非上場株式を保有していると、配当金を受け取ったときの税務処理が思いのほか複雑で、頭を抱える方が少なくありません。
上場株式の配当なら、証券会社が源泉徴収してくれるので確定申告を省略できるケースも多いです。 しかし非上場株式の配当は、原則として総合課税の対象となり、所得税率が最高45%、住民税10%を合わせると最高55%超という重い税負担がのしかかります。
さらに、会社が自己株を買い取るときや資本剰余金を払い戻すときには「みなし配当」という概念が生じ、受け取り手が知らないまま高額の税金を課されるケースも現実に起きています。 相続で非上場株式を引き継いだ場合も、配当の税務区分の判断が複雑で、申告誤りのリスクが高まります。
このような背景から、非上場株式の配当税務は「知らないと損をする」どころか、「知らないと追徴課税やペナルティを受ける」危険性をはらんでいます。
本記事では、非上場株式の配当に関わる税金の仕組みを、基礎知識からみなし配当・相続絡みの応用論点まで体系的に解説します。 税理士や弁護士への相談前に全体像を把握したい方にも、実務で直接活用したい方にも役立てていただける内容を目指して、丁寧に説明していきます。 ぜひ最後までお読みいただき、税務リスクへの備えに役立ててください。
非上場株式と配当の基本を理解する

非上場株式とは何か
非上場株式とは、東京証券取引所などの公認された金融商品取引所に上場していない企業の株式のことです。 日本には約300万社以上の法人が存在しますが、上場企業は2024年時点でおよそ3,900社前後にとどまります。 つまり、日本の企業の圧倒的多数は非上場であり、非上場株式は中小企業・同族会社・スタートアップ企業など、幅広い企業形態にわたります。
非上場株式は、市場での売買が原則として行われないため、流動性が極めて低いのが最大の特徴です。 保有者が株式を換金したいと思っても、買い手を自分で探す必要があり、希望通りの価格・タイミングで売却できる保証はありません。
一方で、創業者や経営者一族が株式を保有し続けることで、外部からの経営干渉を防げるというメリットもあります。 また、未上場のベンチャー企業に初期から出資した場合、上場後に大きなキャピタルゲインを得られる可能性もあります。
非上場株式の保有者としては、主に以下のような立場の方が挙げられます。
- 中小企業の創業者・オーナー経営者とその家族
- 事業承継で株式を引き継いだ後継者
- 非公開会社への出資者(エンジェル投資家・ベンチャーキャピタルなど)
- 相続によって非上場株式を取得した相続人
こうした立場の方が配当を受け取ったり、株式の売買・相続に直面したりしたとき、税務上の正確な判断が不可欠になります。
上場株式との違いと配当の特徴
上場株式と非上場株式では、配当を取り巻く制度がいくつかの重要な点で異なります。 以下の表で主な違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 課税方式 | 申告分離課税(または申告不要) | 総合課税(原則) |
| 源泉徴収税率 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) | 20.42%(所得税・復興特別所得税のみ) |
| 確定申告 | 原則不要(特定口座・源泉徴収あり) | 原則必要 |
| 配当控除 | 適用なし(申告分離課税選択時) | 適用あり(総合課税の場合) |
| 損益通算 | 上場株式の譲渡損失と通算可能 | 通算不可 |
| 株式の流動性 | 高い(市場で随時売買可能) | 低い(相対取引のみ) |
上場株式の配当は、証券会社が源泉徴収を完結させてくれるため、多くの場合は確定申告なしで処理できます。 これに対し非上場株式の配当は、会社が支払い時に所得税・復興特別所得税(合計20.42%)を源泉徴収しますが、受取人は原則として確定申告で総合課税として申告しなければなりません。
また、上場株式では申告分離課税(一律20.315%)を選択することで税負担を抑えられますが、非上場株式にはこの選択肢がありません。 所得が多いほど高い税率が適用される累進課税の対象となるため、高所得者ほど税負担が重くなる仕組みになっています。
非上場株式を保有する主なリスク
非上場株式には配当を受け取れる可能性がある一方で、複数のリスクも存在します。 代表的なものを以下に挙げます。
1. 流動性リスク 市場での売買ができないため、急いで現金化したいときに売り先が見つからない可能性があります。 特に少数株主の場合は、買い手探しに長い時間がかかることも多いです。
2. 情報の非対称性リスク 上場企業と異なり、非上場企業は決算情報の公開義務が限られています。 株主であっても、経営状況・財務内容・配当方針を把握しにくい場面があります。
3. 経営支配リスク(少数株主の場合) 議決権の過半数を持たない少数株主は、経営方針の決定に実質的な影響力を持てません。 配当を出すかどうかも経営者側の判断に委ねられるため、長期にわたって配当ゼロという状況もあり得ます。
4. 相続・事業承継リスク 非上場株式は相続財産に含まれますが、評価額の算定が複雑で、多額の相続税が発生するケースがあります。 また、株式が分散すると経営の安定性が損なわれる恐れもあります。
5. 税務リスク 本記事のメインテーマでもありますが、配当・みなし配当・相続時の税務処理を誤ると、追徴課税やペナルティのリスクがあります。 税負担が想定外に大きくなることも珍しくありません。
これらのリスクを正確に理解した上で、適切な対策を講じることが非上場株式を保有・承継する際の基本姿勢となります。
非上場株式の配当にかかる税金の仕組み

配当金は総合課税の対象になる
非上場株式から受け取る配当金は、所得税法上「配当所得」として分類され、原則として総合課税の対象となります。 総合課税とは、給与所得・事業所得・不動産所得などほかのすべての所得と合算したうえで税率を適用する課税方式です。
合算後の所得が大きくなるほど適用される税率も上がる累進課税が働くため、高所得者が非上場株式の配当を受け取ると、非常に高い税率が課されることになります。
上場株式との課税方式の違い(申告分離課税 vs 総合課税)
上場株式の配当には、「申告分離課税」という制度が用意されています。 これは、ほかの所得と切り離して一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)で課税する方式です。 所得税率が高い方でも一律の税率で済むため、高所得者にとって有利な選択肢になります。
非上場株式の配当には、この申告分離課税の選択肢がありません。 必ず総合課税として申告する必要があり、所得税率は最高45%、住民税10%を合わせると最高55%超にのぼります。
| 課税方式 | 適用対象 | 税率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 申告分離課税 | 上場株式の配当 | 20.315%(一律) | ほかの所得と分離して課税 |
| 総合課税 | 非上場株式の配当 | 5%〜55%超(累進) | ほかの所得と合算して課税 |
| 申告不要制度 | 上場株式(特定口座) | 20.315%(源泉のみ) | 確定申告を省略できる |
この違いは非常に大きく、たとえば課税所得が4,000万円を超えるような方が100万円の非上場株式配当を受け取ると、そこに55%超の税率が適用され、手取りが半額以下になる計算です。
源泉徴収(20.42%)と確定申告の関係
非上場株式の配当を支払う会社は、配当を受取人に渡す前に所得税および復興特別所得税として合計20.42%を源泉徴収する義務があります。 この源泉徴収は「仮払い」のような性格を持っており、確定申告で最終的な税額を精算する仕組みになっています。
具体的な流れは次の通りです。
- 会社が配当100万円を支払う
- 20.42%(204,200円)を源泉徴収し、税務署に納付する
- 受取人の手取りは795,800円
- 翌年の確定申告で、配当所得を総合課税として申告する
- 本来の税額から源泉徴収額を控除し、不足分を納付(または過払い分を還付)する
所得税率が20.42%より低い方(たとえば所得の低い方)は、確定申告することで還付を受けられる場合があります。 一方、税率が高い方は不足分の追加納付が必要になります。
また、源泉徴収される20.42%は所得税・復興特別所得税のみであり、住民税は含まれていません。 住民税の10%分は、確定申告書のデータをもとに翌年に別途課税されます。 この点を見落として「源泉徴収で完結した」と誤解する方が多いため、注意が必要です。
所得税の税率と累進課税の影響
所得税率の一覧(5%〜45%)と税額計算の仕組み
日本の所得税は、課税所得の金額に応じて税率が段階的に上がる超過累進税率を採用しています。 「超過累進」とは、各税率が課税所得のすべてではなく、その税率区分に該当する部分だけに適用される仕組みです。
現行の所得税率は以下のとおりです。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(出典:国税庁「所得税の税率」)
たとえば、課税所得が1,000万円の場合の所得税額は次のように計算します。
1,000万円 × 33% − 1,536,000円 = 1,764,000円
この計算式の「控除額」は、各税率区分の端点で税額が不連続にならないよう調整するための数字です。 この仕組みにより、課税所得が高くなるほど実効税率も上昇するため、非上場株式の高額配当を受け取る高所得者への影響は特に大きくなります。
住民税10%を加えると最高55%超になる|復興特別所得税にも注意
所得税の最高税率45%に加え、住民税が一律10%課税されます。 合計すると、最高税率は55%に達します。
さらに、2013年から2037年までの25年間にわたって「復興特別所得税」が上乗せされています。 復興特別所得税は、所得税額の2.1%相当額が加算される仕組みです。 所得税率45%の方の場合、45% × 2.1% ≒ 0.945%が追加されるため、実質的な税率はさらに高くなります。
| 税目 | 税率 |
|---|---|
| 所得税(最高) | 45% |
| 復興特別所得税(最高) | 約0.945%(45% × 2.1%) |
| 住民税 | 10% |
| 合計(最高) | 約55.945% |
つまり、課税所得が4,000万円を超える方が非上場株式の配当を1,000万円受け取ると、税金だけで約560万円近くになる計算です。 受け取った配当の半分以上が税金として消えてしまうことを、多くの方は事前に把握できていません。 高所得者が非上場株式を保有している場合は、配当方針について事前に税理士と相談することが極めて重要です。
配当控除を活用して税負担を軽減する

配当控除とは何か|内国法人からの配当に適用される
配当控除とは、総合課税で配当所得を申告する場合に、一定の金額を税額から直接差し引ける制度です。 法人の段階で法人税が課された利益を、さらに個人の段階で所得税・住民税としても課税するという「二重課税」を緩和するために設けられています。
配当控除が適用されるのは、日本国内に本店を置く内国法人からの配当に限られます。 外国法人からの配当や、外国株式の配当には適用されません。 また、申告分離課税を選択した場合も配当控除の対象外となります。
非上場株式の配当は総合課税が原則であるため、内国法人からの配当であれば配当控除を活用できるのがメリットです。 上場株式の配当で申告分離課税を選んだ場合には配当控除が使えないため、この点では非上場株式に有利な側面があります。
所得税10%・住民税2.8%の控除額と適用条件
配当控除の控除率は、課税総所得金額によって異なります。
所得税の配当控除率
| 課税総所得金額 | 配当控除率(所得税) |
|---|---|
| 1,000万円以下の部分 | 10% |
| 1,000万円超の部分 | 5% |
住民税の配当控除率
| 課税総所得金額 | 配当控除率(住民税) |
|---|---|
| 1,000万円以下の部分 | 2.8% |
| 1,000万円超の部分 | 1.4% |
たとえば、課税総所得金額が800万円で配当所得が100万円の場合、所得税の配当控除額は100万円 × 10% = 10万円となります。 住民税の配当控除額は100万円 × 2.8% = 2.8万円です。 合計12.8万円の税額控除を受けられることになります。
ただし、課税総所得金額が1,000万円を超えると控除率が半減するため、高所得者には恩恵が薄くなります。 配当控除の効果は、所得水準と配当額のバランスを踏まえて慎重に計算することが大切です。 具体的な控除額については、税理士に試算を依頼することをおすすめします。
確定申告の方法と申告不要制度
少額配当に該当する場合の特例条件
非上場株式の配当であっても、1回の支払いにつき受け取る配当金額が少額の場合は、確定申告を省略できる「少額配当の申告不要制度」が設けられています。
少額配当として申告不要とされる条件は以下のとおりです。
- 1銘柄あたり1回の配当金額が「10万円 × 配当計算期間の月数 ÷ 12」以下であること
たとえば、配当計算期間が6ヶ月(半期配当)の場合は、1回の配当が10万円 × 6 ÷ 12 = 5万円以下であれば申告不要となります。 配当計算期間が12ヶ月(年1回配当)の場合は、10万円以下が申告不要の上限です。
この特例は、小規模な非上場株式の配当を受け取る少数株主にとって手続きの簡便化につながります。 ただし、申告不要を選択した場合は配当控除を受けることができないため、源泉徴収された20.42%が最終的な税負担となります。 所得税率が低い方は、あえて確定申告をして還付を受ける方が有利な場合もあります。 ご自身の所得水準に応じてどちらが有利かを確認するには、税理士への相談が確実です。
所得税が申告不要でも住民税の申告は別途必要
ここは非常に見落とされやすいポイントです。 所得税の確定申告を省略した場合でも、住民税については別途申告が必要になるケースがあります。
住民税は所得税と独立した税制であり、申告期限・申告先(市区町村)・申告書の様式もすべて異なります。 非上場株式の少額配当で所得税を申告不要とした場合、確定申告書のデータが市区町村に自動共有されないため、住民税の申告が漏れるリスクが生じます。
具体的な申告の要否や手続きは居住地の市区町村によって運用が異なる場合があるため、お住まいの市区町村の窓口か、税理士へ確認することをおすすめします。
申告しなかった場合のペナルティとリスク
確定申告が必要なのに申告しなかった場合、または過少に申告した場合は、以下のペナルティが課される可能性があります。
無申告加算税 期限内に申告しなかった場合に課される加算税です。 税務調査を受けた後に申告した場合(調査による決定を予知した場合)、納付税額50万円以下の部分には15%、50万円超300万円以下の部分には20%、300万円超の部分には30%が加算されます(2024年1月1日以降に法定申告期限が到来する国税より適用)。
延滞税 法定納期限の翌日から完納日まで、一定の割合の延滞税が発生します。 申告漏れの期間が長くなるほど延滞税の総額も膨らみます。
過少申告加算税 申告はしたものの税額を少なく申告していた場合に課され、追加納付税額の10%〜15%が加算されます。
さらに、意図的な隠蔽・仮装があると判断された場合は「重加算税(35%〜40%)」が課され、刑事上の責任を問われる可能性もあります。 非上場株式の配当税務は複雑なため、知らずに申告漏れが起きることもありますが、「知らなかった」という事情はペナルティの免除理由にはなりません。 早期に税理士に相談し、正確な申告を心がけることが最善の対策です。
みなし配当とは何か|配当金以外に課税される落とし穴

みなし配当とは、実際には配当の名目で支払われていないのに、税法上は配当として取り扱われる金額のことです。 会社が自己株式を買い取ったり、資本剰余金を払い戻したりする際に発生し、受け取った株主が「配当をもらったつもりはない」と思っていても課税されます。
特に非上場株式の場面では、みなし配当の発生に気づかないまま確定申告を誤ってしまうケースが多いです。 みなし配当を正しく理解し、適切に申告することが重要です。
みなし配当が発生する主なケース
自己株式の取得(自己株買い)によるみなし配当
会社が自己の株式を株主から買い取ることを「自己株買い」と呼びます。 この取引では、会社が株主に支払う金額のうち、「資本金等の額に対応する部分」を超える部分がみなし配当として扱われます。
たとえば、オーナー経営者が引退にあたり、会社に株式を買い取ってもらうケースが典型例です。 買取金額の全額が単純な株式の売却益(譲渡所得)として課税されると思いがちですが、実際にはみなし配当の部分が別途、総合課税の配当所得として課税されます。
このような取引は事業承継の場面でもよく発生するため、取引を行う前に税理士へ相談して課税関係を確認しておくことが望ましいです。
資本剰余金の払い戻し・利益還元によるみなし配当
会社が資本剰余金(資本準備金や資本金の一部)を株主に払い戻す場合も、みなし配当が生じることがあります。 純粋な資本の払い戻しであれば配当所得ではなく株式の取得費用の調整として処理されますが、払い戻し金額が「資本金等の額に対応する部分」を超えた場合、その超過分がみなし配当になります。
また、会社が解散して残余財産を分配する場面でも同様の計算が行われます。 清算によって受け取った金額のうち、資本金等の額を超える部分はみなし配当として総合課税の対象になります。
みなし配当の正確な計算方法
計算式|交付金銭等 − 資本金等の額 × (取得株式数 ÷ 発行済株式総数)
みなし配当の金額は、以下の計算式で求めます。
みなし配当 = 交付された金銭等の額 − 資本金等の額 × (取得株式数 ÷ 発行済株式総数)
各用語の意味を整理します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 交付された金銭等の額 | 会社が株主に支払った合計金額(株式買取対価など) |
| 資本金等の額 | 会社の資本金・資本準備金などの合計(税務上の計算による) |
| 取得株式数 | 会社が買い取った株式の数 |
| 発行済株式総数 | 会社全体の発行済株式数 |
計算式の右辺の「資本金等の額 × (取得株式数 ÷ 発行済株式総数)」は、今回の取引に対応する「資本の払い戻し相当額」を意味します。 交付金額がこの資本相当額を超えた分が、みなし配当として配当所得に計上される仕組みです。
具体的な数値例で理解するみなし配当の算出
以下の条件でみなし配当を計算してみましょう。
- 会社の発行済株式総数:10,000株
- 会社の資本金等の額(税務上):5,000万円
- 今回の自己株買い株式数:500株
- 株式1株あたりの買取価格:10,000円(合計500万円)
ステップ1:資本金等の額のうち今回の取引に対応する部分を計算
5,000万円 × (500株 ÷ 10,000株) = 250万円
ステップ2:みなし配当額を計算
500万円(交付金額) − 250万円(資本相当額) = 250万円がみなし配当
ステップ3:株式の譲渡所得(または損失)の計算
残りの250万円(資本相当額部分)は株式の譲渡対価として扱われます。 取得費を差し引いた差額が譲渡所得(または損失)になります。
このケースでは、株主は500万円を受け取ったつもりでも、そのうち250万円は配当所得として総合課税されることになります。 みなし配当の存在を知らずに「単なる株式売却」として申告した場合、申告誤りとなるリスクがあります。 実際の計算は会社ごとの資本金等の額の確認が必要なため、税理士に確認することをおすすめします。
法人株主と個人株主で異なる税務処理
個人株主の場合:総合課税で最高税率55%超が適用される
個人が非上場株式の配当(みなし配当を含む)を受け取った場合、すべて総合課税の配当所得として扱われ、所得税(最高45%)・住民税(10%)・復興特別所得税を合わせた最高税率55%超が適用されます。
みなし配当の場合も通常の配当と同じく配当控除の適用は受けられますが、みなし配当の金額が大きい場合は税負担も相当な額になります。
さらに、みなし配当が発生する取引(自己株買いなど)では、同一取引で配当所得と株式の譲渡損益が同時に発生するため、それぞれ別の税務処理が必要です。 非上場株式の譲渡損失は、非上場株式の配当所得との損益通算ができません(上場株式とも通算不可)。 この点も個人株主にとって不利な点のひとつです。
法人株主の場合:法人税と益金不算入制度による軽減
法人が非上場株式の配当(みなし配当を含む)を受け取った場合は、個人とは異なる税務処理が行われます。
法人は配当を受け取ると、原則として法人税の課税対象(益金)となります。 しかし、二重課税を緩和するために「受取配当等の益金不算入制度」という仕組みが設けられています。
益金不算入の割合は、株式の保有割合によって異なります。
| 保有割合の区分 | 保有割合の目安 | 益金不算入割合 |
|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100%保有 | 100%(全額不算入) |
| 関連法人株式等 | 発行済株式の3分の1超保有 | 100%(負債利子控除あり) |
| その他の株式等 | 5%超〜3分の1以下 | 50% |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% |
非上場株式の場合、少数株主として5%以下の保有であれば益金不算入割合は20%にとどまりますが、保有割合が高い場合は大きな軽減効果を受けられます。
なお、関連法人株式等(3分の1超保有)については益金不算入割合が100%であっても、負債利子控除額を差し引いた金額が不算入となるため、実質的な不算入額は配当金額の100%を下回る場合があります。
また、法人が源泉徴収された所得税は法人税額から控除(所得税額控除)できるため、個人と比較して税負担が抑えられるケースが少なくありません。 法人オーナーが事業承継や株式整理を行う際には、法人・個人どちらで保有するかという判断が税務戦略上の重要なポイントになります。
相続が絡む場合の非上場株式の配当処理

相続によって非上場株式を取得した場合、配当をめぐる税務処理はさらに複雑になります。 被相続人(亡くなった方)が生前に保有していた株式に紐づく配当が、相続税・所得税のどちらで課税されるかは「いつ何が確定していたか」によって変わるため、正確な判断が求められます。
相続税として処理されるケースと所得税として処理されるケース
配当基準日・配当確定日・受取日で変わる税務区分の判断方法
非上場株式の配当に関連する日付として、以下の3つを理解することが重要です。
| 日付 | 意味 |
|---|---|
| 配当基準日 | 配当を受け取る株主を確定する日(この日に株主名簿に登録されている者が受取人) |
| 配当確定日 | 株主総会や取締役会の決議によって配当が正式に確定した日 |
| 受取日(支払日) | 実際に配当金が支払われた日 |
税務上の区分は、被相続人の死亡日(相続開始日)と各日付の関係で変わります。 一般的な考え方として以下のように整理できますが、個別の事情によって判断が異なるため、実際の税務処理は必ず税理士に確認してください。
ケース1:相続開始日が配当基準日の後、配当確定日の前の場合 被相続人は配当基準日に株主として登録されていたため、配当を受け取る「権利(配当期待権)」が相続財産に含まれるとされます。 この配当期待権は相続税の課税対象とされ、後に配当が実際に支払われても所得税は課税されないとする考え方が一般的です。
ケース2:相続開始日が配当確定日の後、受取日の前の場合 配当が既に確定しているため、被相続人には確定した配当請求権(未収配当金)があります。 これも相続財産として相続税の対象になります。
ケース3:相続開始日が受取日の後の場合 配当はすでに受け取られており、現金・預金として相続財産に含まれます。 所得税は被相続人の死亡年の準確定申告で申告済みであることが多いです。
ケース4:相続開始日が配当基準日の前の場合 相続した株式をもとに相続人が新たに受け取る配当は、相続人自身の配当所得として所得税が課税されます。 相続税とは別の話になります。
配当期待権・未収配当金・預貯金等それぞれの税務上の扱い
上記のケース分類をもとに、それぞれの税務上の扱いをまとめます。
| 種別 | 説明 | 税務上の扱い(一般的な考え方) |
|---|---|---|
| 配当期待権 | 基準日後・確定日前の段階で相続が開始した場合の権利 | 相続税の課税対象とされることが多い |
| 未収配当金 | 確定日後・受取日前の段階で相続が開始した場合の権利 | 相続税の課税対象とされることが多い |
| 受取済みの配当(現金等) | 受取日後に相続が開始した場合の現金等 | 相続財産として相続税の対象。準確定申告で所得税は処理 |
| 相続後に受け取る配当 | 相続人自身の権利として受け取る配当 | 相続人の配当所得として所得税(総合課税)の対象 |
この区分を誤ると、二重課税(相続税でも所得税でも課税される)か、課税漏れ(どちらも申告しない)のリスクが生じます。 実務では、被相続人の死亡日と会社の配当スケジュールを細かく照合する作業が必要になります。 判断に迷う場合は、相続専門の税理士に確認することを強くおすすめします。
相続時の評価額の計算と注意点
相続税の計算において非上場株式の評価額を算定するには、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づく方法を用います。 非上場株式の評価方法は主に3種類あり、どれを適用するかは会社の規模や株主の立場によって異なります。
1. 類似業種比準方式 同じ業種の上場企業の株価をもとに、配当・利益・純資産の3要素を比較して評価する方法です。 大会社や中会社の評価に用いられます。
2. 純資産価額方式 会社の純資産(資産から負債を差し引いた額)を評価の基礎とする方法です。 小会社や、資産内容に着目した評価に用いられます。
3. 配当還元方式 過去2年間の年平均配当金額をもとに評価する方法で、少数株主が取得した株式の評価に適用されます。 計算式は「年平均配当金額 ÷ 10% × 取得株式数 ÷ 50」となります。
配当還元方式は評価額が比較的低くなる傾向があるため、相続税負担を抑えたい少数株主にとって有利な評価方法です。 しかし、適用できる条件(少数株主であること)を満たさない場合は類似業種比準方式や純資産価額方式が適用され、評価額が大きく跳ね上がることがあります。
相続税の申告では、評価方式の選択や計算に誤りがあると多額の追徴課税につながるリスクがあるため、税理士へ早めに相談することが重要です。 また、非上場株式は市場価格がないため、評価額をめぐって税務署から指摘を受けるケースもあります。 事前に評価額の試算を行い、納税資金の準備や対策を検討することが大切です。
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まとめ|非上場株式の配当税務は複雑、専門家への相談が鍵
この記事では、非上場株式の配当にかかる税金の仕組みについて、基礎から応用まで幅広く解説してきました。 最後に、重要なポイントを改めて整理します。
| テーマ | 要点 |
|---|---|
| 課税方式 | 非上場株式の配当は総合課税。申告分離課税は選択不可 |
| 税率 | 最高55%超(所得税45%+住民税10%+復興特別所得税) |
| 源泉徴収 | 20.42%が源泉徴収されるが、確定申告で精算が必要 |
| 配当控除 | 内国法人からの配当に適用。所得税10%・住民税2.8%(1,000万円以下の部分) |
| 申告不要制度 | 少額配当は申告不要だが、住民税の申告が必要になるケースあり |
| みなし配当 | 自己株買い・資本剰余金払い戻しなどで発生。知らずに申告漏れになるリスクが高い |
| 相続と配当 | 基準日・確定日・受取日の前後関係で、相続税か所得税かの扱いが変わる |
非上場株式の配当税務は、ひとつひとつのルールは理解できても、複数の論点が絡み合うと判断が難しくなるという性質を持っています。 みなし配当の見落としや相続時の税務区分の誤りは、追徴課税・延滞税・加算税という大きな出費につながります。
「まずは全体像を把握して、具体的な判断は専門家に委ねる」という姿勢が最も賢明なアプローチです。 この記事が、その最初の一歩として皆さんの役に立てていれば幸いです。
非上場株式の配当や事業承継・相続対策でお悩みの方は、税理士・弁護士など専門家への早めの相談をおすすめします。 複雑な税務問題は、時間が経つほど選択肢が狭まることが多いため、気になることがあれば早めに動くことが大切です。


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