非上場会社の株式を保有しているものの、経営にはほとんど関与できていない。
そんな少数株主という立場に、漠然とした不安を感じている方は少なくありません。
「自分にはどんな権利があるのか分からない」「会社から情報がほとんど開示されない」といった悩みは、非上場企業の少数株主に共通する課題です。
実は、会社法には、こうした少数株主を守るための少数株主権という制度が用意されています。
持株比率に応じて行使できる権利は変わり、なかには*議決権の1%があれば行使できる権利や、議決権の3%で使える強力な権利も存在します。
本記事では、少数株主権の一覧を持株比率別に整理したうえで、行使する際の注意点、そして非上場株式の売却・買取交渉にどう活かせるかまで、分かりやすく解説します。
少数株主権とは

少数株主権とは、総株主の議決権の一定割合以上、または発行済株式総数の一定割合以上を保有する株主だけが行使できる権利のことです。
会社の経営は、原則として株主総会における議決権の過半数で決定されます。
そのため、議決権の少ない株主は、会社の重要な意思決定に単独では影響を及ぼしにくいという構造上の課題を抱えています。
こうした状況を踏まえ、会社法は、大株主や経営陣の行き過ぎを牽制するための仕組みとして、一定数以上の株式を持つ株主に特別な権利を認めています。
これが少数株主権と呼ばれる制度です。
なお、ここでいう「少数株主」という言葉は、必ずしも保有割合が少ない株主のみを指すわけではなく、一定の要件を満たす株主全般を指す点に注意が必要です。
複数の株主が共同で要件を満たす割合を保有していれば、それぞれが単独で基準を満たしていなくても、共同して権利を行使できる場合があります。
単独株主権と少数株主権の違い
株主が行使できる権利は、大きく単独株主権と少数株主権の2つに分けられます。
両者の違いは、権利を行使するために必要な株式の保有数にあります。
| 項目 | 単独株主権 | 少数株主権 |
|---|---|---|
| 行使に必要な株式数 | 1株から行使可能 | 一定割合以上の保有が必要 |
| 代表的な権利 | 議決権、剰余金配当請求権 | 会計帳簿閲覧請求権、株主提案権 |
| 権利の性質 | 株主であれば当然に持つ権利 | 株主平等原則の例外として認められる特別な権利 |
単独株主権は、たった1株でも保有していれば行使できる権利です。
議決権や剰余金の配当を受け取る権利など、株主であれば当然に認められる基本的な権利が該当します。
一方、少数株主権は、株主平等の原則に対する例外的な権利として位置づけられています。
会社の業務執行や財務状況といった重要な情報にアクセスできる権利であるため、一定数以上の株式を保有する株主に限って認められているというのが基本的な考え方です。
この違いを理解しておくことは、自分がどのような権利を行使できるのかを判断するうえで、最初のステップになります。
少数株主とは(支配株主との違い)
少数株主とは、一般的に会社の議決権の過半数を持たず、経営の支配権を持たない株主を指します。
これに対して、議決権の50%以上を保有し、会社の経営を実質的にコントロールできる株主のことを、支配株主と呼びます。
もっとも、少数株主と支配株主を分ける明確な数値基準は、法律上一律に定められているわけではなく、文脈や制度ごとに異なる場合があります。
実務上は、おおむね以下のような目安で議決権割合が区分されることが多いとされています。
- 議決権1%未満:単独での経営への影響力はほとんどないとされる水準
- 議決権1%以上5%未満:株主提案権など一定の権利を行使できる水準
- 議決権5%以上:重要提案権など、より強い権利を行使できる水準
- 議決権10%以上:役員の解任請求や会社解散請求などが可能になる水準
- 議決権50%以上:支配株主として経営の意思決定を主導できる水準
支配株主と少数株主では、経営への関与度合いやリスク・リターンの性質が大きく異なります。
支配株主は経営方針を主導できる一方、業績悪化時の責任やリスクも相対的に大きくなる傾向があります。
少数株主は経営への関与が限定的である反面、法律によって一定の権利が保障されているという点を押さえておくとよいでしょう。
株主権の分類

株主が持つ権利は、その目的によって共益権と自益権という2つの種類に分類されます。
この分類を理解しておくと、少数株主権が全体の中でどのような位置づけにあるのかが見えやすくなります。
| 区分 | 内容 | 権利の例 |
|---|---|---|
| 共益権 | 会社全体の利益に関わる権利 | 議決権、株主提案権、会計帳簿閲覧請求権 |
| 自益権 | 株主個人の利益に関わる権利 | 剰余金配当請求権、残余財産分配請求権 |
共益権とは
共益権とは、会社のガバナンスや経営の透明性を確保するために行使する権利のことです。
株主個人の利益というよりも、会社全体、あるいは株主全体の利益に関わる権利という性質を持っています。
具体的には、株主総会で意見を述べたり議決権を行使したりする権利、会社の帳簿を閲覧するよう求める権利、役員の解任を求める権利などが該当します。
少数株主権の多くは、この共益権に分類される権利です。
会社の業務執行が適正に行われているかを監視し、必要に応じて是正を求めるための手段として機能している、と言えるでしょう。
非上場会社の少数株主にとっては、経営状況を把握するための実質的な手段が限られているケースが多いため、共益権をどのように活用するかが重要な意味を持ちます。
自益権とは
自益権とは、株主個人が経済的な利益を得るために行使する権利のことです。
会社全体の利益というよりも、株主自身の懐に直接関わる権利という点で、共益権とは性質が異なります。
代表的なものとして、会社の利益から配当を受け取る剰余金配当請求権や、会社が解散した際に残った財産の分配を受ける残余財産分配請求権などが挙げられます。
自益権の多くは、1株でも保有していれば行使できる単独株主権として位置づけられています。
つまり、持株比率にかかわらず、株主である以上は当然に認められる権利が中心になっている、と理解しておくとよいでしょう。
もっとも、実際に配当がどの程度支払われるかは会社の業績や配当方針によって左右されるため、権利があることと実際に利益を得られることは、必ずしも同じではない場合があります。
少数株主権の一覧(持株比率別)

ここからは、少数株主権を持株比率別に整理して紹介します。
会社法上、少数株主権は保有する議決権の割合、または発行済株式総数に対する保有割合によって、行使できる権利の種類が変わってくる仕組みになっています。
単独株主が行使できる主な権利
まずは、1株からでも行使できる単独株主権の主な内容を確認しておきましょう。
- 議決権:株主総会で議案に賛成・反対の意思表示をする権利(会社法105条、308条)
- 剰余金配当請求権:会社の利益から配当を受け取る権利(会社法105条)
- 残余財産分配請求権:会社解散時に残った財産の分配を受ける権利(会社法105条)
- 株主名簿閲覧謄写請求権:株主名簿の閲覧や謄写を求める権利(会社法125条)
- 株主総会議事録閲覧謄写請求権:総会の議事録閲覧を求める権利(会社法318条)
- 株主代表訴訟提起権:取締役等の責任を追及する訴えの提起を求める権利(会社法847条)
- 株主総会決議取消しの訴え:総会決議の取消しを求める訴えを提起する権利(会社法831条)
これらの権利は、持株比率にかかわらず行使できるという点が大きな特徴です。
ただし、株主代表訴訟提起権や取締役の違法行為差止請求権など、一部の権利については、公開会社の場合に限り6カ月前から継続して株式を保有している必要がある場合があります。
非公開会社(株式の譲渡制限がある会社の多くが該当します)では、この保有期間の要件が不要とされている場合が多いため、非上場企業の株主にとっては比較的行使のハードルが低いとも言えるでしょう。
議決権1%以上または300個以上で行使できる権利
議決権の100分の1以上、または300個以上の議決権を保有していると行使できるようになる権利があります。
これらは、株主総会に自分の意見を直接反映させるための権利が中心です。
株主総会の議題提案権(会社法303条)
株主総会の議題提案権とは、取締役に対して、一定の事項を株主総会の目的とするよう請求できる権利です。
取締役会設置会社では、総株主の議決権の100分の1以上、または300個以上の議決権を、6カ月前から引き続き保有していることが要件とされています。
一方、公開会社でない取締役会設置会社については、この6カ月の保有期間要件が不要とされている場合があります。
請求のタイミングにも決まりがあり、株主総会の日の8週間前までに行う必要があるとされています。
非上場の少数株主が「株主総会でこの議題を取り上げてほしい」と考えたときに使える、実務上重要な権利のひとつです。
株主総会の議案通知請求権(会社法305条)
議案通知請求権とは、株主総会の目的である事項について、自分が提出しようとする議案の要領を、他の株主にも通知するよう求める権利です。
議題提案権とセットで理解しておくと分かりやすい権利で、要件も議題提案権とほぼ共通しています。
取締役会設置会社においては、総株主の議決権の100分の1以上、または300個以上の議決権を、6カ月前から引き続き保有していることが原則の要件とされています。
こちらも、公開会社でない取締役会設置会社では、保有期間要件が不要とされる場合があります。
自分が出したい議案の内容を、あらかじめ他の株主に周知できるという点で、株主総会での議論を実質化するための権利と位置づけられます。
株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求権(会社法306条)
この権利は、株主総会の招集手続や決議方法に問題がないかを調査してもらうため、裁判所に検査役の選任を申し立てる権利です。
要件は、総株主の議決権の100分の1以上を保有していることとされています。
公開会社である取締役会設置会社の場合は、6カ月前から引き続きこの議決権を保有していることが必要とされる場合がありますが、非公開会社の場合はこの限りではないとされています。
株主総会の招集や決議のプロセスに不透明さを感じる場合、第三者である検査役を介入させることで、手続の適正性を客観的に確認できるという点に意義があります。
議決権3%以上または発行済株式総数3%以上で行使できる権利
議決権の100分の3以上、または発行済株式総数の100分の3以上を保有していると行使できる権利は、少数株主権のなかでも特に実務的な影響力が大きい権利が揃っています。
会計帳簿閲覧謄写請求権(会社法433条)
会計帳簿閲覧謄写請求権とは、会社の会計帳簿やこれに関する資料の閲覧・謄写を求める権利です。
要件は、総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上を保有していることとされています。
この権利には、他の多くの少数株主権と異なり、6カ月の継続保有要件がありません。
ただし、請求にあたってはその理由を明らかにする必要があるとされており、会社側にも、業務の遂行を妨げる目的での請求など、一定の場合には拒否できる正当な理由が認められています。
非上場会社の少数株主にとっては、外部からは見えにくい経営状況や資金の流れを把握するための、数少ない手段のひとつといえるでしょう。
役員の解任請求権(会社法854条)
役員の解任請求権は、取締役や監査役などの役員に不正行為や法令・定款違反となる重大な事実があったにもかかわらず、株主総会でその役員の解任議案が否決されてしまった場合などに、訴えをもって解任を請求できる権利です。
要件は、総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式の100分の3以上を、6カ月前から引き続き保有していることとされています(非公開会社では、この保有期間要件が不要とされる場合があります)。
請求できる期間にも制限があり、当該株主総会の日から30日以内に訴えを提起する必要があるとされています。
会社のガバナンスに深刻な問題があると考えられる場合の、最終手段に近い権利と位置づけられます。
業務執行に関する検査役選任請求権(会社法358条)
この権利は、会社の業務執行に関して不正行為や法令・定款違反を疑うに足りる事由がある場合に、業務や財産の状況を調査させるため、裁判所に検査役の選任を申し立てる権利です。
要件は、総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式の100分の3以上を保有していることとされており、こちらも6カ月の継続保有要件は不要とされています。
会計帳簿閲覧請求権が「自分で帳簿を見る」権利であるのに対し、この権利は裁判所が選任した検査役という第三者に、会社の内部を調査してもらうという点で、より強い調査手段といえます。
株主総会招集請求権(会社法297条)
株主総会招集請求権とは、取締役に対して株主総会の招集を請求できる権利です。
要件は、総株主の議決権の100分の3以上を、6カ月前から引き続き保有していることとされています(非公開会社の場合は、保有期間要件が不要とされる場合があります)。
取締役が招集の手続を行わない場合、株主は裁判所の許可を得たうえで、自ら株主総会を招集できる場合があります。
会社法上、こうした手続は、経営陣が株主総会を開こうとしない場合に備えた制度上の仕組みのひとつとして用意されています。
議決権10%以上または発行済株式総数10%以上で行使できる権利
少数株主権のなかで、最も強い効果を持つ権利が、議決権10%以上または発行済株式総数10%以上の株主に認められています。
会社解散請求権(会社法833条)
会社解散請求権とは、やむを得ない事由がある場合に、訴えをもって会社の解散を請求できる権利です。
要件は、総株主の議決権の10分の1以上、または発行済株式の10分の1以上を保有していることとされています。
「やむを得ない事由」の具体例としては、会社の業務執行が著しく困難な状況に陥り、回復し難い損害が生じている場合や、財産の管理・処分が著しく失当で、会社の存続が危ぶまれる場合などが挙げられています。
会社の存続そのものに関わる、極めて重い効果を持つ権利であるため、実際に行使される場面は限定的とされていますが、経営陣との対立が深刻化した際の選択肢のひとつとして理解しておく価値があります。
少数株主権の早見表(持株比率・6カ月保有要件)
ここまで紹介してきた少数株主権を、持株比率と保有期間要件という観点から一覧表に整理します。
| 持株比率の目安 | 主な権利 | 根拠条文 | 6カ月保有要件 |
|---|---|---|---|
| 1株以上(単独株主権) | 議決権、剰余金配当請求権、株主名簿閲覧請求権など | 会社法105条、125条など | 権利により異なる(不要な場合が多い) |
| 議決権100分の1以上または300個以上 | 議題提案権、議案通知請求権 | 会社法303条、305条 | 公開会社は必要な場合がある、非公開会社は不要な場合がある |
| 議決権100分の1以上 | 総会招集手続の検査役選任請求権 | 会社法306条 | 公開会社は必要な場合がある、非公開会社は不要な場合がある |
| 議決権または発行済株式総数の100分の3以上 | 会計帳簿閲覧請求権、業務検査役選任請求権 | 会社法433条、358条 | 不要とされる場合が多い |
| 議決権または発行済株式総数の100分の3以上 | 役員解任請求権 | 会社法854条 | 公開会社は必要な場合がある、非公開会社は不要な場合がある |
| 議決権100分の3以上 | 株主総会招集請求権 | 会社法297条 | 公開会社は必要な場合がある、非公開会社は不要な場合がある |
| 議決権または発行済株式総数の10分の1以上 | 会社解散請求権 | 会社法833条 | 不要とされる場合が多い |
こうして比較すると、持株比率が上がるほど、より強い効果を持つ権利が行使できるようになるという構造が見えてきます。
一方で、会計帳簿閲覧請求権や業務検査役選任請求権のように、6カ月の保有期間が不要とされる権利も一定数存在する点は、押さえておきたいポイントです。
自分がどの権利を行使できるかを判断する際には、持株比率だけでなく、保有期間や会社が公開会社か非公開会社かという点も、あわせて確認する必要があります。
公開会社と非公開会社で異なる保有期間要件

少数株主権の多くには、行使前6カ月以上、継続して株式を保有していることを求める要件が付されています。
しかし、この保有期間要件は、すべての会社に一律に適用されるわけではありません。
会社法上、株式の全部または一部に譲渡制限が付されていない会社を公開会社と呼び、それ以外の会社を非公開会社(公開会社でない株式会社)と呼びます。
多くの非上場企業、とりわけ同族経営の中小企業は、株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定款で定めているケースが多く、この場合は非公開会社に該当します。
公開会社と非公開会社では、少数株主権の保有期間要件について、以下のような違いが設けられている場合があります。
- 公開会社:株式の売買が自由に行われやすいため、短期的な株式取得による権利の濫用を防ぐ目的で、6カ月の継続保有を求める権利が多い
- 非公開会社:株式の譲渡自体に会社の承認が必要であり、そもそも短期売買によって株主が入れ替わりにくいため、6カ月の保有期間要件が不要とされる場合が多い
これは、株式の流動性の違いに着目した制度設計と理解することができます。
非上場企業の少数株主の場合、保有期間の要件を気にせず、比較的早い段階から少数株主権を行使できる場合があるという点は、覚えておいて損はないでしょう。
ただし、具体的にどの権利にどの要件が適用されるかは、個別の条文や自社の定款の定めによって異なる場合があるため、実際に権利行使を検討する際には、条文の確認や専門家への相談を通じて、正確な要件を確認することをおすすめします。
少数株主権を行使する際の注意点

少数株主権は、非上場会社の少数株主にとって心強い制度である一方、行使にあたってはいくつか押さえておきたい注意点があります。
正しく理解しないまま権利行使に踏み切ると、期待していた結果が得られなかったり、かえって会社との関係が悪化したりする可能性があるため、事前の理解が重要です。
株式の買取を会社に強制する権利ではない点
まず大前提として、少数株主権を行使したからといって、会社が自動的に株式を買い取ってくれるわけではありません。
会計帳簿閲覧請求権や株主提案権といった権利は、あくまで情報を得たり、意見を表明したりするための手段であり、それ自体が会社や大株主に対して買取を義務づける制度ではないとされています。
「少数株主権を行使すれば、会社は株を買い取らざるを得なくなる」といった理解は、誤解である可能性が高い点に注意が必要です。
株式の買取を実現するためには、少数株主権とは別に、株式買取請求権や、譲渡制限株式に関する売渡請求の制度など、それぞれ異なる要件を持つ制度を検討する必要がある場合があります。
このあたりの制度は複雑に絡み合っているため、実際に売却や買取を検討する段階では、弁護士などの専門家に相談しながら進めることが望ましいとされています。
権利行使が会社との関係に与える影響
少数株主権の行使は、会社や経営陣との関係に一定の影響を与える可能性があるという点も、理解しておく必要があります。
例えば、会計帳簿閲覧請求権を行使する場合には、請求の理由を明らかにする必要があり、会社側もその内容によっては開示を拒否できる場合があるとされています。
同族経営の非上場企業では、株主同士が親族関係にあるケースも多く、権利行使が感情的な対立につながってしまう可能性も否定できません。
もちろん、少数株主権は法律で認められた正当な権利ですから、行使すること自体を過度に恐れる必要はありません。
とはいえ、どのタイミングで、どのような形で権利を行使するのが適切かについては、慎重に検討する価値があるといえるでしょう。
感情的な対立を避けながら、実効性のある形で権利を行使するためには、あらかじめ専門家に相談し、進め方を整理しておくことをおすすめします。
少数株主権を株式売却・買取交渉に活かす考え方

少数株主権は、それ単体で株式の売却や買取を実現する制度ではありませんが、売却・買取交渉を進める際の情報収集手段として活用できる場合があります。
ここでは、非上場株式の出口戦略を検討している少数株主に向けて、少数株主権の活かし方の一般的な考え方を紹介します。
会計帳簿閲覧請求で経営状況を把握する
非上場株式の売却や買取交渉を検討する際、まず重要になるのが会社の経営状況や財務状態を正確に把握することです。
上場企業と異なり、非上場会社は決算情報が広く公開されているわけではないため、株主自身が情報を取りにいく必要がある場面が多くなります。
会計帳簿閲覧謄写請求権を行使することで、役員報酬の水準や、関連当事者との取引状況など、通常は外部から見えにくい情報を確認できる場合があります。
こうした情報は、株式の評価額を検討するうえでの基礎資料になり得るとされており、専門家に相談する際の材料としても役立つ場合があります。
株主提案権・総会招集請求権を交渉の材料にする
株主総会の議題提案権や、株主総会招集請求権といった権利も、話し合いの場を整えるための制度として活用できる場合があります。
たとえば、会社が特定の議題について十分な説明をしていないと感じられる場合に、議題提案権を活用してその論点を株主総会の場で取り上げるという方法が、制度上用意されています。
株主総会という公式な場に議題が上がることで、経営陣が対応を検討するきっかけになる場合があるという点が、この権利の実務的な特徴といえるでしょう。
もっとも、これらの権利はあくまで議論の土台を作るための手段であり、提案そのものが直接的に売却や買取の合意につながるわけではない点には、注意が必要です。
具体的な交渉の進め方については、個別の状況によって適切な方法が異なる場合が多いため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
他の株主と連携して権利を行使する
少数株主権のなかには、単独では要件を満たさなくても、複数の株主が共同で保有割合を合算することで行使できる権利があります。
非上場企業では、創業家以外にも複数の少数株主が存在しているケースが少なくありません。
同じような悩みを抱える株主同士が情報を共有し、連携して権利を行使することで、単独では届かなかった議決権割合に到達できる場合があります。
例えば、それぞれが議決権の1%に満たない株主であっても、複数人が合算することで議決権3%以上の要件を満たし、会計帳簿閲覧請求権や役員解任請求権といった、より強い権利を行使できる可能性が出てきます。
こうした連携は、非上場株式の売却や買取に関する話し合いの機会を作るうえでも、有効な選択肢のひとつになり得ます。
ただし、他の株主との連携や具体的な交渉の進め方は、個別の事情によって最適な方法が異なる場合があるため、専門家に相談しながら検討することが望ましいとされています。
非上場株式(少数株式)を保有する株主が抱えやすい悩み
非上場株式を保有する少数株主からは、共通する悩みがいくつか寄せられる傾向にあります。
- 会社から配当がほとんど支払われず、株式を保有し続けるメリットを感じられない
- 相続によって非上場株式を取得したものの、経営には一切関与しておらず、扱いに困っている
- 株式を売却したいと考えても、譲渡制限が付いており、自由に売却できない
- 会社や大株主に買取りを打診しても、評価額について折り合いがつかない
- そもそも、自分がどのような権利を持っているのか分からず、行動の起こしようがない
非上場株式は、上場株式のように市場でいつでも売買できるわけではないという特性上、一度保有すると出口が見えにくくなりやすい資産でもあります。
こうした状況において、少数株主権は、現状を把握するための第一歩となり得る手段です。
会社の経営状況を知り、必要に応じて声を上げ、他の株主とも連携しながら、専門家とともに納得のいく解決策を探っていくことが大切だといえるでしょう。
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- 少数株主権について理解したが、結局どう行動すればいいか分からない
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まとめ 少数株主権を正しく理解し、専門家に相談を
本記事では、少数株主権について、持株比率別の一覧や行使要件、そして株式売却・買取交渉への活かし方まで、幅広く解説してきました。
少数株主権は、議決権1%からでも行使できる権利もあれば、3%や10%といった、より高い比率が必要になる強力な権利も存在します。
ただし、これらの権利は会社に株式の買取を強制するものではなく、あくまで情報を得たり、意見を表明したりするための手段である点には、注意が必要です。
非上場株式の売却や買取交渉を有利に進めるためには、少数株主権を正しく理解したうえで、状況に応じて活用していくことが重要になります。
とはいえ、実際にどの権利をどのタイミングで行使すべきか、また株式の評価額や交渉の進め方については、個別の事情によって最適な対応が異なる場合が多く、独力での判断が難しい場面も少なくありません。
「保有している非上場株式をどうすればよいか分からない」「まずは自分の権利を整理したい」と感じている方は、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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