自社の株式を相続や事業承継、あるいはM&Aで動かそうとしたとき、「いったいいくらで評価されるのか」と頭を抱える経営者は少なくありません。 上場株式であれば市場価格がそのまま評価額になりますが、非上場株式には市場価格が存在しないため、国税庁の定める「財産評価基本通達」に沿って評価額を算出する必要があります。 しかも、評価方式は株主の区分・会社の種類・会社の規模という3つの要素によって異なり、どの方式を選ぶかで相続税額が大きく変わることも珍しくありません。 実際、2024年の会計検査院の調査では、類似業種比準価額の中央値が1万1,622円であったのに対し、純資産価額の中央値は4万2,648円と、同じ会社の株式でも計算方式によって約4倍もの差が生じることが明らかになっています。 この記事では、非上場株式の評価方式を決定する4つのステップから、各評価方式の計算方法、M&Aにおける評価の考え方まで、経営者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。 事業承継や相続を控えた経営者の方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
非上場株式の評価方式を決定する4つのステップ

非上場株式の相続税評価では、まず「どの評価方式を使うか」を正しく決定することが最重要です。 評価方式の選択を誤ると、税務署から申告を否認されるリスクがあるため、手順を一つひとつ丁寧に確認する必要があります。 評価方式は、以下の4つのステップを経て決まります。
- ステップ1:株主を同族株主・少数株主に区分する
- ステップ2:評価会社を一般・特定の評価会社に区分する
- ステップ3:会社規模を判定する
- ステップ4:最終的な評価方式を決定する
それぞれのステップの内容を、順番に確認していきましょう。
ステップ1|株主を同族株主・少数株主に区分する
評価方式を決定する最初のステップは、株式を取得した株主が会社の経営にどの程度の影響力を持つかを判定することです。 この判定によって、「原則的評価方式」と「特例的評価方式(配当還元方式)」のどちらを適用するかが決まります。
株主区分判定の原則的な取り扱い
株主は大きく「同族株主等」と「同族株主等以外(少数株主)」の2つに区分されます。 財産評価基本通達178に基づき、同族株主等が取得した株式には原則的評価方式が、**少数株主が取得した株式には特例的評価方式(配当還元方式)**が適用されます。
| 株主の区分 | 主な判定基準 | 適用される評価方式 |
|---|---|---|
| 同族株主等 | 特定の株主グループの議決権割合が30%以上(※)のグループに属する株主 | 原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式) |
| 少数株主(同族株主等以外) | 上記に当てはまらない株主 | 特例的評価方式(配当還元方式) |
(※)最大グループの議決権割合が50%超である会社では、50%超であるケースが基準となります。
特例的評価方式(配当還元方式)が適用される具体的な条件
配当還元方式は、評価額が低くなる傾向があるため、適用できるかどうかは非常に重要なポイントです。 財産評価基本通達188に基づき、以下の4つのいずれかに当てはまる場合に、配当還元方式が適用されます。
①同族株主がいる会社における非同族株主の取得 同族グループの議決権が30%以上または50%超の会社において、同族株主以外の少数株主が取得した株式が対象です。
②中心的な同族株主グループに属するが影響力が極めて低い同族株主の取得 同族株主であっても、以下のすべての条件を満たす場合は例外的に配当還元方式が適用されます。
- 中心的な同族株主以外の同族株主であること
- 取得後の議決権数が会社の議決権総数の5%未満であること
- 課税時期において評価会社の役員ではないこと
③同族株主がいない会社における少数株主の取得 同族株主のいない会社において、株主1人およびその同族関係者の議決権の合計が15%未満である株主が取得した株式が対象です。
④中心的な株主がおり、かつ同族株主がいない会社における少数株主の取得 特定の株主グループの議決権合計が15%以上の会社で、取得後の議決権が5%未満かつ役員等でない株主が対象です。
ステップ2|評価会社を一般・特定の評価会社に区分する
ステップ1で原則的評価方式の適用が決まった場合、次は評価会社が「一般の評価会社」か「特定の評価会社」かを判定します。 一般の評価会社とは通常の事業活動を行っている会社のことで、大多数の中小企業が該当します。 特定の評価会社に該当した場合は、通常の計算方式ではなく、会社の状態に応じた特別な評価方法が適用されます。
特定の評価会社に該当する会社の種類
特定の評価会社には、以下の7種類があります。
| 種類 | 主な判定基準 |
|---|---|
| 比準要素数1の会社 | 類似業種比準方式の3要素のうち直前期末で2つがゼロかつ直前々期末でも2つ以上がゼロ |
| 株式等保有特定会社 | 総資産に占める株式等の割合が50%以上 |
| 土地保有特定会社 | 総資産に占める土地等の割合が一定以上 |
| 開業後3年未満の会社 | 課税時期において開業後3年未満 |
| 比準要素数0の会社 | 類似業種比準方式の3要素がすべてゼロ |
| 開業前または休業中の会社 | 事業を開始していない、または休業中 |
| 清算中の会社 | 会社の清算手続き中 |
特定の評価会社に適用される評価方法
特定の評価会社には、それぞれ以下の評価方法が適用されます。
| 種類 | 適用される評価方法 |
|---|---|
| 清算中の会社 | 清算分配見込額の複利現価による評価 |
| 開業前または休業中の会社 | 純資産価額方式 |
| 開業後3年未満の会社 | 純資産価額方式 |
| 比準要素数0の会社 | 純資産価額方式 |
| 土地保有特定会社 | 純資産価額方式 |
| 比準要素数1の会社 | 純資産価額方式、または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
| 株式等保有特定会社 | 純資産価額方式、またはS1+S2方式 |
ステップ3|会社規模を判定する
評価会社が一般の評価会社に該当する場合、次のステップとして会社の規模を「大会社」「中会社(大・中・小)」「小会社」の5区分に分類します。 この規模区分が最終的な評価方式の選択と、評価額を算出する際の加重平均の割合(斟酌率)を左右するため、正確な判定が求められます。
会社規模の判定で用いる3つの基準
会社規模の判定には、以下の3つの基準を使います。
| 判定基準 | 概要 |
|---|---|
| 従業員数 | 直前期末以前1年間の従業員数(正社員・非常勤を含む。役員は除く) |
| 総資産価額 | 直前期末における各資産の帳簿価額の合計 |
| 取引金額 | 直前期末以前1年間における事業に係る収入金額 |
従業員数のカウント方法には注意が必要です。 正社員は「直前期末以前1年間継続勤務かつ週30時間超」のみをカウントします。 アルバイトやパートなどの非常勤は「年間合計労働時間数÷1,800時間」で換算した人数をカウントします。
従業員数・総資産価額・取引金額による具体的な判定プロセス
判定は以下の手順で進めます。
手順①:従業員数が70人以上かどうかを確認する 従業員数が70人以上の場合は、その他の条件に関わらず自動的に大会社となります。 70人未満の場合は、手順②に進みます。
手順②:業種別の基準値をもとに総資産価額・取引金額で規模を判定する 業種(卸売業・小売サービス業・それ以外)ごとに定められた基準値と、会社の総資産価額および取引金額を照らし合わせて規模を判定します。 「総資産価額(および従業員数)による規模」と「取引金額による規模」の2つを比較し、より大きい方の区分が採用されます。
取引金額による規模区分の基準は以下のとおりです。
| 会社規模 | 卸売業 | 小売・サービス業 | それ以外 |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 30億円以上 | 20億円以上 | 15億円以上 |
| 中会社(大) | 7億円以上30億円未満 | 5億円以上20億円未満 | 4億円以上15億円未満 |
| 中会社(中) | 3億5,000万円以上7億円未満 | 2億5,000万円以上5億円未満 | 2億円以上4億円未満 |
| 中会社(小) | 2億円以上3億5,000万円未満 | 6,000万円以上2億5,000万円未満 | 8,000万円以上2億円未満 |
| 小会社 | 2億円未満 | 6,000万円未満 | 8,000万円未満 |
ステップ4|最終的な評価方式を決定する
ステップ3で確定した会社規模をもとに、財産評価基本通達179に従って最終的な評価方式が決まります。 基本的には「原則適用される評価方式」を使いますが、より評価額が低くなる方式を選択することも認められています。
| 会社規模 | 原則の評価方式 | 選択できる評価方式 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 純資産価額方式 |
| 中会社 | 併用方式(類似業種比準方式+純資産価額方式の加重平均) | 純資産価額方式 |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 併用方式(各50%ずつ) |
たとえば大会社であっても、純資産価額方式の方が評価額が低くなる場合には、そちらを選択することが認められます。 どちらが有利かは個々の会社の状況によって異なるため、必ず両方の評価額を算出したうえで比較することが重要です。
原則的評価方式の計算方法

原則的評価方式には、類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式の3つがあります。 それぞれの計算式の構造と、計算に必要な要素の定め方を順番に解説します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、主に大会社および中会社の併用方式の一部に適用される評価手法です。 評価対象会社と業種が似た上場企業の株価水準を基準に、評価会社の株価を算定します。
計算式の構造(財産評価基本通達180)
類似業種比準方式による株価は、以下の計算式で算出します。
類似業種比準価額 = 類似業種の株価(A) × 〔(b/B + c/C + d/D)÷ 3〕 × 斟酌率 × 資本金等の額の調整
ここで使われる記号の意味は以下のとおりです。
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| A | 類似業種の株価 |
| B | 類似業種の1株あたりの年配当金額 |
| C | 類似業種の1株あたりの年利益金額 |
| D | 類似業種の1株あたりの純資産価額(帳簿価額) |
| b | 評価会社の1株あたりの年配当金額 |
| c | 評価会社の1株あたりの年利益金額 |
| d | 評価会社の1株あたりの純資産価額(帳簿価額) |
類似業種の決定プロセスと株価等要素の適用
類似業種は、総務大臣が定める日本標準産業分類をもとに、大分類・中分類・小分類の業種目から決定します(財産評価基本通達181)。
類似業種の株価(A)および比準要素(B・C・D)は、国税庁が毎年公表する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」に記載された数値を使います。 納税者が自分で計算するのではなく、この公表値をそのまま使用する点が重要なポイントです。
類似業種の株価(A)は、課税時期の属する月以前3か月間の各月の株価のうち最も低いものを原則として使います。 ただし、納税者の選択により、前年平均株価または課税時期の属する月以前2年間の平均株価を用いることもできます。
評価会社の比準要素(配当・利益・純資産)の定め方
評価会社の比準要素(b・c・d)は、財産評価基本通達183に基づいて算出します。
1株あたりの配当金額(b) 直前期末以前2年間における剰余金の配当金額(特別配当・記念配当を除く)の平均値を用います。 発行済株式数は、1株あたりの資本金等の額を50円に換算した数で計算します。
1株あたりの年間利益金額(c) 直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額を基に算出します。 非経常的な利益(固定資産売却益など)は控除します。 申告者の選択により、直前期末以前2年間の平均値を用いることも認められています。
1株あたりの純資産価額(帳簿価額)(d) 直前期末における資本金等の額と利益積立金額の合計を、直前期末における発行済株式数(資本金50円換算後)で割って算出します。
純資産価額方式
純資産価額方式は、主に小会社に適用される評価方式です。 会社の解散価値をベースとして、相続税評価額で算定した純資産をもとに株式の価値を評価します。
計算式の構造(財産評価基本通達185・186-2)
純資産価額は、以下の計算式で算出します。
1株あたりの純資産価額
=(相続税評価額による総資産額 - 負債の合計額 - 評価差額に対する法人税等相当額) ÷ 発行済株式数
ここで重要なのが「評価差額に対する法人税等相当額」の控除です。 これは、相続税評価額による純資産と帳簿価額による純資産の差額(評価差額=含み益)に一定の税率を乗じた金額で、業界では「法人税等控除」と呼ばれています。
適用される税率は、課税時期によって異なります。
- 令和8年3月31日以前の相続・贈与:37%
- 令和8年4月1日以後の相続・贈与:38%(令和8年3月の財産評価基本通達改正による)
つまり、2026年4月1日以後に相続や贈与が発生した場合は、38%を用いて法人税等相当額を計算します。 この控除は評価額を大きく引き下げる効果があるため、実務上の重要ポイントです。
なお、株式取得者とその同族関係者が有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下の場合には、上記の計算式で算出した純資産価額に80%を乗じた金額を評価額とします(財産評価基本通達185ただし書)。 この80%評価の適用は、同族株主でない者が少数持分を保有するケースで問題になることが多く、見落としのないよう注意が必要です。
発行済株式数・議決権・負債の取り扱い
発行済株式数の取り扱い 1株あたりの純資産価額を算出する際の発行済株式数は、直前期末ではなく課税時期における株式数を使います。 なお、自己株式は発行済株式数から除きます。
負債の取り扱い 純資産価額の計算において、以下のものは負債に含みません。
- 貸倒引当金
- 退職給与引当金
- 納税引当金
- その他の引当金および準備金に相当する金額
一方で、以下のものは負債として計上します。
- 課税時期の属する事業年度に係る法人税・消費税・事業税・住民税のうち、課税時期に対応する未払い相当額
- 課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税のうち未払いの金額
- 被相続人の死亡により確定した退職手当金・功労金など
併用方式(類似業種比準方式×純資産価額方式)
中会社と判定された場合に適用されるのが併用方式です。 類似業種比準価額と純資産価額の両方を、会社規模に応じた斟酌率(L)で加重平均して評価額を算出します。
計算式の構造と斟酌率(L)の決定
併用方式の計算式は以下のとおりです。
1株あたりの価額 = 類似業種比準価額 × L + 純資産価額 × (1 - L)
斟酌率(L)は、会社が中会社の大・中・小のどの区分に該当するか、または小会社であるかによって決まります。 会社の規模が大きいほどLの値は高くなり、類似業種比準方式のウェイトが増えます。
| 会社規模 | 斟酌率(L) |
|---|---|
| 中会社(大) | 0.90 |
| 中会社(中) | 0.75 |
| 中会社(小) | 0.60 |
| 小会社(併用選択時) | 0.50 |
会社規模が小さくなるほどLは小さくなり、解散価値に近い純資産価額方式のウェイトが高まる仕組みです。 これは、小規模な会社ほど市場性が低く、純資産に評価を寄せるべきという考え方に基づいています。
特例的評価方式の計算方法(配当還元方式)

配当還元方式は、経営への影響力を持たない少数株主に適用される特例的な評価方式です。 過去の配当実績のみをもとに評価額を計算するため、原則的評価方式と比べて評価額が大幅に低くなる傾向があります。
計算式は以下のとおりです。
1株あたりの評価額 =(年配当金額 ÷ 10%) × (1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)
年配当金額には、原則として直前期末以前2年間における年平均の配当金額を使います。 評価会社が無配当の場合でも、年配当金額を2.5円として計算します(財産評価基本通達188-2)。 還元率の10%は昭和39年(1964年)の制度制定以来変更されていない数値で、2026年現在も継続して使われています。
なお、会計検査院は2024年の検査報告において、近年の低金利環境と比較してこの10%という還元率は相対的に高すぎる可能性があると指摘しており、今後の見直し議論の対象となっています。 現時点ではこの計算式が有効ですが、今後の税制改正の動向には注意が必要です。
特定の評価会社に適用される評価方法

通常の一般の評価会社に該当しない特別な事業構造を持つ会社には、それぞれ専用の評価方法が適用されます。 ここでは代表的な3つを解説します。
清算中の会社|清算分配見込額による評価
清算中の会社の株式は、事業継続を前提とした評価方式を適用することができません。 そのため、清算に伴い株主に分配される見込み額の現在価値をもとに評価します(財産評価基本通達189-6)。 具体的な計算式は「分配見込額×基準年利率による複利現価率」であり、清算結了までの期間・清算費用・分配見込額などを考慮します。 基準年利率は国税庁が毎年公表しており、最新の数値の確認が必要です。
株式保有特定会社|S1+S2方式
株式等保有特定会社の株式は、原則として純資産価額方式で評価しますが、「S1+S2方式」を選択することもできます(財産評価基本通達189-3)。
S1とS2の意味は以下のとおりです。
S1:評価会社が保有する株式等と、その株式等に係る受取配当金を除いて計算した場合の、会社規模に応じた原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式)による評価額
S2:評価会社が保有する株式等について、財産評価基本通達に定めるところにより評価した価額
S1+S2方式は計算が非常に複雑であるため、実務では税理士への相談が不可欠です。 株式等保有特定会社に該当するかどうかの判定も含め、専門家への確認を強くおすすめします。
その他の特定評価会社と適用方法
以下の特定の評価会社には、原則として純資産価額方式が適用されます。
- 比準要素数1の会社(純資産価額方式、または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用も選択可)
- 土地保有特定会社
- 開業後3年未満の会社
- 比準要素数0の会社
- 開業前または休業中の会社
有利な評価方式の選択と実務上のポイント

非上場株式の評価では、複数の方式が選択できる場面において、評価額が低くなる方を選ぶことが合法的に認められています。 この仕組みを正しく理解し活用することが、相続税を適正に抑えるための重要なポイントになります。
会社規模による有利選択の可否
会社規模ごとに選択できる評価方式の組み合わせは異なります。 たとえば大会社であれば、類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらかを選択できます。 両方を算出してみて、純資産価額方式の方が低い評価額となった場合は、そちらを選択することが最適な判断です。
ただし、どちらが有利かはケースバイケースです。 必ず両方の計算を行ったうえで比較することが、実務の大原則となります。
類似業種比準方式を適用するための条件
会計検査院の調査によると、類似業種比準価額の中央値(1万1,622円)は純資産価額の中央値(4万2,648円)のわずか約27%にとどまることが明らかになっています。 つまり、類似業種比準方式が適用できれば、評価額を大幅に引き下げられる可能性があります。
類似業種比準方式のウェイトを高めるための合法的な対策としては、以下が挙げられます。
会社規模の拡大 会社規模が大きいほど斟酌率(L)が上がり、類似業種比準方式のウェイトが高まります。 時間的な余裕があれば、大会社の基準を満たすことを目指す方法も有効です。
比準要素の調整 類似業種比準方式は、配当・利益・純資産の3要素を類似業種と比較します。 これらの要素を税法や会社法のルールの範囲内で合法的に調整することで、評価額を引き下げる余地が生まれます。 ただし、課税直前の恣意的な操作と判断された場合、税務署から否認されるリスクがあります。 必ず税理士と相談しながら進めることが大前提です。
M&Aにおける非上場株式の評価

非上場株式の評価が必要になる場面は、相続や事業承継だけではありません。 M&A(会社売却・買収)においても、非上場株式の評価は重要な役割を果たします。 ただし、M&Aと相続・事業承継では評価の目的も手法も根本的に異なる点に注意が必要です。
相続税評価とM&A評価の違い
相続税評価は、財産評価基本通達に基づき、税務上の公平性を主な目的として算出されます。 評価の焦点は過去の業績や純資産に置かれており、評価額は比較的低くなる傾向があります。
これに対してM&Aにおける評価は、企業の将来的な収益性やキャッシュフローを重視します。 最終的な売買価格は、売り手と買い手の交渉によって決まる動的なものです。
| 項目 | 相続税評価 | M&A評価 |
|---|---|---|
| 目的 | 相続税・贈与税の算定 | 株式・事業の売買価格決定 |
| 主な焦点 | 過去の配当・利益・純資産 | 将来の収益力・事業計画・営業権 |
| 評価額の傾向 | 低くなる傾向がある | 交渉によって決まる |
| 根拠 | 財産評価基本通達 | デューデリジェンス+当事者間交渉 |
M&Aで用いられる主な評価手法
M&Aにおける企業評価は、一般的に以下の3つのアプローチに分類されます。
コストアプローチ
会社が保有する純資産に着目して企業価値を評価する手法です。 代表的な手法として、貸借対照表の純資産をそのまま株式価値とする「簿価純資産法」と、資産・負債を時価評価して算定する「時価純資産法」があります。 中小企業のM&Aでは、時価純資産に数年分の税引後利益を加算する「年買法」が広く使われています。
マーケットアプローチ
類似する上場会社の株価や類似取引事例の価格を基準に、企業価値を推定する手法です。 代表的なものとして、類似上場企業のEBITDA倍率などを基準に評価する「マルチプル法」があります。 算出の容易性と客観性のバランスが良く、中小企業M&Aの実務で広く活用されています。
インカムアプローチ
将来期待されるキャッシュフローをリスクに応じた割引率で現在価値に割り引いて評価する手法です。 代表的なものとして「DCF法(Discounted Cash Flow法)」があり、将来性を加味できる点で合理性の高い手法とされています。 ただし、前提条件の設定に恣意性が入りやすく、正確な算出が難しいという側面もあります。 成長性の高い会社を除いて、中小企業M&Aで買い手が積極的に使うケースはそれほど多くないのが実情です。
非上場株式の評価に関するよくある質問

非上場株式の株価は誰が決める?
相続・贈与の場面では、財産評価基本通達に基づいて税理士などの専門家が算定するのが一般的です。 恣意的な価格設定を排除し、課税の公平性を保つために、通達に沿った評価が義務づけられています。
一方でM&Aの場面では、売り手と買い手の交渉によって価格が決定します。 純然たる第三者間の取引であり、経済合理性のある価格であれば、その合意金額が妥当と判断されます。 交渉の際には、公認会計士などの専門家が行なった企業価値評価の結果をベースにするのが一般的な進め方です。
相続・事業承継において評価はいつ行う?
相続の場合、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の株価評価額が基準となります。 贈与の場合は、贈与を実行した日の株価評価額が基準です。 評価額の算定に使う会社の財務データは、課税時期に最も近い直前期末の貸借対照表や損益計算書をもとにすることが実務上認められています。
事業承継を検討している経営者にとっては、「株価が高い時期に相続が発生した場合」のリスクを事前に把握しておくことが重要です。 日頃から自社の株式評価額を専門家と確認しておくことで、万が一の際にも慌てずに対応できます。
非上場株式の譲渡・売却でお悩みの方は株式会社繁栄にご相談ください
非上場株式の譲渡・売却は、税務上の論点が多く、一つひとつの判断が税負担に直結する複雑な手続きです。 「自分のケースではどの評価方法が適用されるのか」「低額譲渡にあたらないか心配」「相続した株式の取得費がわからない」など、疑問や不安を抱えたまま進めてしまうと、思わぬ課税や追徴税のリスクにつながりかねません。
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まとめ|非上場株式の評価は専門家への相談が近道

非上場株式の評価は、株主区分・会社区分・会社規模という3つの要素の組み合わせによって評価方式が決まります。 さらに、類似業種比準方式における資本金50円換算や、純資産価額方式における評価差額に対する法人税等相当額の控除(令和8年4月1日以後の課税分は38%)といった専門的な計算が必要になるため、独力での正確な算出は非常に難しいのが実情です。
評価を誤ると過少申告につながり、税務署からの追徴課税というリスクを招きます。 また、有利な評価方式を漏れなく活用するためにも、非上場株式の評価に精通した税理士への相談が不可欠です。
2026年4月には、国税庁が有識者会議を設けて評価制度の見直し議論を開始しました。 会計検査院が指摘した「評価方式間の大きなかい離」「配当の影響による評価額の歪み」「還元率の問題」などが論点となっており、今後の税制改正の動向によっては、評価額の計算ルールが変わる可能性があります。
事業承継を控えた経営者の方は、現行ルールのもとで株価引き下げ対策を含めた総合的な評価戦略を早めに立てることが、最も賢明な選択です。 専門家への相談を後回しにせず、自社の非上場株式の評価額を今すぐ確認することをおすすめします。
※本記事の税務に関する解説は、2026年6月時点の財産評価基本通達等の情報に基づいています。法改正・通達改正などにより内容が変わることがあるため、最新情報は必ず専門家または国税庁のウェブサイトでご確認ください。


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