非上場株式の譲渡に関する確定申告を正しく行いたい」 「適正な譲渡価格の設定について専門家に確認したい」 「相続した非上場株式の売却・税務処理について相談したい」 「みなし配当・みなし譲渡のリスクを事前に把握しておきたい」

株式会社繁栄が運営する少数株Laboでは、非上場株式・少数株式に関するご相談を承っています。 譲渡に伴う税務処理をはじめ、株価評価・売却・承継に向けたサポートまで、お客様一人ひとりの状況に合わせた対応策をご提案しています。 非上場株式の確認から、譲渡手続き・確定申告の準備に向けたご相談まで、一貫してトータルでサポートしています。

非上場株式の譲渡や確定申告に関するお悩みは、まずはお気軽にお問い合わせください。 初回のご相談は無料で承っています。 専門家が丁寧にお話をお伺いし、最善の対応策をご提示します。

まとめ:非上場株式の譲渡と確定申告は専門家への相談が不可欠

この記事では、非上場株式の譲渡に関する税務処理について、幅広い視点から解説してきました。 最後に、重要なポイントを整理しておきましょう。

①確定申告は原則必須 非上場株式の譲渡で利益が出た場合、金額の大小にかかわらず確定申告が必要です。 上場株式で利用できる特定口座(源泉徴収あり)は非上場株式には使えないため、自主的な申告が不可欠です。

②税率は個人なら一律20.315% 個人が譲渡した場合の税率は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%を合計した20.315%です。 申告分離課税として独立して計算するため、給与所得等の高低に影響されません。

③発行法人への売却はみなし配当に注意 発行会社に株式を売却する場合、対価の一部がみなし配当(総合課税)として扱われることがあります。 相続株式については期限内であればみなし配当が生じない特例があるため、要件と期限を確認したうえで専門家へのご相談をお勧めします。

④ペナルティは2024年改正後さらに厳しくなった 確定申告を怠ると、無申告加算税(300万円超の部分は30%)や延滞税が課されます。 税務署は複数の経路から取引情報を把握できるため、「バレない」という考えは通用しません。

⑤価格設定のミスが思わぬ課税を招く みなし譲渡(時価の2分の1未満で法人に売却)やみなし贈与(個人間の低廉譲渡)は、大きな税負担を引き起こす可能性があります。 「著しく低い」の基準は個別判断であり、専門家による株価評価が欠かせません。

非上場株式の譲渡は、取引規模が大きく税務の複雑さも高いため、一度のミスが数百万円単位の税負担の差を生む可能性があります。 「確定申告が必要かどうかわからない」「計算方法が難しい」「みなし配当の計算はどうすればいいか」といった疑問を一人で抱え込まず、税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。 早めの相談と適切な税務処理が、安心して非上場株式を譲渡するための最大の近道です。

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