「うちの会社は家族経営だから、同族会社に決まっている」 そう単純に考えている経営者や株主の方は、意外と多いのではないでしょうか。 しかし、税務上の同族会社に該当するかどうかは、単に親族が経営に関わっているという事実だけでは決まりません。 株主の構成や議決権の割合など、法律で定められた基準に基づいて判定されるとされています。
そして、この判定は単なる形式的な区分ではありません。 同族会社に該当するかどうかによって、法人税の特別な取り扱いが変わる場合があるだけでなく、非上場株式の評価方法にも影響を与える可能性があります。 とくに、非上場株式を保有している株主にとっては、将来の相続税や贈与税、さらには株式を売却する際の価格にも関わる重要なテーマといえます。
この記事では、同族会社の税務上の定義から具体的な判定基準、同族関係者の範囲、そして同族会社の判定が株式評価方式にどうつながっていくのかまでを、順を追って解説していきます。 非上場株式を保有していて、将来の相続や事業承継に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。 なお、本記事は一般的な制度の説明を目的としたものであり、個別の税務判断や法的判断を行うものではありません。 実際の判定や申告にあたっては、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
同族会社とは何か

同族会社という言葉を耳にしたことがあっても、その正確な意味を理解している方は多くありません。 まずは、同族会社の基本的な考え方から確認していきましょう。
同族会社の税務上の定義
同族会社とは、少数の株主グループによって経営権が実質的に支配されている会社のことをいうとされています。 法人税法第2条第10号では、株主等の3人以下、およびこれらと特殊な関係にある個人・法人が、その会社の発行済株式の総数または出資金額の50%を超える株式や出資を保有している会社を、同族会社と定義しているとされています。
ここでいう「株主等」とは、株主名簿に記載されている株主のことです。 ただし、会社が保有している自己株式は、この計算から除外されるとされています。 また、単なる名義だけの株主ではなく、実質的な権利を持つ者を基準に判断される点にも注意が必要です。
同族会社の判定においては、必ずしも持株比率の大きい順に株主を選ぶ必要はないとされています。 選定するグループの組み合わせを変えることで、いずれかの組み合わせで50%を超える場合には、その会社は同族会社と判定される可能性があります。 そのため、一見すると株式が分散しているように見える会社であっても、実際には同族会社に該当しているケースがあるとされています。
非同族会社・親族経営・非公開会社との違い
同族会社という概念は、しばしば「親族経営」や「非公開会社」と混同されがちです。 しかし、それぞれの意味は異なるとされています。
まず、親族経営とは、家族や親族が中心となって経営を行っている会社の一般的な呼び方です。 親族経営の会社は、結果として同族会社の要件を満たす場合が多いといえます。 しかし、同族会社は必ずしも血縁関係のある親族のみで構成されているとは限りません。 たとえば、経営権を握っている株主が友人や共同経営者であったとしても、税法上の要件を満たしていれば、同族会社と判定される場合があるとされています。
次に、非公開会社とは、発行するすべての株式に譲渡制限が設けられている会社のことです。 株式の譲渡に制限があるかどうかが基準であり、株主の構成が問われるわけではありません。 したがって、非公開会社であっても同族会社に該当しないケースがある一方で、上場企業であっても同族会社と判定されることがあるとされています。
以下の表で、それぞれの違いを整理してみましょう。
| 区分 | 判定の基準 | 同族会社との関係 |
|---|---|---|
| 同族会社 | 株主等3人以下と特殊関係者の持株・議決権割合 | 税法上の区分そのもの |
| 親族経営 | 経営陣が親族中心かどうか | 同族会社に該当する場合が多い |
| 非公開会社 | 株式譲渡制限の有無 | 同族会社とは別軸の概念 |
このように、同族会社という概念はあくまで税法上の区分であるという点を、理解しておくことが大切です。 一般的なイメージだけで判断してしまうと、税務上の取り扱いの違いに気づかないまま経営を続けてしまう可能性があります。
日本における同族会社の割合
「自社が同族会社に該当するかどうかなんて、あまり関係ないのでは」と感じる方もいるかもしれません。 しかし、実際には日本企業の多くが同族会社に該当するとされています。
国税庁の会社標本調査によると、日本国内で活動している会社のうち、9割を超える会社が同族会社に該当するとされています。 つまり、日本企業の大多数が、税法上は同族会社という枠組みの中にあるということです。 中小企業においては、経営者への依存度が高く、外部株主も少ないため、経営者本人や少数の関係者による経営になっているケースが多く見られます。
なお、上場企業についても「創業家など特定のファミリーが主要株主や役員に名を連ねている会社」という意味でのファミリー企業(同族経営企業)が一定数存在するという民間調査の結果があります。 調査によって定義や算出方法は異なるものの、上場企業の4割から5割程度がこうしたファミリー企業に該当するとする調査も見られます。 ただし、これは税法上の「同族会社」の判定基準(株主等3人以下による50%超の保有など)とは前提が異なる、経営学上の分類であるとされている点に注意が必要です。 自社が税法上の同族会社に該当するかどうかは、あくまで法人税法の基準に基づいて個別に確認する必要があります。
海外では、同族経営は「ファミリービジネス」として肯定的に評価されることが多い一方で、日本ではマイナスのイメージで語られることもあります。 しかし実際には、長期的な視点での経営判断や迅速な意思決定という強みを活かし、良好な経営を続けている同族会社も多いとされています。 自社が同族会社に該当するかどうかを把握しておくことは、経営者だけでなく、株式を保有するすべての株主にとって重要な意味を持つといえるでしょう。
同族会社の判定基準

同族会社に該当するかどうかは、感覚的に判断できるものではありません。 法律で定められた3つの基準に基づいて判定される仕組みになっているとされています。
持分基準(株式保有割合による判定)
もっとも基本的な判定基準が、持分基準です。 これは、株主等の3人以下、およびこれらと特殊関係にある個人・法人が保有する株式数や出資金額が、発行済株式の総数または出資金額の50%を超えているかどうかで判断される基準とされています。
具体的なイメージをつかむために、以下の例で確認してみましょう。
例)発行済株式数が1,000株の会社の場合
| 株主 | 保有株式数 |
|---|---|
| 株主A | 200株 |
| 株主B | 150株 |
| 株主C | 150株 |
| 株主D | 500株 |
この例では、A・B・Cの3人の株式を合計すると500株となり、発行済株式総数の50%にとどまるため、この組み合わせでは同族会社の要件を満たさない可能性があります。 しかし、A・B・Dという組み合わせで見ると、合計850株となり、発行済株式総数の85%を占めることになります。 このように、上位3人以下のいずれかの組み合わせで50%を超えていれば、同族会社と判定される可能性があるとされています。
自己株式については、発行済株式の総数から除外して計算する点にも注意が必要です。 株主の持株比率が大きい順に選定する義務はなく、任意のグループで基準を満たすかどうかが確認されるとされています。
議決権基準
持分基準に加えて、議決権基準という判定方法も存在します。 これは、2006年度(平成18年度)の税制改正によって追加された基準とされています。
議決権基準では、株主等の3人以下、およびこれらと特殊関係にある個人・法人が保有する議決権が、議決権総数の50%を超えている場合に、同族会社と判定される可能性があるとされています。 この基準がとくに重要になるのは、以下のようなケースです。
・議決権制限株式を発行している会社 ・子会社が親会社の株式を保有しているなど、議決権を行使できない株主が存在する場合
議決権による判定を行う際には、議決権を行使できない株主が持つ議決権は、議決権総数から除外して計算されるとされています。 そのため、分母となる議決権総数が小さくなり、持株比率だけでは同族会社に該当しなくても、議決権ベースで見ると該当してしまうケースが生じる場合があります。
また、個人や法人との間で「同一内容の議決権を行使することに同意している者」がいる場合、その者の議決権は、当該個人や法人が保有しているものとみなされる場合があるとされています。 これは、議決権の実質的な支配関係を重視する考え方に基づくものとされています。
社員数基準(持分会社の場合)
株式会社以外にも、持分会社と呼ばれる会社形態が存在します。 具体的には、合名会社、合資会社、合同会社が該当します。
持分会社の場合は、株式という概念がないため、代わりに社員数基準が用いられるとされています。 これは、株主等の3人以下、およびこれらと特殊関係にある個人・法人に該当する社員の数が、総社員数の50%を超えているかどうかで判定される基準です。
持分会社を経営している方は、株式会社とは異なる判定方法が用いられる点を、理解しておく必要があります。 とくに合同会社は、近年設立数が増加している法人形態であるため、この基準を知らないまま経営を続けているケースもあるとされています。
判定の具体例
ここまで解説してきた3つの基準を整理すると、以下のようになります。
| 判定基準 | 概要 |
|---|---|
| 持分基準 | 株主等3人以下と特殊関係者の持株割合が50%超 |
| 議決権基準 | 株主等3人以下と特殊関係者の議決権割合が50%超 |
| 社員数基準 | 持分会社における特殊関係者の社員数割合が50%超 |
これら3つの基準のうち、いずれか1つでも満たしていれば、その会社は同族会社と判定されるとされています。 つまり、持分基準では該当しなくても、議決権基準では該当するというケースもあり得るということです。
判定の一般的な手順としては、まず株主名簿を確認し、株主が3人以下であるかどうかを確認します。 株主が3人以下であれば、その時点で同族会社に該当する可能性が高いといえます。 株主が4人以上いる場合には、特殊関係者ごとにグループ化を行い、上位3グループの持株割合または議決権割合を計算します。 この合計が50%を超えていれば、同族会社と判定される場合があるとされています。
自社がどの基準に該当する可能性があるのか把握するためには、株主名簿や登記簿謄本などの資料をもとに、確認していくことが求められます。 判断に迷う場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
同族関係者の範囲

同族会社の判定を行ううえで、避けて通れないのが「同族関係者」の範囲の把握です。 この範囲は想像以上に広いため、理解しておく必要があります。
特殊の関係にある個人の範囲
法人税法施行令第4条第1項では、株主等と特殊の関係にある個人について、いくつかの類型が定められているとされています。 血縁関係だけでなく、経済的なつながりのある人物まで含まれる場合がある点が特徴です。
親族の範囲(配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族)
もっとも基本的な同族関係者は、親族です。 具体的には、以下の範囲が該当するとされています。
・配偶者 ・株主等の6親等内の血族 ・株主等の3親等内の姻族
配偶者については、多くの方がすぐにイメージできるでしょう。 しかし、6親等内の血族や3親等内の姻族となると、どこまでの範囲が該当するのか、わかりにくく感じる方も多いはずです。
6親等内の血族には、株主本人の子どもや孫だけでなく、兄弟姉妹、いとこ、叔父叔母、さらには遠縁の子孫まで、幅広い範囲が含まれるとされています。 直系の血族に限らず、傍系の血族も対象となるため、想像以上に多くの人物が同族関係者として扱われる可能性があります。
一方、3親等内の姻族とは、株主と直接の血縁関係はないものの、配偶者やその血族を通じてつながりのある人物のことです。 たとえば、以下のような人物が該当する場合があるとされています。
・株主の配偶者の両親や祖父母 ・株主の配偶者の兄弟姉妹やその子ども(甥・姪) ・株主の兄弟姉妹の配偶者
このように、血族だけでなく姻族も含めて同族関係者を把握しておかなければ、正確な判定は難しいといえます。
事実婚関係にある者・生計を維持されている者
親族関係にない場合であっても、同族関係者として扱われるケースがあるとされています。 法人税法施行令では、以下のような者も特殊関係のある個人に含まれるとされています。
・株主等と婚姻の届出をしていないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にある者 ・株主等の使用人 ・上記に該当しない者のうち、株主等から受ける金銭やその他の資産によって生計を維持している者 ・これらの者と生計を一にする親族
つまり、法律上の婚姻関係がなくても、実質的に夫婦同然の生活をしている場合は、同族関係者として扱われる可能性があるということです。 また、株主から生活費などの援助を受けて生計を立てている人物についても、同様に同族関係者に含まれる場合があるとされています。 血族や姻族以外の人物まで対象になり得る点は、見落としやすいポイントといえるでしょう。
特殊の関係にある法人の範囲
同族会社の判定においては、個人だけでなく、法人が同族関係者として扱われるケースもあります。 法人税法施行令第4条第2項では、以下のような法人が特殊関係のある法人として定められているとされています。
・会社の株主等の1人とその同族関係者が支配している他の会社 ・上記の会社を判定の基礎に加えた場合に、その会社が支配している別の会社 ・同様の考え方で連鎖的に支配関係にある会社
ここでいう「支配している」とは、その会社の発行済株式総数、または出資金額の50%を超えて保有している状態を指すとされています。 たとえば、ある個人が複数の会社の株式を保有しており、それぞれの会社で50%を超える議決権を持っている場合、それらの会社同士は同族関係にあると判断される場合があります。
このように、同族関係者の範囲は、親族関係だけにとどまらず、使用人や生計を共にする者、さらには支配関係にある法人にまで及ぶとされています。 実際に判定を行う際には、想定していたよりも広い範囲の関係者が対象になることが少なくありません。 自社の株主構成を把握するためにも、株主名簿や関連会社の出資関係を確認していく必要があります。
議決権制限株式がある場合の判定
会社によっては、通常の株式とは異なる権利内容を持つ「議決権制限株式」を発行しているケースがあります。 この場合、同族会社の判定はやや複雑になるとされています。
株式数による判定と議決権による判定の違い
議決権制限株式とは、株主総会において議決権を行使できる事項に制限が設けられている種類の株式のことです。 議決権制限株式を発行している会社では、株式数による判定と議決権による判定を、それぞれ別に行う必要があるとされています。
法人税基本通達1-3-1では、株式や出資の数、金額による判定で同族会社に該当しない場合であっても、議決権制限株式を発行しているときには、議決権による判定も行う必要があるとされています。 つまり、株式数の判定だけで「同族会社ではない」と結論づけてしまうのは注意が必要だということです。
議決権制限株式であっても、発行済株式の総数には含まれるという点がポイントです。 そのため、株式数による判定では、議決権制限株式も分母に含めて計算されるとされています。 一方で、議決権による判定を行う際には、扱いが異なる場合があります。
具体的な例で確認してみましょう。 発行済株式1,000株のうち、200株を議決権制限株式として発行している会社があるとします。 株主Aが普通株式400株を、株主Aの配偶者が議決権制限株式200株を、それぞれ保有しているケースを考えてみます。
株式数による判定では、AとAの配偶者の合計は600株となり、発行済株式総数の60%を占めるため、同族会社に該当する可能性があるといえます。 一方、議決権による判定では、A本人の議決権400は、議決権総数800のうちの50%となり、単独では50%を超えません。 しかし、配偶者は同族関係者に該当するため、両者を合わせて判定すると、同族会社に該当する場合があるとされています。
議決権を行使できない株主の取り扱い
議決権制限株式のほかにも、議決権を行使できない株主が存在するケースがあります。 たとえば、子会社が親会社の株式を保有している場合など、一定の条件下では議決権の行使が制限される場合があります。
議決権による判定を行う際、議決権を行使できない株主が持つ議決権については、議決権総数から除外して計算されるとされています。 一方で、これらの株式についても、株式数による判定を行う際には、株式の総数や発行済株式に含めて計算される点に注意が必要です。
このように、議決権の数による判定と株式数による判定とでは、分母となる基準が異なる場合があります。 議決権制限株式を発行している会社や、複雑な資本関係を持つ会社においては、どちらの判定方法でも確認を行い、慎重に同族会社の該当性を検討することが求められます。 自社の株式に議決権制限株式が含まれているかどうか不明な場合は、登記簿謄本や定款を確認したうえで、専門家に相談しながら判定を進めることをおすすめします。
同族会社に適用される税法上の特別規定

同族会社に該当すると判定された場合、非同族会社にはない特別な税務上の規定が適用される場合があります。 これは、少数の株主に経営権が集中していることで、恣意的な経営判断や租税回避行為が行われやすいと考えられているためとされています。
行為計算否認
行為計算否認とは、法人税法第132条第1項に規定されている制度のことです。 同族会社が行った行為や計算を容認した場合に、法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められるときは、税務署長がその行為や計算を否認し、更正または決定を行うことができるとされています。
ここでいう「行為」とは、資産の売買や賃貸借契約の締結など、会社が外部に向けて行う行動のことです。 「計算」とは、その行為の結果を数値的に表したもの、たとえば利益の計算や給与額の算定などを指すとされています。
この規定が適用される要件として重要なのは、「税負担を不当に減少させる結果となると認められるとき」という部分です。 「不当」の具体的な判断基準について、法文上の明確な定義はないとされています。 過去の裁判例では、経済的合理性を欠いている、租税回避以外に正当な理由が見当たらない、同族会社の関係者だからこそ可能になった行為であるといった観点から、判断が行われる傾向にあるとされています。
たとえば、役員に対して著しく高額な報酬を支払う、関係者間で不自然な価格で取引を行う、資産を著しく低い価格で譲渡するといった行為が、この規定の対象となる可能性があります。 ただし、行為計算否認は税務署長の強力な権限とされていますが、実際に適用される事例は限定的であるとされています。 とはいえ、いつ指摘を受ける可能性もゼロではないため、日頃から関連者間取引は適正な価格で行うことが望ましいといえるでしょう。
特定同族会社の留保金課税
留保金課税とは、法人税法第67条に規定されている制度です。 特定同族会社が利益を社内に留保することによる租税回避を防止するために設けられているとされています。
個人株主は、会社から配当を受け取ると、所得税の累進課税の対象となります。 そのため、同族会社では配当を行わず、会社内部に利益を留保することで、個人の所得税負担を回避しようとする動機が生まれやすいといわれています。 留保金課税は、こうした租税回避行為を防ぐための制度とされています。
留保金課税の対象となるのは、同族会社のうち「特定同族会社」に該当する会社に限られるとされています。 特定同族会社とは、1つの株主グループが発行済株式総数の50%を超えて保有しており、そのグループから被支配会社でない法人株主を除外しても、なお支配関係が維持される会社を指すとされています。 ただし、当期末の資本金額または出資金額が1億円以下の場合には、一定の要件を満たさない限り、特定同族会社には該当しないとされています。
留保金課税の税率は、以下のように段階的に定められているとされています。
| 留保金額 | 課税税率 |
|---|---|
| 年3,000万円以下の部分 | 10% |
| 年3,000万円超1億円以下の部分 | 15% |
| 年1億円超の部分 | 20% |
留保金課税は、企業の過剰な利益留保を抑制し、株主への適正な配当を促す効果があるとされています。 一方で、資金調達や設備投資などの事業活動を制約する側面もあるため、資本金1億円以下の中小企業においては、原則として適用が停止されているとされています。 ただし、資本金5億円以上の大法人に完全に支配されている子会社などについては、資本金が1億円以下であっても留保金課税の対象となる場合があるとされているため、グループ会社の一員である場合は注意が必要です。
みなし役員制度と使用人兼務役員の制限
みなし役員制度とは、法人税法第2条第15号および同法施行令第7条に規定されている制度です。 会社法上の役員でなくても、税法上は役員として取り扱われる仕組みのことを指すとされています。 これにより、同族会社における恣意的な役員報酬の操作を通じた租税回避を防止しているとされています。
みなし役員に該当する可能性があるのは、主に以下のケースです。
・法人の使用人以外の者で、その法人の経営に実質的に従事している者(顧問や相談役、会長など) ・同族会社の使用人のうち、一定の持株割合の条件を満たし、かつ経営に従事している者
とくに後者については、以下の条件をすべて満たす場合に、みなし役員として扱われる可能性があるとされています。
・上位3位以内の株主グループに属しており、その合計持株割合が50%を超えていること ・属している株主グループの中で、本人の持株割合が10%を超えていること ・本人(配偶者を含む)の持株割合が5%を超えていること ・実際に会社の経営に従事していること
「経営に従事している」とは、経営方針の決定や主要取引先の選定、資金繰りの決定など、会社の重要な意思決定に関与していることを指すとされています。 単なる事務作業や経理業務のみを行っている場合は、原則として「経営に従事している」とはみなされないとされています。
みなし役員に該当すると、法人税法施行令第71条により、使用人兼務役員にはなれないという制限を受ける場合があります。 使用人兼務役員とは、部長や課長などの職制上の地位を持ちながら、常時使用人としての職務にも従事している役員のことです。 使用人部分の給与や賞与は損金算入が認められる一方で、役員給与には厳しい制限が設けられているとされています。 みなし役員に該当する人物に対して、従業員としての賞与を支給してしまうと、税務調査で指摘を受け、追徴課税につながる可能性があるため注意が必要です。
同族会社の判定と株式評価方式の関係
ここまで解説してきた「同族会社の判定」は、法人税法上の概念です。 しかし、非上場株式を保有する株主にとってより身近なのは、相続税や贈与税の計算に用いられる「同族株主」の判定です。 この2つは似ているようで異なる制度であるため、混同しないように整理しておきましょう。
同族株主の判定基準(議決権30%・50%ルール)
同族株主の判定は、財産評価基本通達188に基づいて行われるとされています。 これは、法人税法上の同族会社の判定とは異なる、相続税や贈与税の財産評価のための基準です。
財産評価基本通達によると、株主の1人およびその同族関係者が保有する議決権の合計数が、評価会社の議決権総数の30%以上を占める場合、その株主および同族関係者は「同族株主」に該当するとされています。 ただし、議決権割合が50%を超えるグループが存在する場合には、その50%超のグループのみが同族株主として扱われ、30%以上のグループに属していても同族株主に該当しないケースがあるとされています。
一般的な例で確認してみましょう。
| 株主グループ | 議決権割合 | 同族株主の判定(一般的な考え方) |
|---|---|---|
| Aグループ | 60% | 同族株主に該当する可能性がある |
| Bグループ | 35% | 同族株主に該当しない可能性がある |
| Cグループ | 5% | 同族株主に該当しない可能性がある |
この例では、Aグループの議決権割合が50%を超えているため、Aグループのみが同族株主として扱われる可能性があります。 Bグループは30%以上を保有していますが、50%超のグループが存在するため、同族株主には該当しない場合があるとされています。
また、いずれの株主グループも議決権割合が30%未満である場合には、その会社は「同族株主のいない会社」として扱われるとされています。 この場合は、議決権割合が15%以上30%未満のグループが「同族株主等」に、15%未満のグループが「同族株主等以外の株主」に区分される場合があるとされています。
なお、法人税法上の同族会社の判定は「上位3グループの合計で50%超」という基準であるのに対し、財産評価基本通達上の同族株主の判定は「1株主グループで30%以上、または50%超」という基準であり、根拠となる法令も判定方法も異なる点に注意が必要です。 この違いを理解しないまま両者を混同してしまうと、株式評価の場面で誤った判断につながる可能性があるため、慎重に区別することをおすすめします。
中心的な同族株主・中心的な株主の判定
同族株主の判定において、もう1つ押さえておきたいのが「中心的な同族株主」と「中心的な株主」という、似て非なる2つの概念です。
中心的な同族株主とは、同族株主がいる会社を前提として、同族株主の1人、その配偶者、直系血族、兄弟姉妹、および1親等の姻族が保有する議決権の合計が、議決権総数の25%以上となる場合における、その株主のことを指すとされています。 中心的な同族株主に該当するかどうかは、後述する株式評価方式の判定において重要な意味を持つとされています。
一方、中心的な株主とは、同族株主のいない会社を前提とした概念とされています。 株主の1人およびその同族関係者が保有する議決権の合計が、議決権総数の15%以上となる株主グループのうち、いずれかのグループの中で単独で議決権総数の10%以上を保有している株主がいる場合に、その株主のことを指すとされています。
この2つの概念は、名前が似ているために混同されやすいポイントです。 以下の表で整理しておきましょう。
| 概念 | 前提となる会社 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 中心的な同族株主 | 同族株主がいる会社 | 配偶者・直系血族等の議決権合計が25%以上 |
| 中心的な株主 | 同族株主のいない会社 | 15%以上のグループ内で単独10%以上を保有 |
たとえ本人の議決権割合が少数であっても、配偶者や子どもなど近い親族の議決権を合算した結果、これらの基準に該当してしまうケースがあるとされています。 その場合、後述する株式評価方式にも影響が及ぶ可能性があるため、自身の持株割合だけでなく、近親者の持株状況もあわせて確認しておくことが望ましいといえます。
原則的評価方式と特例的な評価方式(配当還元方式)の違い
非上場株式の評価方式は、大きく分けて原則的評価方式と特例的な評価方式の2種類が存在するとされています。 どちらの方式が適用されるかは、これまで解説してきた同族株主の判定結果や、株主自身の会社への影響力によって決まるとされています。
| 評価方式 | 具体的な評価方法 | 評価額の傾向 |
|---|---|---|
| 原則的評価方式 | 類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式 | 高くなりやすい傾向 |
| 特例的な評価方式 | 配当還元方式 | 低くなりやすい傾向 |
一般的に、会社への影響力が大きい株主(同族株主や中心的な同族株主に該当する株主など)には、原則的評価方式が適用される傾向にあるとされています。 反対に、会社への影響力が小さい少数株主については、配当実績をもとに評価する配当還元方式が適用される場合が多いとされています。
配当還元方式による評価額は、原則的評価方式と比較して低くなる傾向があるとされています。 そのため、同じ会社の株式であっても、どの株主が保有しているかによって、相続税や贈与税を計算する際の評価額が変わってくる可能性があります。
ただし、役員に就任している場合や、中心的な同族株主・中心的な株主に該当する場合には、たとえ本人の持株割合が少なくても、配当還元方式が適用されず、評価額が高くなる原則的評価方式が採用されるケースがあるとされています。 自身がどちらの評価方式の対象になる可能性があるのか把握しておくことは、将来の相続税額を見積もるうえで重要な意味を持ちます。 評価方式の判定は複雑な要素が絡み合うため、個別の状況については税理士に確認することを強くおすすめします。
同族会社の非上場株式を保有・相続する際の注意点

同族会社の非上場株式を保有している場合、通常の上場株式とは異なるさまざまなリスクや注意点が存在するとされています。 ここでは、とくに相続の場面で押さえておきたいポイントを解説します。
評価方式が相続税・贈与税額に与える影響
これまで見てきたとおり、同族会社の非上場株式は、適用される評価方式によって評価額が変動する可能性がある財産です。 原則的評価方式が適用される場合と、配当還元方式が適用される場合とでは、同じ株式であっても評価額に大きな差が生じるケースがあるとされています。
相続税や贈与税は、財産の評価額をもとに計算されるため、評価方式の違いが、そのまま納税額の違いに直結する場合があります。 たとえば、親から子へ株式を相続する場面において、相続人がどのような立場にあるか(役員に就任するかどうか、他の親族の持株状況がどうなっているかなど)によって、適用される評価方式が変わり、結果として相続税額が想定より膨らんでしまう可能性も否定できません。
こうした事態を避けるためには、生前から自社株の評価額を把握しておくことが望ましいとされています。 評価額を事前に把握しておくことで、納税資金の準備や、生前贈与などの対策を計画的に進めやすくなる場合があります。 自身が保有している非上場株式の評価方法や想定される評価額について不明な点がある場合は、早めに税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
非上場株式特有の換金性の低さとそのリスク
非上場株式には、上場株式にはないリスクが存在するとされています。 それは、証券取引所で自由に売買することができないという、換金性の低さです。
上場株式であれば、証券取引所を通じて市場価格で売却することが可能です。 しかし、非上場株式の場合は、買い手を自分で見つける必要があり、取引相手が見つからないケースも珍しくないとされています。 また、多くの同族会社では、定款によって株式の譲渡に会社の承認を必要とする譲渡制限が設けられているため、株主が自由に株式を売却できない場合があります。
このような状況の中で、相続によって非上場株式を取得した相続人は、以下のようなリスクに直面する可能性があります。
・高額な相続税評価額がついているにもかかわらず、株式を換金できず、納税資金の確保に苦労する ・会社の経営には関与しないにもかかわらず、株主としての立場だけを引き継ぐことになる ・他の相続人との間で、遺産分割をめぐる意見の相違が生じる
とくに、事業を引き継ぐ後継者以外の相続人にとっては、非上場株式は扱いに困る財産になりやすいといえます。 経営権を持たないまま、換金もできない株式を相続することになれば、精神的にも経済的にも負担となる可能性があります。
こうしたリスクに備えるためには、生前のうちに株式の集約や整理を進めておくこと、あるいは少数株主が保有する株式について会社や他の株主、専門の相談窓口へ相談するといった選択肢を、早い段階から検討しておくことが望ましいといえます。 同族会社の非上場株式を保有していて、将来の相続や換金についてお悩みの方は、一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら検討を進めることをおすすめします。
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・遺品整理で非上場株式の株券が出てきたが、どうすればいいかわからない ・自社が同族会社に該当するのか、自分が同族株主に当たるのかわからない ・発行会社に買取りを断られてしまった ・非上場株式の評価額がわからず、相続税申告に困っている ・少数株主として持っているが、売却したい ・株式の価値を確認したうえで、適切に処分したい
少数株Laboでは、無料相談を受け付けています。 「まず話を聞いてほしい」という段階からでも、お気軽にお問い合わせください。 豊富な解決実績を持つ専門スタッフが、あなたの状況に合った方法を一緒に考えます。 なお、個別の税額計算や法的判断が必要な場合には、提携する税理士・弁護士などの専門家と連携しながら対応いたします。
まとめ|同族会社の判定を正しく理解し適切な対応を
この記事では、同族会社の判定基準について、法人税法上の定義から3つの判定基準、同族関係者の範囲、そして株式評価方式との関係まで、幅広く解説してきました。
同族会社の判定は、以下のような要素によって決まるとされています。
・持分基準、議決権基準、社員数基準のいずれかに該当するかどうか ・親族や事実婚関係者、支配関係にある法人まで含めた同族関係者の範囲 ・議決権制限株式がある場合の判定方法
そして、同族会社に該当すると、行為計算否認や留保金課税、みなし役員制度といった特別な税務上の規定が適用される場合があります。 さらに重要なのは、法人税法上の同族会社の判定とは別に、相続税や贈与税の計算場面では「同族株主」という異なる基準が用いられるという点です。 自身がどの区分に該当するかによって、適用される株式評価方式が変わり、将来の相続税額にも影響を与える可能性があります。
非上場株式は、換金性の低さや評価額の複雑さから、相続の場面で悩みの種になりやすい財産とされています。 「自分は同族会社の株式を持っているけれど、詳しい評価額や今後の対策はよくわからない」という方は、決して少なくないはずです。 そうした不安を抱えたまま放置してしまうと、いざ相続が発生した際に、想定外の税負担や親族間の意見の相違につながる可能性もあります。
同族会社の判定や株式評価の仕組みは、専門的な知識が求められる分野です。 自己判断だけで対応を進めるのではなく、早い段階で税理士などの専門家に相談し、自身の株式が置かれている状況を把握しておくことが、将来の安心につながる一歩といえるでしょう。

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