譲渡制限株式の仕組みと譲渡手続きをわかりやすく解説

「自分が持っている株式を売りたいのに、会社に断られてしまった」 「知らないうちに会社の株式が第三者に渡っていた」

このような悩みや疑問を持つ個人株主・経営者の方は少なくありません。 その背景にあるのが、譲渡制限株式という仕組みです。

譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に会社の承認が必要な株式のことをさします。 日本の中小企業の多くがこの制度を採用しており、会社の経営権を守るうえで重要な役割を果たしています。

一方で、手続きを誤ると思わぬトラブルに発展することもあります。 譲渡を拒否された場合の対応や、「みなし承認」によって意図しない株主が生まれてしまうケースなど、実務上の落とし穴も少なくありません。

この記事では、譲渡制限株式の定義・メリット・デメリット・設定方法・譲渡手続きの流れ・実務上の注意点を、個人株主や経営者の方にもわかりやすく解説します。 「自社の株式をどう守るか」「株式を売りたいときにどう動けばいいか」を正しく理解するために、ぜひ最後までお読みください。


目次

譲渡制限株式とは

譲渡制限株式の定義(会社法第107条・第108条)

譲渡制限株式とは、株式の譲渡について会社の承認を必要とする旨が定款に定められている株式のことです。

会社法では「譲渡制限株式」という用語自体を一か所で定義する条文はありませんが、その根拠規定は会社法第107条第1項第1号(すべての株式に設定する場合)および会社法第108条第1項第4号(種類株式として設定する場合)です。 これらの規定に基づいて、定款に「株式を譲渡する際には会社の承認を要する」旨を記載することで、その株式が譲渡制限株式となります。

この定款の定めがある株式を保有する株主は、第三者にその株式を譲渡しようとする場合、まず会社に対して承認を求めなければなりません。 承認を得ずに行われた譲渡は、会社に対して効力を生じないとされており(会社に対抗できない)、株主名簿の書換えも認められません。

なお、譲渡制限株式は「すべての株式に設定する」場合と「一部の種類株式にのみ設定する」場合の2つのパターンがあります。 すべての株式に譲渡制限を設けている会社を「株式譲渡制限会社(非公開会社)」といい、日本の中小企業の多くがこれにあたります。


株式譲渡自由の原則とその例外

そもそも株式は、会社法第127条によって「株主はその有する株式を自由に譲渡できる」という「株式譲渡自由の原則」が定められています。 この原則が存在する理由は、株主が投下した資本を回収する手段を確保するためです。

会社は株主に対して、会社の解散時の残余財産分配や剰余金の配当を除いては、出資した資金を返還する義務を負いません。 そのため、株主が投資資金を回収するためには、株式を第三者に売却するほかなく、その自由を法が保障しているのです。

しかしながら、この原則にはいくつかの法律上の例外が認められています。

例外の種類根拠条文内容
定款による譲渡制限会社法107条・108条承認なき譲渡を会社に対抗不可とする
権利株の譲渡制限会社法35条株式の成立前(払込期日前)の譲渡を制限
取得条項付株式会社法108条1項6号一定事由で会社が強制取得できる

このうち、実務上もっとも広く活用されているのが定款による譲渡制限です。 定款にその旨を明記することで、会社は「好ましくない人物」が株主となることを防ぐことができます。

この例外制度が認められている背景には、特に中小企業や同族会社において、株主構成の安定が経営の安定に直結するという現実があります。 上場会社のように株式市場で自由に売買される環境ではなく、少数の信頼できる株主だけで会社を運営したいというニーズに応えるための仕組みが、譲渡制限株式なのです。


譲渡制限株式と譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の違い

「譲渡制限株式」と混同されやすい言葉として、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」があります。 両者はまったく異なる制度ですので、正確に理解しておくことが大切です。

譲渡制限株式は、会社法に基づき定款で定めることで、すべての株主に対して株式の譲渡を制限する仕組みです。 経営権の安定を目的として、中小企業を中心に広く活用されています。

一方、譲渡制限付株式(Restricted Stock、RS)は、主に役員・従業員向けの株式報酬制度の一種です。 一定期間(たとえば3年や5年)の在籍を条件として付与される株式であり、条件が満たされるまで譲渡が制限されます。 条件達成後には制限が解除され、株式を自由に売却できるようになります。

比較項目譲渡制限株式(会社法)譲渡制限付株式(RS)
根拠会社法107条・108条・定款税制・金融商品取引法・報酬設計
目的経営権の安定・株主構成の管理役員・従業員へのインセンティブ付与
対象すべての株主(または特定種類の株式保有者)役員・従業員(報酬対象者)
制限の解除定款変更(特別決議)が必要一定条件(在籍・業績)の達成で自動解除
上場企業での利用種類株式として一部利用可能上場・非上場問わず広く利用

検討している制度が「会社法上の譲渡制限株式」なのか「報酬制度としてのRS」なのかを、まず確認するようにしてください。


譲渡制限株式会社(非公開会社)と公開会社の違い

株式譲渡制限会社の特徴

株式譲渡制限会社とは、発行するすべての株式に譲渡制限が設けられている会社のことです。 会社法では「非公開会社」に相当し、会社法第2条第5号に定める「公開会社」に該当しない会社として位置づけられます。 なお、会社法上「非公開会社」という用語の定義規定は存在せず、「公開会社」の定義(会社法第2条第5号)の反対概念として実務上・学説上使われる呼称です。

株式譲渡制限会社の主な特徴は以下の通りです。

  • すべての株式の譲渡に会社の承認が必要
  • 取締役会の設置が任意(最低1名の取締役で運営可能)
  • 役員任期を定款で最長10年まで延長可能
  • 株主総会の招集通知期限を定款で1週間未満に短縮することも可能(詳しくは後述)
  • 取締役・監査役の資格を定款で限定できる(たとえば「株主に限る」など)

これらの特徴から、株式譲渡制限会社は経営の柔軟性と安定性を両立しやすい会社形態といえます。 中小企業や同族経営の会社、スタートアップ企業において広く採用されています。


公開会社の特徴

公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、定款に譲渡制限の定めがない株式を発行できる旨が定められている会社のことです(会社法第2条第5号)。

公開会社の主な特徴は以下の通りです。

  • 株式の譲渡に会社の承認は不要(少なくとも一部の株式について)
  • 取締役会の設置が義務づけられている
  • 取締役・会計参与の任期は最長2年、監査役は最長4年
  • 株主総会の招集通知は原則として2週間前までに発送が必要
  • 取締役・監査役の資格を「株主に限る」旨を定款に定めることは不可

公開会社では、株式の流動性が高く、広く投資家を集めやすい反面、コーポレートガバナンス(企業統治)の面でより厳しい規律が求められます。


「公開会社」と「上場会社」は別概念

「公開会社」という言葉から、株式が証券取引所で売買されている「上場会社」を思い浮かべる方が多いかもしれません。 しかし、会社法上の「公開会社」と「上場会社」はまったく異なる概念です。

上場会社は、証券取引所に株式を上場しており、株式市場で誰でも自由に株式を売買できる状態にある会社です。 上場会社は当然に株式の譲渡に制限がないため、会社法上の「公開会社」にあたります。

一方、非上場企業であっても、定款に譲渡制限の定めを置いていなければ会社法上は「公開会社」に分類されます。 たとえば、株式市場には上場していないが、外部投資家に株式を広く発行している会社などがこれに当たります。

分類上場の有無譲渡制限の有無会社法上の区分
上場企業ありなし公開会社
非上場・譲渡制限なしなしなし公開会社
非上場・譲渡制限あり(全株式)なしあり非公開会社(株式譲渡制限会社)

この区別を正確に理解しておくことは、自社の会社形態を把握し、適切な経営判断を行ううえで不可欠です。


中小企業における譲渡制限株式の普及状況

日本の中小企業においては、譲渡制限株式の制度が非常に広く普及しています。 日本に存在する株式会社の大多数が株式譲渡制限会社(非公開会社)であるとされており、中小企業においては半数以上がすべての株式に譲渡制限を設けているとのデータもあります。

この背景には、次のような事情があります。

まず、中小企業では経営者や創業一族が株式の大部分を保有しており、外部の人間に株式が渡ることへの懸念が強くあります。 株式が分散してしまうと、経営方針を巡る対立が生じたり、最悪の場合には経営権を失うリスクがあるためです。

また、平成17年(2005年)の会社法制定により、株式譲渡制限会社に対してさまざまな特例(役員任期の延長、取締役会設置の不要化など)が認められたことも、普及を後押しする要因となりました。

さらに、事業承継の観点からも、譲渡制限株式を活用することで後継者への株式集中をスムーズに行いやすくなるため、中小企業における活用は今後も続くとみられています。


譲渡制限株式のメリット

望ましくない人物が株主となることを防止できる

譲渡制限株式の最大のメリットは、会社にとって好ましくない人物が株主になることを防げる点です。

株式が自由に売買できる状態であれば、競合他社の関係者や会社と対立関係にある人物が、市場で株式を買い集めることができてしまいます。 株主には株主総会における議決権や帳簿閲覧権など、さまざまな権利が認められているため、望ましくない株主が増えると経営への悪影響が生じます。

譲渡制限株式の制度を活用すれば、株式の譲渡に際して取締役会や株主総会の承認が必要となるため、会社が好ましいと判断した人物のみに株式を保有させることができます。 これは、少数の信頼できる株主で会社を運営したい中小企業や、創業者が経営権を維持したいスタートアップにとって、非常に重要な保護機能です。


会社乗っ取りのリスクを軽減できる

株式会社において、議決権(通常は1株につき1議決権)の過半数を持つ株主は、株主総会において重要な事項を単独で決議できます。 3分の2以上の議決権を握れば、定款変更や組織再編など、特別決議が必要な事項も単独で可決できてしまいます。

つまり、株式を大量に取得することは、会社の支配権を奪うことと同義です。 譲渡制限株式の制度がなければ、第三者が株式を買い集めて会社を乗っ取ることも理論上は可能です。

譲渡制限を設けることで、株式の取得には会社の承認が必要となるため、敵対的な買収者が株式を取得することを防ぎやすくなります。 中小企業の経営者にとって、会社乗っ取りは決して他人事ではなく、事前の防衛策として譲渡制限株式の設定は有効な手段です。


役員任期を最長10年まで延長できる

会社法では、役員の任期について以下のように定めています。

役員の種類公開会社非公開会社(株式譲渡制限会社)
取締役最長2年(会社法332条1項)定款で最長10年まで延長可能(同条2項)
会計参与最長2年(会社法334条1項)定款で最長10年まで延長可能(同条1項)
監査役最長4年(会社法336条1項)定款で最長10年まで延長可能(同条2項)

株式譲渡制限会社(非公開会社)は、定款の定めによって役員任期を最長10年まで延長することができます。

役員の任期が短いと、期ごとに再選手続きや登記変更を行う必要があり、その都度コストと手間がかかります。 任期を10年に延長することで、毎回の重任登記費用(登録免許税1万円など)を大幅に削減でき、経営の継続性も高まります。

ただし、任期を長くするほど役員の入れ替えが困難になる面もあるため、会社の状況に応じて適切な任期を設定することが重要です。


取締役会の設置義務がない

公開会社は、取締役会(取締役3名以上と監査役または会計参与で構成)の設置が義務づけられています。 一方、株式譲渡制限会社は取締役会の設置が任意であり、最低1名の取締役がいれば会社を運営できます(会社法326条1項)。

取締役会を設置しないことには、以下のようなメリットがあります。

  • 取締役を3名以上確保する必要がない
  • 取締役会の開催・議事録作成などの事務負担が軽減される
  • 代表取締役1名で迅速な意思決定が可能になる

特に、創業初期のスタートアップや小規模な同族企業では、取締役会の設置義務がないことで、身軽で機動的な経営が実現します。 ただし、取締役会を設置しない場合、株主総会の権限が広がるため、意思決定のスピードに応じた機関設計を検討する必要があります。


株主総会の招集手続きを簡素化できる

公開会社の株主総会は、原則として開催日の2週間前までに招集通知を発送しなければなりません(会社法第299条第1項)。 一方、株式譲渡制限会社は、定款の定めによってこの期間を1週間まで(さらに短い期間も定款で定めることが可能)に短縮することが認められています(会社法第299条第1項ただし書)。

また、株主全員の同意がある場合には、招集手続き自体を省略して株主総会を開催することも可能です(会社法第300条)。

さらに、書面決議(会社法第319条)の活用により、実際に株主が集まって総会を開催することなく、全員の書面による同意で決議を成立させることもできます。 これらの手続き簡略化は、少数の株主で運営される中小企業にとって、時間とコストの大幅な節約につながります。


相続人に対する売渡請求が可能

株式は相続財産の一部となるため、株主が亡くなった場合、その株式は相続人に引き継がれます。 このとき、相続は「包括承継」にあたるため、譲渡制限株式であっても、相続による株式の移転は制限の対象外です。 つまり、会社の承認なしに相続人が株主となります。

問題は、相続人が会社にとって好ましくない人物であった場合や、相続によって株式が複数の相続人に分散してしまう場合です。

そこで会社法第174条は、定款に定めを置くことで、会社が相続人等に対して株式の売渡を請求できる制度(売渡請求制度)を認めています。 この制度を活用すれば、相続によって望ましくない人物に株式が渡ってしまった場合でも、会社がその株式を買い取ることができます(相続等があったことを知った日から1年以内に請求することが必要です・会社法第176条第1項)。

事業承継をスムーズに進めるうえでも、この売渡請求の定款への記載は重要な備えとなります。


譲渡制限株式のデメリット

株式の流動性が低くなる

譲渡制限株式の大きなデメリットは、株式の流動性が著しく低下することです。 株式の売買に会社の承認が必要となるため、株主が株式を現金化したいと思っても、すぐに売却できるとは限りません。

上場株式であれば市場で即座に売買できますが、譲渡制限株式の場合は会社の承認という関門があります。 承認が得られなければ、会社または指定された第三者に買い取ってもらう手続きに移ることになりますが、これにも一定の時間を要します。

投資家の立場からすると、出口戦略(エグジット)が限られるため、譲渡制限株式への投資は敬遠されがちです。 特にベンチャーキャピタルや個人投資家が資金を引き揚げたいタイミングで売却できないリスクは、投資判断に大きく影響します。


資金調達の選択肢が限られる

株式譲渡制限会社では、新株発行による資金調達の場面でも制約が生じることがあります。 投資家にとって、流動性の低い株式は魅力的な投資対象とはなりにくいため、広く外部から出資を募ることが難しくなります。

また、株式市場での公募増資(上場企業が広く投資家から資金を集める方法)は、そもそも株式譲渡制限会社では利用できません。 さらに、非上場株式の配当金には上場株式よりも高い税率が適用されるケースもあり、投資家にとっての税務上の不利もあります。

結果として、銀行融資や補助金など、株式以外の資金調達手段に依存せざるを得ない場面が生じます。 成長フェーズで大規模な外部資金を必要とするスタートアップにとっては、特に意識すべき制約です。


株式買取請求への対応コスト

会社が株式の譲渡を承認しない場合、株主は会社または指定買取人に株式を買い取らせることを求める権利(株式買取請求権)を持ちます。 この買取請求に応じる場合、会社は「公正な価格」で株式を買い取らなければならず、場合によっては多額の資金が必要になります。

特に近年問題になっているのが、「株式買取業者」と呼ばれる事業者の存在です。 これらの業者は、少数株主から相続税評価額などの比較的低い価格で株式を買い取り、その後会社に対して高値での買取を請求するというビジネスモデルをとっています。

業績が好調で内部留保が厚い会社ほど、純資産基準で株価が高く算定される傾向があるため、標的になりやすいといわれています。 会社側に十分な剰余金がなければ、財源規制(分配可能額の制限)の観点から買取自体が困難になる場合もあります。


上場時には譲渡制限を外す必要がある

将来的に株式市場への上場(IPO)を目指す会社にとって、上場審査の過程で譲渡制限を撤廃する必要がある点は重要なデメリットです。 上場会社の株式は市場で自由に売買されることが前提であるため、すべての株式に譲渡制限が付いている状態では上場できません。

譲渡制限の撤廃には、後述するように株主総会の特別決議による定款変更が必要です。 また、上場準備の段階では投資家(ベンチャーキャピタルなど)への株式発行を行うことが多く、その際の株式設計との整合性も考慮しなければなりません。

「今は非公開会社として安定経営を優先しつつ、将来の上場を視野に入れる」という戦略をとる場合、譲渡制限の設定と解除のタイミングを計画的に考えておくことが求められます。


譲渡制限株式を設定する方法

定款への記載事項

譲渡制限株式を設定するには、まず定款にその旨を明記する必要があります。 会社法第107条第2項第1号(全部の株式に設定する場合)または会社法第108条第2項第4号(種類株式として設定する場合)に基づき、以下のような内容を定款に記載します。

記載すべき主な事項:

  • 株式の譲渡について会社の承認を要する旨
  • 承認機関(取締役会・株主総会・代表取締役など)
  • 承認不要となる場合の定め(既存株主間の譲渡を承認不要とするなど、任意)

定款の文例としては、「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない」といった表現が一般的です。 また、承認機関については「取締役会が承認する」と明記するか、または取締役会が設置されていない会社では「株主総会が承認する」と定めます。


株主総会の特別決議

設立後の会社が新たに譲渡制限を設定する(または変更・廃止する)場合、株主総会の特別決議が必要です(会社法第309条第2項第11号)。

特別決議の要件(会社法第309条第2項):

  • 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること(定款で引き下げ可能だが、3分の1を下限とする)
  • 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成(定款でこれを上回る割合を定めることは可能)

ただし、すでに譲渡制限のない株式(自由に譲渡できる株式)が発行されている場合、その株式を持つ種類株主総会の決議も別途必要になります(会社法第111条第2項)。 この場合は特殊決議(当該種類株式の総株主の半数以上、かつ当該種類株式の議決権の3分の2以上の賛成)が求められます。

会社設立時から譲渡制限を設定する場合は、発起人全員の同意で定款に記載することができます。


登記の変更手続き

定款に譲渡制限の定めを設けた場合、商業登記においてもその変更登記を行う必要があります

具体的な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 株主総会で特別決議を行い、定款を変更する
  2. 定款変更の日(効力発生日)から2週間以内に、本店所在地の法務局に変更登記を申請する(会社法第915条)
  3. 必要な添付書類を準備して申請する

登記申請の主な添付書類:

  • 株主総会議事録(定款変更の決議内容が記載されたもの)
  • 株主リスト(議決権の上位10名等)
  • 委任状(代理人が申請する場合)

登録免許税は一律3万円です(定款変更登記の登録免許税は資本金の額に関係なく一律です)。 変更登記は法務局への窓口申請のほか、オンライン申請も可能です。


全部の株式に設定する場合と一部に設定する場合

譲渡制限は、発行するすべての株式に設定する場合特定の種類株式のみに設定する場合があります。

全部の株式に設定する場合: 会社が発行するすべての株式に一律に譲渡制限を付けるパターンです。 この場合、その会社は「株式譲渡制限会社(非公開会社)」となります。 中小企業や同族企業では、このパターンが最も一般的です。

一部の種類株式のみに設定する場合: 複数の種類株式を発行している会社において、特定の種類株式のみに譲渡制限を付けるパターンです(会社法第108条第1項第4号)。 たとえば、普通株式には譲渡制限を付けずに投資家向けの流動性を確保しつつ、議決権を持つ種類株式(いわゆる黄金株など)には譲渡制限を付けて経営権を守る、という設計も可能です。

この場合、その会社は「発行する株式の一部に譲渡制限がない」ため、会社法上は「公開会社」に分類される点に注意が必要です。


譲渡制限株式を譲渡する手続きの流れ

譲渡制限株式を譲渡する場合、会社法に定められた一連の手続きを踏む必要があります。 全体の流れは以下の通りです。

手順1:会社への譲渡承認請求
       ↓
手順2:取締役会または株主総会での承認決議
       ↓
手順3:会社からの承認・不承認の通知
       ↓(承認の場合は手順6へ)
手順4:不承認の場合の買取手続き
       ↓
手順5:売買価格の決定
       ↓
手順6:株主名簿の名義書換請求

手順1:会社への譲渡承認請求

請求書に記載すべき事項

株式を譲渡しようとする株主(譲渡人)または譲受人は、まず会社に対して「株式譲渡承認請求」を書面で行います(会社法第136条・第137条)。 書面(株式譲渡承認請求書)には、次の事項を記載することが必要です。

  • 譲渡しようとする株式の数(および種類)
  • 株式を譲渡しようとする相手方(譲受人)の氏名または名称
  • 不承認の場合に会社または指定買取人に買取を求めるか否か

この最後の「不承認時の買取請求」の意思表示は、請求書に明記しておくことが実務上非常に重要です。 記載がない場合、後から改めて買取請求をすることが難しくなるため、「不承認の場合は買取を求める」旨を明記することを強く推奨します。

譲渡人と譲受人の共同請求が原則

承認請求は、譲渡人は単独でも行うことができます(会社法第136条)。 一方、株式を取得する側(譲受人)が請求を行う場合は、必ず譲渡人と共同で請求しなければなりません(会社法第137条第2項)。

これは、譲受人が単独で会社に承認を求めることを防ぐための規定です。 実務上は、譲渡人が単独で請求書を提出するケースが多いですが、状況に応じて共同請求も選択できます。


手順2:取締役会または株主総会での承認決議

承認請求を受けた会社は、定款の定めに従って承認機関で可否を決定します。

取締役会設置会社の場合

取締役会を設置している会社では、原則として取締役会決議によって承認の可否を決定します(会社法第139条第1項)。 取締役会は、取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数の賛成で決議します。

なお、定款で別段の定め(たとえば「代表取締役が承認機関となる」など)を設けることも会社法上は許容されています(会社法第139条第1項ただし書)。

取締役会非設置会社の場合

取締役会を設置していない会社では、原則として株主総会の決議によって承認の可否を決定します(会社法第139条第1項)。 株主総会の普通決議(定款に別段の定めがない限り、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成)で足ります。

ただし、株主総会を承認機関とする場合、招集通知の発送や総会の開催に時間がかかるという問題があります。 譲渡承認請求から2週間以内に通知しなければならないという期限を踏まえると、機動的に対応できる体制を整えておくことが重要です。


手順3:会社からの承認・不承認の通知

2週間以内の通知義務

会社は、譲渡承認請求を受けた日から2週間以内に、承認するか否かを請求者(譲渡人または譲受人)に通知しなければなりません(会社法第145条第1号)。 この2週間という期限は、定款で短縮することも可能ですが、延長することはできません。

通知は書面で行うのが一般的であり、内容証明郵便などの方法で証拠を残すことが実務上推奨されます。

通知がない場合の「みなし承認」

2週間以内に会社から何も通知がなかった場合、承認したものとみなされます(みなし承認・会社法第145条第1号)。 これは請求者を保護するための制度ですが、会社側にとっては重大なリスクとなります。

みなし承認が発生する場面の例:

  • 承認請求書が本店に届いたが、担当者が気づかずに2週間を超過してしまった
  • 代表者の不在が続き、意思決定ができないまま期限が切れた
  • 事務ミスで請求書が放置された

一度みなし承認が成立すると、後から覆す法的手段は基本的に存在しません。 社内での受付管理体制を整備し、請求書が届いた日から2週間のカウントダウンを必ず意識することが不可欠です。


手順4:不承認の場合の買取手続き

会社が譲渡を承認しない旨を決定し、かつ請求者が「不承認時の買取請求」を行っている場合、会社は株式を買い取るか、指定買取人に買い取らせるかを選択しなければなりません(会社法第140条第1項)。

会社による買取(自己株式取得)

会社自身が株式を買い取る場合、これは自己株式の取得にあたります。 この場合、株主総会の特別決議によって、会社が買い取る旨および買い取る株式の数を決定します(会社法第140条第2項・第309条第2項第1号)。

その後、不承認通知の日から40日以内に、「会社が買い取る旨」および「買い取る株式の数」を請求者に通知しなければなりません(会社法第145条第2号)。 この40日以内の通知を怠ると、みなし承認が成立します。

指定買取人による買取

会社が自ら買い取る代わりに、第三者(指定買取人)に買い取らせることも可能です(会社法第140条第4項・第5項)。 指定買取人の選定は取締役会決議(取締役会非設置会社では取締役の過半数の決定)で行います。

指定買取人は、不承認通知の日から10日以内に、「指定買取人が買い取る旨」および「買い取る株式の数」を請求者に通知しなければなりません(会社法第142条第1項)。 この期限を徒過した場合も、みなし承認が成立します(会社法第145条第3号)。

分配可能額の財源規制

会社が自己株式として買い取る場合、分配可能額(会社法第461条)の範囲内でのみ買取が可能です。 分配可能額とは、おおむね剰余金の額から自己株式の帳簿価額などを差し引いた金額であり、これを超える取得は違法となります(会社法第461条第1項第1号)。

会社の財務状況によっては、希望する価格での買取が財源規制の観点から困難になる場合があります。 この点は、特に資金力の乏しい中小企業において重要な制約となりますので、事前に確認しておく必要があります。


手順5:売買価格の決定方法

当事者間の協議による決定

会社(または指定買取人)と株主の間で、まず協議によって売買価格を決定することが原則です(会社法第144条第1項)。 当事者間で合意できれば、その価格が売買価格となります。

ただし、会社側と株主側では株価の認識に大きな開きがあることが多く、協議が難航するケースも少なくありません。 会社側は低く評価し、株主側は高く評価したいという利益相反が生じます。

供託金と価格決定の申立て

当事者間の協議が整わない場合、買取通知があった日から20日以内であれば、当事者のいずれからでも裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法第144条第2項)。

この期限内に申立てがなく、協議も整わない場合は、事前に供託された金額がそのまま売買価格となります(会社法第144条第5項・第7項)。

場面価格決定の方法
当事者間の協議が成立した場合協議で合意した価格
裁判所への申立てがあった場合裁判所が一切の事情を考慮して決定
申立てなし・協議不成立の場合事前の供託金額が確定価格となる

裁判所は価格を決定する際、「譲渡承認請求時における会社の資産状態その他一切の事情」を考慮します(会社法第144条第2項)。 純資産や収益力、同業他社の状況なども考慮されるため、最終的な価格は会社の実態を総合的に反映したものとなります。


手順6:株主名簿の名義書換請求

株式の売買が成立したら、譲渡人と譲受人が共同で、会社に対して株主名簿の名義書換を請求します(会社法第133条第1項)。 この名義書換を行うことで、譲受人が正式な株主として会社に対して権利を行使できるようになります。

株券発行会社の場合は、株券を会社に提示することで名義書換を求めることができます(会社法第133条第2項)。 株券不発行会社(多くの中小企業がこれにあたります)の場合は、書面や電磁的方法による申請が一般的です。

名義書換後は、譲受人は株主名簿記載事項証明書の交付を会社に求めることで、自分が株主であることの証明を取得できます(会社法第122条)。 なお、名義書換を怠ると、配当の受け取りや株主総会への参加など、株主としての権利行使に支障が生じる可能性があります。 速やかに名義書換手続きを完了させることが実務上のポイントです。


譲渡制限株式に関する実務上の注意点

適式な手続きを経ない譲渡のリスク

会社の承認を得ずに行われた譲渡制限株式の譲渡は、会社に対して効力を主張することができません。 判例上は「相対的無効」の立場が採られており、当事者間では契約は有効であっても、会社はその譲渡を認めず、株主名簿の書換えを拒否できます(最高裁昭和48年6月15日判決)。

つまり、承認なしに株式を「売った」「買った」としても、会社に対しては依然として元の株主(譲渡人)が株主として扱われ続けます。 配当や議決権も元の株主に帰属し、新たに株式を取得したつもりの人物(譲受人)は株主としての権利を一切行使できません。

このようなトラブルを避けるために、譲渡制限株式の売買を検討する際は必ず事前に会社への承認請求手続きを行うことが鉄則です。


相続による株式移転は譲渡制限の対象外

株式の「譲渡」は、売買・贈与などの当事者間の意思に基づく移転をさします。 これに対し、株主が亡くなった場合の相続による株式の移転は「包括承継」にあたり、譲渡制限の対象外です。

会社法第134条は、株式の取得が「一般承継(相続・合併等)」によるものである場合、会社への承認請求は不要としており、相続人はそのまま株主の地位を承継します。

つまり、相続が発生した場合、会社の承認なしに相続人が株式を引き継ぎます。 同様に、会社合併や会社分割など、法律の規定に基づく包括承継の場合も、原則として譲渡制限の対象外とされています。 これらの例外について理解しておくことは、株主構成の管理において重要です。


相続人等に対する売渡請求制度

相続による株式移転が譲渡制限の対象外である以上、会社にとって好ましくない人物が相続によって株主となるリスクは常に存在します。 そこで会社法は、定款に定めを置くことで、会社が相続人等に対して株式の売渡を請求できる制度を設けています(会社法第174条)。

この売渡請求制度のポイントは以下の通りです。

  • 請求できる期間:相続等(相続・合併など)があったことを知った日から1年以内(会社法第176条第1項)
  • 請求の手続き:株主総会の特別決議が必要(会社法第175条・第309条第2項第3号)
  • 売買価格:当事者間の協議によって決定。協議が整わない場合は裁判所への申立てが可能(会社法第177条)
  • 定款への記載:事前に定款に「相続人等に対する売渡請求ができる旨」を定めておくことが必要(会社法第174条)

この制度を活用するためには、あらかじめ定款に売渡請求の規定を盛り込んでおく必要があります。 設立後に追加する場合は株主総会の特別決議が必要ですので、早めに検討することをお勧めします。

なお、売渡請求の対象となる相続人等は、株主総会に出席して議決権を行使することができません(会社法第175条第2項)。 この点も、手続き上の重要な注意点です。


株券発行会社と株券不発行会社による手続きの違い

譲渡制限株式の手続きにおいては、会社が株券を発行しているか否かによって一部の手続きが異なります。

手続き株券発行会社株券不発行会社
株式の譲渡方法株券の交付が必要(会社法128条1項)当事者間の意思表示のみで成立(会社法127条)
株主名簿の書換え株券の提示が必要(会社法133条2項)書面等による請求(会社法133条1項)
供託の方法株券を法務局に供託(会社法141条3項)金銭を供託(会社法141条2項)
承認なき譲渡の効力株券を善意取得した第三者には対抗不可(会社法131条1項)会社に対して対抗不可

現在は、会社法の原則として株券不発行が前提となっており(会社法第214条)、株券を発行するためには定款に「株券を発行する旨」を定める必要があります。 多くの中小企業は株券を発行していないため、実務上は株券不発行会社のルールに従うケースがほとんどです。

ただし、設立が古い会社や、過去に株券を発行した経緯がある会社では、株券の取扱いについて改めて確認することが必要です。


M&Aや事業承継における譲渡制限株式の取扱い

M&A(合併・買収)や事業承継の場面では、譲渡制限株式の取扱いが特に重要になります。

M&Aにおける株式譲渡の場合: M&Aのスキームとして株式譲渡を選択する場合、対象会社の株式に譲渡制限が設けられていると、買収者が株式を取得するためには会社の承認が必要となります。 通常のM&Aでは、売り手オーナーが自ら株式を売却するケースがほとんどであり、このような場合、売り手オーナー自身が承認機関(取締役会や株主総会)の構成員であることが多いため、手続き上は比較的スムーズです。

ただし、少数株主が存在する場合や、経営者以外の株主が複数いる場合は、それぞれの譲渡承認手続きが必要になります。

事業承継における注意点: 後継者への株式の承継は、生前の株式譲渡または相続によって行われます。 生前に株式を譲渡する場合は、定款の定めに基づく承認手続きが必要です。 一方、相続によって株式が移転する場合は、譲渡制限の対象外ですが、株式が複数の相続人に分散するリスクに注意が必要です。

事業承継で活用できる主な手段:

  • 生前贈与:承認手続きを経て、後継者に株式を贈与する
  • 遺言書の作成:株式を特定の後継者に相続させる旨を明記する
  • 相続人への売渡請求(会社法第174条):望ましくない相続人から会社が買い取る(定款の定めが必要)
  • 株式の集約:複数の少数株主から承認手続きを経て買い取り、後継者に集中させる

M&Aや事業承継の場面では複雑な手続きが絡み合うため、専門家(弁護士・司法書士・税理士・M&Aアドバイザー)への早期相談を強くお勧めします。


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譲渡制限株式の譲渡手続きは、法律上の期限が厳格に定められており、一つのミスが取り返しのつかないトラブルに発展する可能性があります。 「株式を売りたいが、会社に承認してもらえるか不安」「不承認になった場合にどう対応すればいいかわからない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ株式会社繁栄にご相談ください。

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まとめ

この記事では、譲渡制限株式の定義・メリット・デメリット・設定方法・譲渡手続きの流れ・実務上の注意点について、詳しく解説しました。 最後に、重要なポイントを整理します。

テーマ主なポイント
定義定款の定め(会社法107条・108条)に基づき、譲渡に会社の承認が必要な株式
会社の種類全株式に設定→非公開会社(株式譲渡制限会社)。一部のみ→公開会社のまま
メリット経営権の安定・会社乗っ取り防止・役員任期延長・取締役会設置不要など
デメリット流動性の低下・資金調達の制限・買取コスト・上場時の制限撤廃が必要
設定方法定款記載+株主総会特別決議+登記変更(登録免許税3万円)
譲渡手続き承認請求→決議→通知(2週間以内)→買取or承認→価格決定→名義書換
実務上の注意みなし承認・相続の例外・売渡請求の定款整備・株券の有無・M&A対応

譲渡制限株式は、中小企業や同族会社の経営権を守るための重要な制度です。 一方で、手続きには厳格な期限が設けられており、対応を誤ると取り返しのつかない事態を招くこともあります。

特に以下の2点は、経営者・株主ともに必ず意識しておきたいポイントです。

  • 承認請求を受けたら2週間以内に通知しないとみなし承認が成立する(会社法第145条)
  • 相続による株式移転は譲渡制限の対象外であるため、売渡請求の定款規定を事前に整備しておく(会社法第174条)

「自社の株式をどう守り、どう承継するか」という問いに向き合うことは、会社の長期的な安定経営の基盤を整えることと同義です。 この記事が、その第一歩を踏み出すための参考になれば幸いです。

実際の手続きや個別の状況への対応については、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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