「非上場株式を売却したら、どれくらい税金がかかるのだろう?」 「上場株式と同じ感覚で考えていいのだろうか?」
そんな疑問を抱えたまま、非上場株式の譲渡を進めようとしている方は少なくありません。 非上場株式の譲渡にかかる税金は、誰に売るか・いくらで売るか・売り手が個人か法人かによって、適用される税目や税率が大きく変わります。 正確な知識がないままに手続きを進めると、予期しない高額課税や申告漏れにつながるリスクがあります。
この記事では、非上場株式の基本的な概念から、譲渡所得の計算方法・株価の算定ルール・低額譲渡の税務リスク・確定申告の手続きまでを、わかりやすく体系的に解説します。 非上場株式の譲渡を検討している個人オーナーや経営者の方に向けて、必要な知識を一つひとつ丁寧に整理していますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
そもそも非上場株式とは?

非上場株式の税金を理解するには、まず「非上場株式とはどういうものか」という前提知識が欠かせません。 上場株式と混同したまま話を進めると、税の扱いの違いで思わぬ落とし穴にはまることがあります。 以下では、非上場株式の基本的な特徴・上場株式との違い・売却の方法と譲渡制限について順番に説明します。
非上場株式の基本的な特徴
非上場株式とは、東京証券取引所などの証券取引所に上場していない会社が発行した株式のことをいいます。 日本に存在する会社のほとんどは、実は非上場の会社です。 総務省が公表している令和3年経済センサスによると、国内の法人等の数は368万以上にのぼる一方、2024年7月時点での上場会社数は約4,100社にすぎません。 つまり、日本にある会社の圧倒的多数は非上場会社であり、それらが発行する株式がすべて「非上場株式」に該当します。
非上場株式には、以下のような特徴があります。
- 市場価格が存在しない:証券取引所を通じて価格が形成されるわけではないため、株式の「時価」は別途算定する必要があります
- 流動性が低い:自由に売買できる市場がないため、売却したくても買い手を見つけるのが難しい状況です
- 情報が少ない:上場会社のように開示義務がないため、外部から財務内容を把握しにくい特徴があります
- 譲渡制限が設けられていることが多い:勝手に第三者へ売却することができず、会社の承認が必要なケースがほとんどです
こうした特徴が、非上場株式の税務処理を複雑にする一因にもなっています。
上場株式との違い
非上場株式と上場株式では、税金の取り扱いにもいくつかの重要な違いがあります。 税務上のルールを整理するために、主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 市場価格 | 証券取引所で形成される | なし(別途算定が必要) |
| 課税方式 | 申告分離課税(特定口座で源泉徴収も可) | 申告分離課税(確定申告が必要) |
| 税率(個人) | 20.315% | 20.315% |
| 損益通算 | 上場株式同士で通算可 | 非上場株式同士のみ通算可 |
| 繰越控除 | 最長3年間可 | 原則不可 |
| 源泉徴収 | 特定口座なら自動 | なし(自分で申告) |
税率そのものは上場株式と同じ20.315%ですが、損益通算の範囲や申告方法が異なる点には注意が必要です。 たとえば、上場株式の売却で損失が出ていても、非上場株式の売却益とは相殺できません。 このルールを知らないまま税申告をすると、本来払わなくてよい税金を納めてしまうことにもなりかねません。
非上場株式を売却する方法と譲渡制限
非上場株式を売却する際には、「譲渡制限」という大きなハードルが存在します。 多くの非上場会社は、定款において株式に譲渡制限を設けています。 譲渡制限が設けられている場合、株主が自由に第三者へ株式を売却することはできず、会社の承認を得る必要があります。
譲渡制限がある株式を売却する手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。
- 株式の譲渡承認請求書を会社へ提出する(株式の数・譲受人の名称などを記載)
- 会社が取締役会(取締役会非設置会社は株主総会)を開催して承認を決議する
- 承認が下りたら、株式の名義書換を行い、実際の売買契約へ進む
万一、会社が承認を拒否した場合には、会社法第140条の規定により、会社自身または指定買取人による買取りの手続きが定められており、売却の機会そのものが完全に失われるわけではありません。 ただし、売却先や価格については制限を受けることになる点には注意が必要です。 なお、具体的な権利行使の手順や価格決定に関しては、弁護士など法律の専門家への確認をおすすめします。
また、非上場株式の売却先としては、以下のようなルートが考えられます。
- 既存株主(他の役員・従業員など)への売却
- 第三者(M&Aによる事業承継など)への売却
- 発行会社への自己株式取得(いわゆる「会社への売却」)
それぞれ課税の仕組みが異なるため、どのルートで売却するかは税務面も含めて慎重に検討する必要があります。
非上場株式の譲渡で発生する税金の種類

非上場株式を譲渡した場合にかかる税金は、「誰が」「誰に」譲渡するかによって大きく3パターンに分かれます。 このパターンを正しく理解することが、税務上のミスを防ぐ第一歩です。 以下では、①個人が外部(第三者)に譲渡する場合、②法人が外部(第三者)に譲渡する場合、③発行会社に譲渡する場合(みなし配当)に分けて解説します。
個人が外部(第三者)に譲渡する場合
個人が保有する非上場株式を、第三者(個人・法人を問わず発行会社以外)に譲渡した場合、売り手の個人に「譲渡所得」が発生し、これに対して税金がかかります。
発生する税金と税率(20.315%)
個人が非上場株式を譲渡したときに発生する税金は、所得税・復興特別所得税・住民税の3種類です。 それぞれの税率は以下のとおりで、合計すると20.315%になります。
| 税の種類 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税(所得税の2.1%相当) | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
たとえば、非上場株式を500万円で売却し、取得費が300万円だった場合、譲渡益は200万円となります。 この200万円に対して20.315%をかけると、税額は約40万6,300円になる計算です。 税率は所得金額の大小にかかわらず一律で20.315%が適用されるため、高額になるほど税負担の絶対額も大きくなる点は念頭に置いておきましょう。
なお、復興特別所得税は2037年12月31日まで課税される時限的な税金です。 東日本大震災からの復興財源として設けられたもので、2038年以降は税率が変わる可能性があります。
申告分離課税とは
非上場株式の譲渡所得は、「申告分離課税」という課税方式によって計算されます。 申告分離課税とは、給与所得や事業所得などほかの所得と切り離して(分離して)、独自の税率で税額を計算する方式のことです。 給与などの収入がどれだけ高くても、株式譲渡益に対する税率は一律20.315%のまま変わらないという点が特徴といえます。
これは「総合課税」と対比されることが多い課税方式です。 総合課税では、すべての所得を合算したうえで累進税率(5%〜45%)が適用されるため、所得が多い人ほど税負担が重くなる仕組みになっています。 申告分離課税はその例外として設けられており、株式譲渡益が高額であっても税率が上がりません。
ただし、申告分離課税は「自分で確定申告を行わなければ税額が確定しない」という点に注意が必要です。 上場株式の場合は証券会社の特定口座で源泉徴収されることもありますが、非上場株式には特定口座制度が適用されないため、翌年の確定申告期間中に自ら申告する必要があります。
高額譲渡益に注意!ミニマムタックス(2025年〜)とは
2023年(令和5年)度税制改正により創設され、2025年(令和7年)分の所得から適用が開始されたのが「特定の基準所得金額の課税の特例」(租税特別措置法第41条の19)、通称「ミニマムタックス」です。 「1億円の壁」と呼ばれる税負担の逆転現象を是正するために設けられた制度で、金融所得が多い高所得者に対して最低限の税負担を求めるものです。
この制度の仕組みは以下のとおりです。
- 課税の仕組み:基準所得金額から特別控除額3億3,000万円を差し引いた残額に22.5%を乗じた金額が、通常の申告所得税額を上回る場合、その差額が追加で課されます
- 実質的な対象水準の目安:所得の大半が株式譲渡益などの金融所得である場合、約10億円以上の所得から対象になると見込まれています(総合課税の所得のみの場合は約30億円以上が目安)
- 課税ベース:株式譲渡益・配当所得などの金融所得も基準所得金額に含まれます
非上場株式のM&Aや事業承継で多額の売却益が生じるようなケースでは、この制度の対象になる可能性があります。 大きな売却益が見込まれる場合は、事前に税理士へ相談し、ミニマムタックスの影響を試算しておくことが重要です。 なお、2026年(令和8年)度税制改正において特別控除額の縮小が決定されており、2027年(令和9年)以降は対象範囲がさらに広がる見込みとなっています。
法人が外部(第三者)に譲渡する場合
法人(会社)が保有する非上場株式を第三者に譲渡した場合、個人のように「譲渡所得」が独立して課税されるわけではありません。 法人税の仕組みでは、株式譲渡益は他のすべての損益と合算したうえで法人税等が計算されます。
法人税等が発生する仕組み
法人が非上場株式を譲渡した場合の課税の流れは次のとおりです。
- 株式の譲渡価額から取得価額を差し引いた「株式売却益(または売却損)」を算出します
- この売却損益を、その事業年度の他の益金・損金(売上・経費など)と合算します
- 合算後の法人所得全体に対して、法人税・法人住民税・事業税が課されます
つまり、個人のように譲渡益だけを切り離して税率を適用するのではなく、事業全体の収益に含めて税額を計算するという点が大きな違いです。 株式の売却で多額の益が出た事業年度は、その分だけ法人所得が膨らみ、税負担が増えることになります。
法人実効税率の目安(規模・時期により異なる)
法人税等の税率(法人実効税率)は、法人の規模・所得水準・所在地・事業年度によって異なります。 2025年3月決算時点のおおむねの目安は以下のとおりです。
| 法人の規模 | 法人実効税率の目安(参考) |
|---|---|
| 大企業(資本金1億円超、東京23区標準) | 約30〜31% |
| 中小企業(資本金1億円以下・所得800万円超の部分) | 約34% |
| 中小企業(所得800万円以下の部分) | 約21〜22% |
※実効税率は法人の所在地・事業年度・各種控除の適用状況によって変動します。また、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税(法人税額から500万円控除後の金額に4%)が上乗せされるため、さらに税率が上昇する見込みです。詳細は顧問税理士または国税庁の最新情報でご確認ください。
法人の実効税率は個人の申告分離課税(20.315%)よりも高い水準になることが多いです。 そのため、株式を法人名義で保有している場合と個人名義で保有している場合では、売却時の税負担が異なってきます。 資産管理会社や事業会社が株式を保有するスキームを組んでいる場合は、売却前に実効税率の試算を行うことが望ましいといえます。
発行会社に譲渡する場合(みなし配当)
個人が保有する非上場株式を、その株式を発行した会社(自己株式として取得させる)に売却する場合、税務上の取り扱いが大きく変わります。 この場合、売却代金の一部が「みなし配当」として扱われる点に特に注意が必要です。
みなし配当とは
みなし配当とは、会社が株式を買い取った際の対価のうち、資本金等に相当する部分を超える金額について、配当金を受け取ったものとみなして課税する制度のことです。 会社が自己株式を取得した場合、株主への払い戻しという実態があることから、税務上は「配当」として扱われます。
具体的には、以下の計算式で分類されます。
みなし配当の金額 = 売却代金 − (1株あたりの資本金等の額 × 売却株式数)
譲渡所得の金額 = (1株あたりの資本金等の額 × 売却株式数)− 取得費
つまり、売却代金が「資本金相当部分」と「それを超える部分(みなし配当)」に分解され、それぞれに異なる税金がかかる仕組みです。
【計算例】
- 売却価額:1,000万円
- 1株あたりの資本金等の額×売却株式数:400万円
- 取得費:150万円
この場合の計算は以下のとおりとなります。
- みなし配当:1,000万円 − 400万円 = 600万円(配当所得として課税)
- 譲渡所得:400万円 − 150万円 = 250万円(申告分離課税20.315%)
みなし配当部分(600万円)に対しては、原則として所得税の源泉徴収(20.42%)が行われます。
みなし配当は総合課税のみ・最大55%に注意
みなし配当は、非上場株式の場合、総合課税しか選択できない点が非常に重要なポイントです。 上場株式の配当と異なり、申告分離課税や源泉徴収のみで完了させることができません。
総合課税では、みなし配当を含むすべての所得を合算し、累進税率(5%〜45%)を適用します。 住民税の10%を加えると、最大で合計55%の税率がかかる可能性があります。
所得税の速算表(参考)は以下のとおりです。
| 課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
すでに給与収入などが多い個人オーナーが、発行会社へ株式を売却してみなし配当が多額になると、実質的な税率が50%を超えるケースも珍しくありません。 発行会社への譲渡を検討する際は、事前に税負担のシミュレーションを行うことが不可欠です。
非上場株式の譲渡所得の計算方法

非上場株式の譲渡所得を正確に計算することは、税額を把握するうえで最も基本的な作業です。 ここでは、計算式の基本・取得費の定義と具体的な範囲・取得費が不明な場合の取り扱い・譲渡費用の内容・そして実際の数値シミュレーションまでを丁寧に解説します。
譲渡所得の計算式
非上場株式の譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得 = 収入金額(譲渡価額)−(取得費 + 譲渡費用)
この計算式はシンプルに見えますが、「取得費」と「譲渡費用」の正確な把握が重要です。 どちらかの金額を誤ると、課税所得が過大または過少になり、納税額にも影響します。
取得費とは
取得費とは、非上場株式を取得したときに支払った費用の合計額のことです。 単純に「購入代金」だけではなく、購入に際してかかったさまざまな費用も含まれます。
取得費に含まれる費用の範囲
取得費として認められる費用の範囲は、以下のとおりです。
- 非上場株式の購入代金(額面金額ではなく実際の取得価額)
- 購入時の手数料
- 名義書換料(株式取得時に支払ったもの)
- 一定の借入金利子(株式取得のための借入金で、保有期間中に支払ったもの)
これらの費用を合算したものが取得費となります。 取得費が大きければ大きいほど、課税される譲渡所得が減るため、漏れなく計上することが納税者にとって有利です。
相続・贈与で取得した場合の取得費の引き継ぎ
親や祖父母から相続・贈与によって非上場株式を取得した場合、取得費の扱いが特殊になります。 この場合、被相続人(故人)や贈与者が株式を取得したときのコストを、そのまま引き継ぐことになります。
たとえば、祖父が1株10万円で取得した非上場株式を孫が贈与で受け取り、その後孫が1株30万円で売却したとします。 この場合、孫の取得費は30万円(市場価値)ではなく、祖父の取得原価である10万円となります。 つまり、取得してからの値上がり分すべてに課税が及ぶ仕組みです。
また、相続で取得した非上場株式については、一定の条件を満たす場合に「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算の特例)」を使えます。 この特例を使うと、支払った相続税額の一部を取得費に加算できるため、譲渡益を圧縮することが可能です。
取得費加算額の計算式は以下のとおりです。
加算できる相続税額 = 支払った相続税額 × 非上場株式の相続税評価額 ÷ 取得財産全体の価額
この特例が使えるのは、原則として相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに株式を譲渡した場合に限られます。 適用要件の確認と計算は複雑なため、相続税を申告した税理士にご確認されることを強くおすすめします。
取得費が不明な場合の概算取得費(売却代金の5%)
非上場株式を相続で引き継いだり、昔に購入して証拠書類が残っていなかったりして、取得費がまったくわからない場合は「概算取得費」を使うことができます。
概算取得費は、売却代金(収入金額)の5%相当額とすることが認められています(所得税基本通達38-16を根拠とする実務上の取り扱い)。
たとえば、非上場株式を2,000万円で売却した場合、概算取得費は2,000万円×5%=100万円となります。 この場合、残りの1,900万円が課税対象になります。
概算取得費は最低限の救済措置であり、実際の取得費が売却代金の5%より高い場合は実額を使うほうが税負担を下げられます。 書類が残っていないと即座に諦めず、昔の銀行振込記録・株主総会の資料・設立時の書類などを調べてみることを強くおすすめします。
譲渡費用とは
譲渡費用とは、非上場株式を売却するためにかかった費用のことです。 取得費と合わせて控除できるため、正確に把握しておきましょう。
委託手数料・成功報酬など譲渡費用に含まれるもの
譲渡費用として認められる主な費用は以下のとおりです。
- M&A仲介会社や株式売却の仲介業者に支払う委託手数料
- 成功報酬(株式売買契約の成立を条件に支払うもの)
- 投資一任契約に基づく固定報酬・成功報酬の売却対応分
- 株式取得のための借入金利子のうち、売却年の保有期間に対応する部分
一方で、株式の管理費用・保管費用・顧問料などの定期的な経費は、譲渡費用には含まれません。 あくまで「その株式を売却するために直接要した費用」が対象です。
複数銘柄にまたがる仲介手数料については、各銘柄の売却額に応じた按分計算が必要になる場合もあります。
計算例(具体的な数値シミュレーション)
ここまでの内容を踏まえ、実際の数値を使って譲渡所得と税額を計算してみましょう。
【前提条件】
- 譲渡価額(売却代金):5,000万円
- 取得費(購入代金+手数料):2,000万円
- 譲渡費用(M&A仲介の成功報酬):200万円
【計算の手順】
① 譲渡所得の計算
譲渡所得 = 5,000万円 −(2,000万円 + 200万円)= 2,800万円
② 税額の計算
所得税(15%):2,800万円 × 15% = 420万円 復興特別所得税(0.315%):2,800万円 × 0.315% = 8万8,200円 住民税(5%):2,800万円 × 5% = 140万円
税額合計:約568万8,200円(税率20.315%相当)
③ 手取り額のイメージ
売却代金5,000万円 − 仲介手数料200万円 − 税金568万8,200円 = 手取り約4,231万1,800円
このように、売却代金が5,000万円あっても、経費と税金を差し引くと手取りは約85%程度になります。 大きな売却を検討している場合は、事前に税引き後の手取り額をシミュレーションしておくことが重要です。
非上場株式の税務上における株価の算定方法

非上場株式には市場価格がないため、税務上は別途「時価(税務上の適正株価)」を算定する必要があります。 適切な株価算定ができていないと、低額譲渡や高額譲渡のリスクが生じ、売り手・買い手双方に思わぬ課税が発生します。 国税庁が定める財産評価基本通達では、主に以下の3つの評価方法が規定されています。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、評価対象の会社と業種・規模が似ている上場会社を比較対象として株価を算定する方法です。 評価の際には、上場会社の平均株価・1株あたりの配当金・1株あたりの年利益・1株あたりの純資産の4つの指標を使います。
計算式はやや複雑ですが、仕組みとしては「類似する上場会社の株価を基準にして、評価対象会社の業績との比率を加味して算出する」というものです。
主に「大会社」や「中会社」の規模に該当する法人において、原則的評価方式として用いられます。 会社の業種・売上・従業員数などによって「大会社」「中会社」「小会社」に区分され、各区分によって評価方法の組み合わせが変わる点も特徴です。
この方式のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 上場会社の株価動向に引っ張られるため、株式市況によって評価額が変動します
- 計算式が複雑で、専門知識なしに算定するのは難しい方式です
- 業績が好調な会社や同族会社の大株主が保有する株式には、この方式が適用されやすい傾向があります
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の貸借対照表上の資産・負債を相続税評価額に置き換え、その純資産額から1株あたりの価値を計算する方法です。 わかりやすくいうと「もし会社を解散させたとき、株主に返ってくる金額がいくらか」という考え方で株価を算定します。
具体的な計算の流れは以下のとおりです。
- 会社の総資産を相続税評価額で再計算します
- 負債の合計額を差し引きます
- 相続税評価による純資産額と帳簿価額による純資産額との差額(評価差額)に対して、法人税等相当額(37%)を控除します
- 最終的な純資産額を発行済み株式数で割って1株あたりの価額を求めます
不動産や有価証券を多く保有している資産保有型の会社では、純資産価額方式による評価額が高くなりやすいという特徴があります。 なお、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせる「折衷方式」が使われることも多くあります。
配当還元方式
配当還元方式は、その会社から受け取る配当金をもとに株価を逆算する評価方法です。 「この株式が将来生み出す配当を10%の利率で現在価値に戻したらいくらか」という考え方で計算します。
計算式は以下のとおりです。
1株あたりの評価額 = (1株あたりの年配当金 ÷ 10%)× (1株あたりの資本金 ÷ 50円)
なお、1株あたりの年配当金が2円50銭未満(または無配)の場合は、2円50銭として計算します。
配当還元方式は、議決権の少ない少数株主が保有する株式を評価する際に適用される「特例的評価方式」です。 同族株主がいる会社において、会社の経営に影響力を持たない少数株主(5%未満など)の株式には、原則的評価方式よりも評価額が低くなる配当還元方式が適用されます。
3つの評価方式の使い分けを整理すると、以下のとおりです。
| 評価方式 | 主な適用対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 大会社・中会社の大株主 | 上場会社との比較で算定 |
| 純資産価額方式 | 小会社・資産保有型会社の大株主 | 解散価値ベースで算定 |
| 配当還元方式 | 少数株主(経営支配力なし) | 配当利回りで算定・評価額は低め |
自分が「大株主」と「少数株主」のどちらに分類されるかによって、適用される評価方式が変わります。 どの方式が適用されるかは税負担に直結するため、専門家による判断が欠かせません。
時価によらない譲渡(低額・無償譲渡)の税金リスク

非上場株式を、時価より著しく低い金額または無償で譲渡した場合、売り手・買い手の双方に予期しない課税が生じる可能性があります。 「親族に安く譲りたい」「従業員に優待価格で売却したい」というケースでは特に注意が必要です。
売り手側にかかる税金
売り手が個人の場合
売り手が個人の場合、原則として時価より低い価額で譲渡しても、実際の譲渡価額を基に課税所得が計算されます。 つまり、売却代金が取得費を下回っていれば譲渡損失となり、所得税は発生しません。
たとえば、時価1,000万円・取得費600万円の非上場株式を、400万円(時価の2分の1未満)で個人Aへ譲渡したとします。 この場合、売り手個人の譲渡損益は以下のとおりです。
400万円(売却代金)− 600万円(取得費)= −200万円(譲渡損失)
原則として売り手個人には課税は発生しません(ただし、損失は上場株式との損益通算はできません)。 なお、個別の事情によっては課税関係が異なる場合もありますので、不安な点は税理士へご確認されることをおすすめします。
売り手が法人の場合(みなし時価譲渡)
売り手が法人の場合は、個人とは扱いが大きく異なります。 所得税法第59条のみなし時価譲渡規定は法人に直接は適用されませんが、法人税法上は「低廉譲渡」として、時価と実際の譲渡価額との差額部分が損金に算入されない扱いになる可能性があります。
実務上、法人が時価の2分の1未満で非上場株式を譲渡した場合、時価で譲渡したものとして法人税の課税所得を計算することが求められるケースが多くあります。 つまり、実際には400万円で売ったとしても、税務上は1,000万円で売ったとみなされ、差額部分に対しても法人税等の対象となります。
買い手側にかかる税金
低額譲渡では、受け取る側(買い手)にも課税が生じます。 買い手が個人か法人かによって、課税の種類と計算が異なります。
買い手が個人の場合(みなし贈与税)
個人が時価より低い価額で非上場株式を取得した場合、原則として時価と実際の取得価額との差額について、贈与を受けたものとみなして贈与税が課されます(相続税法第7条)。
先ほどの例でいうと、時価1,000万円の株式を400万円で購入した買い手個人Aには、差額の600万円が「みなし贈与」として課税対象になります。 贈与税は基礎控除(110万円)を超える部分に対して適用されるため、以下のとおりとなります。
(600万円 − 110万円)= 490万円 に贈与税の税率を適用
贈与税の税率は最高55%(特例税率)であるため、買い手個人Aには多額の贈与税が発生する可能性があります。
買い手が法人の場合(受贈益課税)
買い手が法人の場合は、贈与税ではなく「受贈益(じゅぞうえき)」として法人税の課税対象になります。 時価1,000万円の株式を400万円で取得した法人は、差額の600万円を「無償で受け取った益金(受贈益)」として計上し、法人税等を支払わなければなりません。
なお、同族会社へ時価より低い価額で株式を譲渡した場合、その会社の既存株主(個人)にも贈与税が課される可能性があります。 低廉譲渡によって会社の価値が上がったと判断され、既存株主が間接的に利益を得たとみなされるためです。
低額・無償譲渡はさまざまな方向に課税リスクが広がるため、売り手・買い手ともに事前に税理士へ相談することが不可欠です。
非上場株式の譲渡所得に関する確定申告

非上場株式の譲渡で利益が生じた場合は、自分で確定申告を行う必要があります。 申告が漏れると延滞税や過少申告加算税のペナルティが発生するため、申告の時期・必要書類・手続きの方法はしっかりと押さえておきましょう。
確定申告の期限と対象期間
確定申告の対象期間はその年の1月1日から12月31日までです。 この期間中に生じた非上場株式の譲渡所得について、翌年の確定申告期間中に申告を行います。
申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日(土日祝日の関係で年によって若干変動します)。 住所地を管轄する税務署に申告書を提出するか、国税庁のe-Tax(電子申告)を利用して申告します。
納税は申告と同時(3月15日まで)が原則です。 振替納税を利用する場合は4月下旬ごろに口座引き落としとなります。
必要書類・添付書類の一覧
非上場株式の譲渡所得を申告する際に必要な書類は以下のとおりです。
| 書類の種類 | 内容 |
|---|---|
| 確定申告書(第一表・第二表) | 所得・控除の申告書本体 |
| 確定申告書第三表(分離課税用) | 分離課税所得を記載する専用の別表 |
| 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 | 株式の売却益を計算した明細書 |
| マイナンバーカードのコピー(または通知カード+身分証) | 本人確認・マイナンバー確認用 |
| 株式の売買契約書や株式譲渡合意書 | 売却価額・取得価額の根拠書類 |
| 取得時の購入証明書類(領収書・契約書など) | 取得費の証明 |
| 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の計算明細書(取得費加算の特例を使う場合) | 特例適用の根拠書類 |
e-Taxで申告する場合、一部の書類は電子データで送信できますが、売買契約書などの根拠書類は税務調査等に備えて保管しておくことが重要です。
上場株式との損益通算は可能か
非上場株式の譲渡損益と上場株式の譲渡損益は、損益通算できません。 これは税務上、非上場株式(一般株式等)と上場株式等は「別個の分離課税」として扱われているためです。
具体的には以下のとおりです。
| ケース | 通算の可否 |
|---|---|
| 非上場株式の利益 + 上場株式の損失 | 通算不可 |
| 非上場株式の損失 + 上場株式の利益 | 原則として通算不可 |
| 非上場株式同士の損益 | 通算可 |
| 上場株式同士の損益 | 通算可 |
たとえば、非上場株式で1,000万円の利益が出ても、上場株式で500万円の損失があったとしても、非上場株式の利益1,000万円全額に対して税金がかかります。 同じ「株式の譲渡」であっても、上場か非上場かで損益通算の範囲がまったく異なるため、ポートフォリオ全体の税金を考える際には注意が必要です。
非上場株式を売却する際のその他の注意点

非上場株式の売却は、上場株式と比べてさまざまな制約がともないます。 税金の問題と合わせて、実務上の注意点もあらかじめ把握しておくことが、スムーズな売却につながります。
売りたいタイミングで売れるとは限らない
上場株式は、証券口座があれば取引時間中にすぐ売却できます。 しかし非上場株式は、市場がないため買い手を自分で見つけなければなりません。
以下のような障壁があるため、売却には想定外の時間がかかることが多くあります。
- 買い手が見つからない:投資家や買収希望者との接触機会が限られています
- 会社の承認が必要:譲渡制限により、会社が反対すれば希望する相手に売れません
- 株価の合意が難しい:市場価格がないため、売り手と買い手で価格に対する認識が異なりやすい状況です
- デューデリジェンス(企業調査)に時間がかかる:M&Aを通じた売却では、買い手が財務・法務の調査を行うため数カ月かかることがあります
「税金の問題を解決してから売る」「相続が発生してから急いで売る」という状況になると、足元を見られた価格交渉を強いられることもあります。 売却を検討し始めたら、早い段階から専門家を交えて準備を進めることが重要です。
専門家(税理士・M&A仲介)への相談が重要な理由
非上場株式の譲渡は、税務・法務・財務の各分野が複雑に絡み合う取引です。 自分だけで判断して進めると、取り返しのつかない税務リスクや売却機会の喪失につながりかねません。
税理士への相談が特に重要な場面は以下のとおりです。
- 売却価格が時価から乖離している可能性があるとき(低額・高額譲渡のリスク回避)
- 相続した株式を売却するとき(取得費の引き継ぎ・取得費加算特例の検討)
- みなし配当が発生しそうなとき(発行会社への譲渡)
- ミニマムタックスの対象になり得るとき(高額な譲渡益が見込まれる場合)
- 確定申告前の税額試算が必要なとき
また、M&A仲介会社への相談は「売却先を見つける」という課題を解決するうえで欠かせません。 仲介会社を通じることで、買い手候補のマッチング・株価交渉のサポート・契約書の作成支援などを受けることができます。
税理士とM&A仲介の両方の専門家を組み合わせて活用することが、非上場株式をベストな条件で売却するための最善の方法といえます。
非上場株式の譲渡に関するお悩みは、株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式の譲渡は、税率・課税方式・株価の算定方法など、上場株式とは異なるルールが数多く存在します。 正確な知識がないまま売却を進めると、思わぬ課税リスクや手続きのミスにつながりかねない問題です。
「非上場株式を売却したいが、どこに相談すればいいかわからない」 「税金がいくらかかるか事前に把握したい」 「発行会社への売却でみなし配当が発生するか確認したい」
株式会社繁栄が運営する少数株Laboでは、非上場株式・少数株式に関するご相談を承っています。 譲渡時の税務処理・株価算定・売却先の探索・手続きのサポートまで、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な対応策をご提案しています。
非上場株式の譲渡に関するお悩みは、まずはお気軽にお問い合わせください。 初回のご相談は無料で承っています。 専門家が丁寧にお話をお伺いし、最善の対応策をご提示します。
まとめ 非上場株式の譲渡税金は相手方・価格によって大きく変わる
この記事では、非上場株式を譲渡したときにかかる税金について、基本から実務上の注意点まで幅広く解説しました。 最後に、記事の内容を要点として整理します。
- 個人が第三者に譲渡する場合:申告分離課税で20.315%の税率が一律に適用されます
- 法人が譲渡する場合:他の損益と合算して法人税等(実効税率は規模・所在地によって異なりますが概ね約30〜34%)が課されます
- 発行会社に譲渡する場合:みなし配当が発生し、総合課税で最大55%になる可能性があります
- 2025年分の所得から、高額所得者にはミニマムタックス(特定の基準所得金額の課税の特例)が適用されています
- 取得費・譲渡費用の正確な把握が、税負担を最小化するうえで非常に重要です
- 低額・無償譲渡は売り手・買い手ともに思わぬ課税リスクを生みます
- 非上場株式の損益は上場株式との損益通算ができません
- 売却タイミングは自由に選べないため、早めの準備と専門家への相談が欠かせません
非上場株式の譲渡は、一度きりの大きな取引になることがほとんどです。 税金の取り扱いを誤ると、数百万〜数千万円の差が出ることも珍しくありません。
「自分の株式を売ったらいくら税金がかかるのか」という具体的な数字を把握したうえで、売却の意思決定を行っていただくことをおすすめします。 不安な点や複雑な事情がある場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。


コメント