相続の相談窓口で、こんな声を聞くことが少なくありません。 「非上場の株式を相続したけれど、いくらの価値があるのか分からない」。 上場株式であれば、証券取引所の株価を見ればすぐに時価が分かります。 しかし非上場株式には市場での取引価格が存在しないため、評価そのものが大きな壁になります。
さらに2026年に入り、国税庁は非上場株式の評価ルールを約60年ぶりに見直す議論を本格化させました。 評価方式が変われば、これまで有効だった相続対策が通用しなくなる可能性もあります。 本記事では、非上場株式の評価方法の基本から、評価方式を決定する具体的な手順、そして2026年時点での制度見直しの最新動向まで、順を追って分かりやすく解説します。 少数株主として非上場株式を相続した方、あるいは事業承継を控えるオーナー経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
非上場株式とは

非上場株式とは、証券取引所などの市場に上場していない会社が発行する株式のことです。 「未公開株」と呼ばれることもあり、日本国内の会社のうち、株式を上場している会社はごく一部にすぎません。 中小企業の多くは、この非上場株式を発行する会社に該当します。
非上場株式は市場での売買がないため、株価という客観的な指標が存在しません。 そのため相続や贈与、譲渡が発生するたびに、一定のルールに基づいて評価額を算定する必要があります。 この評価のルールを定めているのが、国税庁の「財産評価基本通達」です。
上場株式との違い
上場株式と非上場株式の違いは、単に取引所で売買できるかどうかだけではありません。 以下の表で、両者の主な違いを整理します。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 取引の場 | 証券取引所などの市場 | 市場での取引なし |
| 時価の把握 | 日々の株価で把握できる | 明確な時価が存在しない |
| 評価方法 | 課税時期の終値等を基準に評価 | 財産評価基本通達に基づき個別に算定 |
| 換金のしやすさ | 比較的容易 | 買い手を見つけにくい場合がある |
| 情報開示 | 有価証券報告書等で開示される | 開示義務が限定的 |
上場株式であれば、相続税評価額は課税時期の終値などを基準に、比較的シンプルに求められます。 一方、非上場株式は会社の規模や株主構成、業績など、複数の要素を踏まえて評価する必要があるため、計算が複雑になりがちです。 この複雑さこそが、非上場株式の評価が「難しい」と言われる理由の一つといえるでしょう。
評価が必要になる主なケース(相続・贈与・譲渡)
非上場株式の評価が必要になる場面は、決して相続だけではありません。 主なケースを整理すると、次のとおりです。
- 相続:オーナー経営者が亡くなり、相続人が株式を承継する場合
- 贈与:生前に後継者や親族へ株式を贈与する場合
- 譲渡:株主が第三者や会社へ株式を売却する場合
- 事業承継:後継者への計画的な承継を進める場合
いずれのケースでも、株式の価値を客観的な基準で示す必要があるという点は共通しています。 特に相続や贈与では、評価額がそのまま相続税・贈与税の課税価格に影響するため、評価方法を誤ると、納税額に差が生じる可能性があります。 また、少数株主の立場で株式を保有している方にとっては、発行会社との買取交渉や譲渡の場面でも、評価額の考え方を理解しておくことが重要になります。
非上場株式の評価方式は2種類

非上場株式の評価方式は、大きく分けて原則的評価方式と特例的評価方式の2種類があるとされています。 どちらの方式を用いるかは、株式を取得した人の立場によって変わる仕組みです。 具体的には、取得者が「同族株主」に該当するか、それとも「少数株主」に該当するかによって、適用される評価方式が異なる場合があります。
原則的評価方式
原則的評価方式は、会社の支配権を持つ株主、つまり同族株主が株式を取得した場合に用いられる評価方式です。 原則的評価方式には、さらに類似業種比準方式、純資産価額方式、そして両者を組み合わせた併用方式の3種類があります。 どの方式を採用するかは、会社の規模区分によって決まる仕組みとされています。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、評価しようとする会社と同業種の上場企業の株価を参考にして、株式の評価額を算定する方法です。 たとえば、非上場の自動車部品メーカーを評価する場合、上場している同業他社の株価水準を基準として計算します。 比較の際には、1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額という3つの要素が用いられます。
この方式は、主に会社の規模区分で「大会社」に分類された場合に採用されるとされています。 大会社は、比較対象となる上場企業と事業規模が近いことが多く、類似業種比準方式による評価が実態を反映しやすいとされているためです。 なお、類似業種の業種目や業種目別の株価等については、国税庁のホームページで公表されています。
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社が保有する資産と負債を評価時点の時価に洗い替えたうえで、1株あたりの価値を算定する方法です。 具体的には、資産の相続税評価額から負債を差し引き、さらに評価差額に対する法人税相当額を控除して、1株あたりの純資産価額を求める仕組みとされています。 会社を仮に清算した場合、株主にいくら分配されるかという発想に近い評価方法といえるでしょう。
純資産価額方式は、主に会社の規模区分で「小会社」に分類された場合に用いられます。 また、開業して間もない会社や、資産の大部分を株式や土地が占める特定の評価会社にも、この方式が適用される場合があります。 評価対象となる資産や負債をすべて洗い出す必要があるため、計算にはある程度の手間がかかる点に留意しておきましょう。
類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
会社の規模区分が「中会社」に分類される場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせて評価するとされています。 この併用割合は「L(エル)の割合」と呼ばれ、会社の規模に応じて0.90、0.75、0.60のいずれかが適用される仕組みです。 一般的な計算式は次のとおりです。
類似業種比準価額 × L の割合 + 純資産価額 ×(1 − L の割合)
たとえば、Lの割合が0.75の会社であれば、類似業種比準価額を75%、純資産価額を25%の比率で組み合わせて評価額を求める計算になります。 なお、これはあくまで一般的な計算例であり、実際の評価額は会社ごとの決算内容によって異なります。 併用方式による評価額と、純資産価額方式のみで計算した評価額のいずれか低い方を選択できる場合があるため、個別の計算結果を比較検討することが望ましいとされています。 このあたりの判断は専門的な知識を要するため、実際の申告にあたっては税理士へ相談することをおすすめします。
特例的評価方式(配当還元方式)
特例的評価方式は、いわゆる配当還元方式と呼ばれる評価方法です。 会社の経営に関与しない少数株主が株式を取得した場合に、原則としてこの方式が採用されるとされています。 少数株主は、会社の支配権を持たず、株式を保有していても経営に関わることはほとんどありません。
そのため、少数株主が保有する株式の価値は、将来受け取ることが見込まれる配当金を基準に評価するという考え方が採られています。 一般的な計算式は、次のとおりです。
評価額 =(年間配当金額 ÷ 10%)×(1株あたりの資本金等の額 ÷ 50円)
こちらもあくまで一般的な計算式であり、個別の評価額はこの式に会社ごとの実際の数値を当てはめて算定する必要があります。 この計算式からも分かるとおり、配当還元方式による評価額は、原則的評価方式による評価額よりも低くなる傾向があるとされています。 なお、まれに配当還元方式よりも原則的評価方式の評価額が低くなるケースもあり、その場合には有利な方の評価方式を選択できる場合があります。 どちらの評価方式が適用されるかによって、相続税や贈与税の負担額が変わる可能性があるため、少数株主として株式を保有している方は、自身がどちらの区分に該当するのかを早めに確認しておくことが大切です。
非上場株式の評価方式を決定する3つのステップ

ここまで、非上場株式の評価方式そのものについて解説してきました。 では実際に、どの評価方式を採用すべきかは、どのような手順で決定するのでしょうか。 非上場株式の評価方式は、大きく分けて3つのステップを経て決定される仕組みとされています。
具体的な流れを整理すると、次のとおりです。
- ステップ1:株主区分(同族株主・少数株主)を判定する
- ステップ2:会社区分(一般の評価会社・特定の評価会社)を判定する
- ステップ3:会社規模区分(大会社・中会社・小会社)を判定する
この3つのステップを順番にたどることで、最終的にどの評価方式を用いるべきかが明らかになります。 それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
ステップ1.株主区分(同族株主・少数株主)を判定する
最初のステップは、株式を取得した人が「同族株主」に該当するか、それとも「少数株主」に該当するかを判定することです。 同族株主とは、一般的に議決権の総数の30%以上を有する株主グループ、またはそのグループに属する株主のことを指すとされています。 30%以上を保有するグループが複数存在する場合には、そのうち最も議決権割合の大きいグループが同族株主として扱われる場合があります。
また、株主の1人とその同族関係者が、議決権総数の50%を超えて保有している場合にも、同族株主とみなされることがあるとされています。 一方、こうした同族株主に該当しない株主は、原則として「少数株主」に区分されます。 株主区分の判定は、相続税評価額の水準を左右する最初の分岐点となるため、重要なステップといえるでしょう。
以下、株主区分と適用される評価方式の一般的な関係を整理します。
| 株主区分 | 原則的な適用方式 |
|---|---|
| 同族株主 | 原則的評価方式(会社区分・規模区分で決定) |
| 少数株主 | 特例的評価方式(配当還元方式) |
なお、同族株主に該当した場合であっても、原則的評価方式による評価額と配当還元方式による評価額を比較し、低い方を選択できる場合があるとされています。 このように、株主区分の判定ひとつをとっても、個別の事情によって結論が変わる可能性があるため、正確な判定には専門家の確認が欠かせません。
ステップ2.会社区分(一般の評価会社・特定の評価会社)を判定する
株主区分が「同族株主」に該当した場合は、次のステップとして、評価対象となる会社そのものの区分を判定します。 会社区分は、大きく「一般の評価会社」と「特定の評価会社」の2つに分けられるとされています。 特定の評価会社に該当すると判定された場合には、通常とは異なる評価方法が適用される仕組みです。
特定の評価会社に該当する7つのケース
特定の評価会社に該当する会社は、財産評価基本通達において、次の7つの類型が定められているとされています。
- 清算中の会社:解散が決定し、清算手続きが進められている会社
- 開業前または休業中の会社:事業をまだ開始していない、または長期間休業している会社
- 開業後3年未満の会社:課税時期において設立から3年に満たない会社
- 比準要素数0の会社:配当金額、利益金額、純資産価額の3要素がいずれもゼロの会社
- 比準要素数1の会社:上記3要素のうち、1つの要素のみが数値を持つ会社
- 土地保有特定会社:総資産に占める土地等の保有割合が一定以上の会社
- 株式保有特定会社:総資産に占める株式等の保有割合が一定以上の会社
これらの会社は、通常の大会社・中会社・小会社という規模区分による評価方式が、実態に合わないと考えられているため、特別な評価ルールが用意されているとされています。 特に株式保有特定会社は、持株会社化による節税スキームとの関連で、税務当局の関心が高い区分としても知られています。 自社が該当するかどうかの判断に迷う場合は、決算書や株主構成をもとに、税理士へ確認することをおすすめします。
特定の評価会社の評価方法(清算分配見込額・純資産価額方式・S1+S2方式など)
特定の評価会社に該当した場合、それぞれの類型に応じて、次のような評価方法が適用される場合があるとされています。
| 特定の評価会社の類型 | 主な評価方法 |
|---|---|
| 清算中の会社 | 清算分配見込額の複利現価による評価 |
| 開業前・休業中・開業後3年未満・比準要素数0の会社 | 純資産価額方式 |
| 比準要素数1の会社 | 純資産価額方式、または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
| 土地保有特定会社 | 純資産価額方式 |
| 株式保有特定会社 | 純資産価額方式、またはS1+S2方式 |
このうち、S1+S2方式は、株式保有特定会社に特有の評価方法です。 S1は、会社が保有する株式等を除いた部分について、原則的評価方式に準じて計算した評価額を指すとされています。 S2は、会社が保有する株式等そのものを、財産評価基本通達に基づいて評価した金額です。
このS1とS2を合算することで、株式保有特定会社の評価額を算定する仕組みとされています。 計算の実務では、取引相場のない株式の評価明細書の第7表、第8表を用いて計算を進めることになります。 いずれの評価方法も専門的な知識を要するため、特定の評価会社に該当する可能性がある場合は、早めに税理士へ相談することが望ましいでしょう。
ステップ3.会社規模区分(大会社・中会社・小会社)を判定する
会社区分が「一般の評価会社」に該当した場合は、最後のステップとして、会社の規模区分を判定します。 会社規模区分は、大会社、中会社、小会社の3段階に分かれており、中会社はさらに大・中・小に細分化されるとされています。 判定には、従業員数、総資産価額、直前期末以前1年間の取引金額という3つの要素が用いられます。
判定の目安を、業種別に整理すると次のとおりです。
| 会社規模 | 総資産価額の目安 | 従業員数の目安 | 取引金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 卸売業で20億円以上など | 70人以上、または業種別基準を満たす場合 | 卸売業で30億円以上など |
| 中会社(大・中・小) | 業種・区分により細分化 | 20人超〜35人以下など | 業種・区分により細分化 |
| 小会社 | 卸売業で7,000万円未満など | 5人以下 | 卸売業で2億円未満など |
なお、従業員数が70人以上の会社は、総資産価額や取引金額にかかわらず、無条件で大会社に区分されるとされています。 従業員数の算定にあたっては、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非常勤従業員も一定の基準で人数に加算する扱いとされています。 一方、会長や取締役といった役員は、原則として従業員数のカウントには含まれません。
会社規模区分が確定すると、次のとおり、適用される評価方式が決まるとされています。
- 大会社:類似業種比準方式(純資産価額方式による評価も認められる場合があります)
- 中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用(Lの割合は0.90、0.75、0.60のいずれか)
- 小会社:純資産価額方式(類似業種比準方式との併用による評価も認められる場合があります)
このように、株主区分、会社区分、会社規模区分という3つのステップを順にたどることで、最終的にどの評価方式を用いるべきかが明らかになります。 評価方式の判定は、会社の決算内容や株主構成によって結論が変わる複雑なプロセスです。 正確な判定を行うためには、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
非上場株式の評価が高くなりやすい理由
非上場株式の評価額は、実際の売買相場の感覚よりも高く算出されるケースが少なくないとされています。 なぜ非上場株式の評価は、割高になりやすいのでしょうか。 主な理由として、純資産価額の増加と、類似業種比準価額の上昇という、2つの要因が挙げられます。
内部留保・含み益による純資産価額の増加
非上場会社は、上場会社と比べて金融機関からの信用力が低くなりやすい傾向があるとされています。 そのため、業績が好調な時期に利益を積み上げ、内部留保として社内に資金を蓄えておく経営判断が取られることが多くあります。 こうした内部留保の蓄積は、経営の安定にはつながる一方で、純資産価額方式による株式評価額を押し上げる要因になる場合があります。
また、会社が保有する土地や有価証券などの資産に、取得時よりも時価が上昇している含み益が生じている場合も、純資産価額は高くなる傾向があるとされています。 純資産価額方式では、資産を課税時期の時価で評価し直すため、長年保有してきた不動産などに大きな含み益がある会社ほど、評価額が上振れしやすい仕組みです。 経営努力によって築き上げた内部留保や資産価値の上昇が、結果として相続税・贈与税の負担を重くする方向に働く場合がある点は、非上場株式ならではの悩ましい特徴といえるでしょう。
業績好調時の類似業種比準価額の上昇
類似業種比準方式は、同業種の上場企業の株価水準を参考にする評価方法です。 そのため、評価対象の会社自体の業績が好調な場合、比較対象となる配当金額、利益金額、純資産価額の数値が高くなり、結果として株価も上昇しやすくなるとされています。 特に利益金額は、比準要素の中でも評価額への影響が大きいとされています。
たとえば、決算期の直前に大きな利益を計上した会社は、その期の類似業種比準価額が上昇するケースも見られます。 経営者としては、会社の業績を伸ばすこと自体は望ましい経営判断ですが、その結果として株式の評価額が上昇し、将来の相続税負担が重くなる可能性がある点には注意が必要です。 このような評価額の変動リスクを踏まえ、早い段階から株価の推移を把握し、対策を検討しておくことが望ましいといえるでしょう。
非上場株式の評価額に関する一般的な対策の考え方

非上場株式の評価額が高くなる仕組みを理解したうえで、次に気になるのは、評価額を抑えるための一般的な対策です。 ここでは、あくまで制度上の一般的な考え方として、対策の方向性を紹介します。 個別の会社の状況によって、実際に有効な対策や適用できる制度は異なるため、具体的な実行にあたっては、必ず税理士へご相談ください。
会社区分・株主区分を踏まえた対策の視点
非上場株式の評価額対策は、これまで解説してきた株主区分や会社区分の判定基準を踏まえて検討することが一般的なアプローチとされています。 たとえば、会社規模区分が大会社に近い会社であれば、類似業種比準価額の圧縮を意識した対策が検討されることがあります。 一方、小会社に近い会社であれば、純資産価額の増加を抑える視点からの対策が検討される場合があります。
また、特定の評価会社に該当してしまうと、通常よりも評価額が高くなりやすい純資産価額方式が適用されやすくなる場合があります。 そのため、株式保有割合や土地保有割合を見直し、特定の評価会社への該当を避けるという視点も、一般的な対策の一つとして知られています。 これらはあくまで制度の仕組みを踏まえた一般論であり、実際に対策を講じる際には、会社の財務状況や将来の事業計画との整合性を確認しながら、専門家とともに検討を進める必要があります。
事業承継税制の活用
非上場株式の評価額そのものを下げるアプローチとは別に、納税額そのものを猶予・免除する制度を活用するという選択肢もあります。 その代表例が、法人版事業承継税制です。 この制度は、後継者が先代経営者から非上場株式を贈与または相続によって取得した場合に、一定の要件を満たすことで、贈与税・相続税の納税が猶予され、最終的に免除される可能性がある仕組みとされています。
現行の特例措置は、株式の贈与・相続を実行する期限が令和9年(2027年)12月31日までとされており、この適用期限については延長されない見込みであると公表されています。 また、この特例措置の適用を受けるためには、事前に「特例承継計画」を都道府県へ提出する必要があるとされています。 特例承継計画の提出期限は、令和8年度税制改正により法人版で1年6か月延長され、令和9年(2027年)9月30日頃までとされていますが、制度そのものの適用期限は延長されていない点に注意が必要です。
事業承継税制は、要件が細かく定められており、認定支援機関である税理士等の関与が前提とされている制度です。 「まだ先の話」と考えていると、計画の提出期限や実行期限に間に合わなくなる可能性もあるため、事業承継を検討している経営者の方は、早めに専門家へ相談し、準備を進めておくことをおすすめします。
【2026年最新動向】非上場株式の評価制度見直しの議論

ここからは、非上場株式の評価を考えるうえで、今もっとも注目しておきたい2026年の制度見直しの動きについて解説します。 これまで解説してきた評価方式の枠組みそのものが、今後見直される可能性が出てきています。 少数株主として株式を保有している方も、事業承継を控えるオーナー経営者の方も、この動向はぜひ押さえておきたいポイントです。
見直しのきっかけとなった会計検査院の指摘
今回の見直し議論のきっかけとなったのは、会計検査院による指摘とされています。 会計検査院は、2024年11月に公表した「令和5年度決算検査報告」の中で、非上場株式の評価方式によって評価額に大きな乖離が生じている実態を指摘しました。 具体的には、類似業種比準方式と純資産価額方式のあいだで、評価額に相当の差が生じているおそれがあると報告されています。
また、会社の規模が大きいほど、株式の評価額が相対的に低く算定される傾向があることも、あわせて指摘されています。 さらに、少数株主に適用される配当還元方式についても、現在の経済環境や配当政策の実態に十分対応していないのではないかという問題提起がなされているとされています。 こうした会計検査院の指摘を受け、国税庁は評価ルールそのものを見直す検討に着手することになりました。
有識者会議の議論状況(第1回〜第3回)
会計検査院の指摘を受け、国税庁は2026年4月20日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回会合を開催しました。 座長には、租税法を専門とする慶應義塾大学大学院の教授が就任し、学識経験者を中心とした13名の委員で構成されているとされています。 オブザーバーとして、中小企業庁や全国商工会連合会も参画しており、理論と実務の両面から検討が進められている点が特徴です。
第1回会合では、国税庁から現行の評価ルールの問題点や、評価額を意図的に圧縮する具体的なスキームの実例が示されました。 その後、2026年5月11日に第2回会合、同年6月4日に第3回会合が開催され、議論は着実に進んでいます。 特に第3回会合では、日本商工会議所などの経済界側から、中小企業の事業承継への影響を懸念する意見が示されるなど、学識経験者と経済界のあいだで論点が対立する局面も見られるようになりました。
議論の内容としては、類似業種比準方式そのものの廃止や、代替的な評価手法の導入も選択肢の一つとして挙がっているという見方もあります。 ただし、これはあくまで会議資料や議事要旨から読み取れる方向性であり、2026年時点では正式な結論には至っていません。 今後の会合における議論の進展を、引き続き注視する必要があります。
評価額への影響と今後のスケジュール
今回の見直しが実現した場合、非上場株式の評価額が現在よりも上昇する可能性があると指摘されています。 評価額が上昇すれば、相続税や贈与税の負担が増える中小企業のオーナーが出てくることも想定されます。 一方で、こうした評価額の上昇が、中小企業の事業承継を妨げる要因にならないよう、事業承継税制の見直しとあわせて検討が進められているとの見方もあります。
見直しの施行時期については、2028年1月1日からの適用を念頭に検討が進められているとの報道も見られますが、具体的な時期は本記事執筆時点では正式に確定していません。 現行の財産評価基本通達は、昭和39年(1964年)の制定以来、大きな改正が行われてこなかった経緯があり、今回の見直しは約60年ぶりの抜本的な改正となる可能性があるとされています。 評価ルールが通達によって定められているという性質上、法律改正のように国会審議を経ることなく、国税庁の判断によって改正される可能性がある点にも留意が必要です。
いずれにしても、現時点で生前対策や事業承継を検討している方にとっては、「今のルールが将来も続くとは限らない」という前提で準備を進めることが望ましいといえるでしょう。 今後の有識者会議の動向については、国税庁のホームページなどで随時公表される見込みのため、継続的に情報を確認しておくことをおすすめします。
非上場株式の評価における注意点

最後に、非上場株式の評価にあたって、あらかじめ知っておきたい注意点を整理します。 評価方式の仕組みを理解していても、実際の申告や対策の場面では、細かな判断を要する局面が数多く出てきます。
納税者に有利な評価方式を選択できる場合がある
これまで解説してきたとおり、非上場株式の評価方式には、複数の計算方法を比較し、有利な方を選択できる場面があるとされています。 たとえば、原則的評価方式による評価額と配当還元方式による評価額を比較し、低い方を申告に用いることができる場合があります。 また、中会社における併用方式の評価額と、純資産価額方式のみによる評価額を比較できる場面もあります。
こうした選択の余地があることは、納税者にとって有利に働く可能性がある一方で、どの方式を選べば有利になるかを正確に判断するには、専門的な知識と計算の手間が必要です。 自己判断で計算を進めた結果、本来選択できたはずのより有利な評価方式を見落としてしまうケースも考えられます。 評価額の算定にあたっては、複数のパターンを試算したうえで、最も適切な方式を選択することが望ましいでしょう。
個別の評価・申告は専門家への相談が必要
本記事では、非上場株式の評価方式の仕組みや、評価方式を決定する手順について、一般的な制度の内容を解説してきました。 しかし、実際の評価額の計算や、相続税・贈与税の申告手続きそのものは、税理士でなければ行うことができない業務とされています。 また、株式をめぐって発行会社との権利関係に争いが生じている場合など、法的な判断が必要となる場面では、弁護士への相談が必要になることもあります。
本記事の内容は、あくまで制度の仕組みを理解していただくための一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会社や株主の状況における評価額や税額を保証するものではありません。 非上場株式の評価や相続税申告について、少しでも不安や疑問がある場合は、早めに税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。 特に、株式保有特定会社への該当や、事業承継税制の適用可否など、判断が難しい論点については、自己判断せずに専門家の意見を仰ぐことが、結果的に安心につながります。
非上場株式の相続・売却は株式会社繁栄 少数株Laboへご相談ください

非上場株式や少数株式の相続・売却は、上場株式とは異なり、専門的な知識と豊富な経験が求められる分野です。 本記事で解説してきたとおり、評価方式の判定一つをとっても、株主区分・会社区分・会社規模区分という複数のステップを踏む必要があり、さらに2026年からは評価ルールそのものの見直しも進められています。 「結局、自分のケースではどうなるのか分からない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
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まとめ.非上場株式の評価は専門家への相談を
ここまで、非上場株式の評価方法について、基本的な仕組みから評価方式を決定する3つのステップ、そして2026年時点での制度見直しの最新動向まで解説してきました。
非上場株式は、市場での取引価格が存在しないという特性上、株主区分・会社区分・会社規模区分という3つの視点から、評価方式を丁寧に判定していく必要がある財産です。 また、内部留保や含み益の存在によって、想定以上に評価額が高くなるケースも少なくありません。 くわえて、2026年から国税庁の有識者会議で進められている評価ルールの見直し議論は、今後の相続対策や事業承継の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
非上場株式の評価は、制度の仕組みが複雑であるうえに、今まさに変化の途上にある分野です。 少数株主として株式を保有している方も、事業承継を控えるオーナー経営者の方も、「いずれ考えればいい」と先送りにせず、早い段階から専門家に相談し、現状を正確に把握しておくことが、将来の安心につながります。 まずは無料の相談窓口などを活用しながら、自身が保有する非上場株式が今どのように評価されるのか、確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

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