非上場株式を売りたい方必見|売却方法・手続き・税金の基礎知識を解説

「非上場株式を売りたいけれど、どこから手をつければいいかわからない」と感じている方は、少なくありません。 上場株式であれば証券会社を通じてすぐに売却できますが、非上場株式はそう簡単にはいきません。 取引市場がなく、買い手も自分で探す必要があり、さらに会社の承認が必要なケースがほとんどです。 相続で引き継いだものの名義変更の手続きが止まっている方や、少数株主として売却先が見つからずに困っている方など、状況はさまざまです。

この記事では、非上場株式の売却方法・手続きの流れ・税金の基礎知識を、一般的な情報としてわかりやすく解説します。 個別の判断や具体的な手続きについては、必ず弁護士・税理士・M&Aアドバイザーなどの専門家にご相談ください。 まずは全体像を把握することが、スムーズな売却への第一歩です。

目次

非上場株式の売却を検討する前に知っておきたい基礎知識

非上場株式の売却を進めるにあたって、まず基本的な知識を整理することが大切です。 「そもそも非上場株式とは何か」「なぜ売りにくいのか」「売却前に何を確認すべきか」という3点を理解しておくだけで、その後の手続きがぐっとスムーズになります。 焦らず、一つひとつ確認していきましょう。

非上場株式とは何か|上場株式との違い

非上場株式とは、証券取引所に上場していない企業が発行した株式のことです。 「非上場株」や「未公開株」とも呼ばれ、日本に存在する企業の大多数は非上場企業です。 中小企業や同族経営の会社、創業間もないスタートアップ企業などが発行する株式が、これに該当します。

上場株式と非上場株式の主な違いは、以下のとおりです。

項目上場株式非上場株式
取引市場証券取引所(東証など)で売買可能取引市場が存在しない
価格の透明性市場価格がリアルタイムで公開される市場価格が存在しない
売買のしやすさ証券会社を通じて即時売却が可能買い手を自分で探す必要がある
譲渡制限原則として自由に譲渡できる定款で譲渡制限が設けられていることが多い
情報開示有価証券報告書などの開示義務あり開示義務が少なく情報が限られる

上場株式は証券取引所という公開市場があるため、売りたいときにすぐ売れます。 一方、非上場株式には市場がなく、価格の目安もなく、買い手も自分で探さなければなりません。 この根本的な違いが、非上場株式の売却を難しくしている最大の理由です。

また、非上場株式は多くの場合、会社の定款で株式の譲渡に制限が設けられています。 これを「譲渡制限株式」といい、第三者に譲渡するには会社の承認を得ることが一般的に必要とされます。 このような仕組みを理解した上で、売却の準備を進めることが重要です。

非上場株式が売りにくい理由

非上場株式が売りにくい背景には、複数の構造的な要因があります。 単に「市場がない」というだけでなく、制度的・実務的なハードルが重なり合っています。 以下では、特に重要な2つの理由を詳しく見ていきます。

取引市場が存在しないことによる流動性の低さ

非上場株式には、上場株式のような公開市場が存在しません。 上場株式であれば、証券会社に注文を出せば自動的に買い手とマッチングされ、市場価格で取引が成立します。 しかし非上場株式の場合、売り手が自ら買い手候補を探し、個別に交渉して価格を合意する必要があります。

この「流動性の低さ」は、非上場株式を保有するうえで最大のリスクの一つとされています。 売りたいと思ったときに売れない状態が続くことで、保有者が投資した資本を回収できない期間が長期化する可能性があります。 また、市場価格が存在しないため、「自分の株式がいくらで売れるのか」という目安すらわからない点も、売却の難しさに拍車をかけています。

買い手候補としては、発行会社・既存株主・同業他社・投資ファンドなどが一般的ですが、いずれも個別に交渉が必要です。 特に少数株主の場合、買い手が見つかりにくい現実があり、売却までに相当な時間と労力がかかることも珍しくありません。

譲渡制限株式に必要な会社承認の仕組み

非上場会社の多くは、定款に「株式の譲渡には会社の承認が必要」という規定を設けています。 これが「譲渡制限株式」と呼ばれる仕組みで、会社法第2条17号に定められています。 この仕組みの目的は、会社にとって望ましくない第三者が株主になることを防ぐことにあります。

譲渡制限株式を第三者に売却しようとする場合、売り手は会社に対して譲渡承認請求を行う必要があります。 承認を決議する機関は、取締役会が設置されている会社では取締役会、そうでない会社では株主総会等とされています(定款の定めによります)。 なお、譲渡承認請求から2週間以内に会社から通知がない場合は、承認したとみなされる場合があります(会社法第145条第1号)。

会社が承認しない場合は、会社自身または指定買取人が買い取るか、別の買い手を指定することが一般的な流れです。 ただし、会社には株主からの買取要求に応じる義務はなく、また買取価格をめぐって対立が生じるケースも多くあります。 このような複雑な手続きが必要な点も、非上場株式の売却を難しくしている要因の一つです。

売却前に確認しておきたい3つのポイント

非上場株式の売却を検討する際、最初に確認すべき重要なポイントが3つあります。 この3点を把握するだけで、必要な書類や手続きの順番が見え、会社とのやり取りもスムーズに進めやすくなります。 まずは焦らず、手元にある書類や情報を整理するところから始めましょう。

定款における譲渡制限の有無

最初に確認すべきは、保有している株式に譲渡制限が設けられているかどうかです。 定款を確認し、「株式を譲渡するには取締役会(または株主総会)の承認を要する」といった記載があれば、譲渡制限株式に該当します。 定款は会社の根本規則であり、法務局での閲覧や会社への開示請求などで確認できる場合があります。

譲渡制限がある場合、第三者への売却には会社の承認手続きが必須となります。 一方、譲渡制限のない株式(公開会社が発行する株式など)であれば、比較的自由に譲渡できる場合があります。 どちらのケースに該当するかによって、以降の手続きの流れが大きく変わります。

株主名簿の名義確認

次に確認すべきは、株主名簿に自分の名義が正しく記載されているかどうかです。 相続などによって株式を引き継いだ場合、名義変更が完了していないケースが少なくありません。 株主名簿上の名義が被相続人のままになっている場合、売却手続きを進める前に名義書換が必要になります。

名義書換は会社の株主名簿管理人(または会社自身)に対して請求することが一般的です。 名義が正しく記載されていないと、株主としての権利行使や売却手続きが進められない可能性があります。 手元に株券がある場合は、株券の有無も合わせて確認しておくと、名義書換や確定申告の際に慌てずに済みます。

売却先の方向性(会社・既存株主・第三者)

3つ目のポイントは、誰に売却するかという方向性を大まかに決めておくことです。 非上場株式の売却先としては、大きく以下の3つが考えられます。

  • 発行会社(自己株式取得):会社自身が買い取るケース。承認手続きや財源規制など、会社法上のルールに基づく手続きが必要です。
  • 既存株主:他の株主に譲渡するケース。すでに株主である相手への譲渡は、承認が得られやすい場合があります。
  • 第三者:社外の企業や投資家など。会社の承認が必要で、承認されない場合は会社または指定買取人による買取となる場合があります。

どの売却先を選ぶかによって、手続きの流れや交渉の進め方が異なります。 方向性を早い段階で定めることで、専門家との相談もより具体的に進められます。

非上場株式の主な売却(譲渡)方法

非上場株式を売却する方法は、一つではありません。 売却先や状況によって、適切な手法が異なります。 ここでは、一般的に用いられる4つの売却方法について、それぞれの特徴と留意点を解説します。 なお、どの方法が自分の状況に適しているかについては、個別の事情が大きく影響するため、専門家へのご相談を推奨します。

発行会社(自己株式取得)への売却

発行会社自身が株式を買い取る方法を「自己株式取得」といいます。 株主にとっては、交渉相手が一社に絞られるため、シンプルな手続きになりやすい面があります。 ただし、会社には株主からの買取要求に応じる義務はなく、買取を断られたり、著しく低い価格を提示されたりするケースも少なくないのが現実です。

自己株式取得には、会社法上のいくつかのルールがあります。 まず、取得できる株式数や金額には、分配可能額の範囲内という財源規制があります。 また、特定の株主から取得する場合は、株主総会の特別決議が必要とされる場合があります。

さらに、価格の合意が得られない場合は、協議が長引いたり、最終的に裁判所に価格決定の申立てを行うケースもあります。 会社との関係性や会社の財務状況によって交渉の結果が大きく左右されるため、事前に弁護士などの専門家に相談し、交渉の進め方を確認することが重要です。

既存株主への相対取引による譲渡

すでに株主である他の株主に対して、個別に交渉して株式を譲渡する方法です。 相対取引とは、当事者間で直接価格や条件を決定する取引形態を指します。 既存株主への譲渡は、会社から承認が得られやすい場合もあり、比較的スムーズに進むケースもあります。

価格の決め方は、基本的に売り手と買い手の合意によります。 ただし、合理的な根拠なく著しく低い価格や高い価格で取引すると、税務上の問題が生じる可能性があります。 みなし贈与税やみなし譲渡所得などの課税リスクがあるため、適切な評価額を把握した上で価格を設定することが重要です。

また、譲渡制限がある場合は、既存株主への譲渡であっても会社への承認請求が必要なケースがあります。 定款の内容を必ず確認したうえで手続きを進めましょう。

第三者への売却|M&A・事業承継の活用

社外の企業や投資家などの第三者に売却する方法は、特に経営権の移転を伴う場合にM&Aのスキームとして活用されることが多いです。 近年、後継者不足を背景とした事業承継ニーズの高まりにより、非上場株式を第三者に売却するM&Aの件数が増加しています。

第三者への売却では、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)を活用して買い手を探すのが一般的な流れです。 買い手候補が見つかった後は、基本合意・デューデリジェンス(事前調査)・最終契約という流れで手続きが進みます。 デューデリジェンスで発覚した問題は、最終的な売却価格や契約条件に影響を与えることがあります。

なお、譲渡制限がある場合は会社への承認請求が必要で、承認されない場合は会社または指定買取人による買取となる場合があります。 第三者への売却は手続きが複雑になりやすいため、弁護士・税理士・M&Aアドバイザーとの連携が特に重要です。

株式買取請求権の活用(一定要件を満たす場合)

株式買取請求権とは、会社が一定の重要な行為を行う際に、反対する株主が会社に対して株式の買取りを求めることができる権利です。 少数株主保護の観点から会社法で定められており、非上場株式の現金化手段の一つとして知っておく価値があります。 ただし、この権利はいつでも無条件に行使できるものではなく、一定の要件と手続きが定められています。

株式買取請求権が認められる主な場面

株式買取請求権を行使できる主な場面は、以下のとおりです。

場面内容
組織再編への反対合併・会社分割・株式交換・株式移転などに反対する株主
定款変更への反対発行する全株式に譲渡制限を付ける定款変更に反対する株主
事業譲渡への反対株主総会の承認が必要な事業譲渡に反対する株主
単元未満株式の保有単元に満たない株式を保有する株主(平時でも請求可能な場合あり)

重要なのは、「反対株主」としての要件を満たすことです。 株主総会に先立って会社に反対の意思を通知し、かつ株主総会において反対票を投じることが必要とされています。 この手続きを欠いてしまうと、買取請求権を行使できなくなる可能性があります。

行使手続きの一般的な流れと注意点

株式買取請求権の行使手続きは、おおむね以下の流れで進みます。

  1. 事前通知:株主総会前に、会社に対して反対する旨を通知する
  2. 株主総会での反対投票:株主総会に出席し、当該議案に反対票を投じる
  3. 買取請求の通知:効力発生日の20日前から前日までの間に、買取請求する株式数を明示して会社に通知する
  4. 価格の協議:会社との間で買取価格を協議する(価格に合意した場合、効力発生日から60日以内に支払いが必要とされます)(会社法第117条第1項)
  5. 裁判所への申立て:効力発生日から30日以内に協議が調わない場合、その期間満了後30日以内に価格決定の申立てが可能(会社法第117条第2項)

注意点として、いったん行使した買取請求権は、会社の承諾がない限り撤回できないとされています。 また、買取価格をめぐって争いになるケースが多く、非上場株式の場合は市場価格がないため評価方法の選択が重要な争点となります。 手続きに不備があると権利行使が認められない可能性もあるため、弁護士への相談を推奨します。

少数株主が非上場株式を売却する際の特有の課題

非上場株式の売却において、特に難しい立場に置かれやすいのが少数株主です。 支配的な株主や経営者が主導権を持つ非上場企業において、少数株主は多くの制約を受けながら株式を保有しています。 ここでは、少数株主が直面しやすい課題と、現実的な対応の考え方を整理します。

少数株主が直面しやすい困難とは

少数株主が非上場株式の売却で直面しやすい困難は、大きく以下の3点に整理できます。

①配当などの利益還元が受けにくい 非上場企業の多くでは、支配株主や経営者が主導権を持っており、少数株主の意向が経営に反映されにくい構造があります。 配当の決定には株主総会での過半数の賛成が必要とされるため、少数株主が配当を増やすよう求めても実現しないケースが多いのが実情です。

②株式を売りたくても買い手が見つからない 非上場株式には市場がないため、少数株主が持つ株式は特に買い手が見つかりにくい傾向があります。 会社経営への影響力が限られる少数株主の株式は、投資としての魅力が薄く、流動性がほとんどない状態になりやすいのが現実です。

③相続税などの負担だけが生じる場合がある 相続によって非上場株式を引き継いだ場合、配当も得られず、売却もできないにもかかわらず相続税の負担が発生するケースがあります。 「売れない株式に税金だけかかる」という状況は、少数株主が売却を急ぎたくなる背景の一つです。

買い手探しの現実と主な候補先

少数株主が非上場株式を売却しようとする場合、まず発行会社側(会社・経営者・主要株主)に買取を打診するのが一般的な流れです。 しかし現実には、発行会社側が買取を拒否したり、著しく低い価格しか提示しないケースが多いとされています。 そのため、発行会社側との交渉に限界を感じた場合は、第三者の買い手を探すことが重要な選択肢となります。

同業他社・事業会社への打診

発行会社の同業他社や、その株式を取得することで事業上のメリットを得られる事業会社は、買い手候補として現実的な選択肢の一つです。 業界内のネットワークや、M&A仲介会社を通じた打診が有効な場合があります。 ただし、競合他社への打診は発行会社との関係に影響を与える可能性もあるため、進め方については専門家に相談したうえで慎重に検討することが重要です。

プライベート・エクイティファンドの活用

非上場株式を専門的に投資対象とするプライベート・エクイティ(PE)ファンドも、買い手候補として挙げられます。 PEファンドは、非上場企業の株式を取得して企業価値を高め、将来的な売却益を目的とした投資を行います。 少数株主の株式であっても、会社全体の状況によっては投資対象となる場合があります。

ただし、PEファンドとの取引は価格交渉や契約内容が複雑になりやすく、専門的な知識を持つアドバイザーのサポートが不可欠です。 また、すべてのケースでPEファンドへの売却が実現するわけではないため、過度な期待は禁物です。

交渉による任意売却という選択肢

法律上の手続き(株式買取請求権など)によらず、当事者間の交渉によって任意に売却する方法も実務では多く行われています。 任意売却は、法定の手続きが不要で、当事者が合意すれば比較的迅速に売却を完了できる点がメリットです。 また、売却価格や売却先を自由に決定できる柔軟性もあります。

一方で、会社や支配株主との力関係の差から、適正価格より低い条件で合意を迫られるリスクも存在します。 交渉を有利に進めるためには、株式の適正な評価額を把握したうえで、必要であれば専門家にサポートを依頼することが推奨されます。

売却が難航するケースと対応の考え方

少数株主による非上場株式の売却が特に難航しやすいのは、以下のようなケースです。

  • オーナー家が全ての権限を握っており、少数株主の権利行使に非協力的な場合
  • 同族間での取引で、価格が恣意的に設定されるリスクが高い場合
  • 経営者が株主の意向を無視した経営を続けており、関係が悪化している場合
  • 相続によって株式が分散し、権利関係が複雑になっている場合

このような状況では、個人での対応には限界があります。 早い段階で専門家に相談し、法律上の選択肢(株式買取請求権・裁判所への申立てなど)を含めた総合的な対応策を検討することが重要です。 また、発行会社との関係が悪化する前に動き出すことで、解決の選択肢が広がる場合もあります。

弁護士・M&Aアドバイザーへの相談が重要な理由

少数株主が非上場株式を売却しようとする場合、弁護士・M&Aアドバイザーへの早期相談が非常に重要です。 その理由は、主に以下の3点にあります。

①法的な手続きの適否判断 株式買取請求権の行使や、譲渡承認請求の手続きには、会社法上の厳格な要件と期限があります。 手続きに不備があると、権利行使が認められなくなる可能性があり、専門家の関与が欠かせません。

②適正な株式評価額の把握 市場価格のない非上場株式の評価は複雑で、評価方法の選択によって算定結果が大きく変わります。 弁護士や公認会計士・税理士と連携し、適正な評価額を把握することが重要です。

③第三者の買い手紹介 非上場株式の売却に精通した専門家は、第三者の買い手を紹介してくれる場合もあります。 M&Aアドバイザーのネットワークを活用することで、個人では見つけられなかった買い手候補と出会える可能性が広がります。

非上場株式の評価方法|売却価格の考え方を理解する

非上場株式の売却価格を決めるうえで、株式の評価方法を理解しておくことは非常に重要です。 上場株式と異なり、非上場株式には公開された市場価格がないため、一定の評価方法を用いて株式の価値を算定する必要があります。 評価方法によって算定結果が大きく異なることもあるため、基本的な考え方を押さえておきましょう。

税務上の主な3つの評価方式

非上場株式の税務上の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて行われます。 主な評価方式は以下の3つで、株主の属性(同族株主かどうか)や会社の規模によって、どの方式を適用するかが決まります。

類似業種比準方式(主に大会社・中会社に適用)

類似業種比準方式とは、評価対象の会社と事業内容が類似している上場会社の株価を参考に、非上場株式の評価額を算定する方式です。 具体的には、類似業種の株価を基準として、評価会社の「1株当たりの配当金額」「1株当たりの利益金額」「1株当たりの純資産価額(帳簿価額)」の3要素を比較して算定します。

この方式は主に大会社・中会社に適用され、純資産価額方式と比べて評価額が低く算出される傾向があります。 会社の業績や財務内容が評価に反映される一方、上場していない分の流動性の低さを反映した調整(斟酌率)も加えられます。 斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5とされています。

純資産価額方式(主に小会社に適用)

純資産価額方式とは、会社を清算した場合に株主に返ってくる金額をもとに株式の評価額を算定する方式です。 会社が保有するすべての資産を相続税評価額で評価し直し、負債を差し引いた純資産額を発行済み株式数で割って1株当たりの評価額を求めます。

この方式は主に小会社に適用され、会社の保有資産が評価に直接反映されます。 資産が多い会社ほど評価額が高くなりやすく、含み益の大きな不動産や株式を多く保有する会社では評価額が高くなる傾向があります。 類似業種比準方式より評価額が高くなるケースも多いため、どの方式を適用するかは税務上の重要な判断となります。

配当還元方式(同族株主以外の少数株主に適用される特例的評価方式)

配当還元方式とは、株式を保有することで受け取れる配当金額をもとに株式の評価額を算定する特例的な評価方式です。 過去2年間の平均配当金額を、10%の利率で還元して株式の評価額を算出します。

この方式は、会社の経営に影響力を持たない少数株主(同族株主以外の株主)が株式を取得した場合に適用されます。 一般的に、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)と比べて評価額が低くなる傾向があります。 なお、1株当たりの配当金額が2円50銭未満の場合は2円50銭として計算する取り決めがあります。

評価方式主な適用対象特徴
類似業種比準方式大会社・中会社の同族株主類似上場会社の株価を参考に算定
純資産価額方式小会社の同族株主会社の純資産額をもとに算定
配当還元方式同族株主以外の少数株主配当金額をもとに算定(評価額が低くなりやすい)

M&A実務で使われるその他の評価手法(DCF法など)

税務上の評価方式とは別に、M&Aの実務では異なる評価手法が用いられることがあります。 代表的なものがDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)です。

DCF法とは、会社の将来の収益力(キャッシュフロー)を予測し、一定の割引率で現在価値に換算して企業価値を算出する方法です。 会社の将来性や収益力を反映した評価ができる点が特徴で、株式買取請求権の価格決定に関する裁判例でも採用されることがあります。

その他にも、以下のような評価手法が実務では用いられることがあります。

  • 類似会社比準法:上場している類似会社の株価指標をもとに評価する方法
  • 収益還元法:会社の将来の収益を一定の還元率で割り引いて評価する方法
  • 純資産法(時価):会社の資産・負債を時価で評価して純資産額を求める方法

実務では、複数の評価手法を組み合わせて総合的に評価するケースも多く見られます。 どの評価手法が適切かは会社の状況や取引の目的によって異なるため、弁護士・公認会計士・税理士などの専門家への相談が推奨されます。

税務上の評価額と実際の取引価格の関係

税務上の評価額と、実際の売買取引で使われる取引価格は、必ずしも一致しません。 税務上の評価額(財産評価基本通達に基づく評価額)は、相続税や贈与税の計算に用いられるものであり、M&Aや任意売却における取引価格の算定とは目的が異なります。

ただし、非上場株式の取引において著しく低い価格や高い価格で売買した場合、税務上の問題が生じる可能性があります。 例えば、個人間で時価の2分の1未満の価格で譲渡した場合には、みなし譲渡所得として課税される場合があります。 また、著しく低い価格での取得者にみなし贈与税が課されるケースもあります。

取引価格の設定にあたっては、税務上のリスクを考慮したうえで、合理的な根拠のある価格を設定することが重要です。 具体的な判断は個別の事情によって大きく異なるため、税理士や弁護士へのご相談をお勧めします。

評価額の算定には専門家への確認が不可欠な理由

非上場株式の評価は、株主の属性・会社の規模・業種・保有資産の内容など、多くの要素を考慮する必要がある複雑な作業です。 評価方式の選択を誤ると、税務署から評価額を否認されるリスクがあり、追徴課税につながる可能性もあります。

また、評価方式によって算定結果が数倍以上異なるケースもあり、適切な方式の選択が税負担に直結します。 評価に精通した税理士や弁護士・公認会計士に相談し、自分のケースに適した評価方式と適正な評価額を把握することが、売却を有利に進めるための重要なステップです。

非上場株式を売却した際にかかる税金の基礎知識

非上場株式を売却した際には、利益(譲渡益)に対して税金が課される場合があります。 売り手が個人か法人かによって課税の仕組みが異なり、株式の取得経緯によっても注意すべき点が変わります。 ここでは一般的な税務の仕組みを解説しますが、正確な税額の計算や申告については必ず税理士にご相談ください。

個人が譲渡した場合の課税の仕組み(申告分離課税)

個人が非上場株式を売却して利益を得た場合、その利益(譲渡所得)に対して申告分離課税が適用されるのが一般的です。 申告分離課税とは、給与所得や事業所得などの他の所得と区別して、別途税額を計算する方式です。

一般的に、個人の株式譲渡所得に対する税率は合計20.315%とされています(所得税15.315%+住民税5%)。 譲渡所得の計算は、「売却価格 ー 取得費 ー 譲渡費用」で求めるのが基本です。

なお、非上場株式の譲渡損失は、上場株式の譲渡益や配当所得との損益通算はできない点に注意が必要です(2016年以降の制度変更による)。 また、非上場株式同士の損益通算については個別の事情によって異なるため、税理士への確認が推奨されます。

法人が譲渡した場合の税務上の取り扱い

法人が非上場株式を譲渡した場合、譲渡益は法人の所得として法人税等(法人税・法人住民税・事業税)の課税対象となる場合があります。 法人税の基本税率は23.2%ですが、企業規模や所得の水準によって軽減税率が適用される場合もあります。

個人と異なる点として、法人の場合は売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」の適用はできません。 取得費が不明な場合でも、実際の取得費を証明できる書類を探すことが重要です。 また、法人の場合は、譲渡益が他の事業所得と合算されて課税されるため、全体の法人税額に影響を与える点も理解しておく必要があります。

取得費が不明な場合の一般的な考え方

非上場株式は相続や長年の保有によって、取得費(株式を取得した際にかかった費用)が不明なケースが少なくありません。 個人が株式を売却する場合、取得費が不明なときや取得費が実際に低い場合には、売却価格の5%を取得費として概算計算できる仕組みがある場合があります(概算取得費)。

ただし、売却価格の95%が課税対象となるため、実際の取得費が5%より高ければ、取得費の証明書類を探して正確な金額を把握したほうが税負担を抑えられる可能性があります。 取得時の株式払込証明書・贈与契約書・相続税申告書などが取得費の証明資料として活用できる場合があります。 取得費の扱いは税負担に直接影響するため、税理士への相談が推奨されます。

相続・贈与で取得した非上場株式を売却する際の注意点

相続や贈与によって非上場株式を取得した場合、売却時に特有の注意点があります。

まず、取得費の計算に関する注意点があります。 相続で取得した株式の取得費は、被相続人(亡くなった方)が実際に取得した際の費用を引き継ぐことが一般的です。 相続税申告で使用した評価額とは異なる場合があるため、注意が必要です。

次に、低額・無償での譲渡に関する注意点があります。 非上場株式を無償または時価の2分の1未満の価格で譲渡した場合、売り手・買い手それぞれに税務上の影響が生じる可能性があります。 売り手にみなし譲渡所得課税、買い手にみなし贈与税が課されるケースがあるため、価格設定には十分な注意が必要です。

また、事業承継を目的として株式を贈与する場合には、「法人版事業承継税制」の適用により、贈与税や相続税の納税が猶予・免除される制度がある場合があります。 適用にあたっては各都道府県の窓口での認定手続きが必要であり、詳細は税理士や専門の支援機関へのご相談をお勧めします。

正確な税額の計算は税理士へ

非上場株式の売却に関わる税務は、株主の属性・取得経緯・売却価格・取得費など、多くの要素が絡み合う複雑な領域です。 本記事で紹介した内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税額や申告方法については、必ず税理士にご相談ください。 誤った申告は、追徴課税や加算税のリスクにつながる可能性があります。 売却を検討している段階から税理士に相談することで、税負担を適切に見込んだうえで売却計画を立てることができます。

非上場株式の売却を進めるうえで押さえたいポイント

売却方法や税金の知識を理解したうえで、実際に手続きを進める際に押さえておきたい実務的なポイントを整理します。 準備が整っているかどうかで、その後の手続きのスムーズさが大きく変わります。 焦らず、一つひとつ確認しながら進めましょう。

売却前に準備しておきたい書類・情報

非上場株式の売却手続きを進めるにあたって、あらかじめ準備しておくと役立つ書類・情報は以下のとおりです。

書類・情報内容・確認ポイント
定款譲渡制限の有無・承認機関の確認
株主名簿自分の名義が正しく記載されているかの確認
株券(発行されている場合)株券の有無・保管場所の確認
取得時の書類株式払込証明書・贈与契約書・相続税申告書など(取得費の証明に使用)
会社の決算書・財務情報株式評価の参考資料
株主間契約書(存在する場合)売却に関する制約の有無の確認

特に取得費の証明書類は、税務申告の際に重要な役割を果たします。 早い段階で手元にある書類を確認し、不足しているものは取り寄せておくことをお勧めします。 書類の整備状況は、専門家への相談時にも重要な情報となります。

譲渡承認手続きの一般的な流れ

譲渡制限株式を売却する場合、以下の手続きが一般的に必要です。

  1. 譲渡承認請求書の提出:売り手(株主)が会社に対して、株式の譲渡承認を請求する書類を提出します。買い手が決まっている場合は買い手の情報も記載します。
  2. 会社による承認決議:取締役会(または株主総会)で承認の可否を決議します。譲渡承認請求から2週間以内に通知がない場合は承認したとみなされる場合があります(会社法第145条第1号)。
  3. 承認通知の受領:会社から承認・不承認の通知を受けます。
  4. 承認の場合:売り手と買い手で株式譲渡契約書を締結し、代金の支払いと株主名簿の書換を行います。
  5. 不承認の場合:会社または指定買取人による買取手続きに移行します。不承認通知から、会社買取の場合は40日以内、指定買取人の場合は10日以内に通知が必要とされています(会社法第141条・第142条)。

株式譲渡契約書は、トラブル防止のために必ず締結することが重要です。 契約書には、売却価格・支払い方法・株主名簿書換の手順などを明記します。 契約書の作成にあたっては、弁護士のサポートを受けることが推奨されます。

弁護士・税理士・M&Aアドバイザーの役割と使い分け

非上場株式の売却では、複数の専門家が関わることが一般的です。 それぞれの専門家の役割は異なるため、状況に応じて適切な専門家に相談することが重要です。

専門家主な役割
弁護士法的手続きのサポート・株式買取請求権の行使・契約書のチェック
税理士株式評価(税務上)・譲渡所得の計算・確定申告・税務リスクの確認
M&Aアドバイザー(仲介・FA)買い手候補の探索・企業価値評価(実務上)・交渉サポート・M&A手続きの調整
公認会計士財務デューデリジェンス・企業価値評価

これらの専門家は、互いに連携しながら売却プロセスをサポートします。 弁護士は法的なリスク管理、税理士は税務面の最適化、M&Aアドバイザーは買い手探しと交渉サポートを担うという形で役割が分担されます。 少数株主が売却困難に直面している場合は、まず弁護士への相談が有効なことが多いです。

非上場株式の売却・譲渡は株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式の売却は、買い手探しから譲渡承認手続き・株式評価・税務申告まで、上場株式とは大きく異なる専門的な対応が求められます。 「どこに相談すればいいかわからない」「発行会社に断られてしまった」という段階からでも、株式会社繁栄が運営する少数株Laboにお気軽にご相談ください。

こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご連絡ください。

  • 非上場株式を売りたいが、買い手の探し方がわからない
  • 発行会社に買取りを断られた、または著しく低い価格を提示された
  • 少数株主として株式を保有しているが、売却する方法が見つからない
  • 相続で引き継いだ非上場株式の名義変更や売却の進め方がわからない
  • 株式の評価額がわからず、売却価格の目安すら把握できていない
  • 譲渡承認手続きや税務申告を、専門家にサポートしてほしい

少数株Laboでは、無料相談を受け付けています。 「まず状況を整理したい」という段階からでも構いません。 豊富な解決実績を持つ専門スタッフが、あなたの状況に合った最適な売却方法を一緒に考えます。

まとめ|非上場株式の売却は専門家との連携が重要

非上場株式の売却は、上場株式の売却と異なり、取引市場がなく、買い手探しから譲渡承認手続き・評価・税務申告まで、多くのステップが必要です。 この記事では、以下の内容を一般的な情報として解説しました。

  • 非上場株式の基礎知識:上場株式との違い・売りにくい理由・売却前の3つの確認ポイント
  • 主な売却方法:発行会社への売却・相対取引・M&A・株式買取請求権
  • 少数株主特有の課題:困難の実態・買い手候補の探し方・売却が難航するケースへの対応
  • 評価方法:類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式・DCF法などの概要
  • 税金の基礎知識:申告分離課税・法人課税・取得費・相続・贈与に関する注意点
  • 実務的なポイント:準備書類・譲渡承認手続きの流れ・専門家の役割

非上場株式の売却を成功させるためには、弁護士・税理士・M&Aアドバイザーなどの専門家と早期に連携することが最も重要なポイントです。 個別の状況によって最適な対応策は大きく異なるため、本記事の内容はあくまで参考情報としてご活用ください。 まずは信頼できる専門家に相談し、自分の状況に合った売却方法と手続きを一緒に検討することをお勧めします。

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