「親の会社の株式を相続したが、一体いくらの価値があるのだろう」 「少数株主として株式を持っているが、適正な価格で売れるのか不安だ」 「会社から株式の買取を提案されたが、提示された金額が正しいのかわからない」
非上場株式を保有している方であれば、こうした疑問や不安を感じたことがあるのではないでしょうか。 上場株式なら証券取引所で毎日価格が動き、誰でもリアルタイムで確認できます。 しかし非上場株式には、そのような公開された取引相場が存在しません。 では、自分が持っている株式の価格は、誰がどのように決めているのでしょうか。
実は、非上場株式の株価を決める主体は「1つ」ではありません。 売主と買主が交渉で決める場合、会社側(オーナー)が決める場合、専門の評価機関が決める場合と、状況によって異なります。 しかも、どの方法が採用されるかにかかわらず「税務上の時価」という見えないルールが存在し、これを知らないまま取引を進めると、後から多額の税金を請求されるリスクがあります。
この記事では、少数株主・相続で株式を取得した方・譲渡を検討している株主の方に向けて、非上場株式の株価が「誰によって、どのように決まるのか」を基礎から丁寧に解説します。 あわせて、財産評価基本通達に基づく評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式)の選び方や、評価方式が決まるまでのステップも具体的に紹介します。 「自分の株式がいくらになるのか知りたい」「会社から提示された買取価格が適正かどうか確認したい」という方にも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
そもそも非上場株式とは何か

非上場株式の株価を理解するためには、まず「非上場株式とはどういうものか」を正確に把握しておく必要があります。 普段の生活でなじみのある上場株式との違いを整理しながら、非上場株式特有の性質を確認していきましょう。
上場株式との根本的な違い
「上場」とは、企業が東京証券取引所(東証)やその他の証券取引所に株式を公開し、一般の投資家が自由に売買できる状態にすることをいいます。 上場企業の株式は「上場株式」と呼ばれ、毎営業日に売買が行われ、その価格(株価)はリアルタイムで公表されます。
一方、「非上場株式」とは、証券取引所に上場していない企業が発行している株式のことです。 「未公開株」「取引相場のない株式」とも呼ばれており、証券取引所での売買対象には含まれていません。
上場株式と非上場株式の主な違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 取引の場 | 証券取引所 | 存在しない(相対取引) |
| 株価の公開 | リアルタイムで公開 | 公開されない |
| 売買の自由度 | 誰でも自由に売買可能 | 制限があることが多い |
| 株主の範囲 | 不特定多数 | 限定的(親族・役員等) |
| 価格の客観性 | 市場が決定 | 当事者・専門家が算定 |
| 情報開示義務 | 厳格な開示義務あり | 開示義務は限定的 |
日本の企業数でみると、上場企業は東証だけでも約3,900社ほどですが、日本全国の企業数は約350万社以上です。 つまり、日本の企業の99%以上は非上場企業であり、非上場株式は実は非常に身近な存在です。
非上場企業には、地域の中小企業から売上数百億円規模の大企業まで幅広く含まれます。 相続や贈与によって、知らないうちに非上場株式を保有する立場になっている方も少なくありません。 特に同族経営の中小企業では、創業者の親族が株式を分散して保有しているケースが多く、「気づいたら少数株主になっていた」という状況は珍しくないのです。
取引相場が存在しないことの意味
上場株式は、証券取引所という公開市場において、無数の売り手と買い手が参加し、需要と供給のバランスによって価格が決まります。 この仕組みがあるからこそ、誰でも「今日のA社の株価は1,500円」と即座に確認でき、同じ価格で売買できます。
しかし非上場株式には、そのような公開市場が存在しません。 売りたい株主と買いたい相手が直接交渉する「相対取引」が基本であり、第三者が客観的に価格を確認できる仕組みがないのです。
これは、株式を保有している方にとって、実務上いくつかの大きな問題を生み出します。
- 価格の客観性が確保されにくい:売主と買主の合意だけで価格が決まるため、著しく低い価格での取引が押しつけられるリスクがある
- 買い手を見つけることが難しい:市場がないため、株式を売りたくても相手を探すこと自体が困難
- 税務リスクが生じやすい:時価からかけ離れた価格で取引すると、みなし贈与・みなし譲渡・みなし配当などの課税問題が発生する可能性がある
- 評価方法が複雑:客観的な市場価格がないため、財産評価基本通達などに従って専門的な評価を行う必要がある
特に少数株主や相続で株式を取得した方にとって深刻なのは、会社側(支配株主)が一方的に低い価格を提示してきた場合に、それが適正かどうかを自分で判断できないという点です。 取引相場がないということは、知識がない側が不利な立場に置かれやすいということでもあります。 自分の株式の適正な価値を知るためにも、評価の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
非上場の株価は誰が決めるのか

非上場株式の株価は、状況や取引の目的によって「誰が決めるか」が変わります。 大きく分けると、①売買当事者が交渉で決める場合、②会社側(オーナー・支配株主)が決める場合、③専門の評価機関・第三者が決める場合の3つがあります。 それぞれの特徴と、株式保有者として知っておくべきポイントを詳しく見ていきましょう。
売買当事者(売主・買主)が交渉によって決める場合
非上場株式の売買において、最も基本的な価格決定の仕組みは、売主と買主が対等な立場で交渉し、双方が合意した価格で取引する方法です。
これは一般的な商品の売買と同じ考え方です。 物の値段は基本的に売り手が決めて構いません。 しかし、買い手が納得しなければ売買は成立しないため、需要と供給が一致する点に向かって価格交渉が行われます。
非上場株式の売買でも同様に、買主が「この会社の株式を取得することで将来どれほどのキャッシュフローを得られるか」という視点から買収価格を検討します。 現在の業績が高くなくても、将来の成長性を評価して高値で取得するケースもあります。
譲渡を検討している株主の方にとって、交渉で価格が決まりやすい主な場面は以下のとおりです。
- M&A(企業の合併・買収)において第三者が株式を取得する場面
- 会社が少数株主から自己株式を買い取る場面
- 他の株主や後継者が持株を引き受ける場面
- 株主間で合意の上で相互に株式を売買する場面
交渉によって価格が決まる場合、売主である株主にとっては、自分の株式の適正な価値を事前に把握しておくことが交渉の出発点となります。 会社側や買主が提示してくる価格が適正かどうかを判断するためにも、税務上の時価や評価方式についての知識が不可欠です。
また、交渉で自由に価格を決められるのは、あくまで「純然たる第三者間」の取引に限られます。 特に親族間・同族間での取引では、税務当局から「時価と著しく乖離した価格での取引」とみなされ、課税問題が発生することがあります。 この点については後の章で詳しく解説します。
企業自身(会社側・支配株主)が決める場合
非上場株式を保有している方が直面しやすいのが、会社側やオーナー(支配株主)が一方的に株価を提示してくるケースです。 特に少数株主や相続で株式を取得した方は、このパターンに注意が必要です。
親族間・同族間での取引における価格設定
同族経営の中小企業では、株式の移転が親族間や関係者間で行われることが多くあります。 たとえば、相続で株式を引き継いだ後に会社側から「買い取りたい」と打診されるケースや、事業承継のタイミングで既存株主に株式の売却を求められるケースなどが典型です。
こうした場面では、会社側が価格を提示してくることが多く、提示された金額が適正かどうかを保有者側が独自に判断することが難しいという問題があります。 民法上、売買契約は当事者間の合意によって成立するため、極端に低い価格であっても「合意した」とみなされてしまうリスクがあります。
価格設定において会社側が考慮する主な要素は以下のとおりです。
- 会社の純資産額(帳簿上の純資産・時価純資産)
- 直近の収益や配当の実績
- 事業の将来性や業界の見通し
- 株式の移転後における支配力・影響力の大きさ
会社側にとって都合のよい評価方式が選ばれたり、少数株主に不利な価格が提示されたりするケースは珍しくありません。 「会社から提示された価格がそのまま適正価格だ」と思い込むことは、大きな損失につながる可能性があります。
会社側が提示する価格に潜む税務リスク
会社側が提示した価格で取引を進めた場合、税務上の問題が後から発覚するケースがあります。
問題が生じやすいのは、主に次のような場面です。
- 時価より著しく低い価格で親族間取引が行われた場合:税務上の時価との差額について、受け取った側に贈与税が課税される(みなし贈与)
- 個人から法人へ時価の2分の1未満で譲渡した場合:時価で譲渡したとみなして、譲渡所得税が課税される(みなし譲渡)
- 法人が自己株式を時価より低価格で個人から取得した場合:みなし配当課税が発生し、受け取った側の所得税負担が増大する(みなし配当)
税務当局は、非上場株式の売買に対して財産評価基本通達に基づく「税務上の時価」を基準として、取引価格の適否を判断します。 取引価格が税務上の時価から大きくかけ離れていると判断された場合、当事者が意図していなくても課税処分が下されます。
株式を売却・譲渡する立場の方は、会社側の提示価格をそのまま受け入れる前に、必ず専門家に税務上の時価を確認してもらうことが重要です。 知らずに進めた取引で多額の税金を請求されるリスクを避けるためにも、事前の確認が不可欠です。
専門の評価機関・第三者が決める場合
非上場株式の価格を最も客観的・公正に算出できるのが、専門の評価機関や第三者による評価です。 税務上のリスクを避けたい場合や、会社側との価格交渉に備えたい場合、相続で株式を取得して適正価値を知りたい場合など、様々な場面で活用されています。
評価会社・会計事務所・投資銀行の役割
非上場株式の価格算定を担う専門機関には、主に次の3種類があります。
評価会社(株式価値評価専門機関)
企業価値評価を専業とする会社で、財務アドバイザリーサービスを提供しています。 財務諸表・市場データ・業界比較などをもとに株価を算定するのが主な役割です。 DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)、類似企業比較法、純資産価額方式など、複数のアプローチを組み合わせて評価を行います。
会計事務所・税理士法人
大手の会計事務所には企業価値評価を専門に行う部門があり、非上場株式の評価を含む幅広いサービスを提供しています。 特に相続・贈与の場面では、財産評価基本通達に基づく評価が必要になるため、税務専門家による評価が最も信頼性が高いとされています。 中小企業の税務申告を担当している税理士に依頼することも多く、コストを抑えながら適正な評価を得られる方法として広く普及しています。
投資銀行・M&Aアドバイザリー
M&Aや株式の私的売買などの場面では、投資銀行やM&Aアドバイザリー会社が企業価値評価を担うことがあります。 市場での取引可能性や戦略的価値(シナジー効果など)も踏まえた上で株価を評価できる点が、他の評価機関との大きな違いです。 高額取引や複雑なスキームを伴う案件では、投資銀行の専門的な評価が重視されます。
第三者評価が選ばれる場面とは
株式保有者の立場から、第三者による評価が特に有効・必要とされる場面は以下のとおりです。
| 場面 | 株式保有者にとっての意義 |
|---|---|
| 相続で株式を取得した場合 | 相続税の申告に必要な評価額を正確に把握するため |
| 会社から買取を打診された場合 | 提示価格が適正かどうかを独立した立場から確認するため |
| 少数株主として売却を検討する場合 | 会社側との交渉において客観的な根拠を持つため |
| 株主間で価格について争いがある場合 | 裁判所や調停の場で客観的な根拠として活用するため |
| 株式を贈与・譲渡する場合 | みなし課税のリスクを回避するため事前に時価を確認するため |
純然たる第三者間の取引であれば、当事者間の合意価格は税務上も原則として是認されます。 これは、市場経済原理に基づいて経済合理性のある価格が成立しているとみなされるためです。 会社側から不当に低い価格を提示されたと感じる場合や、株式の売却を検討しているが価格の根拠がわからない場合は、まず専門家による第三者評価を取得することを検討しましょう。
非上場株式の税務上の時価とは

非上場株式を売却・譲渡・相続する際、価格を当事者間で合意したとしても、税務上は別に「適正な時価」が存在します。 この「税務上の時価」を知らないままでいると、取引後に想定外の税金が課される事態に陥ることがあります。
課税当局が定める「税務上の時価」の考え方
税務当局(国税庁・税務署)は、非上場株式の取引に対して、財産評価基本通達に基づいて算定された価額を「税務上の時価」として扱います。
なぜこのようなルールが設けられているかというと、課税の公平性を保つためです。 非上場株式には公開市場がないため、当事者間で自由に価格を決めれば、意図的に税負担を下げることが可能になってしまいます。 これを防ぐために、国税庁は画一的な評価ルール(財産評価基本通達)を定め、取引価格が税務上の時価から著しく乖離している場合には課税処分を行う権限を持っています。
株式保有者の立場から特に注意が必要なのは、取引の種類によって適用される評価基準が異なる点です。
| 取引の種類 | 適用される評価基準 |
|---|---|
| 相続・遺贈による取得 | 財産評価基本通達(相続税評価額) |
| 贈与による取得 | 財産評価基本通達(贈与税評価額) |
| 個人間の売買 | 財産評価基本通達を基準とした時価 |
| 個人→法人への売買 | 所得税法上の時価(法人税法施行令) |
| 法人→個人への売買 | 法人税法上の時価(時価純資産等) |
特に重要なのは、「同じ株式でも取引の当事者によって適用される評価ルールが異なる」という点です。 個人間・個人と法人間・法人間では、それぞれ異なる税法が適用されるため、取引前に必ず専門家に確認することが大切です。
なお、M&Aなど純然たる第三者間の取引で合意した価格は、たとえ財産評価基本通達の評価額と異なっていても、経済合理性が認められる限り税務上も是認されます。 つまり、第三者間の合意価格は市場価格と同等の扱いを受けるという原則があります。
みなし譲渡・みなし贈与・みなし配当のリスク
非上場株式を時価から著しく乖離した価格で売買した場合、「みなし課税」と呼ばれる課税リスクが発生します。 主に「みなし譲渡」「みなし贈与」「みなし配当」の3種類があり、これらが同時に発生すると「トリプル課税」と呼ばれる深刻な状態になります。
時価より著しく低い価格で売買した場合の課税事例
具体的なケースを使って、みなし課税の仕組みを理解しましょう。
【事例】Aさん(個人の少数株主)が保有する非上場株式を、会社(法人B)に売却した
- 株式の税務上の時価:5,000万円
- 会社側から提示・合意した売買価格:1,500万円(時価の30%)
- 取引の形式:個人→法人
この場合、以下の3つの課税リスクが同時に発生します。
①みなし譲渡(所得税法59条)
個人が法人に対し、資産を「時価の2分の1未満の価額」で譲渡した場合は、実際の譲渡価額ではなく「時価で譲渡したとみなして」所得税が課税されます。 Aさんは1,500万円しか受け取っていないにもかかわらず、5,000万円で売ったとみなされ、その差額に対して譲渡所得税が課されます。
②みなし配当(所得税法25条)
法人が自己株式を取得した際などに、交付した金銭等の額が資本金等の額を超える部分は「配当」とみなされ、受け取った個人に配当所得として課税されます。 なお、みなし配当は自己株式取得のほか、合併・解散・資本の払い戻しなどの場面でも発生します。 配当所得は最高税率が55%(所得税45%+住民税10%)に達することがあり、通常の譲渡所得(20.315%)に比べて大幅に重い課税となります。
③みなし贈与(相続税法9条)
法人Bが時価5,000万円の株式を1,500万円で取得したことで、その差額3,500万円分の利益が他の株主全員に帰属したとみなされます。 既存株主はAさんの値引き分だけ自分の株式価値が増加したとされ、その増加額に対して贈与税が課税される可能性があります。
3つの課税が重なることで、実際の受取額(1,500万円)をはるかに上回る税負担が発生するケースもあります。 これが「トリプル課税」と呼ばれる、非上場株式取引における最も避けるべき事態です。 「会社が提示した価格に合意しただけなのに、なぜ追徴課税が来るのか」という事態を防ぐためにも、取引前の確認が不可欠です。
トリプル課税を避けるための注意点
トリプル課税のリスクを避けるための実践的な注意点をまとめます。
①売却・譲渡の前に必ず株式の税務上の時価を確認する
取引を進める前に、税理士や評価専門家に依頼して、税務上の時価を算定してもらいます。 特に個人から法人への譲渡では、「時価の2分の1」が一つの重要な判定基準となるため、会社側の提示価格がこの基準を下回っていないか確認することが大切です。
②取引の相手方(個人か法人か)を確認し、適用される税法ルールを把握する
課税リスクは、取引の相手方の属性によって異なります。 相手が個人か法人かによって適用される税法が変わるため、取引のパターンを事前に整理し、専門家に確認を依頼しましょう。
③会社側の提示価格をそのまま受け入れない
会社側から提示された価格が低すぎる場合、受け入れた側に思わぬ税負担が発生することがあります。 税務上の時価に近い価格での取引が、課税リスクを最小化する最も効果的な方法です。 価格に疑問を感じたら、取引前に税理士に相談し、適切な対応方法を確認しておくことが大切です。
④取引の経緯・価格の根拠を文書化しておく
税務調査の際には、なぜその価格で取引したのかという根拠を説明できる必要があります。 評価計算書・株式譲渡契約書など、関連書類を整備して保管しておくことが大切です。
非上場株式の株価算定方法の種類

非上場株式の税務上の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に従って行います。 評価方式は大きく「原則的評価方式」と「特例的評価方式(配当還元方式)」の2種類に分かれており、どちらを適用するかは、株式を取得した株主の立場によって決まります。 自分の株式がどの方式で評価されるかを理解しておくことは、売却価格の適正判断や相続税の計算において非常に重要です。
原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)
原則的評価方式は、会社の規模や業種をもとに株価を算定する方法です。 同族株主など、株式取得後に会社の経営に大きな影響を及ぼせる立場の株主に適用されます。 評価対象会社を「大会社・中会社・小会社」の3つに区分し、それぞれに異なる評価方式を適用します。 原則的評価方式で算出される評価額は、一般的に高くなりやすい傾向があります。
大会社に適用される類似業種比準方式
類似業種比準方式は、上場している同業種企業の株価を参考に、評価対象会社の株価を算定する方法です。
具体的には、上場している同業種企業の「1株あたりの配当金額(B)」「1株あたりの利益金額(C)」「1株あたりの純資産価額(D)」の3要素について、評価対象会社と比較することで株価を算出します。
計算式のイメージは以下のとおりです。
類似業種比準価額 = 類似業種の株価 × (b/B + c/C + d/D) ÷ 3 × 斟酌率
(b・c・dは評価会社の各要素、B・C・Dは類似業種の各要素)
類似業種の業種目や業種別株価は、国税庁のウェブサイトで毎年公表されています。
この方式が大会社に適用される主な理由は、大企業は規模や業種において上場企業に比較的近い状況にあり、上場企業の株価を参考にすることで実態を反映しやすいためです。 一方で、中小会社では単年度の損益変動が大きく、上場企業との比較が実態を反映しにくい場合があります。
株式保有者の立場から見ると、類似業種比準方式による評価額は、会社の業績が良い時期には高くなり、業績が低迷している時期には低くなりやすい特徴があります。 相続のタイミングによって評価額が変わるため、取得時点での株価水準を把握しておくことが重要です。
小会社に適用される純資産価額方式
純資産価額方式は、評価対象会社の資産・負債をすべて時価評価し直した上で、「1株あたりの純資産価額」を算定する方法です。
計算の考え方は、「もし今この会社を清算したら、1株あたりいくら受け取れるか」という視点です。 具体的には、相続開始時点における会社の時価総資産から時価負債と法人税等相当額を差し引き、その残額を発行済株式数で割ることで1株あたりの評価額を求めます。
純資産価額 =(時価総資産 − 時価負債 − 法人税等相当額)÷ 発行済株式数
この方式の特徴は、土地や有価証券など含み益のある資産を保有している会社では、帳簿上の純資産よりも評価額が高くなりやすい点です。 長年にわたって内部留保を蓄積してきた会社では、純資産価額方式による評価が非常に高額になることがあります。
株式保有者にとって注意が必要なのは、純資産価額方式による評価額は相続税の計算に直接影響するという点です。 相続で株式を取得した場合、評価額が高いほど相続税の負担も重くなるため、保有する株式がどの評価方式で計算されるかを事前に確認しておくことが大切です。
中会社における併用方式
中会社は、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」を一定の割合で組み合わせた「併用方式」によって評価します。 中会社はさらに大・中・小の3段階に細分化されており、会社の規模に応じて2つの方式の配分割合(Lの割合)が異なります。
| 中会社の区分 | 類似業種比準方式の割合(L) | 純資産価額方式の割合 |
|---|---|---|
| 中会社の大 | 0.9 | 0.1 |
| 中会社の中 | 0.75 | 0.25 |
| 中会社の小 | 0.6 | 0.4 |
たとえば「中会社の大」に区分される会社の場合、評価額は「類似業種比準価額 × 0.9 + 純資産価額 × 0.1」によって算出されます。 この計算式によって算出した価額と、純資産価額方式だけで算出した価額のうち、低い方を選択することも認められています。
会社規模が大きいほど類似業種比準方式の割合が大きく、小さいほど純資産価額方式の割合が大きくなります。 これは、大きな会社ほど上場企業との比較が有効で、小さな会社ほど資産の清算価値が実態を反映しやすいという考え方に基づいています。
特例的評価方式(配当還元方式)
配当還元方式は、株式から受け取れる「配当金」だけを株式の価値の基準として評価する方式です。
計算式は以下のとおりです。
配当還元価額 =(年間配当金額 ÷ 10%)÷ 50
(年間配当金額は、直前期末以前2年間の配当金額の合計額の2分の1に相当する1株あたり配当金額)
この方式で算出された評価額は、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)と比べて一般的に大幅に低くなります。 少数株主や相続で株式を取得した方にとっては、この方式が適用されるかどうかが相続税の負担額に大きく影響します。
同族株主に該当しない株主に適用される理由
配当還元方式が適用されるのは、「同族株主以外の株主」(少数株主)が株式を取得する場合です。
なぜ少数株主には低い評価が適用されるのでしょうか。 その理由は、少数株主には経営に関する実質的な支配力がないからです。
同族株主は議決権の過半数または一定割合以上を保有しており、会社の経営方針・配当政策・資産の処分などを左右できます。 一方で少数株主は、会社の経営に対して大きな影響力を持ちません。 少数株主にとっての株式の経済的な価値は、実質的に「配当を受け取る権利」にとどまります。
「支配力がない株式は、配当から得られる収益を基準に評価するのが合理的」という考え方から、配当還元方式が特例的に適用されます。
同族株主かどうかの判定は、具体的には以下の基準で行います。
- 株主の1人およびその同族関係者が議決権総数の30%以上を保有するグループに属する場合 → 同族株主(原則的評価方式)
- 上記に該当しない場合 → 少数株主(配当還元方式)
なお、同族株主に該当する場合でも、その株主が「中心的な同族株主」でなく、かつ役員でもない場合は、一定の条件のもとで配当還元方式が適用されることがあります。
自分がどちらの方式で評価されるかは、株主名簿や議決権の状況を確認した上で判断する必要があります。 特に相続で株式を取得した場合は、評価方式の違いによって相続税額が大きく変わるため、早めに専門家に確認することをお勧めします。
株価算定の流れ|評価方式が決まるまでのステップ

自分の株式がどの評価方式で評価されるかを知るには、いくつかのステップを順番に踏む必要があります。 ここでは、財産評価基本通達に基づく評価方式の決定フローを3つのステップで整理します。
ステップ① 同族株主か否かを判定する
最初のステップは、株式を取得した自分(取得者)が「同族株主」に該当するかどうかの判定です。 この判定結果によって、適用される評価方式の大枠(原則的評価方式か配当還元方式か)が決まります。
同族株主の判定は、課税時期(相続の場合は相続開始日、贈与の場合は贈与を受けた日)時点で行います。
【同族株主の判定基準】
- 判定①:評価会社の株主のうち、「株主の1人+その同族関係者」の議決権合計が議決権総数の30%以上の場合、そのグループの株主は同族株主に該当する
- 判定②:株主のうち、最も議決権の多いグループの合計が議決権総数の50%超の場合は、「30%以上」の基準ではなく「50%超」のグループに属する株主が同族株主となる
同族関係者とは、親族(配偶者・六親等内の血族・三親等内の姻族)や、これらの者が一定以上の株式を保有する法人などを指します。
自分が同族株主グループに属するかどうかは、株主名簿上の議決権割合を確認することで判断できます。 同族株主と判定された場合は「原則的評価方式」(類似業種比準方式・純資産価額方式)が適用されます。 同族株主以外と判定された場合は「配当還元方式」が適用され、評価額は一般的に低くなります。
ただし、同族株主に該当する場合でも、以下の条件をすべて満たす場合は例外的に配当還元方式が適用されます。
- 課税時期において、その株主が役員(取締役・監査役等)でない
- 課税時期において、その株主が「中心的な同族株主」でない
- 株式取得後の議決権の合計が5%未満である
ステップ② 一般の評価会社か特定の評価会社かを判断する
ステップ①で「同族株主」と判定された場合は、次に株式を発行している会社が「一般の評価会社」か「特定の評価会社」かを判断します。
特定の評価会社とは、通常の事業を行っている会社とは大きく異なる特殊な状況にある会社のことで、以下のような種類があります。
| 種類 | 概要 | 評価方式 |
|---|---|---|
| 株式保有特定会社 | 総資産に占める株式等の割合が50%以上 | 純資産価額方式(原則) |
| 土地保有特定会社 | 総資産に占める土地の割合が一定以上 | 純資産価額方式(原則) |
| 開業3年未満の会社 | 評価時点での開業後年数が3年未満 | 純資産価額方式 |
| 開業前・休業中の会社 | 事業を開始していない・長期休業中 | 純資産価額方式 |
| 清算中の会社 | 解散が決定し清算手続き中 | 清算分配見込額 |
| 比準要素数1の会社 | 直前期末および直前々期末のいずれにおいても、配当・利益・純資産の3要素のうち2つ以上がゼロ | 純資産価額方式と類似業種比準の併用 |
特定の評価会社に該当する場合は、通常の大・中・小の会社区分に進まず、それぞれの状況に応じた特別な評価方式が適用されます。
保有している株式の発行会社が特定の評価会社に該当するかどうかは、会社の財務情報(貸借対照表・損益計算書など)を確認することで判断できます。 特定の評価会社に該当しない(通常の事業を行っている)会社は「一般の評価会社」として、次のステップ③へ進みます。
ステップ③ 会社規模(大・中・小)を区分する
ステップ②で「一般の評価会社」と確認できたら、最後に株式を発行している会社の規模(大会社・中会社・小会社)を区分します。 この区分によって、適用される具体的な評価方式が決まります。
会社規模の区分は、以下の3つの基準をもとに行います。
- 従業員数:課税時期前1年間を通して事業に従事している人数
- 総資産価額(帳簿価額):直前期末における総資産の帳簿価額
- 年間取引金額:直前期末以前1年間の売上高(取引金額)
重要な点として、従業員数が70人以上の場合は、他の基準に関わらず無条件で「大会社」に区分されます。
70人未満の場合は、業種区分(卸売業・小売業・サービス業・その他)に応じた基準を用いて「大・中・小」を判定します。 判定は「総資産価額と従業員数による基準(チ欄)」と「取引金額による基準(リ欄)」のそれぞれで区分を確認し、いずれか上位の区分を採用します。
区分が確定したら、それぞれに応じた評価方式が適用されます。
- 大会社 → 類似業種比準方式(または純資産価額方式との選択)
- 中会社(大・中・小) → 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用(Lの割合に応じて)
- 小会社 → 純資産価額方式(または類似業種比準方式50%・純資産価額方式50%との選択)
非上場株式の評価で注意すべきポイント

財産評価基本通達のルールを理解したうえで、株式保有者として実務においてさらに注意しておくべきポイントがあります。 評価を誤ると税務上の不利益を受けたり、売却時に不当に低い価格を押しつけられたりするリスクがあります。
株主の持ち株比率が評価額に影響する
非上場株式の評価において、自分がどの程度の議決権(持ち株比率)を持っているかは、評価額に直接影響します。
持ち株比率が高く、会社経営を左右できる支配的な立場の株主は「原則的評価方式」が適用され、評価額は高くなります。 一方で、持ち株比率が低く、経営への影響力が小さい少数株主は「配当還元方式」が適用され、評価額は相対的に低くなります。
この仕組みは、相続で株式を取得した場合にも影響します。 相続によって取得した株式が同族株主グループの一員となるかどうかによって、適用される評価方式が変わり、相続税の計算額に大きな差が生まれます。 自分の持ち株比率がどちらの評価方式の適用条件に該当するかを、相続発生前に把握しておくことが重要です。
また、会社から株式の買取を求められた際にも、持ち株比率は重要な交渉材料となります。 少数株主であっても、株式には一定の価値があり、配当還元方式による評価額が最低限の参考値となります。 不当に低い価格での買取に安易に応じる前に、専門家に評価額の確認を依頼することを強くお勧めします。
評価過程を文書化しておく重要性
非上場株式の評価を行った際には、その過程を詳細に文書化して保存しておくことが極めて重要です。
なぜかというと、税務調査では「なぜその価格を採用したのか」「どのような根拠でその評価額が算出されたのか」を具体的に説明する必要があるからです。 評価の根拠が明確でない場合、税務署から評価額の否認や追徴課税を受けるリスクが生じます。
株式保有者として文書化しておくべき主な内容は以下のとおりです。
- 株式評価計算書(評価方式・計算過程・使用データの明記)
- 同族株主の判定資料(株主名簿・議決権の確認資料)
- 取引に関する契約書(株式譲渡契約書)
- 評価を依頼した専門家(税理士・評価会社)からの報告書
- 取引の経緯を示す記録(打診・交渉・合意の経緯)
特に相続・贈与では高額の取引になることが多く、税務調査の対象になりやすい傾向があります。 「後から文書を作ればいい」という対応は通用しないため、取引前・取引時点での文書整備を徹底しましょう。
定期的な見直しと専門家への相談の必要性
非上場株式の評価額は、固定された値ではありません。 会社の業績・資産状況・市場環境・税法改正によって、評価額は毎年変動します。
たとえば、保有する株式の発行会社が業績好調な時期は純資産や利益が大きくなり、評価額が高くなります。 一方で、業績が低迷している時期や特定の費用が発生した年度は、評価額が下がる傾向があります。 相続・譲渡のタイミングによって評価額が大きく変わるため、保有株式の評価額を定期的に把握しておくことが大切です。
また、税法のルールも定期的に改正されています。 財産評価基本通達の改正や事業承継税制の特例措置(2027年12月末まで)なども、非上場株式の評価・移転に大きく影響します。 最新の税法動向を把握しておくためにも、税理士などの専門家と継続的な相談関係を構築しておくことが賢明です。
専門家に相談することで期待できる主なメリットは以下のとおりです。
- 自分の持ち株比率に基づく適切な評価方式の特定と評価額の算出
- 会社側から提示された買取価格の適正判断
- 相続・贈与の際の税務リスクへの事前対応
- 税務調査に対応できる文書整備のサポート
- 売却・譲渡のタイミングや手法の最適な提案
「専門家に相談するコストがかかる」と感じるかもしれませんが、事後に発生する追徴課税や不当な価格での売却によるリスクと比較すると、事前の相談コストは十分に費用対効果の高い投資です。
非上場株式の株価・評価でお困りの方は、株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

「相続で非上場株式を引き継いだが、いくらの価値があるのか全くわからない」 「会社から株式の買取を打診されたが、提示された金額が適正かどうか判断できない」 「少数株主として株式を保有しているが、どうすれば適正な価格で売却できるのか知りたい」
そのようなお悩みは、非上場株式を保有している方にとって、決して珍しいことではありません。 非上場株式の評価は、適用される方式や株主の立場によって算出される金額が大きく変わり、知識がない状態で対応すると不当に低い価格での取引や想定外の税負担につながることがあります。 「まだ急がなくてもいい」と先延ばしにしているうちに、相続や会社側からの買取請求のタイミングで不利な状況に置かれるケースは少なくありません。
「自分の株式がどの評価方式で計算されるのかわからない」 「会社から提示された買取価格が正しいのか、第三者に確認してもらいたい」 「相続で取得した株式の相続税申告をどう進めればよいかわからない」 「少数株式を保有しているが、適正な価格で売却する方法を知りたい」
株式会社繁栄が運営する少数株Laboでは、少数株主・相続取得者・譲渡検討中の株主の方からのご相談を幅広く承っています。 類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式といった評価方式の特定と算出から、会社側の提示価格の適正判断、みなし課税リスクへの対応、さらには株式の売却・承継に向けた実務サポートまで、お客様一人ひとりの状況に合わせてトータルでご支援しています。
非上場株式の評価・売却・相続に関するお悩みは、まずはお気軽にお問い合わせください。 初回のご相談は無料で承っています。 専門家が丁寧にお話をお伺いし、最善の対応策をご提示します。
まとめ|非上場株の株価は状況・目的・評価方式によって変わる
この記事では、「非上場株の株価は誰が決めるのか」という問いを中心に、少数株主・相続取得者・譲渡検討中の株主の方が知っておくべき評価の仕組みを解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを整理します。
| テーマ | まとめ |
|---|---|
| 株価を決める主体 | 売買当事者の交渉・会社側(支配株主)・専門評価機関の3パターン |
| 株式保有者が注意すべき点 | 会社側の提示価格をそのまま受け入れず、事前に専門家へ確認する |
| 税務上の時価 | 財産評価基本通達に基づき算定。乖離が大きいとみなし課税が発生 |
| 評価方式の選択 | 同族株主→原則的評価方式、少数株主→配当還元方式 |
| 評価のステップ | ①同族株主判定 → ②特定会社判断 → ③会社規模区分 |
| 注意すべき点 | 持ち株比率・文書化・定期的な見直し |
非上場株式の株価は、「自分が同族株主かどうか」「どんな目的での取引か」「株式を発行している会社の規模はどうか」という3つの要素が組み合わさって決まります。 ひとつの正解があるわけではなく、状況・目的・評価方式によって大きく異なることが、非上場株式の最大の特徴です。
「相続で取得した株式の評価額を知りたい」「会社から買取を打診されて価格が適正かどうか確認したい」「少数株主として保有している株式を適正な価格で売却したい」——そのような方は、まずは税理士や非上場株式の専門家に相談することをお勧めします。 適切な評価と事前の準備が、不当な取引や将来の税務リスクを防ぐ最善の策です。
非上場株式の評価・売却・相続に関してお悩みの方は、ぜひ専門家のサポートを活用してください。


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