「親が亡くなり、株を相続することになったけれど、どうすればよいのかわからない」。そんな悩みを抱える人は、決して少なくありません。相続した株はそのまま売却できるわけではなく、まずは名義変更などの相続手続きを済ませる必要があります。また、無事に売却できたとしても、譲渡所得税や確定申告といった税金の問題がついてまわります。
この記事では、相続した株を売りたいと考えている人に向けて、手続きの流れから税金の計算方法、確定申告のポイントまでを、順を追ってわかりやすく解説していきます。上場株式と非上場株式で手続きが異なる点や、複数の相続人で株を分ける「換価分割」という方法についても触れていますので、ぜひ最後まで読んで、スムーズな売却につなげてください。
相続した株はすぐに売却できる?まず知っておきたい全体像

相続が発生すると、多くの人がまず気になるのが「株はすぐに売れるのか」という点でしょう。結論から言うと、相続した株をすぐに売却することはできません。被相続人(亡くなった人)が名義人のままになっている株式は、証券会社や発行会社のシステム上、そのままの状態では売買の対象にならないためです。
まずは相続の手続きを一つずつ進め、株式の名義を相続人に変更してから、はじめて売却が可能になるという流れを押さえておきましょう。ここでは、相続した株を売却するまでの全体像について、3つの視点から整理していきます。
相続した株を売るには「相続手続き」が先に必要
相続した株を売りたいと思っても、最初にやるべきことは売却ではなく相続手続きです。株式を保有していた人が亡くなると、その株式は遺産の一部として扱われることになります。遺産である以上、誰が株式を相続するのかを決める手続きを経なければ、売却に進むことはできません。
たとえば、証券会社に連絡をすると、口座は速やかに凍結されるのが一般的です。口座が凍結されている間は、売買や入出金などの取引が一切できなくなる点に注意しておきましょう。相続人が複数いる場合には、必要書類をそろえるだけでもかなりの時間がかかることがあります。
株価は日々変動するものですから、手続きが長引くほど、思わぬタイミングで相場が動いてしまうリスクも高まります。なるべく早い段階で、必要書類の収集や相続人同士の話し合いを進めておくことが、スムーズな売却への近道になるといえるでしょう。
被相続人名義のままでは売却できない
相続が発生しても、株式の名義は自動的に相続人へ切り替わるわけではありません。証券会社や発行会社のシステム上、株式は被相続人の名義のまま存在し続けることになります。名義が被相続人のままである以上、その株式を売却する権限を持つ人は、法律上は存在しない状態になっているのです。
遺産分割協議などを経て相続人が確定し、名義変更の手続きが完了して初めて、その株式は相続人自身の財産として売却できるようになります。つまり「被相続人の名義のままでは売れない」というルールは、相続手続き全体の出発点ともいえる重要なポイントです。
なお、株式を売却して現金化してから相続人同士で分ける「換価分割」という方法を選ぶ場合であっても、いったんは代表者名義に変更する手続きが欠かせません。被相続人名義のままで売却代金を受け取ることは、原則としてできないと理解しておきましょう。
上場株式と非上場株式で手続きが異なる
相続した株式を売却する際、見落とされがちなのが上場株式と非上場株式で手続きの窓口が違うという点です。上場株式の場合、名義変更や売却の手続きは、被相続人が口座を持っていた証券会社を通じておこないます。一方、非上場株式については、証券会社を経由することができず、株式を発行した会社そのものに問い合わせて手続きを進める必要があります。
| 株式の種類 | 主な手続きの窓口 |
|---|---|
| 上場株式 | 証券会社 |
| 非上場株式 | 株式発行会社 |
非上場株式は、そもそも買い手を見つけること自体が難しいというケースも珍しくありません。上場株式のように市場で自由に売買できるわけではなく、譲渡に発行会社の承認が必要になる場合もあるため、事前に発行会社へ確認しておくことが大切です。
被相続人が会社の経営者であり、自社株を保有していたようなケースでは、事業承継や清算といった専門的な判断が必要になることもあります。このような場合には、なるべく早い段階で、税理士や弁護士などの専門家に相談することを検討してみてください。
相続した株を売却するまでの手続きの流れ

相続した株を売却するまでには、いくつかのステップを順番に踏んでいく必要があります。ここでは、株式の調査から名義変更、そして売却までの一連の流れを、4つのステップに分けて解説していきます。一つずつの手続きを丁寧に進めることが、結果的にスムーズな売却につながります。
ステップ1|まずは株式の調査から始める
相続手続きの第一歩は、被相続人がどのような株式をどれだけ保有していたのかを調べることです。現在、上場株式の多くは電子化されており、紙の株券そのものは発行されていません。そのため、株式を保有していたかどうかは、自宅に届く郵便物などから判断していくことになります。
証券会社からの取引報告書や、株主総会の招集通知が届いていないかを、まずは確認してみましょう。通帳の入出金履歴からも、証券会社との取引の痕跡が見つかることがあります。被相続人が取引していた証券会社がわかった場合には、残高証明書を請求することで、保有していた株式の銘柄や数量を正確に把握できます。
残高証明書(株主名簿記載事項証明書)の取得
残高証明書は、相続人であれば1人からでも請求が可能とされています。請求の際には、一般的に次のような書類が必要になります。
- 被相続人の除籍謄本および相続人の戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しで代用できる場合があります)
- 相続人の印鑑証明書
これらの書類をそろえて証券会社の窓口に提出することで、被相続人が保有していた株式の詳細な明細を確認できるとされています。非上場株式の株券などが自宅から出てきた場合には、証券会社ではなく発行会社に直接問い合わせる必要がある点にも注意しておきましょう。
一般口座・特定口座・タンス株の確認ポイント
株式の調査を進めるうえでは、口座の種類についても確認しておく必要があります。証券口座には、大きく分けて特定口座(源泉徴収あり・なし)と一般口座の3つの種類があります。特定口座であれば、証券会社が年間の取引損益を計算してくれるため、確定申告の手間が比較的少なくて済むという特徴があります。
一方、一般口座の場合は、相続人自身で取得価額や取引履歴を調べる必要があるケースが多く見られます。また、株式が電子化される前から発行されており、電子化の手続きをしないまま自宅に眠っている株式のことを、いわゆる「タンス株」と呼びます。
タンス株は、上場会社が信託銀行などに開設している特別口座で管理されているのが一般的です。これを相続人名義の証券口座に移すためには、証券会社に相続手続依頼書(移管依頼書)を提出する手続きが必要になるとされています。タンス株を相続する人は、あらかじめ証券口座を開設しておく必要がある点も、忘れずに押さえておきましょう。
ステップ2|遺産分割協議で相続する人を決める
株式の調査が済んだら、次に必要になるのが遺産分割協議です。遺産分割協議とは、被相続人が残した財産を、相続人全員でどのように分けるかを話し合う手続きのことを指します。株式についても、この協議によって「誰が」「どれだけ」相続するのかを確定させなければなりません。株式を複数の相続人で分けて相続することも可能で、その場合には持分の割合まで具体的に決めておく必要があります。
株は相続開始時点で相続人の準共有になる
被相続人が保有していた株式は、相続が開始した瞬間から、相続人全員の準共有状態になるとされています。所有権以外の権利を複数人で持ち合う状態のことを、法律上は「準共有」と呼びます。
準共有のままでは、株式を売却したり名義変更をしたりすることが実務上は難しいため、遺産分割協議によって権利関係をはっきりさせる必要があるのです。つまり、遺産分割協議は単なる話し合いではなく、株式の名義変更を進めるための前提条件ともいえる重要な手続きだといえるでしょう。
遺産分割協議書に記載すべき内容
遺産分割協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめておく必要があります。株式に関する遺産分割協議書には、一般的に次のような内容を記載しておくとよいでしょう。
- 相続する株式の銘柄・数量
- 相続する人の氏名
- 複数人で相続する場合は、それぞれの持分割合
- 換価分割をする場合は、その旨と売却代金の分配方法
遺産分割協議書には、相続人全員の実印による押印が必要とされています。押印が漏れていたり、記載内容に不備があったりすると、名義変更の手続きが受け付けられないこともあるため、慎重に作成することが求められます。
ステップ3|株式の名義変更をおこなう
遺産分割協議で相続する人が決まったら、いよいよ株式の名義変更の手続きに進みます。株式の相続手続きは、この名義変更(名義書換)が完了することによって、一区切りを迎えることになります。名義変更の方法は、前述のとおり上場株式か非上場株式かによって大きく異なるため、それぞれのケースを確認しておきましょう。
上場株式の名義変更(証券会社での手続き)
上場株式の名義変更は、被相続人が口座を持っていた証券会社の窓口でおこないます。一般的には、次のような書類の提出が求められます。
- 証券会社指定の届出書(株式名義書換請求書など)
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本一式
- 相続人全員の印鑑証明書
株式を相続する人自身が証券口座を保有していない場合には、あらかじめ証券口座を開設しておく必要がある点にも注意してください。口座の準備ができていないと、いざ書類がそろっても名義変更の手続きが進められないという事態になりかねません。
非上場株式の名義変更(発行会社での手続き)
非上場株式の場合は、証券会社を通すことができないため、株式発行会社に対して株主名簿記載変更申請書などを提出する形で名義変更をおこないます。必要な書類や手続きの詳細は、会社ごとに取り扱いが異なる場合があるとされています。そのため、事前に発行会社へ直接確認しておくことが望ましいでしょう。
非上場株式は、発行会社の承認がなければ譲渡そのものが認められないケースもあるとされているため、名義変更の相談と合わせて、譲渡に関する社内規定についても確認しておくと安心です。
ステップ4|相続人名義の口座から売却する
名義変更の手続きが完了すると、株式はようやく相続人自身の財産として扱われるようになります。ここまで来て初めて、株式を自由に売却できる状態になるというわけです。遺産分割によって株式を取得した相続人は、その株式を保有し続けるという選択肢だけでなく、自分の意思だけで自由に売却するという選択肢も持つとされています。
他の相続人の同意をあらためて得る必要はないとされており、株価の動向を見ながら、自分のタイミングで売却を決めることができるとされています。ただし、売却によって利益が生じた場合には、後述する譲渡所得税や確定申告の問題が生じることになるため、この点は必ず押さえておく必要があります。
相続した株を「売って分ける」換価分割という方法
相続人が複数いる場合、株式そのものを分割するのではなく、いったん売却して現金化してから分けるという方法が選ばれることもあります。これを「換価分割」と呼びます。株式のように評価額が日々変動する財産は、現物のまま複数人で分けるよりも、換価分割のほうが公平に分けやすいと考えられることが多いようです。ここでは、換価分割の仕組みと、実際の進め方について解説していきます。
換価分割とは|株を現金化してから分ける
換価分割とは、相続財産を売却して現金化し、その代金を相続人同士で分け合うという遺産分割の方法の一つです。株式や不動産のように、現物のままでは公平に分けることが難しい財産について、よく利用される方法とされています。株式を換価分割する場合、相続人全員が合意すれば、株式を売却してその代金を分けることができるとされています。
株価が変動しやすい財産だからこそ、現金化してから分けたほうが納得感を得やすいという声も少なくありません。ただし、換価分割を選ぶ場合であっても、被相続人名義のままで売却することはできないという原則は変わらない点に注意しておきましょう。
代表者名義に変更してから売却する流れ
換価分割をおこなう際には、まず相続人の代表者名義に株式を変更する必要があるとされています。代表者が証券口座を持っていない場合には、証券口座の開設も並行して進めることになります。名義変更が完了したら、代表者が株式を売却し、得られた売却代金を、あらかじめ決めた割合にもとづいて他の相続人に分配していく、という流れになります。
なお、株式は売却するタイミングによって価格が大きく変動することがあるため、いつ売るのかについても、相続人同士であらかじめ話し合っておいたほうがよいでしょう。
遺産分割協議書に記載しておきたいポイント
換価分割をおこなう場合、遺産分割協議書には通常の記載内容に加えて、いくつかの追加事項を盛り込んでおく必要があります。
- 換価分割をおこなう旨の明記
- 売却代金をどのような割合で分けるのか
- 売却の時期についての取り決め(決めている場合)
- 代表者名義への変更をおこなう旨
これらの内容をあらかじめ明確にしておくことで、売却後のトラブルを防ぎやすくなるというメリットがあります。とくに売却代金の分配方法については、後になって認識の食い違いが生じやすい部分ですので、書面として残しておくことが大切です。
相続した株を売却したときにかかる税金

相続した株式を無事に売却できたとしても、それで手続きが終わるわけではありません。売却によって利益が生じた場合には、税金の問題が発生します。ここでは、相続した株を売却したときにかかる税金の仕組みについて、具体的に解説していきます。
売却益に対して約20%(所得税+住民税)の譲渡所得税がかかる
株式を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合には、その利益に対して申告分離課税という方式で税金が課されるとされています。株式等の譲渡所得に対する税率は、合計で20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)とされています。相続した株式であっても、この税率が変わることはないとされています。
なお、令和8年度の税制改正により、令和9年(2027年)1月以降は、復興特別所得税の税率が1.1%に引き下げられ、新たに防衛特別所得税1%が加わるとされています。上乗せ部分の合計は2.1%のまま変わらないとされているため、売却時期が2027年以降になっても、譲渡所得税の実質的な負担は大きく変わらないと考えられます。ただし、内訳の名称が変わる点には留意しておきましょう。
株式を売却せず、ただ保有しているだけの状態であれば、利益が発生していないため税金はかからないとされています。一方で、一度でも売却して利益が出た場合には、確定申告が必要になる可能性がある点に注意しておきましょう。
譲渡所得(売却益)の計算方法
譲渡所得税を計算するためには、まず売却によって得た利益(譲渡所得)を正しく算出する必要があります。計算の考え方自体はシンプルですが、相続した株式ならではの注意点もあるため、順を追って確認していきましょう。
収入金額-取得費-譲渡費用=売却益
株式の譲渡所得は、次のような計算式で求められるとされています。
収入金額-取得費-譲渡費用=売却益
収入金額とは、株式を売却したときの売却価格のことです。取得費とは、株式を取得した際にかかった購入代金や手数料などを指します。譲渡費用とは、売却時にかかった手数料や、その他の諸費用のことです。
たとえば、300,000円で購入した株式を、500,000円で売却したとします。この場合、購入手数料や諸費用を考慮しなければ、売却益は200,000円になる、という計算の考え方になります。算出された売却益に対して、先ほど紹介した20.315%の税率を掛けることで、おおよその税額を把握することができます。なお、この計算例はあくまで一般的な仕組みを説明するための一例であり、実際の税額は個別の状況により異なりますので、正確な税額の算出については税理士にご相談ください。
取得費は被相続人の取得価額を引き継ぐ
相続した株式を売却する場合、取得費の計算においては被相続人が取得したときの価格をそのまま引き継ぐという考え方がとられています。つまり、相続人自身が株式を取得した価格ではなく、もともと被相続人がいくらで購入したかが、税額計算のベースになるとされています。
被相続人がかなり安い価格で購入していたケースでは、値上がり益が大きくなり、その分税金も多くかかることがあります。思っていたよりも手取り額が少なくなる、というケースも十分に考えられますので、あらかじめ売却代金の税引き後のおおよその金額を確認しておくことをおすすめします。
取得価額がわからないときは「概算取得費」を使う場合がある
相続した株式は、被相続人が何十年も前に購入していたようなケースも珍しくありません。そのため、取得価額がそもそも判明しないという状況も十分に起こり得ます。このような場合には、株式を売却した際の収入金額の5%を取得費とみなすことができる制度があるとされています。
たとえば、取得価額が不明の株式を5,000,000円で売却した場合、「5,000,000円×5%」で250,000円を取得費とすることが可能になるとされています。こちらもあくまで一般的な計算例であり、実際に適用できるかどうかは個別の状況によって異なりますので、詳細は税理士にご確認ください。
取得価額を調べる方法としては、次のようなものが挙げられます。
- 証券会社から送られてくる取引報告書を確認する
- 証券会社に顧客勘定元帳のコピーを請求する
- 被相続人の預金通帳の履歴から購入時期を確認する
- 株式の取得日の終値から金額を計算する
これらの方法を試しても取得価額がわからない場合には、収入金額の5%を取得費とみなす方法を活用することになります。取得価額がわからないまま放置してしまうと、正しい申告ができなくなってしまうため、できる限り調査をおこなったうえで判断することが大切です。
相続税を取得費に加算できる「取得費加算の特例」
相続した株式を売却する際には、「取得費加算の特例」と呼ばれる制度を活用できる場合があります。これは、相続した財産を一定期間内に譲渡した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できるという特例です。この特例が適用できれば、譲渡所得を圧縮できるため、結果的に税負担を抑えられる可能性があるとされています。
特例が適用される主な条件
取得費加算の特例が認められるためには、主に次のような条件を満たす必要があるとされています。
- 相続または遺贈によって財産を取得していること
- その財産の取得について相続税が課税されていること
- 一定の期間内に株式を譲渡していること
いずれの条件も満たしていることが前提となるため、自分のケースが該当するかどうか判断に迷う場合には、税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
相続開始日の翌日から3年10ヵ月以内という期限
取得費加算の特例を利用するためには、期限を意識しておく必要があります。一般的には「相続開始日の翌日から3年10か月以内」という表現で説明されることが多いのですが、正確には「相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)の翌日以後3年を経過する日まで」という期間が基準になるとされています。
つまり、申告期限からさらに3年という考え方をすると、わかりやすいかもしれません。なお、この特例の適用を受けるためには、確定申告をおこなうことが条件とされていますので、対象となる可能性がある場合には、忘れずに申告手続きを進めるようにしましょう。
相続した株を売却したあとの確定申告

相続した株式を売却して利益が出た場合には、確定申告が必要になるケースがあります。ここでは、確定申告が必要になる基準や、逆に不要になるケース、必要な書類などについて、詳しく見ていきましょう。
売却益が20万円を超える場合は確定申告が必要になることがある
会社員などで、給与について年末調整を受けている人であっても、株式の売却によって20万円を超える所得を得た場合には、確定申告が必要になることがあるとされています。確定申告が必要とされる主なケースは、次のとおりです。
- 給与を1か所から受けていて、給与や退職金以外に20万円を超える所得がある場合
- 給与を2か所以上から受けていて、主たる職場以外の給与や他の所得の合計が20万円を超える場合
- 給与の収入金額が2,000万円を超える場合
ここでいう「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことを指し、株式の売却によって得た利益もこの所得に含まれます。自分のケースがこれらの条件に当てはまるかどうか、売却後は早めに確認しておくとよいでしょう。
確定申告が不要になるケース(源泉徴収あり特定口座・NISA・年間損失)
株式を売却して利益が出た場合であっても、次のようなケースでは確定申告が不要になるとされています。
- 「源泉徴収あり」の特定口座を利用している場合
- 年間を通して株式等の譲渡損失が生じている場合
- NISA口座で売却益が発生している場合
源泉徴収ありの特定口座を選んでいる場合、証券会社が代わりに所得税や住民税を計算し、天引きしてくれる仕組みになっているとされています。そのため、個人で改めて確定申告をおこなう必要はないとされています。ただし、特定口座を複数持っている場合、それぞれの口座で利益と損失が出ているようなケースでは、損益を相殺するために確定申告をしたほうが有利になることもあります。
NISA口座については、売却益や配当金がそもそも非課税となる制度のため、確定申告の対象にはならないとされています。なお、相続した株式をNISA口座で直接受け継ぐことはできず、相続人の特定口座または一般口座に移管されることになる点にも注意しておきましょう。
確定申告が不要でも住民税の申告が必要な場合がある
売却益が20万円以下で確定申告が不要とされるケースであっても、住民税の申告は別途必要になるとされている点は見落とされがちです。住民税は、国税である所得税とは異なり、都道府県や市区町村に納める地方税にあたります。そのため、所得税の確定申告をしていないからといって、住民税の申告まで不要になるわけではありません。
一方で、確定申告や年末調整をきちんとおこなっている場合には、税務署から市区町村へ情報が通知される仕組みになっているため、改めて住民税を申告する必要はないとされています。確定申告の対象者ではない場合でも、住民税の申告については、忘れずに確認しておきましょう。
損失が出たときの繰越控除・損益通算という制度
株式を売却した結果、利益ではなく損失が生じるケースもあるでしょう。複数の証券口座で取引をしている場合、ある口座では利益が、別の口座では損失が出ているということも珍しくありません。このような場合、確定申告をおこなうことで、利益と損失を相殺する(損益通算する)ことができるとされています。
また、年間を通して損失が生じた場合には、その損失を翌年以降最大3年間にわたって繰り越せる「繰越控除」という制度もあるとされています。なお、この損益通算・繰越控除の制度は、上場株式等の譲渡損失について適用されるものであり、非上場株式(一般株式等)の譲渡損失には原則として適用されない点に注意が必要です。繰越控除を利用すれば、翌年以降に売却益が出た場合に、過去の損失と相殺して税負担を軽減できる可能性があります。ただし、繰越控除を適用するためには、損失が出た年から継続して確定申告をおこなっておく必要があるとされていますので、注意が必要です。
確定申告に必要な主な書類
株式の譲渡益について確定申告をおこなう際には、あらかじめ準備しておくべき書類があります。
| 必要書類 | 入手方法 |
|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票 | 勤務先が発行 |
| 特定口座年間取引報告書 | 証券会社などが発行 |
| 還付先金融機関の口座情報(本人名義) | 通帳・キャッシュカードなど |
一般口座で取引をおこなっていた場合には、証券会社からの報告書がないため、自分で年間の取引金額を計算する必要がある点にも注意しておきましょう。書類の準備に不安がある場合には、税理士へ相談することも一つの方法です。
申告を忘れた場合のペナルティ(加算税)に注意
確定申告が必要であるにもかかわらず、これを怠ってしまうと、ペナルティとして加算税が課される場合があるとされています。加算税には、主に次のような種類があるとされています。
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
株式の売却については、取引金額にかかわらず、証券会社が「支払調書」や「特定口座年間取引報告書」を税務署に提出する仕組みになっているとされています。そのため、税務署は個人がどの程度の利益を得ているかを把握しているとされ、申告をせずに済ませることは難しいと考えられます。うっかり申告を忘れてしまうことのないよう、売却したタイミングでスケジュールを確認しておくことをおすすめします。
相続した株を売りたいときによくある疑問(Q&A)

ここでは、相続した株を売却する際に、多くの人が疑問に感じやすいポイントについて、Q&A形式でまとめていきます。
非上場株式は売却先が見つからないことがある?
非上場株式は、上場株式のように証券取引所で自由に売買できる仕組みがないため、売却先が見つかりにくいというケースがあるとされています。発行会社の株式を買い取ってくれる第三者を自分で探す必要があったり、発行会社自身に買い取ってもらう交渉が必要になったりすることもあるようです。また、非上場株式の譲渡には、発行会社の承認が必要とされているケースも珍しくありません。
このような事情から、非上場株式を相続した場合には、早めに発行会社へ相談し、譲渡に関する取り扱いを確認しておくことが望ましいといえるでしょう。
相続した株の売却で損をしないための注意点
相続した株式を売却する際、損をしないためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
- 取得価額をできる限り正確に調べておくこと
- 取得費加算の特例が使えるかどうか確認しておくこと
- 売却のタイミングを慌てて決めないこと
- 複数の証券口座がある場合は、損益通算を意識すること
とくに取得価額の把握は、税額に直接影響する部分ですので、時間をかけてでも調査しておく価値があります。また、株価は日々変動するものですから、焦って売却するのではなく、ある程度の情報収集をしたうえで判断することが望ましいでしょう。
手続きや税額の判断に迷ったときの相談先
相続した株式の手続きや税額の計算は、専門的な知識が求められる場面が少なくありません。名義変更や遺産分割協議など、法律に関わる判断が必要な場合には、司法書士や弁護士への相談が選択肢となります。一方、税額の計算や確定申告、特例の適用可否など、税務に関わる判断については、税理士に相談することが望ましいとされています。
自己判断で手続きを進めてしまうと、後から思わぬトラブルにつながることもあるため、判断に迷う場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
非上場株式の相続・売却でお困りなら「少数株Labo」へご相談ください

ここまで、相続した株を売りたいときの手続きや税金の流れについて解説してきました。なかでも非上場株式は、上場株式とは違って買い手を自分で探す必要があったり、発行会社の承認が必要になったりと、上場株式にはない難しさを抱えているケースが少なくありません。
株式会社繁栄が運営する「少数株Labo」では、こうした非上場株式や少数株式の相続・売却に関するご相談を承っています。次のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
- 遺品整理をしていたら非上場株式の株券が出てきたが、どうすればよいかわからない
- 発行会社に株式の買取りを断られてしまった
- 非上場株式の評価額がわからず、相続税の申告に困っている
- 少数株主として株式を持っているが、売却先が見つからない
- 株式の価値を確認したうえで、適切な形で手放したい
少数株Laboでは、無料相談を受け付けています。「まずは話を聞いてほしい」という段階でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。豊富な解決実績を持つ専門スタッフが、一人ひとりの状況に合わせた最適な方法を一緒に考えます。
まとめ|相続した株を売りたいときは「手続き→名義変更→売却→申告」の順で進める
相続した株を売りたいと考えたとき、最も大切なのは、手続きの順番を正しく理解しておくことです。まずは株式の調査をおこない、遺産分割協議によって相続する人を確定させ、名義変更を済ませたうえで、はじめて売却が可能になります。
売却によって利益が出た場合には、約20.315%の譲渡所得税がかかる可能性があり、条件によっては確定申告も必要になる場合があります。取得費加算の特例のように、知っているだけで税負担を抑えられる制度もありますので、期限を含めてしっかりと確認しておきましょう。
相続した株式の売却は、法律面と税務面の両方にわたる手続きが絡み合う、決して簡単とはいえないプロセスです。少しでも不安な点や判断に迷う部分があれば、一人で抱え込まず、司法書士や税理士といった専門家に相談しながら進めることをおすすめします。この記事が、相続した株をスムーズに売却するための一助となれば幸いです。

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