株式譲渡承認請求書とは?必要・不要なケースや記載項目、書き方・手続きの流れを紹介

「持っている株を、信頼できる相手に譲りたい」。そう考えたとき、多くの中小企業の株主がぶつかるのが、「勝手には譲れない」という壁です。なぜなら、上場していない多くの会社では、株式に「譲渡制限」というルールがつけられているからです。このルールがある限り、株主は会社の承認を得ないと、有効に株式を手渡すことができません。その承認を求めるために使う書類が、「株式譲渡承認請求書」です。

この記事では、株式譲渡承認請求書とは何か、という基本から、必要になる場面、書き方や記載項目、そして提出した後の手続きの流れまでを、ひとつずつわかりやすく説明していきます。「自分のケースでは書類が要るのか」「どうやって書けばいいのか」といった疑問を、この記事ひとつで解決できるようにまとめました。初めて株式の譲渡に向き合う方も、安心して読み進めてください。

目次

株式譲渡承認請求書とは

株式譲渡承認請求書の概要と役割

株式譲渡承認請求書とは、譲渡制限のついた株式を譲るときに、その株を発行している会社へ「譲ってもいいですか」と尋ねるための書類です。会社法では、株式は自由に譲れるのが原則とされています(会社法第127条)。けれども、会社にとって望ましくない人物が株主になると、経営が思うように進まなくなるおそれがあります。

そこで会社法は、株式の譲渡について会社の承認を必要とする定めを、定款に置くことを認めています(会社法第107条第1項1号、第108条第1項4号)。このような定めのある株式が「譲渡制限株式」であり、その譲渡を認めてもらうための最初の一歩が、承認請求書の提出になります。言い換えれば、この書類は手続きのスタートを会社に告げる、要の役割を果たしています。

上場株式と非上場株式の違い

株式は、大きく「上場株式」と「非上場株式」の2種類に分けられます。上場株式とは、証券取引所を通じて、一般の投資家が自由に売買できる株式のことです。一方で非上場株式は、市場に出回っておらず、株主の許可がなければ一般の投資家が手に入れられない株式を指します。多くの中小企業が発行しているのは、こちらの非上場株式です。

両者の違いを、簡単に表で整理します。

項目上場株式非上場株式
取引の場所証券取引所相対での個別取引
売買のしやすさ自由に売買できる会社の承認が必要な場合がある
価格の目安市場価格がある市場価格がなく、算定が必要
譲渡承認請求書原則不要必要になる場合がある

このように、譲渡承認請求書が問題になるのは、主に非上場株式のケースです。自分の持つ株がどちらに当たるのかを、まず確かめておくと、その後の手続きの見通しが立てやすくなります。

譲渡制限株式と公開会社・非公開会社

会社が発行する株式の全部または一部に、譲渡制限を設けているかどうかで、会社の呼び方が変わります。発行するすべての株式に譲渡制限をつけている会社を「非公開会社」と呼びます。一方、譲渡制限のない株式をひとつでも発行している会社は「公開会社」となります(会社法第2条5号)。

中小企業の多くは、信頼関係のある人だけを株主にとどめておきたいという理由から、非公開会社の形をとっています。中小企業庁の調査を引用する複数の業界記事では、調査対象となった会社のうち約76%が株式に譲渡制限をつけていた、と紹介されています(出典元の一次資料が明示されていない引用も見られるため、正確な数値は中小企業庁の公表資料でご確認ください)。

つまり、日本の会社の多くで、株を譲る際に会社の承認が必要になるとされています。この承認を得るための書類が、繰り返しになりますが、株式譲渡承認請求書なのです。

株式譲渡承認請求書が必要とされる理由

「口頭で伝えればよいのでは」と思う方もいるかもしれません。たしかに、法律上は、必ずしも書面での請求が義務づけられているわけではありません。しかし、書面で残すことには、後々のトラブルを防ぐという、大きなメリットがあります。

たとえば、口頭だけのやり取りでは、次のような不都合が起こりやすくなります。

  • いつ請求したのかを証明しづらい
  • 不承認だった場合の対応を記載できない
  • 譲る株式の種類や数が、あいまいになりやすい

とくに、請求をした日付は、後の手続きの起点になる、とても大切な情報です。この日付がはっきりしないと、後で説明する「みなし承認」の判断が、難しくなってしまいます。だからこそ、承認請求は書面で行うほうが望ましい、とされています。

株式譲渡承認請求書が必要な場面・不要な場面

株式譲渡承認請求書は、どんなときでも必ず要る、というものではありません。譲渡制限があるかどうか、そして誰から誰へ譲るのかによって、必要かどうかが変わってきます。ここでは、書類が必要になる場面と、そうではない場面を、それぞれ整理していきます。

必要なケース

承認請求書が必要になるのは、譲渡制限のついた株式を、ほかの誰かに譲ろうとするときです。具体的には、次のような場面が当てはまります。

  • 中小企業のオーナーが、後継者へ株を譲るとき
  • M&Aで、会社の株を買収する相手に譲るとき
  • 株主が亡くなり、相続した株の名義を書き換える流れの中で譲るとき
  • 親族や、社外の第三者へ株を手渡すとき

これらに共通するのは、「会社が信頼する人」以外の人物が、新しく株主になる可能性があるという点です。会社の経営に影響を及ぼす場面だからこそ、承認という手続きが求められます。

不要なケース

一方で、承認請求書が不要となる場合もあります。代表的なのは、そもそも株式に譲渡制限がついていない、公開会社の株を譲るときです。この場合は、会社の承認を得なくても、株式を自由に譲ることができます。

また、譲渡制限株式であっても、定款に「みなし承認」の定めが置かれているケースもあります。たとえば「株主同士の譲渡については承認を要しない」といった定めがある場合、既存の株主の間での譲り渡しなら、承認請求がいらなくなることがあります。ただし、みなし承認の定めがあるかどうかは、会社ごとに異なります。自分のケースが不要に当たるかどうかは、まず定款の内容を確かめることが大切です。

株式譲渡承認請求の手続きの流れ

ここからは、株式譲渡承認請求を、実際にどう進めていくのかを、時間の流れに沿って見ていきます。全体の流れを先につかんでおくと、それぞれの手続きの意味がわかりやすくなります。おおまかには、「請求」→「決議」→「通知」という3つのステップで進んでいきます。

株主から会社への承認請求

最初のステップは、株主が会社に対して、譲渡を承認するかどうかの決定を求めることです(会社法第136条)。このときに提出するのが、株式譲渡承認請求書になります。請求書には、譲る株式の数や種類、譲る相手の情報などを記載します。

なお、株式を譲り受けた人の側から承認請求をする場合は、原則として、株式を譲った株主と連名で行う必要があります(会社法第137条第2項)。この連名のルールには、例外もあります。その例外については、後の章で詳しく説明します。

承認機関による決議(取締役会・株主総会)

次のステップは、請求を受けた会社が、承認するかどうかを決議で決定することです。どの機関が決定するかは、会社の形によって変わります。

  • 取締役会を置いている会社:取締役会の決議で決定
  • 取締役会を置いていない会社:株主総会の決議で決定

これが原則の形です(会社法第139条第1項)。ただし、定款で別の定めを置くことも認められています。たとえば、取締役会設置会社であっても、承認の機関を株主総会にするといったことが可能です。自分の会社ではどの機関が承認するのかを、定款で確認しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。

会社から株主への通知

決議で決定した内容は、必ず請求をした株主へ通知しなければなりません(会社法第139条第2項)。承認でも、不承認でも、結果を伝えるのが会社の義務です。この通知には、実はとても大切な期限が定められています。その期限を守らないと、会社にとって思わぬ結果が生じることがあります。

2週間以内の通知と承認みなし規定

会社は、請求の日から2週間以内に、承認か不承認かを通知しなければなりません(会社法第145条1号)。もしこの期間内に通知をしなかった場合、たとえ不承認の決議をしていたとしても、「譲渡を承認した」とみなされてしまいます。これを「みなし承認」と呼びます。つまり、会社が黙っていると、自動的に承認した扱いになる、という仕組みです。

なお、この期間は定款で2週間より短く定めることはできますが、それより長く延ばすことはできないとされています。会社側からすると、うっかり期限を過ぎてしまうと、いとも簡単に株主が入れ替わるおそれがあるということです。この点は、請求する側・受ける側のどちらにとっても、見逃せないポイントになります。

株式譲渡承認請求書の書き方・記載項目

ここからは、実際の株式譲渡承認請求書を、どう書けばよいのかを見ていきます。この書類の様式は、法律で細かく定められているわけではありません。とはいえ、一般的に記載すべき項目は、ある程度決まっています。主な項目は、次のとおりです。

  • 譲る株式の種類と数
  • 譲る側(株主)の情報と押印
  • 承認を求める旨と、不承認の場合の要望
  • 譲り受ける相手の情報

それぞれの内容を、順に詳しく見ていきましょう。

譲渡する株式の種類と数

まず、どの株を、何株譲るのかを、はっきりと書きます。株式の種類が複数あるときは、その種類もあわせて記載します。株式の種類には、一般的な「普通株式」のほか、配当などで優先される「優先株式」、逆に順位が低くなる「劣後株式」などがあります。

たとえば、普通株式を1,000株、種類株式を100株譲る場合の書き方は、次のようになります。

記載例
株式の種類および数 普通株式 1,000株 / 種類株式 100株

数や種類を間違えると、手続きが混乱するもとになります。株式譲渡契約書の内容と照らし合わせ、間違いのないように記載することが大切です。

譲渡人・譲受人の情報

次に、株を譲る人(譲渡人)と、譲り受ける人(譲受人)の情報を書きます。記載するのは、氏名または名称と、住所です。譲る側の情報の欄には、最後に押印を行います。譲り受ける相手の情報も、株式の行方を決める重要な項目です。

記載例を示すと、次のようになります。

区分記載例
譲渡人(株主)東京都●区●1-1-1  氏名 ㊞
譲受人(相手)東京都●区●2-2-2  氏名(または名称)

相手の情報を間違えると、会社へ誤った内容が伝わってしまいます。事前に正確な情報を確認してから、丁寧に記載することを心がけましょう。

不承認の際の対応・要望

請求をしても、必ずしも承認されるとは限りません。そこで、不承認となった場合の要望を、あらかじめ書いておくのが一般的です。書き方には、いくつかのパターンがあります。

  • 「ほかに譲渡の相手をご指定ください」と書くパターン
  • 「貴社または貴社の指定する買取人による買い取りを請求します」と書くパターン

このような要望を記載しておくと、不承認の場合に、会社側へ期限内の対応を促すことができます。結果として、その後の手続きがスムーズに進みやすくなります。なお、実際の文言は会社の状況や意向によって調整が必要になる場合があるため、不安がある場合は専門家に確認したうえで作成することをおすすめします。

株式譲渡承認請求書のひな形・記入例

実際に作成する際は、インターネット上にあるテンプレートやひな形を、参考にするのが手軽で便利です。全体のイメージとして、一般的な構えをまとめると、次のような構成になります。

構成の流れ各内容
①日付請求書を提出する日
②宛先株式を発行する会社名
③本文承認を求める旨の文章
④株式の種類と数譲る株式の内容
⑤譲受人の情報譲る相手の氏名・住所
⑥不承認時の要望買取請求などの記載
⑦譲渡人の情報と押印株主の氏名・住所・印

あくまでこれは一例であり、会社や状況によって、適切な形は変わることがあります。不安な場合は、テンプレートをそのまま使うのではなく、内容を自分のケースに合わせて整えることが大切です。

株式譲渡承認請求書に実印は必要か

書類を作るとき、多くの方が迷うのが「実印は必要なのか」という点です。結論から言うと、必ずしも実印が必要とは限りません。ここでは、認印と実印の違いや、実印が求められるケースを整理します。

認印と実印の違い

法律上、実印は必須ではないため、認印で対応できる場合もあります。認印も実印も、同じ法的効力を持っているという点は、押さえておきたいポイントです。ただし、両者には大きな違いがあります。それは、「本人が押したことを、どれだけ簡単に証明できるか」という点です。

認印の場合、「自分は押していない」「自分の印鑑ではない」と主張されると、それを覆すのは容易ではありません。一方で実印は、印鑑証明書と組み合わせることで、本人が押したという確かな証拠になりやすいのです。

印鑑証明書や定款で実印が求められるケース

会社の判断によっては、実印と印鑑証明書の提出を求められることがあります。会社が実印を求めるのは、承認請求が本人によるものかどうかを、確かめたいからです。また、会社の定款で、実印が必要と定められているケースもあります。この場合は、定款の定めに従って、実印を押す必要があります

実印を求められても、それを拒むこと自体は可能です。けれども、トラブルが生じたときに、実印でなかったことが原因で事態がこじれることもあるため、特別な理由がなければ実印を押しておくと安心です。事前に定款を確認し、どちらが必要かを確かめておきましょう。

単独で株式譲渡承認請求ができる条件

株式譲渡承認請求は、原則として、ひとりでは行えない場面があります。とくに、株を譲り受けた側が請求する場合には、注意が必要です。ここでは、単独で請求できる条件について整理します。

原則は譲渡人と譲受人の共同請求

株を譲り受けた人(譲受人)が承認請求をする場合、原則として、株を譲った株主と連名で行うことが求められます(会社法第137条第2項)。これは、株式の譲渡が個人間のやり取りであっても、ほかの株主に影響を与えるおそれがあるためです。連名を求めることで、実際に譲渡があったことを、会社側が確認しやすくなります。つまり、このルールには、取引の信ぴょう性を高める意味合いがあるのです。

単独請求が認められるケース

とはいえ、例外的に、単独で請求できる場合もあります。代表的なのは、株主に対して承認請求をするよう命じる判決が出ているケースです。この場合は、その旨を証明する書類を提出すれば、譲受人がひとりで請求できるとされています。

また、承認請求が不承認とされ、会社から指名する買取相手になった場合にも、その旨を記載する必要があります。これらの例外は、いずれも特別な事情がある場面に限られます。自分のケースが当てはまるかどうか迷ったときは、安易に判断せず、事前に確認しておくことが大切です。

株式譲渡承認請求書の提出後の手続き

請求書を提出した後は、承認されたかどうかで、その後の流れが大きく変わります。ここでは、承認された場合と、されなかった場合のそれぞれについて、手続きを整理します。期限の管理がカギを握る場面なので、ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。

承認された場合の手続き(株主名簿の書き換え)

譲渡が承認された場合は、株主名簿の書き換え(名義書換)へと進みます。実は、承認請求が通っただけでは、手続きは完了しません。譲受人が会社に対して「自分が株主だ」と権利を主張するには、株主名簿に自分の名前が載っている必要があるからです(会社法第130条第1項)。

この書き換えは、譲渡人と譲受人が共同で請求します(会社法第133条)。なお、譲渡制限株式は、承認を得ていないと、そもそも名義書換ができません(会社法第134条)。名義書換が終わると、譲受人は会社に対して、株主としての権利を主張できるようになります。手続きを後回しにせず、早めに進めておくことが大切です。

不承認となった場合の手続き

譲渡が承認されなかった場合、そのままでは株を譲ることができません。けれども、株主が一切株を手放せない、というわけではありません。この場合、請求書で買取を求めていれば、会社または指定買取人が、その株を買い取ることになります(会社法第140条)。どちらが買い取るかによって、期限や手続きが変わってくるため、注意が必要です。

会社が買い取る場合(40日以内の通知・供託)

会社が自ら株を買い取る場合は、株主総会の特別決議で、買い取る旨と株数を決議します(会社法第140条第1項・第2項、第309条第2項1号)。そして会社は、不承認の通知をした日から40日以内に、買取りの通知を行う必要があります(会社法第141条第1項、第145条2号)。この期限を過ぎてしまうと、譲渡を承認したものとみなされてしまいます。

さらに会社は、この通知に先立って、1株当たりの純資産額に株数をかけた額を、供託所に供託しなければなりません(会社法第141条第2項)。この供託を証する書面を、株主へ交付する必要もあります。なお、会社が株を買い取る場合は、自己株式の取得と同じく、分配可能額の制限を受けるという点も、押さえておきたいポイントです(会社法第461条第1項1号)。

指定買取人が買い取る場合(10日以内の通知)

会社が指定買取人を選ぶ場合は、取締役会の決議(取締役会非設置会社では株主総会の特別決議)により、買取人を指定します(会社法第140条第5項)。指定買取人は、不承認の通知をした日から10日以内に、株主へ通知を行う必要があります(会社法第142条第1項、第145条2号)。

会社が買い取る場合は40日以内だったのに対し、指定買取人の場合は10日以内と、期限が短くなっている点に注意が必要です。通知の際には、指定買取人も供託を行い、供託を証する書面を交付します。

両者の違いを、表で整理しておきます。

買い取る人通知の期限決議の機関
会社不承認通知から40日以内株主総会の特別決議
指定買取人不承認通知から10日以内取締役会の決議など

このように、誰が買い取るかで、守るべき期限が異なることを、頭に入れておきましょう。

売買価格の決定方法

会社または指定買取人が株を買い取る場合、次に問題になるのが「いくらで買い取るのか」という価格の決定です。価格の決め方には、大きく2つの流れがあります。ひとつは、当事者同士の協議。もうひとつは、裁判所への申立てです。

当事者間の協議

まずは、会社または指定買取人と、株主との間の協議によって、価格を決めます(会社法第144条第1項)。当事者が話し合って合意できれば、その内容に従って価格が決まります。ただし、非上場株式には市場価格がなく、価格の考え方に開きが出やすいという難しさがあります。そのため、協議がすんなりまとまらないことも、珍しくありません。

裁判所への売買価格決定の申立て

協議が整わない場合、当事者は、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所へ売買価格決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項)。この申立ては、株主側からも、会社・指定買取人側からも行えます。申立てがあった場合、裁判所が定めた額が、株の売買価格になります(会社法第144条第4項)。

裁判所は、承認請求の時点における会社の資産状態など、いっさいの事情を考慮して価格を決めるとされています。なお、20日以内に申立てがなく、協議も整わなかった場合は、1株当たりの純資産額に株数をかけた額が、売買価格となります(会社法第144条第5項)。この申立ての期間は20日と短いため、期限を見逃さないよう、早めの準備が大切です。

株式譲渡承認請求書を作成する際の注意点

最後に、書類の作成や手続きを進めるうえで、とくに気をつけたいポイントをまとめます。どれも、後になって後悔しないために、事前に押さえておきたい点ばかりです。

手続き上の期限管理の重要性

これまで見てきたとおり、株式譲渡承認請求の手続きには、いくつもの期限が設けられています。この期限をひとつでも見逃すと、思わぬ結果につながることがあります。主な期限を、表で整理しておきます。

場面期限根拠条文
会社による承認・不承認の通知請求から2週間以内会社法第145条1号
会社が買い取る場合の通知不承認通知から40日以内会社法第141条・第145条2号
指定買取人の通知不承認通知から10日以内会社法第142条・第145条2号
裁判所への価格決定申立て買取り通知から20日以内会社法第144条第2項

このように、それぞれの場面で、守るべき期限が異なります。とくに会社側は、2週間の期限をうっかり過ぎると、みなし承認によって思わぬ株主の入れ替わりを招くおそれがあります。管理の仕組みを整えておくことが、いちばんの予防策になります。

株式譲渡にともなう税金への配慮

株式の譲渡には、税金が関わってくる場合があります。「個人間のやり取りなら、税金はかからないのでは」と思う方もいるかもしれません。けれども、一般的に、株を譲って利益が出た場合には、譲渡所得として課税されるケースがあるとされています。とくに、実際の株価と大きく異なる価格で譲渡が行われた場合、税務面で問題が生じる可能性もあります。

税金の扱いは、個別の事情によって変わることが多いため、この記事では一般的な説明にとどめます。正確な税額や申告の方法については、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

非上場株式ならではの正当性への配慮

非上場株式は、発行している会社が中小企業であるケースがほとんどです。そのため、役所などを通さず、公的な目線がない状態で取引が進むという、特徴があります。言い換えれば、譲渡の正当性を、法的に証明しづらい面があるのです。

中小企業の中には、株や株主の管理が、十分に行き届いていない会社も少なくありません。だからこそ、譲渡を行う側も、承認する側も、正しい知識を身につけ、正当性に配慮することが大切です。少しでも不安を感じる場合は、無理にひとりで進めず、専門家の力を借りることを考えてみましょう。

専門家のチェックを受ける

株式譲渡承認請求書自体は、決して複雑な書類ではありません。しかし、本当に大切なのは、書類を作る前の準備の段階です。会社側との事前の協議が済んでいれば、そこまで手間はかかりません。一方で、事前協議が整っていないまま手続きを進めると、トラブルが生じるリスクが高まります。

とくに、不承認や買取り、価格の決定が絡む場面では、法律や税務の知識が求められることもあります。このような場面では、弁護士や税理士などの専門家に、事前にチェックを受けておくことが安心につながります。

M&Aにおける株式譲渡の類型

株式譲渡は、M&Aの場面でも広く使われる手法です。その中には、いくつかの類型が存在します。それぞれの特徴を理解しておくと、自分の状況に合った方法を、選びやすくなります。ここでは、代表的な3つの類型を整理します。

株式交換

株式交換とは、ある会社の株式を、ほかの会社に取得させる代わりに、その会社の新株を割り当てる方法です。この方法では、取得される側の会社は完全子会社になりますが、事業そのものは存続します。完全子会社化を目指す場面で、よく用いられる手法です。

株式移転

株式移転とは、新たに設立する会社に、既存の会社の株主が株を移す代わりに、新会社の株式を受け取る方法です。持株会社を作る場面などで、よく使われます。複数の会社を、ひとつの持株会社の下にまとめたい場合に、有効な手法といえます。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に対して、新株を発行し、資金を調達する方法です。M&Aにおいては、買収する側の企業が、対象企業の株を手に入れる手段として、利用されることがあります。株式譲渡とは異なり、新しく株を発行するという点が大きな違いです。

株式譲渡承認請求書の作成・手続きに迷ったときの相談先

ここまで読んでいただき、「自分のケースではどうすればいいのか」と、迷いを感じた方もいるかもしれません。株式譲渡承認請求書は、書類自体はシンプルでも、その背景にある手続きや、税務・法務の判断が、複雑になりやすいからです。

たとえば、次のような場面では、専門家の支援が頼りになります。

  • 定款の内容や、承認機関がはっきりしないとき
  • 不承認や買取りが、現実に起こり得るとき
  • 株価の算定や、税金の扱いに不安があるとき
  • M&Aの一環として、株式譲渡を進めたいとき

これらの場面では、弁護士・税理士・M&Aの専門家など、内容に応じた相談先を選ぶことが大切です。非上場株式や、少数株主に関する扱いは、とくに専門性が高い分野です。無理にひとりで抱え込まず、早めに相談することが、結果としてスムーズな譲渡につながります

とくに、非上場株式や少数株主特有の事情が絡む場面では、一般的な会社法務の知識だけでは対応しきれないケースも少なくありません。「そもそも自社の株にどれくらいの価値があるのか分からない」「会社側との交渉をどう進めればよいのか不安」といった悩みを抱えている方には、非上場株式・少数株主の株式に特化した相談先を選ぶことをおすすめします。

少数株Laboは、非上場株式や少数株主の株式に関するご相談に特化したサービスです。株式譲渡承認請求書の作成や、承認・不承認後の手続き、株価の考え方など、非上場株式ならではの悩みについて、専門的な知見をもとにサポートを受けられます。「自分の持っている株をどう扱えばよいか分からない」「会社に請求しても対応してもらえるか不安」という方は、一度相談してみるのもひとつの方法です。

よくある質問

Q. 株式譲渡承認請求書は、必ず書面で作る必要がありますか。 A. 法律上、必ずしも書面が必須とはされていません。ただし、いつ請求したかを証明したり、不承認時の要望を記載したりするうえで、書面で残すほうが望ましいとされています。

Q. 実印は必ず押す必要がありますか。 A. 必ずしも必要ではなく、認印で対応できる場合もあります。ただし、会社の判断や定款の定めによっては、実印と印鑑証明書が求められることがあります。

Q. 会社が承認してくれない場合、株は手放せないのですか。 A. そうではありません。請求書で買取を求めていれば、会社または指定買取人が、株を買い取ることになるとされています。

Q. 買取りの価格は、どうやって決まりますか。 A. まずは当事者同士の協議で決めます。整わない場合は、買取り通知から20日以内に、裁判所へ価格決定の申立てをすることができます。

Q. 手続きに迷ったら、どこに相談すればよいですか。 A. 内容によって、弁護士・税理士・M&Aの専門家など、適切な相談先が異なります。不安を感じたら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ

この記事では、株式譲渡承認請求書について、基本から手続きの流れまでを、一通り説明してきました。最後に、大切なポイントを振り返っておきましょう。

  • 株式譲渡承認請求書は、譲渡制限株式を譲る際に、会社の承認を求める書類である
  • この書類が必要になるのは、主に非上場株式を譲る場面である
  • 手続きは「請求→決議→通知」と進み、2週間・40日・10日・20日といった期限の管理がカギになる
  • 不承認の場合でも、会社や指定買取人による買取りの道が残されている

株式の譲渡は、一見複雑に見えますが、全体の流れとポイントを押さえれば、落ち着いて進めることができます。とはいえ、税務や法務の判断が絡む場面では、無理をせず、信頼できる専門家の力を借りることが、安心への近道です。この記事が、あなたの株式譲渡を、スムーズに進める一助になれば幸いです。

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