「親が亡くなって、証券口座に株式があることがわかった。いったいどのくらいの相続税がかかるのだろう?」
相続の手続きを進めるなかで、こうした疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。
株式の相続税は、預貯金や不動産とは異なる独自のルールで評価額が計算されます。 上場株式か非上場株式かによって計算方法が大きく変わるうえ、評価の時期や方法によって税負担に大きな差が生じることもあります。
この記事では、株式の相続税評価額の計算方法から手続きの流れ、節税対策まで、相続を経験している方に向けてわかりやすく解説します。 正しい知識を身につけることで、申告ミスや払い過ぎを防ぎ、スムーズな相続手続きにつなげましょう。
株式の相続税とは?基本知識と全体像

株式相続における相続税の基本的な仕組み
被相続人(亡くなった方)が株式を保有していた場合、その株式は相続財産の一部として相続税の課税対象になります。 相続税は、株式単体にかかるものではありません。 預貯金・不動産・有価証券などすべての相続財産を合計した「遺産総額」に対して課税されます。
相続税を計算する流れは、大きく次の3段階に分けられます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 株式を含むすべての相続財産をもれなく調査し、評価額を算出する |
| 2 | 遺産総額から基礎控除額を差し引き、課税対象額を確定する |
| 3 | 課税対象額に税率を掛け、相続税額を計算して申告・納税する |
基礎控除額の計算式は次のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円 となります。 遺産総額がこの金額以下であれば、相続税の申告は不要です。
株式の相続において特に重要なのが「評価額をどう算出するか」という点です。 上場株式と非上場株式では評価方法がまったく異なるため、それぞれの仕組みをきちんと理解することが大切です。
相続開始前に確認すべき重要事項
相続が発生したら、まず被相続人が保有していた株式の全容を把握することが必要です。 証券会社から届いていた郵便物や、インターネット取引の履歴を確認するところから始めましょう。
どの証券会社に口座を持っていたかが不明な場合は、証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」を行うことができます。 この請求には必要書類の郵送が必要で、結果が届くまでに2〜3週間ほどかかります。 電話での対応は行っておらず、郵送のみの受付となっている点に注意しましょう。
また、被相続人が非上場会社の株式(自社株)を持っていた場合は、その会社の決算書や株主名簿なども確認が必要になります。 評価計算に必要な財務データを集めるため、できるだけ早めに着手することをおすすめします。
さらに、**相続税の申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」**と定められています。 準備に時間がかかる場合でも、この期限は変わらないため、早い段階から動き出すことが重要です。
相続人の確定と必要書類の準備
相続税の申告をするためには、まず法定相続人を確定させる必要があります。 法定相続人を正確に把握するには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取り寄せて調査します。 認知した子どもや養子縁組など、戸籍を遡らなければわからない相続人が存在する場合もあるため、丁寧に確認しましょう。
株式の相続手続きで一般的に必要となる書類は、以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票の写し
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺言書(ある場合)または遺産分割協議書
- 証券会社の名義変更依頼書(証券会社所定の書式)
- 相続発生日時点の残高証明書
証券会社によって求められる書類が異なることもあるため、事前に各社へ確認することをおすすめします。
株式の相続税評価額の計算方法

上場株式の相続税評価額の計算方法
上場株式とは、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場されており、誰でも自由に売買できる株式のことです。 上場株式の評価額は、次の4つの価格のうち最も低い金額を採用します。
| 番号 | 評価の基準となる価格 |
|---|---|
| ① | 相続発生日(死亡日)の最終価格(終値) |
| ② | 相続発生日の属する月の毎日の終値の月平均額 |
| ③ | 相続発生日の属する月の前月の毎日の終値の月平均額 |
| ④ | 相続発生日の属する月の前々月の毎日の終値の月平均額 |
たとえば、相続発生日が5月5日で、各価格が次のとおりだったとします。
- ①5月5日の終値:300円
- ②5月の終値月平均額:310円
- ③4月の終値月平均額:290円
- ④3月の終値月平均額:250円
この場合、最も低い④の250円が評価額となります。 100株を保有していた場合の評価額は、250円 × 100株 = 25,000円です。
複数の銘柄を保有していた場合は、銘柄ごとに独立して評価します。 A社株式は①で評価、B社株式は④で評価というように、銘柄ごとに最も低い価格を選ぶことが認められています。
なお、ETF(上場投資信託)は投資信託ではなく上場株式として評価する点も覚えておきましょう。
相続発生日に市場が休みの場合の取り扱い
相続発生日が土日・祝日などで市場が休場している場合、その日の終値は存在しません。 この場合は、相続発生日に最も近い日の終値を採用します。
たとえば、相続発生日が土曜日であれば金曜日の終値を使います。 月曜日が祝日の3連休の中日(日曜日)に相続が発生した場合は、前の金曜日と翌火曜日の終値の平均を用います。 どちらが近いかではなく、両方の平均を取るという点がポイントです。
権利落ち日前後における評価額の変動
株式には、配当金や株主優待を受け取る権利が確定する「権利確定日」があります。 その2営業日前(権利付き最終日)までに株式を保有していれば、配当などの権利を受け取ることができます。
権利付き最終日の翌営業日を「権利落ち日」といい、この日以降は権利がなくなるため、理論上、配当相当額分だけ株価が下落しやすくなります。
相続発生日が権利落ち日から権利確定日までの間にあたる場合は、権利落ち日の前日以前の終値のうち、相続発生日に最も近い日の終値を①の価格として採用します。 また、月平均額の計算においても、権利落ち日の前日までの終値のみを用いる点に注意が必要です。
なお、配当落ち日(配当金のみの権利が失われる日)の場合は、権利確定日を含めた月平均額で評価します。 権利落ち日と配当落ち日で取り扱いが異なるため、混同しないようにしましょう。
配当金の相続税評価額への影響
被相続人が株式を保有していた期間に応じて、配当金も相続財産として評価が必要になる場合があります。
- 配当基準日の翌日から配当確定日までの間に相続が発生した場合 → 「配当期待権」として評価
- 配当確定日の翌日から配当金の受取日までの間に相続が発生した場合 → 「未収配当金」として評価
どちらの場合も、評価額の計算式は次のとおりです。
配当金額 × (1 − 源泉徴収税率20.315%) × 取得株式数
たとえば、1株あたりの配当金が36円・100株を保有している場合は、 36円 × (1 − 0.20315) × 100株 = 約2,868円が評価額となります。
非上場株式の相続税評価額の計算方法
非上場株式とは、証券取引所に上場されていない会社の株式のことです。 市場での取引価格がないため、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて評価を行います。
評価方法は、株式を相続する人が「同族株主等」かどうかによって大きく異なります。
| 相続する株主の区分 | 採用する評価方法 |
|---|---|
| 同族株主等(会社の経営支配力を持つ株主) | 原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式) |
| 同族株主等以外の少数株主 | 配当還元方式 |
原則的評価方式では、会社の規模(大会社・中会社・小会社)に応じて使用する方式が変わります。
| 会社規模 | 評価方法 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式(または純資産価額方式) |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
| 小会社 | 純資産価額方式(または類似業種比準方式との併用) |
会社規模の区分は、業種・従業員数・総資産価額・取引金額などをもとに判定します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、評価対象会社と業種が近い上場会社の株価をもとに評価する方法です。 上場会社の株価に、評価会社と上場会社との間の「配当・利益・純資産」の比率を掛け合わせて算出します。
一般的に、純資産価額方式と比べて評価額が低くなることが多く、節税効果が高い評価方法とされています。 業績が好調な会社ほど利益や純資産が高まりやすいため、評価額が上昇しやすい点も理解しておきましょう。
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の純資産(資産の相続税評価額の合計から負債の合計と評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた金額)を発行済株式数で割って1株あたりの評価額を求める方法です。
計算の手順は次のとおりです。
- 会社の資産を相続税評価額で評価する
- 評価した資産合計から負債合計を差し引く
- 差額に対する法人税等相当額(37%相当)を控除する
- 残った金額を発行済株式数で割る
不動産や有価証券など含み益のある資産を多く保有している会社では、評価額が高くなりやすい傾向があります。
配当還元方式
配当還元方式は、株式を所有することで受け取れる配当金の額をもとに評価する方法です。 少数株主(同族株主等以外の株主)が相続した場合に適用されます。
計算式は次のとおりです。
評価額 = (直前期末以前2年間の平均配当金額 ÷ 2) ÷ 10% × (1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)
1株あたりの配当金額が2円50銭未満の場合は、2円50銭として計算します。 会社の経営に直接関与しない少数株主を対象としているため、一般的に評価額は低くなります。
なお、配当還元方式の評価額よりも原則的評価方式のほうが低くなる場合は、原則的評価方式を選ぶことも認められています。
名義株式が相続財産に含まれる場合の注意点
名義株式とは、名義(口座名義人)と実際の資金の出どころが異なる株式のことです。 たとえば、専業主婦の妻が自分名義の証券口座を開設し、夫の給与で株式を購入・保有していた場合、その株式は妻名義であっても夫の財産(名義株式)とみなされます。
この場合、妻名義の株式は夫の相続財産として相続税の申告対象になります。 名義株式の存在に気づかないまま申告すると、税務調査で指摘を受け、追徴課税となるリスクがあります。
特に注意が必要なのは、「口座名義が誰であるか」ではなく「実際にお金を出したのが誰か」が判断の基準になる点です。 被相続人の資金で購入された株式は、たとえ他の人の名義であっても相続財産に含める必要があります。 家族名義の証券口座がある場合は、必ず内容を確認するようにしましょう。
生前贈与された株式の評価額と相続税の関係
被相続人が生前に行った贈与は、一定の期間内のものは相続財産に「持ち戻し」て相続税を計算しなければなりません。
2024年1月1日以降に行われた暦年贈与については、持ち戻しの期間が段階的に延長されます。 具体的なスケジュールは以下のとおりです。
| 相続開始の時期 | 持ち戻しの対象期間 |
|---|---|
| 〜2026年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から相続開始日まで(段階的に延長) |
| 2031年1月1日〜 | 相続開始前7年以内(完全適用) |
また、延長された4年分(死亡前4〜7年以内)の贈与については、その合計額から100万円を差し引いた金額のみが相続財産に加算されます。 これは納税者の負担を一定程度緩和するための経過措置です。
持ち戻しの際に使用する評価額は、贈与を受けた時点の価額です。 たとえば、相続発生の3年前に100万円で贈与した株式が、相続発生日時点で150万円になっていた場合でも、相続財産に加算されるのは贈与時の100万円です。
株価が上昇することが見込まれる場合は、贈与時の評価額で持ち戻しができるため、結果として相続税の節税につながることがあります。 相続時精算課税制度を活用して非上場株式を早期に贈与し、将来の相続税負担を抑えるという手法も見受けられます。
株式の相続税の計算手順と具体例

1株あたりの評価額の算出
相続税の計算はまず、保有していた株式の1株あたりの評価額を算出するところから始まります。 上場株式であれば、先述した4つの価格(相続発生日の終値・発生月・前月・前々月の月平均額)のうち最も低い金額を選びます。 非上場株式であれば、会社規模や株主区分に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式のいずれかで計算します。
評価額を誤ると、申告額が過大または過少になるリスクがあります。 特に非上場株式は計算が複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。
保有株数を掛けた全体の評価額の算出
1株あたりの評価額が決まったら、被相続人が保有していた株数を掛けて、全体の評価額を計算します。
たとえば次のようなケースを考えてみましょう。
- A社株(上場):1株2,000円 × 1,000株 = 2,000,000円
- B社株(上場):1株6,000円 × 3,000株 = 18,000,000円
- 合計:20,000,000円
この合計額が、株式に関する相続税評価額として、預貯金・不動産など他の財産と合算されます。 株式の評価額が高いほど遺産総額が増えるため、税率区分が上がる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
税率を適用した相続税額の算出
課税遺産総額(遺産総額 − 基礎控除額)が確定したら、法定相続分に応じて各相続人の仮の取得額を計算し、そこに相続税の税率を掛けます。
相続税の税率は超過累進税率を採用しており、課税価格が大きくなるほど高い税率が適用されます。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ― |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
各相続人の仮の税額を合計したものが「相続税の総額」です。 その後、実際の遺産取得割合に応じて按分し、配偶者の税額軽減や未成年者控除などの税額控除を適用して、最終的な納付税額を算出します。
相続税の計算例(上場株式・非上場株式)
具体的な計算例で確認しましょう。
上場株式の計算例
- 相続財産:上場株式C社 10,000株のみ
- 法定相続人:子ども1人
各月の終値データ
| 区分 | 株価 |
|---|---|
| ①相続発生日の終値 | 9,700円 |
| ②相続発生月の月平均終値 | 9,500円 |
| ③前月の月平均終値 | 9,200円 |
| ④前々月の月平均終値 | 8,600円 |
最も低い④の8,600円を採用します。
- C社株の評価額:8,600円 × 10,000株 = 86,000,000円
- 基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 1人 = 36,000,000円
- 課税遺産総額:86,000,000円 − 36,000,000円 = 50,000,000円
- 相続税額:50,000,000円 × 20% − 200万円 = 8,000,000円
この場合、相続税は800万円となります。
非上場株式の計算例(概要)
非上場株式の場合は、まず会社規模の判定を行い、類似業種比準価額や純資産価額を計算します。 たとえば「小会社」に該当する場合、純資産価額方式で1株あたりの評価額を算出した後、株数を掛けて全体の評価額を求め、同様の手順で相続税額を計算します。 計算過程が複雑なため、税理士に依頼するのが一般的です。
株式の相続手続きの流れ

上場株式の相続手続き
上場株式の相続手続きは、主に証券会社を通じて行います。 手続きの大まかな流れは次のとおりです。
- 被相続人の証券口座を持つ証券会社に連絡する
- 被相続人名義の口座を凍結(相続手続き中の売買を止める)
- 必要書類を準備して証券会社に提出する
- 相続人名義の口座へ株式を移管(名義変更)する
名義変更が完了して初めて、相続人として株式を管理・売却できるようになります。 手続きが完了するまでの期間は証券会社によって異なりますが、数週間から1か月程度かかることが多いです。
証券会社での名義変更手続き
証券会社での名義変更手続きには、一般的に以下の書類が必要です。
- 証券会社所定の名義変更依頼書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人名義の証券口座(ない場合は新規開設が必要)
証券会社によって書類の種類や書式が異なるため、事前に問い合わせて確認することをおすすめします。
NISA口座にある株式を相続した場合
被相続人がNISA口座で株式を保有していた場合も、相続税の課税対象となります。 NISA口座の非課税メリットは、あくまで口座保有者が生存中に限られるためです。
NISA口座の株式は、相続人のNISA口座へ移すことはできません。 相続人の課税口座(一般口座または特定口座)へ移管されます。 この際、相続発生日の終値が相続人にとっての取得価額となります。
非上場株式の相続手続きと注意点
非上場株式の相続手続きは、上場株式のように証券会社を通じて行うものではありません。 株式を発行している会社(発行会社)に直接連絡し、株主名簿の名義変更を依頼します。
手続きの流れは次のとおりです。
- 発行会社に相続が発生したことを連絡する
- 発行会社が定める手続き・必要書類を確認する
- 遺産分割協議書・戸籍謄本などを準備して提出する
- 株主名簿の名義を相続人に変更してもらう
非上場株式は容易に換金できないうえ、誰が株式を引き継ぐかによって会社の経営や支配権に影響を及ぼすことがあります。 事業を引き継ぐ相続人に株式を集中させるためには、事前の遺言書作成や遺産分割の取り決めが重要です。
株式相続における遺産分割の方法
株式の遺産分割には、主に次の3つの方法があります。
| 分割方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 特定の相続人が株式をそのまま取得する | 株式を取得しない相続人との公平性確保が必要 |
| 換価分割 | 株式を売却して現金化し、分配する | 売却益に譲渡所得税がかかる場合がある |
| 代償分割 | 株式を取得した相続人が他の相続人に現金を支払う | 支払う現金の準備が必要 |
非上場株式は換価分割(売却)が難しい場合も多く、現物分割や代償分割が選択されることが一般的です。
遺産分割協議書の作成ポイント
遺産分割協議書は、相続人全員が合意した遺産の分割内容を記した法的文書です。 相続人が2人以上いる場合(遺言書がないとき)は、この書類の作成が原則として必要になります。
遺産分割協議書には次の内容を明確に記載しましょう。
- 被相続人の氏名・死亡日・本籍
- 相続財産の具体的な内容(株式の銘柄・株数・証券会社名など)
- 誰がどの財産をどのように取得するか
- 相続人全員の署名・実印の押印
作成後は相続人全員の印鑑証明書を添付し、各自が原本を1部ずつ保管するのが一般的です。 内容に不備があると名義変更手続きなどで問題が生じることがあるため、不安な場合は弁護士や司法書士に確認を依頼しましょう。
株式相続の税務上の注意点

相続税の申告期限と申告手続き
相続税の申告・納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。 たとえば、被相続人が2024年3月10日に亡くなり、その日のうちに死亡を知った場合、翌日の3月11日が起算日となり、申告期限は2025年1月10日です。
この期限を過ぎると、本来の税額に加えて以下のペナルティが課される可能性があります。
無申告加算税(税務調査前に自主申告した場合、2024年1月以降)
| 税額の区分 | 税率 |
|---|---|
| 50万円以下の部分 | 5% |
| 50万円超〜300万円以下の部分 | 15% |
| 300万円超の部分 | 25% |
税務調査の通知後に申告した場合(調査による更正を予知しない場合)は50万円以下15%・50万円超20%(300万円超は25%)、税務調査後(更正を予知した場合)は50万円以下15%・50万円超20%(300万円超は25%)となります。
延滞税(2026年時点の税率)
| 遅延期間 | 税率 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月以内 | 年2.8% |
| 2か月を超えた期間 | 年9.1% |
※延滞税の税率は毎年変動することがあります。最新の税率は国税庁のウェブサイトで確認してください。
過少申告加算税:申告額が少なかった場合、追加税額の10〜15%相当(税務調査の通知前の修正申告は原則課税なし)
申告期限は原則として延長できないため、早めに準備を始めることが大切です。 申告書類の準備には時間がかかるケースも多く、税理士に依頼する場合は少なくとも申告期限の3〜4か月前には相談を始めることをおすすめします。
準確定申告の手続き
被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに所得があった場合は、相続人が代わりに所得税の申告を行う「準確定申告」が必要です。
株式を保有していた被相続人が、生前に株式を売却して利益を得ていた場合や、配当金を受け取っていた場合なども準確定申告の対象になることがあります。
準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。 相続税の申告(10か月以内)よりも期限が短いため、見落とさないように注意しましょう。
提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署で、申告書には相続人全員が連署します。
なお、準確定申告の結果として未払所得税が生じた場合は債務控除の対象となり、相続税の課税価格を下げる効果があります。 逆に還付金が発生する場合はその還付請求権が相続財産に含まれるため、両面での影響を確認しましょう。
相続した株式を売却した場合の取得金額と譲渡所得
相続した株式を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税が課税されます。 税率は一律20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)です。
このとき重要になるのが「取得価額」の考え方です。 相続した株式の取得価額は、被相続人が株式を取得した際の購入金額(約定金額 + 購入手数料など)を引き継ぎます。
取得価額が不明な場合は、売却金額の5%を取得費として計算することが認められています。 たとえば、1,000万円で売却した場合、取得費は50万円となり、差額の950万円が譲渡所得の計算のもとになります。
なお、NISA口座から相続した株式の場合は、相続発生日の終値が取得価額となります。
また、相続発生から3年10か月以内に相続した財産を売却した場合は「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を活用できます。 この特例を使うと、支払った相続税額の一部を取得費に加算でき、譲渡所得を圧縮することが可能です。
その他の税務上の注意事項
株式の相続に関連して、見落としやすい税務上の注意点をまとめます。
名義株式の申告漏れ
前述のとおり、他人名義であっても実質的に被相続人の資金で取得した株式は相続財産です。 申告漏れが発覚した場合は追徴課税の対象となるため、家族名義の証券口座はすべて確認しましょう。
生前贈与の持ち戻し
2024年1月1日以降の暦年贈与については、相続開始の時期に応じて段階的に持ち戻し期間が延長されます。 2031年1月1日以降に相続が発生した場合は、死亡前7年以内の贈与がすべて対象となります。 贈与を受けていた株式がある場合は、その金額と時期を正確に把握しておくことが必要です。
未収配当金・配当期待権の申告
相続発生時点で確定していた配当金(未収配当金)や権利のみが確定している配当金(配当期待権)も相続財産に含まれます。 残高証明書だけでは把握できないケースがあるため、証券会社への確認が必要です。
株式の相続税に関する節税対策

生前贈与の活用(暦年課税・相続時精算課税)
株式の相続税を抑えるうえで最も一般的な方法が、生前贈与の活用です。 贈与税がかかる前に財産を移すことで、相続財産の総額を減らすことができます。
暦年課税
暦年課税とは、年間110万円の基礎控除を活用した贈与方法です。 1年間に110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。 毎年コツコツと株式を贈与することで、長期にわたって相続財産を圧縮できます。
ただし、2024年以降は死亡前7年以内の贈与が段階的に相続財産に持ち戻される点に注意が必要です。 なお、持ち戻しの対象となる延長4年分(死亡前4〜7年の間)については、贈与財産の合計額から100万円を差し引いた金額のみが加算されます。 年数が経過するほど持ち戻しの対象から外れるため、できるだけ早期から取り組むことが重要です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ財産を贈与する場合に選択できる制度です。 この制度には2種類の控除があります。
| 控除の種類 | 内容 |
|---|---|
| 基礎控除 | 年間110万円まで非課税(相続財産への持ち戻しも不要) |
| 特別控除 | 累計2,500万円まで贈与税が非課税(基礎控除を除く部分) |
特別控除の累計が2,500万円を超えた場合は、超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。 また、特別控除を使った贈与分は相続発生時に相続財産へ加算されますが、加算額は贈与時の価額です。
株価が将来大きく上昇することが見込まれる非上場株式などは、株価が低いうちに相続時精算課税で贈与しておくことで、相続税の節税につながる場合があります。 暦年課税と相続時精算課税は一度選択すると変更できないため、どちらを選ぶかは慎重に検討しましょう。
自社株の評価額を引き下げる方法
非上場会社の株式(自社株)の評価額が高い場合は、適切な方法で評価額を引き下げることが節税につながります。 代表的な手法を以下にまとめます。
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| 配当金額を下げる | 類似業種比準価額の算定要素のひとつである配当の比率が下がり、評価額が低下する |
| 役員報酬を引き上げる | 会社の利益が減少し、類似業種比準価額・純資産価額ともに下がる |
| 含み損のある資産を売却する | 純資産価額の算定において、損失を確定させて純資産を圧縮できる |
| 発行済株式数を増やす | 純資産価額方式の場合、1株あたりの評価額が下がる |
| 退職金などの多額の経費を計上する | 利益・純資産の両方を圧縮でき、評価額の引き下げにつながる |
ただし、これらの方法はいずれも会社の経営実態に即した範囲内で行う必要があります。 税務上の合理性がない過度な操作は否認されるリスクがあるため、税理士への相談が不可欠です。
各種特例の活用
株式の相続には、活用できる税制上の特例がいくつかあります。
法人版事業承継税制
非上場株式の贈与・相続が事業の後継者に対して行われ、一定の要件を満たした場合に、贈与税・相続税の納税が猶予または免除される制度です。
適用を受けるためには、まず「特例承継計画」を都道府県庁へ提出する必要があります。 現行の提出期限は2026年3月31日です。 また、本制度の対象となる贈与・相続の適用期限は2027年12月31日となっており、この期限は延長されない見込みのため、検討している場合は早めの対応が求められます。
後継者が株式を引き継ぎながら事業を継続する場合に非常に有効な制度ですが、手続きや要件が複雑なうえ、猶予を維持するために毎年継続届出書の提出が必要です。 専門家のサポートなしで対応することは難しいため、早めに税理士に相談することをおすすめします。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続発生から3年10か月以内に相続財産を売却した場合、支払った相続税のうち一定額を売却した財産の取得費に加算できます。 これにより売却益(譲渡所得)が減少し、譲渡所得税の負担を軽減できます。
相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例
相続した非上場株式を発行会社へ直接譲渡した場合、通常は配当所得として総合課税(最高税率55.945%)の対象となることがありますが、一定の要件を満たすと譲渡所得として分離課税(一律20.315%)が適用される特例があります。 相続発生から3年10か月以内の譲渡であることが要件のひとつです。
相続トラブルを防ぐための事前対策
相続で株式をめぐるトラブルが起きる原因のひとつが、「誰がどの株式を引き継ぐか」が明確に決まっていないことです。 特に非上場株式は換金が難しく、会社の支配権にも関わるため、相続人間での意見の食い違いが起きやすくなっています。
トラブルを防ぐための対策として、次の取り組みが有効です。
遺言書の作成
誰にどの株式を相続させるかを遺言書に明記しておくことで、相続人間の争いを防ぐことができます。 特に非上場株式の場合は、事業を引き継ぐ人に株式を集中させる意図を遺言書に残すことが重要です。
家族信託の活用
判断能力が低下する前に財産の管理を信頼できる家族に託す「家族信託」を活用することで、相続発生後のスムーズな財産移転が可能になります。
早期の専門家相談
相続が発生してから慌てて対応するよりも、被相続人が元気なうちから専門家に相談し、対策を講じることが理想的です。 節税効果が高い手法ほど、実施するのに一定の準備期間が必要です。
非上場株式の譲渡・売却でお悩みの方は株式会社繁栄にご相談ください

非上場株式の譲渡・売却は、税務上の論点が多く、一つひとつの判断が税負担に直結する複雑な手続きです。
「自分のケースではどの評価方法が適用されるのか」「低額譲渡にあたらないか心配」「相続した株式の取得費がわからない」など、疑問や不安を抱えたまま進めてしまうと、思わぬ課税や追徴税のリスクにつながりかねません。
株式会社繁栄では、非上場株式の譲渡・売却に関するご相談を承っています。 株式の評価から税務上の論点の整理、取引スキームの検討まで、お客様の状況に合わせたサポートを提供しています。
「まだ売却するかどうか決めていない」という段階からのご相談も歓迎しています。 早めにご相談いただくことで、取得費加算の特例など適用できる制度の見落としを防ぎ、最適な取引の進め方をご提案することができます。
非上場株式の譲渡・売却に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
よくある質問

株式の相続税はいくらから発生するか?非課税になる場合はあるか?
株式を相続しても、株式を含むすべての相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)以下であれば、相続税は発生しません。
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。 株式を含めた相続財産の総額が4,800万円以下なら、相続税の申告自体も不要です。
また、非上場株式については、発行会社が債務超過(負債が資産を上回る状態)にある場合、評価額が0円となることがあります。 この場合も、その株式については相続税がかかりません。
ただし、被相続人が会社に対して貸付金(役員貸付金)を持っている場合は、その貸付金が別途相続財産として課税対象になる点に注意が必要です。
株をそのまま相続するのと現金化してから相続するのはどちらが有利か?
一概にどちらが有利とは言えず、具体的な状況によって異なります。
株式として相続する場合
相続発生時の評価額が低ければ、課税される相続税額も低くなります。 ただし、その後株価が下落すると、相続税を払った後に資産価値が減るリスクがあります。
現金化(売却)してから相続する場合
現金は100%課税対象であり、評価額の圧縮ができません。 また、売却時に譲渡所得税(20.315%)が別途かかります。 一方で、遺産分割がしやすいというメリットがあります。
判断のポイントを以下の表で整理します。
| 比較項目 | 株式のまま相続 | 現金化して相続 |
|---|---|---|
| 相続税評価額 | 4つの価格のうち最低額 | 額面100% |
| 評価の圧縮 | 可能(場合による) | 不可 |
| 売却益への課税 | 将来売却時に発生 | 売却時にすでに課税 |
| 遺産分割のしやすさ | 難しい場合がある | しやすい |
| 株価変動リスク | 相続後も負う | 相続時点で確定 |
税負担の総額を最小化するには、相続税と譲渡所得税の両方を見越した試算が必要です。 税理士に相談のうえ、最適な方法を選ぶことをおすすめします。
自社株の評価額が高く相続税が払えない場合の対処法
自社株の評価額が高く、相続税の納税資金が不足する場合は、次の方法を検討しましょう。
延納制度
相続税額が10万円を超え、一括払いが困難な場合に利用できます。 担保の提供が必要で、延納期間中は利子税がかかります。 申告期限(相続開始から10か月以内)までに申請が必要です。
物納制度
延納でも金銭納付が困難な場合に、相続財産そのもので相続税を納める制度です。 ただし、非上場株式は物納できる財産の順位が低く(一定の条件を満たす場合のみ可)、実際には活用できないことも多い点に注意が必要です。
法人版事業承継税制の活用
一定の要件を満たせば、相続税の納税が猶予・免除される制度です。 後継者が事業を継続する場合は特に有効ですが、手続きが複雑なため専門家への依頼が前提となります。 前述のとおり、適用を受けるための特例承継計画の提出期限(2026年3月31日)および制度の適用期限(2027年12月31日)に注意が必要です。
生命保険の活用
被相続人が元気なうちに生命保険に加入し、死亡保険金で納税資金を確保しておく方法です。 死亡保険金には「500万円 × 法定相続人数」の非課税枠があるため、相続税の節税にもつながります。
非上場株式の譲渡・売却でお悩みの方は株式会社繁栄にご相談ください

非上場株式の譲渡・売却は、税務上の論点が多く、一つひとつの判断が税負担に直結する複雑な手続きです。
「自分のケースではどの評価方法が適用されるのか」「低額譲渡にあたらないか心配」「相続した株式の取得費がわからない」など、疑問や不安を抱えたまま進めてしまうと、思わぬ課税や追徴税のリスクにつながりかねません。
株式会社繁栄では、非上場株式の譲渡・売却に関するご相談を承っています。 株式の評価から税務上の論点の整理、取引スキームの検討まで、お客様の状況に合わせたサポートを提供しています。
「まだ売却するかどうか決めていない」という段階からのご相談も歓迎しています。 早めにご相談いただくことで、取得費加算の特例など適用できる制度の見落としを防ぎ、最適な取引の進め方をご提案することができます。
非上場株式の譲渡・売却に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ|株式の相続は早めの対策が重要

株式の相続税は、財産の全体像の把握から始まり、正確な評価額の算出、相続税の計算、申告・納税まで、多くのステップが必要です。 上場株式と非上場株式では評価方法がまったく異なり、評価の時期や方法の選択によって税負担に大きな差が生まれることもあります。
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。
- 上場株式は相続発生日の終値・発生月・前月・前々月の月平均終値のうち最も低い価格で評価する
- 非上場株式は会社規模と株主区分に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式で評価する
- 相続税の申告・納税期限は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」
- 準確定申告の期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」でさらに短い
- 名義株式や配当期待権など、見落としやすい相続財産にも注意が必要
- 2024年以降の暦年贈与は持ち戻し期間が段階的に7年へ延長され、2031年以降の相続で完全適用される
- 生前贈与・自社株評価の引き下げ・各種特例の活用で節税の余地がある
- 法人版事業承継税制の特例は、適用期限(2027年12月31日)が迫っているため早期の対応が必要
株式の相続は、知識がないまま進めると申告ミスや払い過ぎにつながるリスクがあります。 特に非上場株式(自社株)の評価は専門性が高く、一般の方が自力で対応するのは難しい部分も多くあります。
相続が発生したら、できるだけ早い段階で相続に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。 早期に相談することで節税の選択肢も広がり、手続きの負担も軽減できます。 大切な財産を次の世代へスムーズに引き継ぐために、ぜひ早めの行動を心がけてください。


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