非上場株式の譲渡を検討するとき、「いくらで売ればよいのか」という疑問は、多くのオーナー経営者や少数株主が最初にぶつかる壁です。 上場株式であれば証券取引所の株価をそのまま参照できますが、非上場株式には市場価格が存在しないため、価格の決め方そのものが複雑になります。 さらに、誤った価格で取引をおこなうと、売主・買主の双方に予期せぬ税負担が発生する場合があります。 事業承継や株式の整理、少数株主としての売却など、譲渡の目的はさまざまですが、いずれのケースでも適正価格の考え方を正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、非上場株式の適正価格が算定しにくい理由から、主な評価方法、税務上の取り扱い、取引パターン別の時価の考え方、そして売却先ごとの価格傾向まで、幅広く解説します。 なお、本記事は一般的な制度や仕組みの説明を目的としており、個別の譲渡価格の決定や税務申告については、必ず税理士・公認会計士などの専門家にご相談ください。
非上場株式の適正価格が算定しにくい理由

非上場株式の価格算定が難しいとされる背景には、いくつかの構造的な理由があります。 それぞれの理由を順番に確認することで、なぜ「適正価格」の特定がこれほど複雑なのかが見えてきます。
上場株式との違い——市場価格が存在しない
上場株式は、証券取引所において毎日大量の売買がおこなわれており、その取引を通じて誰もが納得できる客観的な市場価格が形成されています。 投資家の需要と供給が常に反映されるため、株価は公正な価値の指標として広く受け入れられています。
一方、非上場株式は証券取引所に上場されていないため、こうした市場メカニズムが働きません。 売買の機会そのものが限られており、取引が発生するとしても特定の当事者間に限られるケースがほとんどです。 その結果、「現時点でこの株式がいくらの価値を持つか」を客観的に示す基準が存在せず、評価者や評価方法によって算定結果が大きく変わる場合があります。
このような性質から、非上場株式の譲渡価格は、当事者間で合意さえすれば任意に決められてしまう側面があります。 しかしその一方で、価格設定の根拠が乏しい場合には税務上のリスクが生じる可能性もあるため、根拠のある評価方法に基づいた価格算定が求められます。
取引当事者間の主観が価格に影響しやすい
非上場株式の取引では、売主と買主の関係性が価格に大きな影響を与える場合があります。 たとえば、親族間での事業承継や、オーナー経営者と従業員との間の株式移転など、特定の関係性を持つ当事者間での取引が多いのが実情です。
このような場合、純粋に経済合理性だけで価格が決まるとは限りません。 「後継者に少しでも安く承継させたい」「税負担を抑えたい」といった思惑が価格に反映されやすく、客観的な価値からかけ離れた価格での取引がおこなわれるリスクがあります。
税務当局もこの点を重視しており、当事者間の主観的な事情が排除された「純然たる第三者間取引」かどうかを、価格の妥当性を判断する重要なポイントとして捉えています。 取引の背景や目的、当事者の関係性によって適正とみなされる価格の範囲が変わってくるため、価格算定には慎重な判断が必要です。
一物一価にならない非上場株式の特性
上場株式であれば、ある時点において1株の価格は世界中で同じです。 しかし非上場株式では、どの評価方法を採用するかによって算定される価格が大きく異なるという特性があります。
具体的なイメージとして、以下のような価格差が生じる場合があります。
| 評価方法の種類 | 価格のイメージ(参考値) |
|---|---|
| DCF法・年買法など(実態に基づく評価) | 高め(将来収益を加味) |
| 時価純資産価額(財産評価基本通達) | 中程度 |
| 所得税法・法人税法上の時価 | やや低め |
| 相続税法上の原則的評価方式 | 低め |
| 配当還元方式(少数株主向け特例) | 非常に低め |
※上記はあくまで一般的な価格差のイメージであり、個別の会社の状況によって大きく異なります。
このように、同じ会社の株式であっても評価方法次第で数倍から10倍以上の差が生じる場合があるといわれています。 土地の評価においても、実勢価格・路線価・固定資産税評価額がそれぞれ異なるように、非上場株式にも複数の「価格の顔」が存在します。 どの評価方法を用いるかは、取引の目的や当事者の関係性、税務上の取り扱いなどを総合的に考慮して判断する必要があります。
非上場株式の主な評価アプローチと評価方法

非上場株式の評価方法は、大きく3つのアプローチに分類されます。 それぞれのアプローチの考え方と、代表的な評価方法の特徴を順に確認していきましょう。
インカム・アプローチ(収益に基づく評価)
インカム・アプローチは、評価対象会社が将来獲得すると見込まれる収益やキャッシュ・フローをもとに企業価値を算定する考え方です。 「この会社は今後どれだけ稼ぎ出せるか」という視点から価値を評価するため、将来の成長性を価格に反映できる点が特徴です。 一方で、将来予測に主観が入りやすく、恣意性の排除が難しいという課題もあります。
DCF法(割引キャッシュフロー法)
DCF法(Discounted Cash Flow法)は、会社が将来生み出すフリー・キャッシュ・フローを、リスクを考慮した割引率で現在価値に換算して評価する方法です。 理論的な合理性が高く、M&Aの場面では広く採用されています。
DCF法にはいくつかの種類があります。
- エンタプライズDCF法:本業から生み出すフリー・キャッシュ・フローを加重平均資本コスト(WACC)で割り引く、最も一般的な方法
- エクイティDCF法:株主に帰属するキャッシュ・フローを株主資本コストで割り引く方法
- モンテカルロDCF法:複数のシナリオを設定し、確率的に評価する方法
DCF法の難点は、将来のキャッシュ・フローの予測や割引率の設定に評価者の判断が介入しやすい点です。 そのため、事業計画の合理性や前提条件の妥当性が、評価結果の信頼性を左右するといえます。 中小企業のM&Aでは、時価純資産に営業権を加えた「年買法」との組み合わせで使われることも多いです。
収益還元法・配当還元法
収益還元法は、評価対象会社が長期的に獲得できると見込まれる純利益の平均値を、一定の割引率で割り引いて評価する方法です。 DCF法の簡便版ともいえ、損益項目のみで評価できるため計算がシンプルです。
配当還元法は、株主が将来受け取ると期待される配当金に基づいて株価を算定する方法です。 会社全体の支配権を持たない少数株主の評価に向いており、税務上の特例的評価方式(配当還元方式)としても活用されています。 ただし、配当実績がない会社には適用しにくいという制約があります。
マーケット・アプローチ(市場比較に基づく評価)
マーケット・アプローチは、上場している同業他社の株価や類似する取引事例などと比較することで、相対的に企業価値を評価する考え方です。 市場での実際の取引価格を参照するため、客観性が高い点が特徴です。 ただし、適切な比較対象を選定するうえで評価者の主観が介入しやすく、非上場の中小企業では類似企業や取引事例が見つかりにくいケースも多いです。
類似企業比較法
類似企業比較法は、評価対象会社と事業内容・規模・収益性などが類似する上場会社を選び、その財務数値との比較から株価を算出する方法です。 具体的には、上場類似企業のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの指標(マルチプル)を算出し、評価対象会社の財務数値に掛け合わせて評価額を導きます。 国税庁の財産評価基本通達における「類似業種比準方式」も、この考え方に基づいています。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価 ÷ 1株当たり純利益 |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価 ÷ 1株当たり純資産 |
| EV/EBITDA倍率 | 企業価値 ÷(税引前利益 + 支払利息 + 減価償却費)」 |
取引事例法
取引事例法は、評価対象会社の株式について過去に適正な売買がおこなわれた実績がある場合、その取引価額をもとに株式を評価する方法です。 過去の取引価格という具体的な事実を基準にするため、一定の客観性があります。 ただし、その過去の取引が合理的な方法で評価されていることが前提であり、評価時点との時間的なズレや会社の状況変化も考慮する必要があります。 非上場株式の場合、そもそも過去の取引事例が少ないため、実務上この方法が単独で採用されるケースは限られています。
ネットアセット・アプローチ(純資産に基づく評価)
ネットアセット・アプローチは、貸借対照表の純資産を基準に株価を算定する考え方です。 会社が保有する資産と負債の差額、すなわち「今この会社を清算したらいくら残るか」という視点から価値を測ります。 過去の実績に基づく客観的な評価が可能ですが、将来の収益性や成長性が反映されないという限界があります。
時価純資産法
時価純資産法は、貸借対照表上の資産・負債を評価時点の時価で再評価し、時価ベースの純資産額をもって株式の価値とする方法です。 不動産や有価証券など、簿価と時価に大きな乖離がある資産について時価評価をおこなうため、会社の実態価値をより正確に反映できます。 中小企業のM&Aでは、この時価純資産に営業権(のれん)を加算した「時価純資産 + 年買法」が広く使われています。
なお、すべての資産・負債を時価評価せず、時価との乖離が大きい重要な資産のみを時価評価する方法は「修正時価純資産法」と呼ばれることもあります。
簿価純資産法
簿価純資産法は、貸借対照表の純資産の帳簿価額をそのまま株式の価値とする方法です。 帳簿に基づくため計算が簡易で、客観性には優れています。 ただし、含み損益のある資産が存在する場合には実態を正確に反映できないため、適用できる場面は限られるのが実情です。 設立間もない会社や、含み損益がほとんどない会社に向いている評価方法といえます。
各評価方法を組み合わせる場合(併用法・折衷法)
実際の非上場株式の評価では、1つの方法だけで評価するのではなく、複数の評価方法を組み合わせるケースが多くあります。 組み合わせ方には主に以下の3種類があります。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 単独法 | 1つの評価方法のみを採用して評価する |
| 併用法 | 複数の評価方法を適用し、各結果が重なるレンジをもって評価額とする |
| 折衷法 | 複数の評価方法の結果に一定の割合(ウェイト)をかけて加重平均する |
どの方式を採用すべきかは、会社の事業状況・資本政策・譲渡する株式の量(経営権への影響度合い)・株主構成・売主と買主の属性など、多くの要素を総合的に判断して決まります。 たとえば、将来の収益性が見込める事業継続中の会社ではインカム・アプローチが合理的とされ、解散を前提とする会社ではネットアセット・アプローチが採用される傾向があります。 評価の目的や状況に応じて最適な方式を選ぶことが、適正価格の算定につながります。
評価方法によって価格に大きな差が生じる場合がある
前述のとおり、どの評価方法を採用するかによって、同じ会社の株式でも算定される価格が大きく異なる場合があります。 これは非上場株式の評価における最大の特徴であり、注意が必要なポイントです。
たとえば、先行投資が多く一時的に赤字が続いている会社であっても、将来の収益性が見込めるならDCF法では高い評価額が算出される場合があります。 一方で、税法基準(財産評価基本通達)は過去の決算数値をもとにした画一的な計算方法のため、同じ会社でも評価額が低くなる場合があります。
逆に、過去の業績が好調で内部留保が厚い会社でも、斜陽産業に属し今後の収益力低下が見込まれる場合、DCF法では低い評価額となる一方、純資産評価では高い評価額が算出される場合があります。
このように、評価方法の選択は最終的な価格に直結するため、取引の目的・当事者の関係性・税務上の影響を十分に考慮したうえで判断することが重要です。 個別の状況に応じた適切な評価方法の選択については、専門家への相談をおすすめします。
税務上の適正価格——税法基準(国税庁方式)が使われる背景

非上場株式の譲渡においては、当事者間で合意した価格がそのまま税務上の適正価格として認められるとは限りません。 税務上は独自の評価基準が設けられており、その理解が欠かせません。
財産評価基本通達とは
財産評価基本通達とは、国税庁が定めた相続税・贈与税の課税対象財産の評価方法を規定した通達です。 不動産・株式・預貯金・債権など、さまざまな財産の評価方法が網羅されており、非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法もこの通達に基づいて定められています。
非上場株式の評価においては、株主の区分(同族株主か否か)および会社の規模に応じて、以下のように評価方式が使い分けられます。
| 株主の区分 | 評価方式 |
|---|---|
| 同族株主等(支配株主) | 原則的評価方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・折衷方式) |
| 同族株主等以外(少数株主) | 特例的評価方式(配当還元方式) |
この財産評価基本通達による評価方法は、相続税・贈与税の算定が主な目的ですが、所得税や法人税においても参照・準用される場面があります。
税法基準が採用される理由——課税の公平性と客観性
税法基準(国税庁方式)が非上場株式の評価で広く使われる最大の理由は、課税の公平性と評価の客観性を確保するためです。
非上場株式は客観的な市場価格が存在しないため、当事者間で恣意的な価格設定が可能です。 もし売買ごとに異なる評価方法・前提条件で時価を算定すると、課税の公平性が保てず、税務当局の審査・処理コストも膨大になります。
そこで税法では、財産評価基本通達をベースとした画一的な計算方法を定め、誰が計算しても概ね同じ結果になるようにしています。 この仕組みにより、納税者にとっても課税額の予測可能性が高まるというメリットがあります。
ただし、税法基準は評価の客観性を優先した画一的な計算方法であるため、会社の潜在的な収益力や将来性を価格に反映させることには向いていません。 あくまで課税目的のための評価基準であることを理解しておくことが重要です。
税法基準と実際の取引価額の乖離と課税リスク
実務上、M&Aなどで実際に取引される価格(実態株価)と、税法基準で算定された価格(税務上の時価)の間には、乖離が生じることが少なくありません。
重要なのは、税法基準の価格で売買することが義務付けられているわけではないという点です。 実際の売買価格と税法基準の価格との間に差額があったとしても、その取引価格に経済的な合理性がある場合には、税務上も容認される場合があります。
一方で、合理性のない著しく低い(または高い)価格での取引には、以下のような課税リスクが生じる場合があります。
- 低額譲渡の場合:買主に贈与税や受贈益課税が生じる場合がある
- 高額譲渡の場合:売主に一時所得・給与所得等の課税が生じる場合がある
- 租税回避を意図した価格設定は否認されるリスクがある
また、売主と買主の立場(支配株主か少数株主か)によって税務上の時価が異なるケースもあり、一方に課税リスクが集中する場合があります。 取引価格の決定にあたっては、売主・買主それぞれの税務上の影響を事前に確認することが欠かせません。
取引パターン別にみる税務上の時価の考え方

非上場株式の譲渡における税務上の時価は、売主・買主が個人か法人か、また支配株主か少数株主かによって異なる場合があります。 取引パターンごとの考え方を整理します。
純然たる第三者間取引の場合
資本関係・取引支配関係・人的支配関係のいずれも存在しない「純然たる第三者」間でおこなわれた取引では、当事者が合意した価格が税務上も合理的なものとして扱われると考えられています。
これは、純粋な第三者間での取引では当事者の主観的事情が排除され、客観的な経済合理性に基づいた価格形成がなされると判断されるためです。 M&Aのように、デューデリジェンス(企業調査)を経てDCF法や時価純資産法などで算定した価格に基づく取引がこれに該当します。
ただし、株主・特約店・メインバンク・従業員などが当事者である場合は、純然たる第三者には該当しないとされるのが一般的です。 非上場株式の売買では利害関係のない第三者との取引は少なく、純然たる第三者間取引に当たるケースは限られる点に注意が必要です。
個人間で譲渡する場合
個人から個人へ非上場株式を譲渡する場合、所得税法上のみなし譲渡課税(時価課税)は適用されません。 売主は実際の売却金額をもとに譲渡所得を計算することになります。
ただし、取引価格によっては買主・売主双方に課税リスクが生じる場合があります。
低額譲渡時に買主へ贈与税が課税される場合がある
時価よりも著しく低い価額で譲渡をおこなった場合、買主に対し、取引価格と時価との差額について贈与税が課税される場合があります(みなし贈与課税・相続税法7条)。
この場合の「時価」は、実務上、財産評価基本通達による評価額(相続税法上の時価)が参照されます。 「著しく低い価額」の明確な定義は法律上定められておらず、個々の取引の具体的な事情をもとに判断されます。 相続税法7条の『著しく低い価額』について、法律上の明確な基準は定められておらず、個々の取引の具体的な事情をもとに判断されます。なお、所得税法上(個人から法人への譲渡)では時価の2分の1未満が『著しく低い価額』の基準とされていますが、相続税法上の個人間取引では同基準が直接適用されるわけではない点に注意が必要です。
高額譲渡時に売主へ課税が生じる場合がある
一方、時価よりも著しく高い価額での譲渡の場合は、売主に対し、取引価格と時価との差額について贈与税が課税される場合があります。 この場合、買主の株式取得価額は時価となり、売主が高く売った分は「買主への贈与」とみなされます。 個人間の取引であっても、価格設定が適正な範囲を外れると双方に税負担が生じる可能性があるため、慎重な価格設定が求められます。
個人から法人へ譲渡する場合
個人が法人に対して非上場株式を譲渡する場合は、所得税法の規定(所基通59-6)が適用されます。 この場合の税務上の時価は、所得税法上の評価額が基準となります。
時価の2分の1未満の譲渡とみなし譲渡課税の関係
個人が法人に対して、時価の2分の1未満の価額で株式を譲渡した場合、「みなし譲渡課税」が適用される場合があります(所得税法59条・所得税法施行令169条)。
みなし譲渡課税とは、実際の譲渡価格ではなく、時価で譲渡したものとみなして売主に所得税を課税する仕組みです。 たとえば、時価1,000万円の株式を400万円で法人に譲渡した場合、時価の2分の1(500万円)未満であるため、時価をもとに課税される場合があります(あくまで参考値であり、個別の状況によって異なります)。
なお、買主側の法人については、時価と取引価格との差額が受贈益として計上され、法人税の課税対象となる場合があります。
| 項目 | 売主(個人) | 買主(法人) |
|---|---|---|
| 時価の考え方 | 所得税法上の評価額 | 法人税法上の評価額 |
| 著しく低い価額での取引 | みなし譲渡課税が適用される場合がある | 受贈益として課税対象となる場合がある |
法人間で譲渡する場合
法人から法人へ非上場株式を譲渡する場合は、法人税法の規定が適用されます。 税務上の時価は、法人税基本通達9-1-13・9-1-14に基づいて算定されます。
実務上は、売買実例や類似法人の株価が存在するケースはほとんどないため、通達9-1-14に従い、財産評価基本通達をベースとした計算方法(一定の調整あり)が採用されるのが一般的です。
寄付金・受贈益として課税対象となる場合がある
法人間で時価より低い価額で譲渡した場合、売主法人では時価と取引価格との差額が寄付金として認識され、課税対象となる場合があります。 買主法人では同額が受贈益として計上され、法人税の課税対象となる場合があります。
寄付金は損金算入額に制限がかかるため、結果的に売主の税負担が増加する可能性があります。 逆に時価より高い価額での取引では、買主に寄付金課税リスクが生じる場合があります。
| 取引パターン | 売主法人 | 買主法人 |
|---|---|---|
| 低額譲渡 | 時価との差額が寄付金として課税される場合がある | 時価との差額が受贈益として課税される場合がある |
| 高額譲渡 | 時価との差額が受贈益として課税される場合がある | 時価との差額が寄付金として課税される場合がある |
支配株主・少数株主による評価方式の違い(原則的評価方式と配当還元方式)
非上場株式の税務上の評価では、譲渡当事者が支配株主か少数株主かによって、採用される評価方式が異なる場合があります。
支配株主(同族株主等)については、原則的評価方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・これらの折衷方式)が適用され、評価額は一般的に高くなります。
少数株主(同族株主等以外の株主)については、特例的評価方式である配当還元方式が適用される場合があり、評価額は原則的評価方式と比較して大幅に低くなるケースがあります。
この評価方式の違いが、売主・買主の双方で異なる時価が算定される原因となり、課税リスクが複雑化する場合があります。 たとえば、少数株主(売主)の時価が配当還元価額、支配株主(買主)の時価が原則的評価額というケースでは、配当還元価額で売買すると買主に受贈益課税が生じる可能性があります。 取引価格の設定にあたっては、売主・買主それぞれの立場における税務上の時価を事前に確認することが重要です。
具体的な売却先別にみる価格の傾向と留意点

非上場株式の実際の取引価格は、誰に売るかによっても大きく変わります。 売却先ごとの価格傾向と主な留意点を整理します。
発行会社・経営者への売却
発行会社や経営者個人への売却は、もっとも身近な選択肢の一つですが、価格交渉において売主(少数株主)にとって不利になりやすいという傾向があります。
経営者にとって、少数株主から株式を追加取得しても経営権への影響は限定的です。 むしろ、高額買取の前例をつくることへの抵抗感や、買取資金の調達コスト、将来の相続税負担の増加といった観点から、できるだけ低い価格で買い取りたいという動機が働きやすいといえます。
また、発行会社が特定の株主から自社株式を取得する場合、法律上、売却の意向があるすべての株主から買い取る必要が生じる場合があります(売主追加請求権・会社法160条3項)。 これにより資金面の問題も生じやすく、買主有利の条件での取引になりやすい側面があります。
同業他社・事業会社への売却
発行会社の同業他社や取引関係のある事業会社は、株式を取得することで業務提携・ノウハウ共有・コスト削減などのシナジー効果が期待できる場合があります。 こうした買主にとっては、株式取得に経済的な合理性があるため、適正な価格での取引が成立しやすい傾向があります。
また、競合他社であれば対象会社の内部情報へのアクセスを目的に株式取得を検討するケースもあり、同様に積極的な価格提示がなされる場合があります。 売却先の候補として、こうした戦略的な投資動機を持つ事業会社を広く探すことが、高価売却の実現につながる可能性があります。
ファンド・個人投資家への売却
プライベート・エクイティファンドや個人投資家も有力な買主候補となります。 ファンドは投資利回りを重視するため、将来の転売益を前提とした厳しい価格交渉になる場合がありますが、資金力があり感情論が入りにくいという点では純粋に経済合理性に基づいた交渉が可能です。
個人投資家はファンドのような組織的な投資ルールに縛られない分、柔軟な意思決定が可能で、小規模な案件や特殊な状況の株式でも対応できる場合があります。
いずれの場合も、売主側が適正な株価算定の根拠を示せるかどうかが、価格交渉の結果を大きく左右します。
譲渡承認が得られない場合の価格決定(裁判所による決定)
非公開会社の株式を譲渡する際には、発行会社の承認が必要となる場合があります(譲渡制限株式)。 会社が譲渡承認を拒否した場合、発行会社または会社が指定する買受人が株式を買い取らなければならないという制度があります(会社法140条)。
この場合の売買価格は、まず当事者間の協議によって定めますが、協議が不調に終わった場合は裁判所が「株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮」して価格を決定します(会社法144条3項)。
裁判所が決定する価格は、単純に税法基準の価格ではなく、会社の資産状況・収益力・株式の流動性などを総合的に考慮した適正価値となります。 また、反対株主による買取請求権(会社法785条等)や特別支配株主による売渡請求が発生した場合も、同様に裁判所が「公正な価格」を決定する仕組みがあります。
裁判例によれば、組織再編における反対株主の買取請求の場面では、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントを否定した判断がなされた事例があります。一方、譲渡制限株式の売買価格決定の場面では、非流動性ディスカウントを認めた最高裁判例(令和5年)も存在しており、場面によって取り扱いが異なる場合があります。個別の状況については専門家へのご相談をおすすめします。
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非上場株式や少数株式の相続・売却は、上場株式とは異なり、専門的な知識と豊富な経験が求められる分野です。 株式会非上場株式の譲渡価格は、評価方法や取引相手によって大きく異なり、価格設定を誤ると売主・買主の双方に想定外の税負担が生じる場合があります。
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まとめ——非上場株式の譲渡価格は専門家への相談が重要
非上場株式の適正価格は、評価方法・取引当事者の関係性・売却先・税務上の取り扱いが複雑に絡み合っており、一律に答えを出すことが難しいテーマです。 この記事のポイントを以下に整理します。
- 非上場株式には市場価格が存在しないため、評価方法によって価格が大きく異なる場合がある
- 評価アプローチは「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「ネットアセット・アプローチ」の3つに大別される
- 税務上は財産評価基本通達をベースとした税法基準(国税庁方式)が広く参照される
- 取引パターン(個人間・個人から法人・法人間)によって適用される税法や時価の考え方が異なる
- 売却先の選択が実際の取引価格に大きく影響する
- 価格設定を誤ると、売主・買主の双方に予期せぬ税負担が生じる場合がある
非上場株式の譲渡は、個別の事情によって最適な評価方法や価格設定の考え方が異なります。 適正価格の算定や税務上の取り扱いについては、必ず税理士・公認会計士・弁護士などの専門家に相談のうえ、慎重に進めることをおすすめします。

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