非上場株式の譲渡で発生する税金と計算方法を解説

「保有している非上場株式を売却したいけれど、税金がいくらかかるのかわからない」「相続で引き継いだ株式を譲渡しようと思っているが、手続きが複雑で不安だ」——そのような悩みを抱えている方は少なくないでしょう。

非上場株式の譲渡は、上場株式の売買と異なり、課税の仕組みが複雑で、取引の相手や価格の水準によって発生する税金の種類が大きく変わります。 適切な知識を持たないまま取引を進めてしまうと、思わぬ税負担が生じたり、税務調査の対象になったりするリスクもあります。

この記事では、個人株主や相続で非上場株式を取得した方を主な対象として、税金の種類・計算方法・ケース別の課税関係・評価方法・注意点を、具体的な数字を交えながら丁寧に解説します。 専門家に相談する前の基礎知識として、ぜひ最後までお読みください。


目次

非上場株式とは

非上場株式と上場株式の違い

株式は、上場株式と非上場株式の2種類に大きく分けられます。

上場株式とは、東京証券取引所や名古屋証券取引所など、公認された証券取引所に上場している会社の株式のことです。 証券会社を通じて誰でも自由に売買でき、リアルタイムで市場価格が公表されています。

一方、非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式を指します。 総務省の「令和3年経済センサス」によると、国内にある法人等の数は368万以上に上ります。 対して2024年時点の上場会社数は約4,100社にすぎず、日本の産業界のほぼすべては非上場会社で占められているといえます。

比較項目上場株式非上場株式
売買市場証券取引所で売買可能公の市場がない
価格の決まり方市場の需給で決定当事者間の交渉で決定
流動性高い(いつでも売買可)低い(買い手を自分で探す)
情報の公開性財務情報が公開情報開示義務が限定的
株価の透明性高い低い(評価方法が必要)

この表からわかるように、非上場株式は上場株式に比べて流動性が低く、価格の透明性に欠けるという特徴があります。 そのため、税務上の評価方法や課税の仕組みも、上場株式とは異なる点が多くあります。

非上場株式の主な特徴

譲渡制限が設けられているケースが多い

非上場会社の多くは、定款に株式の譲渡制限を設けています。 これは、会社の経営権が見知らぬ第三者に渡ることを防ぐための仕組みです。

譲渡制限が設けられている株式を売却したい場合、株主は会社(取締役会または株主総会)に対して譲渡承認の請求を行う必要があります。 承認が得られなかった場合でも、会社や指定買取人が株式を買い取る仕組みが会社法上は用意されていますが、希望する相手に自由に売ることはできません。 したがって、非上場株式を売却しようとしても、必ずしも思い通りに進むわけではない点に注意が必要です。

市場価格が存在せず売買価格を交渉で決定する

上場株式には証券取引所で常に公表されている市場価格がありますが、非上場株式には公の市場価格が存在しません。 そのため、売買価格は売り手と買い手が個別に交渉して決定することになります。

ただし、税務上は「時価」と大きくかけ離れた価格での取引が問題視されます。 適正な時価を把握せずに売買すると、税務当局から贈与税や受贈益課税などが追加で課される可能性があります。 非上場株式の売買では、後述する評価方法を用いて適正な時価を算定したうえで取引することが不可欠です。


非上場株式の譲渡で発生する税金の種類

非上場株式を譲渡すると、取引の当事者が個人か法人か、また取引の内容によって、課税される税金の種類が変わります。 まずは、どのような税金が発生しうるのかを整理しておきましょう。

所得税・復興特別所得税・住民税(譲渡所得課税)

個人が非上場株式を譲渡して利益(譲渡益)が生じた場合、その利益は「譲渡所得」として課税されます。 課税方法は「申告分離課税」で、他の所得(給与所得や事業所得など)とは切り離して計算するのが特徴です。

税率は以下のとおりです。

税目税率
所得税15%
復興特別所得税(所得税×2.1%)0.315%
住民税5%
合計20.315%

復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興財源を確保するため、2013年から2037年まで課される税金です。 所得税額の2.1%相当が上乗せされるため、所得税と合わせて15.315%となります。

配当所得課税(みなし配当)

非上場株式を発行会社(その株式を発行した会社)に譲渡した場合、取引の一部が「みなし配当」として課税されます。 通常の譲渡とは異なり、会社から配当を受け取ったものとみなされる部分が生じるため、配当所得として別途課税されます。

みなし配当の部分は、総合課税(他の所得と合算して累進税率を適用)の対象となり、所得税率は5〜45%、住民税率は10%です。 高所得者の場合、最大で55%の税負担になる可能性があります。

法人税・法人住民税・事業税

法人が非上場株式を譲渡した場合は、個人のような「申告分離課税」ではなく、株式の譲渡益を他の損益と合算して法人税等が課税されます。 法人に課される税金は以下の3種類です。

  • 法人税:会社の利益全体に課税される国税
  • 法人住民税:都道府県・市区町村に納める地方税
  • 事業税:事業所得に課税される地方税

これらを合わせた法人実効税率は、会社の規模や利益水準によって異なります。 2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税(税率4%、年500万円の基礎控除あり)が加わったため、大企業ベースの法人実効税率はおおむね約31〜32%程度となっています。 なお、課税所得800万円以下の部分に軽減税率が適用される中小法人では税率が異なります。

贈与税・相続税

非上場株式が、適正な時価を大きく下回る価格で個人に譲渡された場合、差額部分が贈与とみなされ、受け取った側に贈与税が課されることがあります(みなし贈与)。 また、株式を相続や遺贈によって取得した場合には、相続税の課税対象になります。

相続税評価額は、後述する「財産評価基本通達」に基づく方法で算定されます。 相続した非上場株式の評価額によって相続税の額が大きく変わるため、相続税の申告においても正確な株式評価が重要なポイントとなります。


譲渡所得にかかる税率と計算方法

申告分離課税の仕組み(税率20.315%)

個人が非上場株式を譲渡して得た利益(譲渡所得)は、「一般株式等に係る譲渡所得等」として申告分離課税の対象となります。

申告分離課税とは、給与所得や事業所得などの他の所得とは分けて税額を計算する方式です。 所得の多寡にかかわらず、税率は一律20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が適用されます。

なお、上場株式等の譲渡所得も同じく申告分離課税ですが、非上場株式と上場株式はそれぞれ別々の申告分離課税として扱われます。 後述するとおり、上場株式の損益と非上場株式の損益を相殺(損益通算)することは原則として認められていません。

譲渡所得の計算式

譲渡所得は以下の計算式で求めます。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

それぞれの要素について、以下で詳しく説明します。

譲渡価額の確認

譲渡価額とは、非上場株式を売却したときに受け取った対価の総額のことです。 いわゆる「売却価格」と同じ意味です。

代金を現金で受け取った場合はその金額がそのまま譲渡価額になりますが、株式交換など現金以外の方法で対価を受け取った場合は、その時点での時価を譲渡価額として計算します。

取得費に含めるもの

取得費とは、譲渡した非上場株式を取得するためにかかったすべての費用のことです。 以下のものが取得費に含まれます。

  • 非上場株式の購入代金(元本)
  • 購入時に支払った手数料・仲介料
  • 購入時に支払った名義書換料
  • 一定の条件を満たす借入金の利子(取得のために借り入れた場合)

また、相続・遺贈・贈与によって取得した非上場株式の場合、取得費は元の所有者(被相続人・遺贈者・贈与者)の取得費をそのまま引き継ぎます。 たとえば、祖父から贈与を受けた株式を売却する場合、取得費は祖父が購入した当時の購入代金になります。

さらに、相続または遺贈によって取得した非上場株式を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から3年10か月以内)に譲渡した場合は、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例(相続財産の取得費加算の特例)があります。 計算式は以下のとおりです。

加算できる相続税額 = その者が支払った相続税額 × 譲渡した非上場株式の相続税評価額 ÷(その者の相続税の課税価格 + その者の債務控除額)

例として、支払った相続税額が1,500万円、譲渡した非上場株式の相続税評価額が6,000万円、その者の相続税の課税価格が1億円(債務控除なし)の場合は、1,500万円 × 6,000万円 ÷ 10,000万円 = 900万円を取得費に加算できます。 計算は複雑なため、相続した株式を売却する予定がある場合は、この特例の適用可否を税理士に確認することをおすすめします。 なお、この特例の適用を受けるためには確定申告書に所定の計算明細書を添付する必要があります。

譲渡費用に含めるもの

譲渡費用とは、非上場株式を売却するために直接かかった費用のことです。 主に以下のものが該当します。

  • 株式の譲渡に要した仲介手数料・委託手数料
  • M&A仲介会社に支払う成功報酬(株式譲渡に直接対応する部分)
  • 印紙税(株式譲渡契約書に貼付するもの)
  • 株式売買を内容とする投資一任契約に基づく固定報酬・成功報酬(当該株式に対応する部分)

なお、複数の銘柄にまたがる手数料は、当該非上場株式の売却に対応する部分を按分して計算する必要があります。 按分の方法は個別の状況によって異なるため、税理士に相談するのが確実です。

取得費が不明な場合の概算取得費(5%ルール)

親や祖父母から相続・贈与で引き継いだ非上場株式は、当初の購入価格(取得費)がわからないケースが少なくありません。

このような場合、税法上は「売却代金の5%相当額を取得費とみなす」概算取得費(5%ルール)の適用が認められています(所得税基本通達38-16参照)。

ただし注意が必要なのは、5%ルールを適用すると、譲渡価額の95%が課税対象になってしまうということです。 たとえば1,000万円で売却した場合、取得費は50万円にしかならず、残りの950万円に20.315%の税率がかかります。

取得費がわからないからといってすぐに5%ルールに頼るのではなく、まずは古い契約書・株主名簿・通帳の記録などを探して実際の取得費を確認することを強くおすすめします。 手間はかかりますが、実際の取得費が売却代金の5%を大幅に上回っていれば、その分だけ税負担を減らすことができます。 なお、実際の取得費が売却代金の5%を下回る場合でも、5%ルールの適用は可能です。

税額計算の具体例

具体的な数字で税額を確認してみましょう。

【ケース】個人Aさんが保有する非上場株式を2,000万円で譲渡した場合

  • 取得費(購入代金+購入手数料):800万円
  • 譲渡費用(M&A仲介手数料):100万円

計算の流れ

  1. 譲渡所得 = 2,000万円 −(800万円 + 100万円)= 1,100万円
  2. 所得税(15.315%)= 1,100万円 × 15.315% = 168万4,650円
  3. 住民税(5%)= 1,100万円 × 5% = 55万円
  4. 税金合計 = 約223万4,650円

このように、利益の20.315%が税金として課税されます。 取得費や譲渡費用の金額が大きければ大きいほど、課税対象となる譲渡所得が減り、税負担を抑えることができます。

上場株式の譲渡損益との損益通算の可否

非上場株式の譲渡損益と上場株式の譲渡損益は、原則として損益通算することができません。

損益通算とは、ある投資で生じた損失と別の投資の利益を相殺する手続きのことです。 しかし、非上場株式は「一般株式等に係る譲渡所得等」、上場株式は「上場株式等に係る譲渡所得等」として、別個の申告分離課税として扱われます。

具体的には、以下の通算が認められていません。

  • 上場株式の譲渡損失 → 非上場株式の譲渡益と相殺することはできない
  • 非上場株式の譲渡損失 → 上場株式の譲渡益と相殺することは原則できない

それぞれの損益は独立して計算する必要があるため、非上場株式と上場株式を両方持っている方は、税務処理に特に注意が必要です。


ケース別の課税関係

非上場株式の譲渡では、売り手と買い手がそれぞれ個人か法人か、また発行会社への譲渡かどうかによって課税関係が大きく異なります。 以下では主要なケースを順番に解説します。

個人から個人への譲渡

個人が別の個人に対して非上場株式を適正な時価で譲渡した場合、売り手の個人に譲渡所得が発生し、20.315%の税率で申告分離課税されます。 買い手(取得した個人)は、通常は課税されません。

ただし、適正な時価と比べて著しく低い価格で譲渡した場合は、買い手に対して「みなし贈与」として贈与税が課税されます。 「著しく低い」の判定基準は個別具体的に判断されますが、時価を大きく下回る価格での取引は税務上リスクがあります。

当事者課税内容
売り手(個人)譲渡所得税(20.315%)※適正時価で譲渡した場合
買い手(個人)原則課税なし。著しく低価格の場合は贈与税(みなし贈与)

個人から法人への譲渡

個人が法人に対して非上場株式を譲渡するケースでは、取引価格が適正時価かどうかによって課税関係が大きく変わります。

適正な時価での譲渡であれば、売り手の個人に通常の譲渡所得(20.315%)が課税されます。 買い手の法人は、時価で資産を取得したこととなり、通常の会計処理が行われます。

時価の2分の1未満で譲渡した場合のみなし譲渡所得

個人から法人への譲渡価額が時価の2分の1未満の場合、所得税法第59条・同法施行令第169条の規定により、実際の譲渡価額にかかわらず時価で譲渡したものとみなされます。

これを「みなし譲渡所得課税」と呼びます。 売り手の個人は、実際にはそれほどの代金を受け取っていないにもかかわらず、時価相当額で売却したとして税金が計算されます。

【計算例】 個人Bさんが非上場株式(時価3,000万円、取得費1,000万円)を法人Cに1,000万円で譲渡した場合

  • 実際の譲渡価額は1,000万円だが、時価の3分の1(1,000万円 ÷ 3,000万円)であり、2分の1未満に該当
  • みなし譲渡所得 = 3,000万円(時価)− 1,000万円(取得費)= 2,000万円
  • 課税される所得税等 = 2,000万円 × 20.315% = 約406万3,000円

実際の受取額に比べて多額の税金が発生するため、個人から法人への低額譲渡は特に注意が必要です。

買い手法人の受贈益課税

個人から法人への低額譲渡では、買い手の法人は適正時価と実際の取得価額との差額を「受贈益」として益金に算入しなければなりません。 この受贈益に対して、法人税等が課税されます。

【上記の例の続き】 法人Cの場合、3,000万円(時価)− 1,000万円(取得価額)= 2,000万円が受贈益として法人税の課税対象になります。

売り手・買い手の双方に多額の税負担が生じるため、個人と法人の間での低額譲渡は税務上のリスクが非常に高いといえます。

法人から個人への譲渡

法人が個人に対して非上場株式を譲渡する場合、法人は売却損益を他の損益と合算して法人税等を負担します。

買い手の個人については、適正な時価で取得した場合は課税されません。 ただし、時価より著しく低い価格で取得した場合は、時価と取得価額の差額が給与所得や一時所得として課税される可能性があります。

法人の役員や従業員が会社から低額で株式を取得した場合などは、給与課税(源泉徴収の対象)になるケースもあるため、注意が必要です。

法人から法人への譲渡

法人が別の法人に非上場株式を譲渡した場合、売り手の法人は株式売却益(譲渡益)を他の損益と合算して法人税等を負担します。

買い手の法人は、適正な時価で取得した場合は課税関係は生じません。 時価より低い価格で取得した場合は、差額が受贈益として課税されます。

なお、企業グループ内での株式譲渡の場合、グループ法人税制の適用により、完全子法人株式の譲渡益が繰り延べられる場合があります。 グループ内取引を行う場合は、専門家への確認が不可欠です。

発行会社への譲渡(自己株式取得)

個人が保有する株式を、その株式を発行した会社に買い取ってもらう場合(自己株式取得)は、通常の第三者への譲渡と異なり、みなし配当課税の仕組みが適用される点が大きな特徴です。

みなし配当課税の仕組み

会社が自己株式を取得した場合、株主に交付した金銭のうち「資本金等の額に相当する部分」は譲渡所得として、それを超える部分は「みなし配当」として配当所得として課税されます。

具体的な計算式は以下のとおりです。

みなし配当 = 交付金額 −(1株あたりの資本金等の額 × 売却株式数)

譲渡所得 =(1株あたりの資本金等の額 × 売却株式数)− 取得費

【計算例】 個人Dさんが保有する非上場株式を発行会社に1,000万円で売却。 1株あたりの資本金等の額 × 売却株式数 = 400万円、取得費 = 200万円の場合

  • みなし配当 = 1,000万円 − 400万円 = 600万円(配当所得として総合課税。所得税率5〜45% + 住民税10%)
  • 譲渡所得 = 400万円 − 200万円 = 200万円(申告分離課税。税率20.315%)

みなし配当の部分は高所得者では税率が最大55%に達するため、発行会社への売却は特に税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。

相続により取得した株式の特例

相続によって取得した非上場株式を発行会社に譲渡する場合、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(相続開始から3年10か月以内)に譲渡したときは、前述の「相続財産の取得費加算の特例」を活用できる場合があります。 みなし配当が生じる場面では課税が複雑になるため、特例の適用可否や節税効果を事前に試算しておくことが重要です。

相続した株式を発行会社に売却する場合は、適用できる特例の有無を事前に税理士に確認することを強くおすすめします。


非上場株式の税務上の時価と評価方法

非上場株式の売買価格を決める際に最も重要なのが「時価(税務上の適正価格)」の算定です。 上場株式のように市場価格がないため、一定のルールに基づいた評価方法が用いられます。

類似業種比準方式

類似業種比準方式とは、評価対象の会社と事業内容が似ている上場会社の株価を参考にして、非上場株式の価値を算定する方法です。

具体的には、類似する上場会社の「1株あたりの配当金」「1株あたりの利益」「1株あたりの純資産」の3つを指標として、評価対象の会社の各数値と比較して算定します。 一般的に、収益力の高い会社は類似業種比準方式によって評価額が高くなる傾向があります。

この方式は原則的評価方式の一つとして位置づけられており、主に経営支配力を持つ株主(同族株主など)の株式評価に使われます。 計算式が複雑なため、実務では税理士や公認会計士が担当するのが一般的です。

純資産価額方式

純資産価額方式とは、会社の保有資産を相続税評価額に換算した上で、負債や評価差額に対応する法人税等相当額を差し引いた純資産額をもとに1株あたりの価値を算定する方法です。

わかりやすく表現すると、「会社が今すぐ解散したとしたら、株主に戻ってくる金額はいくらか」という考え方に近いといえます。 資産の含み益(相続税評価額と帳簿価額の差額)に対する法人税等相当額については、令和8年(2026年)4月1日以後の相続・贈与から38%(改正前は37%)を控除する点が特徴的です。 これは、防衛特別法人税の創設に伴い財産評価基本通達が改正されたことによります。

不動産などの資産を多く保有する会社では、純資産価額方式で評価した結果が高くなりやすい傾向があります。

配当還元方式

配当還元方式とは、過去2年間の配当実績をもとに、株主が将来受け取ると期待できる配当金から株価を逆算して算定する方法です。

具体的には、過去2年間の1株あたりの平均配当金額を10%で割り戻して計算します。 なお、会社が無配当の場合は1株あたり年配当金額を2円50銭として計算します。

この方式は、会社の経営に関与しない少数株主(同族以外の株主など)の株式評価に使われる特別評価方式です。 一般的に、類似業種比準方式や純資産価額方式と比べて評価額が低くなるため、事業承継対策の場面でもよく活用されます。

所得税法と相続税法における時価の違い

非上場株式の「時価」は、適用する税法によって算定ルールが異なります。 この違いを正確に理解しておくことは、税務リスクを回避するうえで非常に重要です。

区分根拠法令時価の基準
所得税(譲渡所得)所得税法・所得税基本通達個人間取引では「財産評価基本通達による評価額」が実務上の時価とされる。個人→法人の著しい低額譲渡では時価での譲渡とみなされる
相続税・贈与税相続税法・財産評価基本通達原則として財産評価基本通達に基づく評価額(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式)を適用
法人税(受贈益・寄附金)法人税法原則として「時価」とは「不特定多数の当事者間で成立する価格(公正な価値)」とされ、実務上は財産評価基本通達の評価額を参考に判断する

特に注意が必要なのは、個人間の取引では所得税上の「著しく低い価額」の判定基準が明文化されておらず、個別の事案ごとに判断される点です。 一方、個人から法人への譲渡では「時価の2分の1未満」が明確な基準として定められています。

取引前に適用される評価方法を正確に把握したうえで、適正な価格設定を行うことが税務リスクの回避につながります。


非上場株式譲渡時の注意点

低額譲渡・無償譲渡のリスク

非上場株式を適正な時価より著しく低い価格や無償で譲渡すると、売り手・買い手の双方に想定外の税負担が生じる可能性があります。

主なリスクを整理すると以下のとおりです。

当事者状況リスク
売り手(個人)法人に時価の2分の1未満で譲渡時価で譲渡したとみなして所得税が課税される(みなし譲渡)
売り手(法人)時価より低い価格で譲渡時価との差額が寄附金として扱われ、損金算入に制限がかかる
買い手(個人)著しく低い価格で取得時価との差額が贈与とみなされ、贈与税が課税される
買い手(法人)著しく低い価格で取得時価との差額が受贈益として法人税の課税対象となる

このように、低額譲渡・無償譲渡は当事者全員にリスクをもたらします。 親族間や知人間での「好意的な価格設定」も、税務上は問題になりうるため十分な注意が必要です。

適正時価で取引することの重要性

非上場株式の譲渡では、「適正な時価(税務上の時価)を把握したうえで取引すること」が最も重要なポイントです。

適正時価での取引を行えば、余分な税負担や税務調査のリスクを回避できます。 一方で、時価から大きく乖離した価格で取引を行うと、税務署から問題視される可能性があり、追徴税や加算税のリスクが生じます。

非上場株式の時価評価は専門的な知識が必要で、評価方法の選択や計算自体も複雑です。 取引前に税理士や公認会計士に株式評価を依頼し、適正時価を確認することが不可欠といえます。

確定申告と必要書類

個人が非上場株式を譲渡して利益が生じた場合、翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間内に申告分離課税として確定申告を行う必要があります。 申告対象期間は、毎年1月1日〜12月31日に行われた取引です。

確定申告に必要な主な書類は以下のとおりです。

書類名内容
確定申告書(第一表・第二表)所得の全体を申告する基本書類(令和4年分以降は「確定申告書A」「確定申告書B」の区別がなくなり統合)
確定申告書第三表(分離課税用)譲渡所得など申告分離課税の所得を記載する書類
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書譲渡価額・取得費・譲渡費用・譲渡所得を計算して記載する書類
マイナンバーカード(写し)または本人確認書類本人確認のために必要(運転免許証・パスポート等)
取得費を証明する書類株式の取得時の契約書・領収書・通帳の写しなど

確定申告を怠った場合や申告内容に誤りがあった場合は、無申告加算税・過少申告加算税・延滞税などが課される場合があります。 取引後は速やかに必要書類の収集を始め、期限内に申告を完了することが大切です。

税理士・専門家への相談タイミング

非上場株式の譲渡に関する税務は、「取引の後」ではなく「取引の前」に専門家へ相談することが理想的です。

特に以下のような状況では、取引前の相談が不可欠です。

  • 相続・贈与で取得した株式を売却しようとしている(取得費の確認・取得費加算特例の適用可否を確認するため)
  • 発行会社に株式を売り戻す(自己株式取得)予定がある(みなし配当の計算が複雑なため)
  • 親族や知人など、関係者間で株式を譲渡する(低額譲渡のリスクを避けるため)
  • 法人との間で株式を売買する(みなし譲渡所得・受贈益課税のリスクがあるため)
  • 株式の評価額が大きく、税負担が多額になりそう(節税対策の検討が必要なため)

税理士への相談費用は発生しますが、適切な対応を行わなかった場合の税負担増加リスクと比べると、専門家への依頼はコストパフォーマンスの高い選択といえます。 M&Aや事業承継の場面では、M&A専門の税理士や公認会計士に依頼することをおすすめします。

非上場株式の譲渡・売却でお悩みの方は株式会社繁栄にご相談ください

非上場株式の譲渡・売却は、税務上の論点が多く、一つひとつの判断が税負担に直結する複雑な手続きです。「自分のケースではどの評価方法が適用されるのか」「低額譲渡にあたらないか心配」「相続した株式の取得費がわからない」など、疑問や不安を抱えたまま進めてしまうと、思わぬ課税や追徴税のリスクにつながりかねません。

株式会社繁栄では、非上場株式の譲渡・売却に関するご相談を承っています。 株式の評価から税務上の論点の整理、取引スキームの検討まで、お客様の状況に合わせたサポートを提供いたします。

「まだ売却するかどうか決めていない」という段階からのご相談も歓迎です。 早めにご相談いただくことで、取得費加算の特例など適用できる制度の見落としを防ぎ、最適な取引の進め方をご提案することができます。 非上場株式の譲渡・売却に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


まとめ

この記事では、非上場株式の譲渡で発生する税金について、基礎知識から計算方法・ケース別の課税関係・評価方法・注意点まで幅広く解説しました。

要点を整理すると、以下のとおりです。

  • 個人が非上場株式を譲渡した場合の基本税率は20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
  • 譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、申告分離課税が適用される
  • 取得費が不明な場合は売却代金の5%を概算取得費とすることができるが、実際の取得費の確認を優先すべき
  • 発行会社への譲渡では「みなし配当」が生じ、配当所得として総合課税の対象になる
  • 低額譲渡・無償譲渡は売り手・買い手の双方に多額の税負担をもたらすリスクがある
  • 非上場株式の評価方法には類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式があり、評価額は方式によって大きく異なる
  • 相続した株式を譲渡する場合は「取得費加算の特例(相続開始から3年10か月以内)」を活用できる場合がある
  • 純資産価額方式の法人税等相当額の控除割合は、令和8年(2026年)4月1日以後の相続・贈与から37%→38%に改正されている

非上場株式の譲渡は、関係する税法が多岐にわたり、取引の形態によって課税関係が大きく変わります。 思わぬ税負担や税務調査のリスクを避けるためにも、取引を検討した段階で税理士や公認会計士に早めに相談することを強くおすすめします。 適切な準備と専門家のサポートがあれば、税負担を最小限に抑えながら安全に取引を進めることができます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次